ニコン、中国できめ細かなマーケティングを展開、4級都市までを対象に
【中国・上海発】世界的にコンパクトデジタルカメラ市場が縮小に向かうなかで、レンズ交換型や高級コンパクトの存在感が大きくなってきている。この傾向は中国でも同じで、二極化の動きが進んでいるようだ。こうした市場の変化に合わせて、ニコンは中国でどのような戦略を展開していくのか。
中国市場でも、2012年夏頃からコンパクトカメラの市場が縮小し始め、カメラ市場全体も縮小傾向にある。しかし、ニコンイメージング中国の北端秀行・薫事副総経理は、「ミラーレスを含むレンズ交換型やコンパクトでも、センササイズが大きいいわゆる高級コンパクトや高ズーム倍率の製品は伸びており、二極化が進んでいる」と語る。特にミラーレス一眼はレンズ交換型の2割を超えるまでに拡大しており、「前年比で倍増の勢い」だという。
一方で、一番落ちているのはズーム倍率5倍前後の製品で、これが市場全体の縮小につながっている。「やはりスマートフォンの影響は大きい。今年、中国のスマートフォン市場は2億台に拡大し、アメリカを抜いて世界一になるといわれている。中国の都市人口が5億だとすると、3人に1人以上が持っている計算で、上海だと10人に8人が使っている印象だ」。そこで、スマートフォンでは撮れない写真を撮ることができるカメラが生き残ることになる。暗い場所での撮影に強い製品や、15倍以上の高倍率の光学ズームを搭載した製品だ。「1500元あたり、すなわち2万円台後半の製品の売り上げは落ちていない。世界でも同じような流れだと思う」。
ニコンはいま、交換レンズタイプのプロモーションに特に力を入れている。「一眼レフは、まだまだ拡大の余地が大きい」(北端薫事副総経理)からだ。また、中国のミラーレス市場では、トップ5機種ほどが圧倒的なシェアをもっているという。「上位はソニー、ニコン、サムスンで、約7割のシェアを占める。オリンパス、パナソニックはウェブ中心の展開」だという。コンパクトが伸びていた頃は、テレビCMなどのマス広告の効果が高かったが、中心が高価格帯製品にシフトしてきたことで、よりきめ細かなマーケティングが必要になってきたようだ。
ニコンは、大都市だけでなく、これから発展が見込まれる内陸部の都市にもブランドを浸透させるために、この6月からキャラバンを開始した。中国全土の1級から3級都市、110都市を2tトラックで週末に巡回する。各地にある家電製品やパソコンなどを扱うショッピングビル「電脳城」や家電量販店にトラックを横づけして、ニコン製品に実際に触れて確かめてもらおうという趣向だ。また、写真の撮り方などを指南するセミナーを要所要所で開催。さらに、電脳城もほとんどない4級都市、全国80か所では、百貨店などの一角を使ってタッチアンドトライのコーナーを展開する。
中国の店頭では、なかなか実機に触れる機会が少ない。北端薫事副総経理によれば、「田舎の町にもニコンが来たということで、ディーラーにも消費者にも喜ばれている。日本と違って、来場者は20代から40代の若い人が多い」そうだ。「キャラバンは8月でいったん区切り、販売に忙しい9月の国慶節商戦の間は休止。商戦期の合間となる10月から12月に再び展開する」という計画だ。キャラバンを行った都市では、週末にふだんの3倍近くを売り上げるなど、確実に効果は出ているようだ。
もう一つの試みが、昨年12月に上海のブランドストリートである南京西路にオープンしたショールーム「尼康影像天地」だ。1階と2階の計400m2で展開するモダンな展示スペースで、1階が製品展示、2階がサービスセンターというつくりになっている。白と黒を基調にしたシックなデザインで、ニコン製品の高級感が引き立つ。
ショールームの責任者を務める唐音之高級経理が、「来場者が以前の5倍になる日もある」というほど評判は上々。日本の新宿や大阪のショールームと同じ施工会社に依頼した店内は落ち着いていて、高級感は日本のショールームに引けを取らない。圧巻は、階段の吹き抜けにしつらえられたガラスショーケース。ここに歴代のニコンの名機が飾られている。それら一つひとつを見ていくだけでも楽しい。北端薫事副総経理は、「ここが一番こだわった部分」と説明してくれた。ショールームでは、週末を中心にプロカメラマンを招いた写真講習会などを開催して、写真文化の発信拠点としても機能している。(BCN・道越一郎)
コンパクトのシュリンクで変わる市場構造
中国市場でも、2012年夏頃からコンパクトカメラの市場が縮小し始め、カメラ市場全体も縮小傾向にある。しかし、ニコンイメージング中国の北端秀行・薫事副総経理は、「ミラーレスを含むレンズ交換型やコンパクトでも、センササイズが大きいいわゆる高級コンパクトや高ズーム倍率の製品は伸びており、二極化が進んでいる」と語る。特にミラーレス一眼はレンズ交換型の2割を超えるまでに拡大しており、「前年比で倍増の勢い」だという。
ニコンイメージング中国の北端秀行薫事副総経理
一方で、一番落ちているのはズーム倍率5倍前後の製品で、これが市場全体の縮小につながっている。「やはりスマートフォンの影響は大きい。今年、中国のスマートフォン市場は2億台に拡大し、アメリカを抜いて世界一になるといわれている。中国の都市人口が5億だとすると、3人に1人以上が持っている計算で、上海だと10人に8人が使っている印象だ」。そこで、スマートフォンでは撮れない写真を撮ることができるカメラが生き残ることになる。暗い場所での撮影に強い製品や、15倍以上の高倍率の光学ズームを搭載した製品だ。「1500元あたり、すなわち2万円台後半の製品の売り上げは落ちていない。世界でも同じような流れだと思う」。
ニコンはいま、交換レンズタイプのプロモーションに特に力を入れている。「一眼レフは、まだまだ拡大の余地が大きい」(北端薫事副総経理)からだ。また、中国のミラーレス市場では、トップ5機種ほどが圧倒的なシェアをもっているという。「上位はソニー、ニコン、サムスンで、約7割のシェアを占める。オリンパス、パナソニックはウェブ中心の展開」だという。コンパクトが伸びていた頃は、テレビCMなどのマス広告の効果が高かったが、中心が高価格帯製品にシフトしてきたことで、よりきめ細かなマーケティングが必要になってきたようだ。
キャラバンとタッチアンドトライを約200都市に展開
ニコンは、大都市だけでなく、これから発展が見込まれる内陸部の都市にもブランドを浸透させるために、この6月からキャラバンを開始した。中国全土の1級から3級都市、110都市を2tトラックで週末に巡回する。各地にある家電製品やパソコンなどを扱うショッピングビル「電脳城」や家電量販店にトラックを横づけして、ニコン製品に実際に触れて確かめてもらおうという趣向だ。また、写真の撮り方などを指南するセミナーを要所要所で開催。さらに、電脳城もほとんどない4級都市、全国80か所では、百貨店などの一角を使ってタッチアンドトライのコーナーを展開する。
中国の店頭では、なかなか実機に触れる機会が少ない。北端薫事副総経理によれば、「田舎の町にもニコンが来たということで、ディーラーにも消費者にも喜ばれている。日本と違って、来場者は20代から40代の若い人が多い」そうだ。「キャラバンは8月でいったん区切り、販売に忙しい9月の国慶節商戦の間は休止。商戦期の合間となる10月から12月に再び展開する」という計画だ。キャラバンを行った都市では、週末にふだんの3倍近くを売り上げるなど、確実に効果は出ているようだ。
ブランド街「南京西路」にショールーム開設
もう一つの試みが、昨年12月に上海のブランドストリートである南京西路にオープンしたショールーム「尼康影像天地」だ。1階と2階の計400m2で展開するモダンな展示スペースで、1階が製品展示、2階がサービスセンターというつくりになっている。白と黒を基調にしたシックなデザインで、ニコン製品の高級感が引き立つ。
上海のブランドストリート、南京西路のショールーム「尼康影像天地」
ガラス張りで明るく、白と黒を基調に高級感に溢れる。もちろん実機を自由に試すことができる
ショールームの責任者を務める唐音之高級経理が、「来場者が以前の5倍になる日もある」というほど評判は上々。日本の新宿や大阪のショールームと同じ施工会社に依頼した店内は落ち着いていて、高級感は日本のショールームに引けを取らない。圧巻は、階段の吹き抜けにしつらえられたガラスショーケース。ここに歴代のニコンの名機が飾られている。それら一つひとつを見ていくだけでも楽しい。北端薫事副総経理は、「ここが一番こだわった部分」と説明してくれた。ショールームでは、週末を中心にプロカメラマンを招いた写真講習会などを開催して、写真文化の発信拠点としても機能している。(BCN・道越一郎)
歴代の名機がずらり揃ったガラスショーケース。ニコンの歴史がここで俯瞰できる