ソニー、分社化でどうなる? テレビはシェア拡大もビデオ&サウンドは?
ソニーは2月18日、経営方針説明会を開催し、2015年度から2017年度までの3年間の中期経営方針を発表した。そのなかで平井一夫・代表執行役社長兼CEOは、「ROE(株主資本利益率)を最重要の経営指標とし、収益性重視の事業運営を徹底する」と語り、2017年度の経営数値目標をROEで10%以上、営業利益を5000億円以上とした。一方「事業領域ごとに環境が異なる」として、全体での売上目標は掲げなかった。また、テレビ事業に続き、「ビデオ&サウンド事業」についても、10月に分社化する方針を明らかにした。
中期経営方針では、事業領域を「成長けん引」「安定収益」「事業変動リスクコントロール」の三つに分け、領域ごとに売上、利益、投下資本についての方向性を示した。まず「成長けん引領域」については、カメラ用撮像素子などの「デバイス分野」、PlayStation 4などの「ゲーム&ネットワークサービス分野」、映画やテレビ番組などの制作を行う「映画分野」、ソニーミュージックなどの「音楽分野」の四つとし、積極的な投資を行うことで、売上増、利益増を目指す。
また「安定収益領域」として、デジタルカメラやビデオカメラなどの「イメージング・プロダクツ&ソリューション分野」とウォークマンやBD(ブルーレイディスク)レコーダーなどの「ビデオ&サウンド事業」を挙げ、投資を微減としながら、新しい付加価値の提案などを通じて、売り上げを横ばい、利益を微増とした。
一方、「事業変動リスクコントロール領域」を、スマートフォンなどの「モバイル・コミュニケーション分野」、昨年7月に分社化した「テレビ事業」とし、投資額を減少させながら、売上も減少を見込むなか、収益率を改善させ黒字化を目指す、とした。
また、平井社長はエレクトロニクス事業の分社化を、さらに推進すると語った。14年7月には100%子会社の「ソニービジュアルプロダクツ」を設立し、テレビ事業を分社化したが、これに続き15年10月1日に「ビデオ&サウンド事業」について、同じく100%子会社を設立し分社化すると発表した。平井社長は「分社化自体が目的ではない」とし、「結果責任・説明責任の明確化」「持続的な利益創出を念頭に置いた経営」「意思決定の迅速化と事業競争力の強化」を狙うと説明。時期は未定としながらも、「デバイス分野」や「イメージング分野」についても、分社化を進めていく方針を明らかにした。
テレビ事業の分社化から半年が経過したが、その影響は国内市場にどう出ているのか。家電量販店などの実売データを集計する「BCNランキング」で算出した販売台数シェアをみると、同社が注力している40型以上の液晶テレビの販売台数シェアは上昇している。14年第2四半期(2014年4-6月)は23.1%だった販売台数シェアが、分社化後の第3四半期(2014年7-9月)では24.4%に上昇。さらに、第4四半期(2014年10-12月)では29.6%と、さらにシェアを伸ばした。33.3%のシェアでトップを走るシャープの背中が見えてきた。
しかし、このシェアの拡大は、平均単価の下落によるところも大きい。12年第3四半期(2012年7-9月)以降、ソニーの平均単価は、全体に比べて1万円以上上回る水準で推移。13年の第4四半期(2013年10-12月)では5万6千円も全体を上回っているものの、シェアは15.7%にとどまっていた。以後、4Kテレビの拡大がけん引し、シェアを上げながら高い平均単価を維持していた。ところが、4Kテレビの価格競争が激化するにつれ、価格差は縮小している。14年第4四半期では、平均単価の差が1万円を切るまで下がってきている。
分社化を契機として、テレビ事業が黒字化する公算が高まっているが、収益を確保しながら、台数と価格のバランスをどう取っていくかは、依然大きな課題といえそうだ。
一方、分社化が発表された「ビデオ&サウンド事業」について、国内市場の現状はどうなのか。まずはウォークマンとiPodがぶつかる携帯オーディオ。ここはソニーとアップルの寡占市場で、このところソニーが過半数を占める状況が続いている。直近の14年第4四半期では、ソニーのシェアは51.3%だった。
逆に平均単価はアップルが高い。一時6000円以上も差が開いた時期があったものの、このところのハイレゾ製品が寄与し、ソニーの平均単価が上昇、14年第4四半期ではほぼ並んだ。しかし、携帯オーディオ市場自体は、2ケタ台での縮小傾向が続いている。iPhoneを中心とするスマートフォンに押されているのがその要因で、14年第4四半期の全体の販売台数前年同期比は、85.5%にとどまっている。
同じ「ビデオ&サウンド事業」のなかのBDレコーダー市場では、ソニーの存在感はあまり大きくない。平均単価は全体を若干上回るにすぎず、販売台数シェアも2位と4位を行ったり来たりしている状態だ。14年第4四半期の販売台数シェアは20.3%と3位に甘んじている。ただし市場全体は、底打ちがみえてきたテレビと歩調を合わせるように徐々に回復し始めている。14年第4四半期の販売台数前年同期比は、102.2%とわずかながら前年同期を上回った。
同社が安定収益領域と位置付けている「ビデオ&サウンド事業」の現状は、必ずしもいいとはいえない。平井社長の言う「ユーザーに感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する」製品を、どれだけ世に送り出すことができるかが、分社化後の成果を大きく左右することになるだろう。(BCN・道越一郎)
中期経営方針を発表する平井一夫・代表執行役社長兼CEO
事業を3領域に分けメリハリのある投資戦略を立案
中期経営方針では、事業領域を「成長けん引」「安定収益」「事業変動リスクコントロール」の三つに分け、領域ごとに売上、利益、投下資本についての方向性を示した。まず「成長けん引領域」については、カメラ用撮像素子などの「デバイス分野」、PlayStation 4などの「ゲーム&ネットワークサービス分野」、映画やテレビ番組などの制作を行う「映画分野」、ソニーミュージックなどの「音楽分野」の四つとし、積極的な投資を行うことで、売上増、利益増を目指す。
また「安定収益領域」として、デジタルカメラやビデオカメラなどの「イメージング・プロダクツ&ソリューション分野」とウォークマンやBD(ブルーレイディスク)レコーダーなどの「ビデオ&サウンド事業」を挙げ、投資を微減としながら、新しい付加価値の提案などを通じて、売り上げを横ばい、利益を微増とした。
一方、「事業変動リスクコントロール領域」を、スマートフォンなどの「モバイル・コミュニケーション分野」、昨年7月に分社化した「テレビ事業」とし、投資額を減少させながら、売上も減少を見込むなか、収益率を改善させ黒字化を目指す、とした。
10月1日に「ビデオ&サウンド事業」を分社化、その他事業も分社化を推進
また、平井社長はエレクトロニクス事業の分社化を、さらに推進すると語った。14年7月には100%子会社の「ソニービジュアルプロダクツ」を設立し、テレビ事業を分社化したが、これに続き15年10月1日に「ビデオ&サウンド事業」について、同じく100%子会社を設立し分社化すると発表した。平井社長は「分社化自体が目的ではない」とし、「結果責任・説明責任の明確化」「持続的な利益創出を念頭に置いた経営」「意思決定の迅速化と事業競争力の強化」を狙うと説明。時期は未定としながらも、「デバイス分野」や「イメージング分野」についても、分社化を進めていく方針を明らかにした。
分社化の推進を語る平井一夫・代表執行役社長兼CEO
___page___黒転が見込まれるテレビ事業、分社化以降の市場動向は?
テレビ事業の分社化から半年が経過したが、その影響は国内市場にどう出ているのか。家電量販店などの実売データを集計する「BCNランキング」で算出した販売台数シェアをみると、同社が注力している40型以上の液晶テレビの販売台数シェアは上昇している。14年第2四半期(2014年4-6月)は23.1%だった販売台数シェアが、分社化後の第3四半期(2014年7-9月)では24.4%に上昇。さらに、第4四半期(2014年10-12月)では29.6%と、さらにシェアを伸ばした。33.3%のシェアでトップを走るシャープの背中が見えてきた。
しかし、このシェアの拡大は、平均単価の下落によるところも大きい。12年第3四半期(2012年7-9月)以降、ソニーの平均単価は、全体に比べて1万円以上上回る水準で推移。13年の第4四半期(2013年10-12月)では5万6千円も全体を上回っているものの、シェアは15.7%にとどまっていた。以後、4Kテレビの拡大がけん引し、シェアを上げながら高い平均単価を維持していた。ところが、4Kテレビの価格競争が激化するにつれ、価格差は縮小している。14年第4四半期では、平均単価の差が1万円を切るまで下がってきている。
分社化を契機として、テレビ事業が黒字化する公算が高まっているが、収益を確保しながら、台数と価格のバランスをどう取っていくかは、依然大きな課題といえそうだ。
分社化するビデオ&サウンド事業の現状とその背景
一方、分社化が発表された「ビデオ&サウンド事業」について、国内市場の現状はどうなのか。まずはウォークマンとiPodがぶつかる携帯オーディオ。ここはソニーとアップルの寡占市場で、このところソニーが過半数を占める状況が続いている。直近の14年第4四半期では、ソニーのシェアは51.3%だった。
逆に平均単価はアップルが高い。一時6000円以上も差が開いた時期があったものの、このところのハイレゾ製品が寄与し、ソニーの平均単価が上昇、14年第4四半期ではほぼ並んだ。しかし、携帯オーディオ市場自体は、2ケタ台での縮小傾向が続いている。iPhoneを中心とするスマートフォンに押されているのがその要因で、14年第4四半期の全体の販売台数前年同期比は、85.5%にとどまっている。
同じ「ビデオ&サウンド事業」のなかのBDレコーダー市場では、ソニーの存在感はあまり大きくない。平均単価は全体を若干上回るにすぎず、販売台数シェアも2位と4位を行ったり来たりしている状態だ。14年第4四半期の販売台数シェアは20.3%と3位に甘んじている。ただし市場全体は、底打ちがみえてきたテレビと歩調を合わせるように徐々に回復し始めている。14年第4四半期の販売台数前年同期比は、102.2%とわずかながら前年同期を上回った。
同社が安定収益領域と位置付けている「ビデオ&サウンド事業」の現状は、必ずしもいいとはいえない。平井社長の言う「ユーザーに感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する」製品を、どれだけ世に送り出すことができるかが、分社化後の成果を大きく左右することになるだろう。(BCN・道越一郎)