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三菱「霧ヶ峰」の営業トップが語る、モノづくりでグローバル展開が必要な理由

インタビュー

2015/10/21 10:37

 三菱電機は、エアコンで新しいモノづくりにチャレンジしている。来春発売予定で開発中のデザインに特化した「FLシリーズ」と、10月下旬から発売する左右の吹き出し風量を変化できるイノベーションモデル「FZシリーズ」がそれだ(既報=<家電の美>エアコンで家電流通を変える、インテリアと完全調和の三菱「FLシリーズ」)。大量生産から顧客ニーズの多様化にこたえる少量多品種のモノづくりが求められている。このジレンマを解消するキーワードにグローバル展開が浮上する。


三菱電機の静岡製作所営業部ルームエアコン営業統轄部の久保田健部長

 三菱電機の静岡製作所営業部ルームエアコン営業統轄部の久保田健部長は、モノづくりを担うメーカーが抱えるジレンマを、次のように率直に語る。

 「家電業界は過渡期にあることを痛感している。エアコンでいえば、年間約800万台を構成する大多数のニーズをくみ取った量産モデルをプロダクト化して きた。しかし、これから必要な考え方は、一人ひとりのお客様が800万人いらっしゃって、生活シーンのなかでそれぞれのニーズが異なるということ。メー カーとしては、量産品と個人のお客様のニーズとの間にあるギャップを、どのようにマッチングすべきかという課題がある」。

 顧客の多様なニーズのすべてに対応することは到底できない。ただ、最大公約数である価値のトレンドは見極める。実際に三菱のルームエアコン「霧ヶ峰」でも、量産モデルとして「Zシリーズ」をはじめとする豊富なラインアップを用意している。

 しかし、「FLシリーズ」と「FZシリーズ」はこれらとは一線を画す新たなチャレンジになる。
 

ユーザーのライフスタイルに合わせるエアコン

 久保田部長は、「メーカー発想でこういう機能はどうですかと、お客様の全員に投げかける方法では、新しい価値を受け入れてもらえない。あなたの希望する ニーズでしたら、このような製品はどうですか、というモノづくりにトライしていかなくてはならない」と、新しいモノづくりの必要性について語る。

 「FLシリーズ」は、デザインやインテリアとの調和に軸足を置いたモデルだ。フィルターの自動清掃機能は、薄型で運転停止時のフラップが見えなくなるデ ザインを実現するためにあえて外した。ターゲットは、デザインへの美的センスや空間の演出に価値を置く層である。ただし、センサー機能の「ムーブアイ極」 と気流コントロールによる省エネ性能は確保するという。
 


「FZシリーズは、エアコンの永遠の課題を克服。
寒がりさんと暑がりさんで生じていたリモコンの奪い合いをなくす」

 「FZシリーズ」は、まずはエアコンの永遠の課題だった「寒がり」と「暑がり」が、同じ部屋にいるときの空調の不満を解消する。左右からの風量を変えら れる「パーソナルツインフロー」という新開発の技術が、「暑い」「寒い」でもめることで起こるリモコンの奪い合いをなくす。

 同時にFZシリーズでもターゲットは絞る。子どもが独立して夫婦で生活するためにリフォームする世帯や、30~40代で新築のマンションや戸建てを購入する層である。

 「リフォームで壁紙を変えるから、それに合わせてエアコンも新調したい」とエアコンをインテリアや家具の一部のように考えるこだわり派に対し、「省エネ水準が他社よりも少しいい」という価値観だけでは通用しないという。
 


「暑がり」と「寒がり」の共存を可能にする「FZシリーズ」

ジレンマを克服する解がグローバル展開

 量産モデルではない「FLシリーズ」や「FZシリーズ」は、ターゲット層を絞り込むために価格も高くなりがちだ。三菱に限らず多くの国内メーカーが、プレミアムモデルにこれまでも何度となくトライしてきたものの頓挫したケースは枚挙にいとまがない。

 久保田部長は、「新しい金型を起こして製品をつくるわけだから、マーケットを細分化すると、そのコストはお客様の売価に反映されてしまう。そうならないためには、どうすればいいのか。それがグローバル展開だ」と、グローバル展開に解を求める。

 「FLシリーズ」は、将来的に欧州や中国展開も視野に入れて開発中だという。国内に限ってしまえばボリュームが少なくなって価格がとんでもなく高くなってしまうが、グローバルに一定数いる層をマーケットにすれば無理な戦略ではないというわけだ。

 消費者の価値観の多様化とセル生産とはいえ、メーカーの量産化のジレンマに対するひとつの答えがグローバル展開にある。三菱のモノづくりのチャンレンジは続く。(BCNランキング 細田立圭志)