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クラウドPCはIoTの入り口、日本HPが学生コミュニティ立ち上げ

特集

2015/03/10 19:11

 いまや、日本国民の半数がスマートフォンを所持している(IDC Japan調べ)時代。デジタルデバイスの新しいトレンドとしては、腕時計型、リストバンド型、メガネ型などウエアラブルデバイスの普及も目の前に迫っている。各種センサーを搭載したこれら小型デバイスは、IT業界の重要キーワードであるIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の世界で注目度を増している。

PCの存在価値を変える「HP Stream」



 ところが、これまでモバイルデバイスの主力だったPCは、インターネットに接続するデバイスが加速度に増えていくなかで、この潮流に乗り遅れつつある。こうしたなか、PC世界最大手のヒューレット・パッカード(HP)は、PCを「IoTの入り口」として、存在価値を高めようとしている。その第一弾となるクラウドPC「HP Stream」シリーズを投入した理由などについて、日本HPのプリンティング・パーソナルシステムズ事業統括の甲斐博一部長に聞いた。

クラウドPC「HP Stream」をなぜ投入したか、その全貌を語る日本HPのプリンティング・パーソナルシステムズ事業統括PPSマーケティング部の甲斐博一部長

 日本HPの調査(出典:日本HP Original Survey, 2014 Summer)によると、日本国内で10~20代学生のクラウド利用率は50.3%以上に達した。15~50代の層で「使っている」率は33.7%と比率は落ちるが、クラウド利用は当たり前になりつつある。スマートフォンを使ってDropboxやマイクロソフトのOneDriveなどのクラウドサービスを使う人は増えている。だが、PCでクラウドの恩恵に浴しているユーザーは少数派だ。

 「クラウドPC」を謳う「HP Stream」シリーズは、「PCでクラウドを使う」ための“起爆剤”として販売を開始した。だが、日本HPの戦略の背景には、もっと大きな構想が隠れていた。甲斐部長はこう解説する。「『HP Stream』シリーズは、クラウド利用を促すデバイスにすぎない。当社は、あらゆるデジタルデバイス製品を持っているが、今後、各社からも多様なIoTデバイスが製品化されていくだろう。当製品はそれに向けたPC側からのアプローチだ」。「HP Stream」シリーズは、これからやってくる「IoT時代」に向けて、PCだけで完結しない新しいデジタルデバイスの楽しみ方を提案する「入り口」という位置づけなのだという。

クラウド使いこなしIoT時代に備える



 「HP Stream」シリーズは、「クラウド時代の新スタイルPC」と称し、盛り込まれた機能やスペック、UX(ユーザー・エクスペリエンス=利用者の体験)も独創的だ。HDDを搭載しないことで起動の早さと衝撃への強さを手に入れている。また、ファンレスで静かなうえ、プロセッサ、グラフィック性能ともに同価格帯のPCに見劣らない。マイクロソフトのクラウドストレージ「OneDrive」(100GB)を2年間無償で使え、スマートフォンなどOSの異なるデバイスからもアクセスができドキュメントを共有できる。

 一般的には、2020年までにインターネットに接続するデバイスは200億台に達すると予測されている。世界人口が80億人に増加するので、1人当たり2.5台程度、何らかのセンサーが接続されたデバイスを持つことになる。これから世界中で、新しいデバイスが使われることで生活は一変する。技術面での課題は少なくないが、これが間もなく実現する「IoT」の世界だ。

 いまでも、リストバンド型のウエアラブルデバイスを使って、加速度センサーのデータから得られた歩数などの活動情報をスマートフォンで閲覧するというシーンはよく見られる。あるいは、GPS(全地球測位網)のデータを使い、自分の位置情報をもとにして周囲でおすすめの飲食店情報を得るなど、日常生活での利用は当たり前になりつつある。そのデータ(ビッグデータ)はクラウド上に集約され、今度はアナリティクス(解析)ができ、よりデータの価値が高められる。

 クラウドサービスを使いこなす力は、本格的な「IoT時代」を前に、必要不可欠な“生活力”なのだ。甲斐部長は、「HP Stream」シリーズは、その「入り口」であり、こうしたデバイスなどを使って、「早く、その新しい生活スタイルを味わって欲しい」と訴える。

学生コミュニティ「HP Student Ambassadors」創設



おしゃれなデザインの「HP Stream」を使って、コタツを囲んで学生が調べ学習する

 そこで、日本HPでは、もっともクラウド・ネイティブ率が高い大学生や高校生向けに“オルグ活動”を本格化するという。日本でも、PBL(課題解決学習、Project-Based Learning)という学習方法を授業に取り入れる教育機関が急速に増えている。PBLは、正解のない問題解決に向けてチーム学習を行う学習メソッドだ。当然、PCやタブレットPCなどIT機器を利用し、調べたことや検証実験の結果などを集計したり、レポートにまとめたりする作業が重要になる。日本HPは、このPBL型スタイルからクラウド利用促進を目指す「HP Student Ambassadors」と呼ぶ取り組みを始める。

「HP Student Ambassadors」の学生コミュニティは、東京、東海、関西の3地区で立ち上げる

 甲斐部長は、この取り組みの狙いについてこう語る。「HPのあらゆるデバイス製品やクラウドサービスを使いこなし、効率的な学習や生活を豊かにする手法を身に付けた“かっこいい学生”を増やしたい」。地道な活動ではあるが、こうした、かっこよくHP製品を使いこなす学生が増えることで、周囲にいる学生にも伝播していくことを目指している。あるいは学生が“伝道師”となり使い方を伝授していくシーンが増えることも期待している。まずは、関東、東海、関西地区でコミュニティを立ち上げる。「HP Stream」シリーズは、単に軽くて性能が良く、クラウドを使えるPCではなく、日本HPの中・長期戦略上にある重要なプロダクトなのだ。(BCN・谷畑良胤)