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東芝の「Z8X」が4Kテレビ時代を切り開く!? AV評論家の小原由夫さんに聞く

インタビュー

2013/06/28 17:25

 東芝、ソニー、シャープと、フルHDの4倍の解像度をもつ「4Kテレビ」が続々と登場している。テレビだけでなく、PCのディスプレイやプロジェクターなどでも4K化が進みつつある。このまま4Kテレビの時代がやって来るのか? AV評論家の小原由夫さんに聞いた。

AV評論家の小原由夫さん

4Kテレビの市場について解説してくれたAV評論家の小原由夫さん

大画面テレビは間違いなく4K化が進む



――いま、フルHDの4倍の解像度、3840×2160ピクセルの4Kテレビが注目を集めています。家電量販店などのテレビ売り場でも、4Kテレビを前面に打ち出してアピールしています。4Kテレビの現状はどうなっているのでしょうか?

小原 2012年が4Kテレビの離陸の年で、今年は徐々に高度を上げていっている年、といえると思います。いわば、巡航高度に向けて加速しつつある状況ですね。日本のメーカーだけでなく、LGやサムスン電子なども4Kテレビを発表・発売していますから、ワールドワイドで見ても大画面テレビは間違いなく4K化の道を歩み始めています。

――家電量販店の実売データを集計している「BCNランキング」では、50V型以上の大型モデルの伸びがとても顕著です。4K化が進んでいくのはこの50V型以上の大画面テレビといわれていますが、どうしてですか?

小原 現状のフルHDの解像度は、50V型以上の大画面テレビでは画素数的に限界にきています。どれだけ技術を駆使してもフルHDのまま高精細化するのは難しいでしょう。画面が大きくなればなるほど、画素が足りずに映像は荒くなってしまいます。

 現在、42V型や48V型のテレビを見ている人で、次に買い替えるときにもう少し大きな画面のテレビにしたい人は少なくないはずです。でも視聴距離は変えたくない。すると映像の粗さがより目立ってしまいます。そこで、視聴距離はこれまでと同じで目に見えてすぐれた画質であることが実感できる4Kが、50V型以上で採り入れられているのです。

アップコンバートでも4Kは画質の差が歴然



――地上波放送やブルーレイディスク(BD)のフルHD映像でも4Kテレビの画質のすばらしさは楽しめるものなのでしょうか?

小原 現在の地上デジタル放送はフルHDに満たない解像度で放送されていますが、4Kテレビで見るとそのアップコンバート機能によって、高画質化が図れます。フルHDテレビと見比べると、明らかに画質の違いがわかりますよ。

 BDソフトも同様です。いまや映画は4Kカメラで撮影した作品が増えています。さらにBDソフトの原盤を製作する際に4K以上で行うケースも増えています。高解像度でマスタリングされた作品は、BDソフトではフルHD画質になっていても映像のディテールが情報としては残っているので、アップコンバート機能を使って本来の画質に近づけることができます。4Kテレビで見てみると感動しますよ。舞い上がる砂煙の粒や、エキストラ一人ひとりの表情まで確認できますし、肌の質感や着衣の素材感などのリアルさには本当に驚かされます。

――フルHDを4Kにアップコンバートして、高精細で美しい感動映像を再現するうえで、鍵となる技術は何でしょうか?

小原 入力画像の解像度を上げ、より美しく高解像度の映像を再現する超解像技術と、ノイズ除去に関する技術です。その2点で一日の長があるのが、東芝ですね。東芝の超解像技術は、デジタル技術でより見栄えのする映像をつくり出すのではなく、撮影時のオリジナル映像を忠実に再現することを目標に開発されています。その技術が4Kへのアップコンバートでは非常に有効に働きます。東芝が他社に先駆けていち早く4Kテレビ「55X3」を発売できたのも、これまで培ってきた超解像技術があったからこそだと思います。

圧縮の際に失われた情報を復元する超解像技術が4Kテレビの要



――6月中旬に東芝の最新の4Kテレビ「Z8X」シリーズが発売されました。他社の4Kテレビと比べて注目のポイントはどのようなところでしょうか?

小原 やはり、新映像エンジンと高精細4Kパネルによる「シネマ4Kシステム」でしょう。「シネマ」とついていますが、映画だけに効果があるわけではないみたいですよ(笑)。 

最新の4Kテレビ「Z8X」シリーズ

最新の4Kテレビ「Z8X」シリーズ

 特に、新映像エンジン「レグザエンジンCEVO 4K」の処理能力の高さは圧倒的です。このエンジンはフルHDから4K映像へアップコンバートする際、フルHDの段階と、それを4Kに変換する段階と、2段階に分けて超解像処理を行っています。ここまで手の込んだ処理を行っているのは、東芝だけですね。そしてそれが大画面でも繊細な映像を実現しているのです。

 デジタル放送に出やすいノイズを抑制する「デジタル放送アップコンバートノイズクリア」の効果もすばらしく、放送コンテンツを4Kにアップコンバートした場合でも、映像全体の鮮明さが違います。私が現時点で、4Kテレビに特に重要だと考えている超解像技術とノイズ除去技術が、高い次元で結実しているのが、東芝の「シネマ4Kシステム」といえるでしょう。 

レグザエンジンCEVO 4K

高い処理性能を誇る新映像エンジン「レグザエンジンCEVO 4K」

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「4Kテレビ」でも録画機能の先進性は重要



――各メーカーの4Kテレビを比べたときに、画質のほかに気になる機能、性能はありますか?

小原 私が思うところでは、録画機能ですね。外付けHDDを用意して、テレビ単体で番組を録画・再生して楽しむ視聴スタイルが一般的になってきました。もちろん、4Kテレビでも同じように録画機能を利用したいユーザーは多いと思います。録画機能でも東芝の「Z8X」シリーズはすぐれていますね。接続した別売の外付けHDDに複数のチャンネルの番組を丸ごと録画する「タイムシフトマシン」(※1)を搭載しています。

 私も知人などから「あの番組、なかなかよかったけど、見た?」と尋ねられたり、放送後に番組内のあるシーンやある発言を巡って、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などで大きな話題になったりすることがよくあります。番組を見ていないと話についていけず、悔しい思いをするのですが(笑)。

 「タイムシフトマシン」(※2)があると丸ごと録画したなかから後々見直すことができるので安心です。私自身、「タイムシフトマシン」を搭載した「CELL レグザ 55X2」を購入してから、その恩恵を大いに受けています。

――複数チャンネルをまるごと何日分も録画できる機能も、東芝が先駆けですよね?

小原 東芝が先鞭をつけて、他社が追随したかたちですね。そして東芝はさらに先を行っています。丸ごと録画した番組を溜めるだけではなく、効率的に探す機能を搭載した。それが「ざんまいプレイ」とレグザクラウドサービス「Time On」です。

 「ざんまいプレイ」は、いつも視聴している番組の傾向などを解析して「タイムシフトマシン」で録画した番組のなかからおすすめの番組を提案してくれます。例えば「あなたにおすすめ番組」は興味がありそうな番組を、「急上昇ワード」はネット上で話題の用語や人物に関係する番組を、「みんなのおすすめ番組」は全国のユーザーが録画予約している人気番組をピックアップしてくれます。自分に興味、関心のありそうな番組から話題の番組までをピックアップしてくれますので、もう「見逃した!」と悔しい思いをすることはなくなりますね。

 さらに「Time On」は、番組単位ではなくシーン単位で抜き出すことができます。例えば好きなアーティストだけ見たい場合は、音楽番組のなかから好きなアーティストが出演しているシーンだけを抜き出して再生することができます。非常に効率よく見たいシーンを視聴することができるわけです。こうした録画した番組を効率よく視聴できる機能の開発に、東芝はずいぶん力を注いでいます。(※3)

 それから、一時保管した番組を一覧で表示する「過去番組表」もよくできていると思います。ふつうの番組表では、現在から1週間先の未来に向けての番組が一覧できますが、1分前の過去は消えて表示できません。それが「過去番組表」では、まさにその消えた瞬間から過去に向かって一覧できるのです。私も「タイムシフトマシン」の番組を見ているときは、録画した番組を再生して見ているという感覚はまったくなく、あたかもリアルタイムで放送中の番組にチャンネルを合わせている感覚なんです。 

「タイムシフトマシン」をさらに使いやすくする「過去番組表」(左)

「タイムシフトマシン」をさらに使いやすくする「過去番組表」(左)

4Kテレビでいち早く幸せを実感してほしい



――ところで、多くの人は、4Kテレビはまだ高嶺の花、プレミアムな存在だと思っているようですが……。

小原 「Z8X」シリーズのなかでも、58V型は1インチ1万円を切っています。いま、50V型のフルHDテレビの市場価格は20万~30万円台でしょうか。より大きく高精細な58V型の4Kテレビが店頭で50万円を切る価格で手に入ると考えれば、決して高くはないと思います。

 さらに、地上アナログ放送やアナログBS放送を見ていたテレビから、フルHDのデジタル放送が見られるテレビに買い替えたときのステップアップに比べて、フルHDから4Kへのステップアップはもっと感動が大きい、と私は感じています。それでいて、価格の上がり幅はアナログからデジタルのときよりも小さいのです。

 50V型以上の大画面テレビで少しでも画質にこだわって視聴したいのならばこれからは4Kテレビでしょう。4K時代はもう到来していて、画面の大型化、映像の高精細化の波にいち早く乗ることは、間違いなく幸せなことだと思いますね。「タイムシフトマシン」、「ざんまいプレイ」、レグザクラウドサービス「Time on」といったレグザ独自の機能もテレビ番組の視聴を一段と便利にしてくれるはずです。

――4Kのすばらしさがよくわかりました。ありがとうございました。


(※1)タイムシフトマシン機能のシステムメンテナンス用に設定した時間は一時保管が一時中断されます。
(※2)タイムシフトマシン機能などの利用には別売のタイムシフトマシン対応USB接続の外付けHDDが必要です。
(※3)各種機能・サービスには制限や制約があります。詳細はHPなどで確認ください。


小原由夫(おばら よしお)
理工系大学を卒業後、測定器エンジニア、雑誌編集者を経て、オーディオ&ビジュアル評論家に。約30畳の仕事場兼シアタールームに特注の200インチスクリーンと5台のスピーカーを組み合わせたマルチチャンネル再生システムを置き、業界きっての実践派として活動する。主な執筆誌は、『HiVi』『ステレオサウンド』『ホームシアター』(以上ステレオサウンド社)、『CDジャーナル』(音楽出版社)など。


(文・写真 フリーライター・榎木秋彦)




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