ヤマダのビジネスモデルに異変!! 一斉閉鎖で店舗効率ダウンに歯止めかかるか
「定石から外れている」――。ある家電流通の担当者は、ヤマダ電機(山田昇社長)の店舗数と1店舗当たり売上高の推移についてそう語った。これまで盤石だったヤマダ電機のビジネスモデルに異変が起きている。
表は、2000年3月期以降のヤマダ電機の店舗数と1店当たりの売上高の推移を示したものだ。表から類推できるように、直営店がまだ109店しかなかった2000年3月期から、600店体制で過去最高の売上高2兆1532億円をたたき出した11年3月期まで、ヤマダ電機の1店当たりの売上高はコンスタントに30億~40億円を稼いでいた。これにより、出店するたびに売上高が安定して増えていくという「定石」を踏んでいた。
特筆されるのは、郊外型のテックランドを出店していた初期のころだけではなく、06年3月期に全国に店舗網を構築したり、同社初の都市型店舗LABI1 NAMBAを出店したときも、また08年3月期にぷれっそホールディングスやマツヤデンキ、サトームセン、星電社を連結対象にするなどして、異なるカルチャーの家電量販店が加わっても、1店舗当たりの売上高30億~40億円をキープし続けていたことである。
ちなみに、ヤマダ電機の従業員1人当たりの年間売上高が1億円以上(臨時雇用除く)というのも、同社の強さを語るときに使われる数字である。01年3月期の1億400万円から年々伸ばして、ピークは07年3月期の2億400万円。その後は減りこそするものの11年3月期でも1億7300万円の高水準を維持していた。
こうしたヤマダ電機の盤石だったビジネスモデルに異変が起きたのは、地上デジタル放送への完全移行によるテレビの買い替え需要が減った12年3月期からだ。1店舗当たりの売上高は26億3000万円と30億円を割り込む。
その後も13年3月期は17億5100万円、14年3月期が19億2300万円、直近の15年3月期に至っては、初の1000店突破の1016店を達成したものの、1店舗当たりの売上高が16億3800万円まで落ち込んでいる。06年、07年3月期に出した42億円の、実に4割程度にまで下がっている。
12年3月期は、住宅メーカーのエス・バイ・エルを子会社化したり、約1000平方メートルの小商圏向け小型店舗の出店戦略を加速させている。従業員1人当たり売上高も、12年3月期は1億3100万円と、かろうじて1億円以上を維持したが、翌13年3月期が8000万円、14年3月期がやや復調して9000万円となっている。15年3月期は、現在までのところ公表されていない。
店舗効率の向上が喫緊の課題であるヤマダ電機は、構造改革によって状況を打開しようと大ナタを振るった。5月25日、5月末までにスクラップ&ビルドや業態転換を含めて46店舗を閉鎖すると発表した。一部報道によれば、続く6月末も、11店舗を閉鎖や業態転換すると報じられた。JR水戸駅前にあるLABI水戸などの大型店舗も含まれるが、先の小商圏向けのテックランドも多く含まれているようだ。
5月の月次速報値からは、閉店店舗の面積で約10万平方メートルがなくなったことが明らかになっている。期初にあった1016店舗の274万平方メートルからは、4月の開店と閉店を含めて3.3%の削減となる。
一部はアウトレット店や4月10日に東京・新橋でオープンしたような免税専門店に業態を転換して、店舗効率を高めていく。年内には、訪日外国人(インバウンド)需要の取り込みを狙って東京駅前の八重洲に都市型店舗を出店する。今年度の新規出店は15店と、昨年度の31店舗の半分に抑えるなど、まずは構造改革に早急に着手する。
店舗の閉鎖や業態転換にかかる費用は、5月7日に発表したソフトバンクとの資本業務提携による第3者割当で調達した227億円のうちの81億円でまかなう。81億円の内訳は、既存店の改修・改装に24億円、スクラップ&ビルドに42億円、免税対応店への業態転換に10億円、アウトレット店への業態転換に5億円となっている。
4月の速報値では、グループ全店の売上高が前年同月比で110%となり、5月も112.6%と、消費増税の反動減から脱出しつつある明るい兆しが見られた。しかし、インターネット販売業者の普及や少子高齢化による国内家電マーケットの縮小など、ヤマダ電機をはじめとする家電量販店を取り巻く環境は激変している。業界トップのヤマダ電機の大胆な構造改革の進ちょくと行方に注目が集まる。(BCN・細田 立圭志)
5月末に閉店したヤマダ電機のJR水戸駅前の「LABI水戸」
郊外型テックランドや都市型LABIが成長をけん引していた
表は、2000年3月期以降のヤマダ電機の店舗数と1店当たりの売上高の推移を示したものだ。表から類推できるように、直営店がまだ109店しかなかった2000年3月期から、600店体制で過去最高の売上高2兆1532億円をたたき出した11年3月期まで、ヤマダ電機の1店当たりの売上高はコンスタントに30億~40億円を稼いでいた。これにより、出店するたびに売上高が安定して増えていくという「定石」を踏んでいた。
ヤマダ電機の店舗数と1店当たり売上高推移
特筆されるのは、郊外型のテックランドを出店していた初期のころだけではなく、06年3月期に全国に店舗網を構築したり、同社初の都市型店舗LABI1 NAMBAを出店したときも、また08年3月期にぷれっそホールディングスやマツヤデンキ、サトームセン、星電社を連結対象にするなどして、異なるカルチャーの家電量販店が加わっても、1店舗当たりの売上高30億~40億円をキープし続けていたことである。
ちなみに、ヤマダ電機の従業員1人当たりの年間売上高が1億円以上(臨時雇用除く)というのも、同社の強さを語るときに使われる数字である。01年3月期の1億400万円から年々伸ばして、ピークは07年3月期の2億400万円。その後は減りこそするものの11年3月期でも1億7300万円の高水準を維持していた。
1店舗当たりの売上高が急ブレーキ
こうしたヤマダ電機の盤石だったビジネスモデルに異変が起きたのは、地上デジタル放送への完全移行によるテレビの買い替え需要が減った12年3月期からだ。1店舗当たりの売上高は26億3000万円と30億円を割り込む。
その後も13年3月期は17億5100万円、14年3月期が19億2300万円、直近の15年3月期に至っては、初の1000店突破の1016店を達成したものの、1店舗当たりの売上高が16億3800万円まで落ち込んでいる。06年、07年3月期に出した42億円の、実に4割程度にまで下がっている。
12年3月期は、住宅メーカーのエス・バイ・エルを子会社化したり、約1000平方メートルの小商圏向け小型店舗の出店戦略を加速させている。従業員1人当たり売上高も、12年3月期は1億3100万円と、かろうじて1億円以上を維持したが、翌13年3月期が8000万円、14年3月期がやや復調して9000万円となっている。15年3月期は、現在までのところ公表されていない。
5月は10万平方メートル規模の閉店に
店舗効率の向上が喫緊の課題であるヤマダ電機は、構造改革によって状況を打開しようと大ナタを振るった。5月25日、5月末までにスクラップ&ビルドや業態転換を含めて46店舗を閉鎖すると発表した。一部報道によれば、続く6月末も、11店舗を閉鎖や業態転換すると報じられた。JR水戸駅前にあるLABI水戸などの大型店舗も含まれるが、先の小商圏向けのテックランドも多く含まれているようだ。
5月の月次速報値からは、閉店店舗の面積で約10万平方メートルがなくなったことが明らかになっている。期初にあった1016店舗の274万平方メートルからは、4月の開店と閉店を含めて3.3%の削減となる。
一部はアウトレット店や4月10日に東京・新橋でオープンしたような免税専門店に業態を転換して、店舗効率を高めていく。年内には、訪日外国人(インバウンド)需要の取り込みを狙って東京駅前の八重洲に都市型店舗を出店する。今年度の新規出店は15店と、昨年度の31店舗の半分に抑えるなど、まずは構造改革に早急に着手する。
店舗の閉鎖や業態転換にかかる費用は、5月7日に発表したソフトバンクとの資本業務提携による第3者割当で調達した227億円のうちの81億円でまかなう。81億円の内訳は、既存店の改修・改装に24億円、スクラップ&ビルドに42億円、免税対応店への業態転換に10億円、アウトレット店への業態転換に5億円となっている。
4月の速報値では、グループ全店の売上高が前年同月比で110%となり、5月も112.6%と、消費増税の反動減から脱出しつつある明るい兆しが見られた。しかし、インターネット販売業者の普及や少子高齢化による国内家電マーケットの縮小など、ヤマダ電機をはじめとする家電量販店を取り巻く環境は激変している。業界トップのヤマダ電機の大胆な構造改革の進ちょくと行方に注目が集まる。(BCN・細田 立圭志)