エレコムが30周年記念パーティー、「変化をチャンスにして成長」
PCサプライや周辺機器メーカーのエレコムは5月27日、東京・港区の「ザ・リッツ・カールトン東京」で30周年を祝う記念パーティを開催した。取引先など関係者ら約180人が、同社の節目を祝った。
PCやタブレット端末の国内市場が縮小するなか、エレコムは2016年3月期決算で6期連続過去最高となる売上高約811億円を更新。営業利益、経常利益、当期純利益とも過去最高利益を更新した。
この決算からもわかるように、エレコムの30年の歩みは、市場の変化に対応しつづけてきた歴史といっても過言ではないだろう。
エレコムは、家電量販店向けOA家具メーカーとして1986年5月に設立した。最初はPCデスクなどの製造からだった。1988年にマウス、1989年にテンキーボードを発売するなどして、PC周辺アイテムの製造に力を入れていく。
葉田順治取締役社長は登壇の挨拶で、「デスクトップPCを収めるラックで創業し、これが売れて初年度の売上高は3億円。それから7億円、16億円、27億円と増えて100億円ぐらいになるだろうと考えていたところ、今度はノートPCが登場してPCラックが終了すると思った。そこで始めたのがマウスやキーボードだった」と、同社が常に環境の変化に晒されながら成長してきたことについて語った。
「あるとき飛行機に乗っていたら外国人がBlackBerryを使っているのを見て、今度はスマートフォンだと思い、社内で話したが最初は猛反対された。しかし続けることで、PCからスマートフォンへの変化をチャンスと捉えてやってこれた」(葉田社長)。
取扱いアイテム数と事業分野は広がり、いまではPC関連はUSB、バック、LANケーブル、インクなどに拡大。2016年3月期の品目別売上高をみても、PC市況の悪化とは裏腹に、エレコムの「PC関連」は前期比100.9%を堅持しているのだ。
事業分野も、外付けHDDやNAS、無線LANルータ、USBメモリ、SDカードなどを扱う「周辺機器」、専用ケースやフィルム、モバイルバッテリなどを扱う「スマートフォン・タブレット関連」と、新分野に果敢に挑戦してきた。今後もヘルスケアやVR、理美容に進出するなど、新たな市場開拓の手を緩めることはない。
むやみに取扱いアイテム数を増やすのではなく、販売台数シェアをしっかり押さえている点も特筆される。家電量販店の実売データを日次で集計する「BCNランキング」が、年間の販売台数シェアトップに授与する「BCN AWARD」をみても、エレコムは「BCN AWARD 2001」でマウス部門とUSB部門の2冠を達成して以降、この2部門は16年間シェアトップを守り続けている。また、直近の「BCN AWARD 2016」では、受賞部門は12部門まで増えた。
アイテム数や事業分野が拡大する歩調に合わせて、物流改革にも着手。1994年に東京と仙台の配送センターを統合して、埼玉県草加市に東日本配送センターを開設した後、物流業務に特化したエレコム物流を設立した。
その後も物流センターの統廃合を進めながら、最新のピッキングロボットを導入するなどして、現在は東京、神奈川、大阪の3拠点の物流体制を敷く。今後は、東京物流センターの機能を神奈川物流センターに統合するなど、常にバージョンアップさせながら、在庫の削減効果を生みだす。物流改革の継続は、過去最高の利益を生み出した源泉にもつながっているのだろう。
海外進出も早く、1992年、米国にELECOM COMPUTER PRODUCT INCを設立。英国や韓国、中国(上海)、ドイツ、イタリアなどに進出した後、一時期は撤退する場面もあったが、現在では東南アジアや中南米を中心に32店舗を展開している。
M&Aも積極的に展開。2004年にロジテックを子会社化し、10年にロジテックINAソリューションズを設立。11年には、民事再生手続きを申請したハギワラシスコムの事業譲渡を受け、ハギワラソリューションズを設立した。また14年には日本データシステム(JDS)を子会社化した。
これらのM&Aは、産業用組み込み機器やデジタルサイネージ、工場設備PCなど今後のIT産業インフラ事業進出のための種まきとなっている。
2010年に大阪証券取引所JASDAQ市場に上場(13年に廃止)した後、13年に東京証券取引所市場第一部に上場するなど、この30年で着実にエレコムブランドの認知度を高めてきた。5年後、10年後も変化し続ける企業として成長し続けることだろう。
この30年間を振り返った葉田社長は「正直、何もできていないというのが本音。技術が足りない、海外で品質が通用しないなど、まだまだやるべきことはたくさんある」と語った。自らに厳しく、謙虚でありながらも、葉田社長の言葉からは、まだまだ成長の伸びシロがあることが感じられた。(BCN・細田 立圭志)
30周年の記念パーティーであいさつをするエレコムの葉田順治取締役社長
PC市況が悪化してもエレコムは好調
PCやタブレット端末の国内市場が縮小するなか、エレコムは2016年3月期決算で6期連続過去最高となる売上高約811億円を更新。営業利益、経常利益、当期純利益とも過去最高利益を更新した。
この決算からもわかるように、エレコムの30年の歩みは、市場の変化に対応しつづけてきた歴史といっても過言ではないだろう。
エレコムは、家電量販店向けOA家具メーカーとして1986年5月に設立した。最初はPCデスクなどの製造からだった。1988年にマウス、1989年にテンキーボードを発売するなどして、PC周辺アイテムの製造に力を入れていく。
葉田順治取締役社長は登壇の挨拶で、「デスクトップPCを収めるラックで創業し、これが売れて初年度の売上高は3億円。それから7億円、16億円、27億円と増えて100億円ぐらいになるだろうと考えていたところ、今度はノートPCが登場してPCラックが終了すると思った。そこで始めたのがマウスやキーボードだった」と、同社が常に環境の変化に晒されながら成長してきたことについて語った。
「あるとき飛行機に乗っていたら外国人がBlackBerryを使っているのを見て、今度はスマートフォンだと思い、社内で話したが最初は猛反対された。しかし続けることで、PCからスマートフォンへの変化をチャンスと捉えてやってこれた」(葉田社長)。
取扱いアイテム数と事業分野は広がり、いまではPC関連はUSB、バック、LANケーブル、インクなどに拡大。2016年3月期の品目別売上高をみても、PC市況の悪化とは裏腹に、エレコムの「PC関連」は前期比100.9%を堅持しているのだ。
事業分野も、外付けHDDやNAS、無線LANルータ、USBメモリ、SDカードなどを扱う「周辺機器」、専用ケースやフィルム、モバイルバッテリなどを扱う「スマートフォン・タブレット関連」と、新分野に果敢に挑戦してきた。今後もヘルスケアやVR、理美容に進出するなど、新たな市場開拓の手を緩めることはない。
むやみに取扱いアイテム数を増やすのではなく、販売台数シェアをしっかり押さえている点も特筆される。家電量販店の実売データを日次で集計する「BCNランキング」が、年間の販売台数シェアトップに授与する「BCN AWARD」をみても、エレコムは「BCN AWARD 2001」でマウス部門とUSB部門の2冠を達成して以降、この2部門は16年間シェアトップを守り続けている。また、直近の「BCN AWARD 2016」では、受賞部門は12部門まで増えた。
物流改革やM&Aでさらに成長
アイテム数や事業分野が拡大する歩調に合わせて、物流改革にも着手。1994年に東京と仙台の配送センターを統合して、埼玉県草加市に東日本配送センターを開設した後、物流業務に特化したエレコム物流を設立した。
その後も物流センターの統廃合を進めながら、最新のピッキングロボットを導入するなどして、現在は東京、神奈川、大阪の3拠点の物流体制を敷く。今後は、東京物流センターの機能を神奈川物流センターに統合するなど、常にバージョンアップさせながら、在庫の削減効果を生みだす。物流改革の継続は、過去最高の利益を生み出した源泉にもつながっているのだろう。
海外進出も早く、1992年、米国にELECOM COMPUTER PRODUCT INCを設立。英国や韓国、中国(上海)、ドイツ、イタリアなどに進出した後、一時期は撤退する場面もあったが、現在では東南アジアや中南米を中心に32店舗を展開している。
M&Aも積極的に展開。2004年にロジテックを子会社化し、10年にロジテックINAソリューションズを設立。11年には、民事再生手続きを申請したハギワラシスコムの事業譲渡を受け、ハギワラソリューションズを設立した。また14年には日本データシステム(JDS)を子会社化した。
これらのM&Aは、産業用組み込み機器やデジタルサイネージ、工場設備PCなど今後のIT産業インフラ事業進出のための種まきとなっている。
2010年に大阪証券取引所JASDAQ市場に上場(13年に廃止)した後、13年に東京証券取引所市場第一部に上場するなど、この30年で着実にエレコムブランドの認知度を高めてきた。5年後、10年後も変化し続ける企業として成長し続けることだろう。
この30年間を振り返った葉田社長は「正直、何もできていないというのが本音。技術が足りない、海外で品質が通用しないなど、まだまだやるべきことはたくさんある」と語った。自らに厳しく、謙虚でありながらも、葉田社長の言葉からは、まだまだ成長の伸びシロがあることが感じられた。(BCN・細田 立圭志)