同じ「iPhone 4S」、ドコが違うの? <3>便利な公衆無線LANサービス スポット数はともに拡大中!
同じ「iPhone 4S」でも、ソフトバンクモバイル(SB)版とKDDI(au)版のどちらにするか、どの容量・色にするか、決め切れずに悩み続けている人もいるだろう。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、発売から2012年2月5日までの「iPhone 4S」の累計販売台数をキャリアごとに集計すると、ソフトバンクモバイルが61.7%を占め、ほぼ6対4の比率で、いまのところソフトバンクモバイルが優勢だ。今回は、第1回の<a href="http://bcnranking.jp/news/1112/111201_21532.html">「海外」</a>、第2回の<a href="http://bcnranking.jp/news/1112/111229_21737.html">「絵文字とメール」</a>とは趣向を変え、従来型の携帯電話よりもパケット通信量が多いスマートフォンの普及で、ひっ迫しつつある3Gネットワークからトラフィックを逃す「オフロード」として、両キャリアが積極的に展開している「公衆無線LANサービス」にスポットを当てた。
公衆無線LANサービスとは、空港、駅、飲食店、コンビニ、ホテルなど、外出先のさまざまな場所(Wi-Fiスポット)から無線LAN(Wi-Fi)を利用してインターネットに接続できるサービスのこと。単独契約/オプション、有料/無料、登録制/登録不要(完全フリー)など、さまざまなタイプのサービスがあるが、今回は、ソフトバンクモバイルが提供する「ソフトバンクWi-Fiスポット」と、KDDIが提供する「au Wi-Fi SPOT」のサービス全般と、iPhone、iPad 3GモデルなどiOS端末での使い勝手を比較した。
スマートフォンで無線LANを利用するには、セキュリティ設定がかかっていない場合を除き、初回接続時に必ずID・パスワードの入力が必要だ。しかし、「ソフトバンクWi-Fiスポット」「au Wi-Fi SPOT」をiPhoneで利用する場合は、どちらも事前にプロファイルをインストールするだけで設定が完了し、iPhoneの「Wi-Fi」の設定をオン(有効)にした状態でWi-Fiスポットに行くと、自動的に3GからWi-Fiに切り替わる。面倒なID・パスワードの入力は要らない。
ソフトバンクモバイルが、携帯電話に無線LAN機能を搭載し、自宅や公衆無線LANサービスを利用できるようにするサービス「ケータイWi-Fi」とともに、独自の公衆無線LANサービス「ソフトバンクWi-Fiスポット」を開始したのは、2009年11月。性能が向上した「iPhone 3GS」が同年6月に発売になり、日本でもiPhone人気が本格的に高まりつつあった頃だ。「無線LAN」も「公衆無線LANサービス」もそれ以前から存在していたが、PCや携帯ゲーム機向けというイメージが強かった。それを、携帯電話・スマートフォンと組み合わせ、「公衆無線LANが利用できる場所=Wi-Fiスポット」という呼び名を定着させた最大の功労者は、スポット数の拡大に力を入れ、iPhoneやiPadなど、アップルの注目製品の発売のたびに、オプションサービスの一つとして「ソフトバンクWi-Fiスポット」の存在をアピールしたソフトバンクモバイルと言ってもいいだろう。
現在、SBのiPhoneの場合、フラット型のパケット定額サービス加入者は、無料で「ソフトバンクWi-Fiスポット」を利用でき、2段階型パケット定額サービスの契約者は2013年3月末まで実施している2年間無料キャンペーンに申し込めば、申し込みから2年間無料で使える。通常料金は月額490円だ。
一方、KDDIは、パケット定額プランに加入しているスマートフォンユーザー限定サービスとして、「au Wi-Fi SPOT」の名称で、昨年6月30日に同様の公衆無線LANサービスを開始した。後発だけに、高度なセキュリティ通信や、Wi-Fiと3Gを電波の強さに応じて自動的に切り替える仕組みを導入するなど、初心者でも使えるよう工夫している。対象者なら無料で、追加費用はかからない。しかし、「iPhone 4S」は当初、「au Wi-Fi SPOT」を利用できず、発売から2か月ほどたった昨年12月20日から利用できるようになった。両者とも、基本的に無料で使うことができ、料金面の差はない。
提携サービスを含めたWi-Fiスポットの総数(公称数)は、「ソフトバンクWi-Fiスポット」が約20万(2012年2月2日時点)、「au Wi-Fi SPOT」が6万(2011年12月28日時点、3月末までに約10万に拡大予定)で、「ソフトバンクWi-Fiスポット」のほうが多い。単純に考えると、スポットの数が多ければ多いほど利用できる機会が多く、実用性は高いといえる。利用できるスポットは、それぞれウェブサイト上で探すことができ、サービス提供中(予定を含む)の企業・ブランド一覧も掲載している。「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、リスト形式のほかに、わかりやすく地図からも探せるようになっており、iPhoneとAndroid搭載スマートフォンでは、無料で提供しているアプリ「ふらっと案内」を利用すると、現在地から近くのWi-Fiスポットを探すこともできる。
独自の特徴として、「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、東京メトロや都営地下鉄など、地下鉄の駅構内でのサービスに力を入れている。ソフトバンクモバイルの広報によると、大阪市営地下鉄、名古屋市営地下鉄、福岡市営地下鉄など、370の駅構内でサービスを提供しているそうだ。該当する各エリアで地下鉄に乗る機会が多い人にとっては便利だろう。KDDI側も、今年8月までに横浜市営地下鉄の全40駅の駅構内で「au Wi-Fi SPOT」を提供すると発表しており、目指す方向は同じようだ。
とはいえ、Wi-Fiスポットの利便性は、利用する個人の行動パターンで違ってくる。私の場合は、ほとんど行かない居酒屋やラーメン屋のチェーン店より、マクドナルド、スターバックス、タリーズなどのファーストフードやカフェ・レストランが充実しているほうがうれしい。さらに、お気に入りの個人経営の飲食店や日帰り温泉施設、病院・診療所、セミナー・イベント会場など、「待たされる場所」「待ち合わせに使う場所」「長時間ずっといる場所」で利用できると便利だ。
その点、「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、例として挙げた全国チェーンのカフェ・レストランはすでに対応済みで、実際に手持ちのiPad Wi-Fi + 3Gモデルで何度か利用したことがある。また、自宅(神奈川県)周辺の利用可能スポットを検索したところ、地元住民しか知らないような個人経営の居酒屋・カフェや地元限定チェーン店にも設置されていることがわかった。その数は非常に多く、いつの間に増えたのかと驚いた。また、ソフトバンクモバイルは、ウェブサイト上に「Wi-Fiスポット設置要望フォーム」を設け、ユーザーからの要望を受け付けており、地方の店舗や個人経営店までカバーし、「スポット数の拡大」に取り組む姿勢は評価したい。
実際には、Wi-Fiスポット導入店舗の周辺にある店・施設や道路上などでも利用でき、検索結果はあまりあてにはならないが、試しに自宅や勤務先、よく行く場所などの周辺をそれぞれ調べてみよう。そうすれば、現時点ではどちらが充実しているか、判断できるだろう。なお、KDDIの広報によると、「au Wi-Fi SPOT」も、全国チェーンの店舗に加え、個人経営の店舗に順次設置を進めているそうだ。利用可能スポットの状況は、刻々と変わっていく。
また、KDDIは、3月1日から「au Wi-Fi SPOT」を利用できる対象機器をノートPCやタブレット端末などの無線LAN対応機器(一部機器を除く)に拡大し、同時に利用エリアを海外に拡大する予定。利便性向上の一環として、ソフトバンクモバイルにも、ぜひ追いかけてほしいところだ。
両キャリアとも、競うようにWi-Fiスポット数の拡大に力を入れ、数の点ではどんどん充実していく公衆無線LANサービス。しかし、BCNのスマートフォンユーザーにヒアリングしたところ、積極的に使っている人と、たまにしか使わない、まったく使っていない人に分かれた。なかでも、「一度も使ったことがない」と答えた人に理由をたずねると、「設定方法がわからない」「3G回線の速度で十分。必要性を感じない」など、個人的には信じ難い答えが返ってきた。また、さまざまな公衆無線LANサービスのWi-Fiスポットが乱立し、無線LANの電波をキャッチすると、Wi-Fi接続先の確認画面が表示されるのが面倒なので、「外出中は常にWi-Fiをオフにしている」と答えた人もいた。積極的に使っている人でも、無線LANの電波が弱い場合、3GからWi-Fi(無線LAN)に切り替わったとたんにインターネットに接続できなくなったり、速度が遅くなったりすることがあり、使いづらいと不満の声を漏らしていた。
無線LANは、そもそも一定のエリア内で利用するためのワイヤレス技術。こうした技術上の制約や端末の仕様から、現状は使いづらい点はあるものの、iPhoneをはじめ、無料で利用できる条件に該当するスマートフォンユーザーは、こうしたキャリアが提供する公衆無線LANサービスを活用してほしいと思う。特に、一度も使ったことがなく、日頃、3G回線での通信速度が遅いと不満を感じている方は、キャリアのウェブサイトで設定方法を確認し、今すぐ設定しよう。まずは使ってみて、つながらない、身近に利用可能スポットがないなど、不便な点があったら、キャリアに伝えて改善を図ってもらう。インターネット上では、すでに「数」より「質」、具体的には、無線LANの電波の強さや安定感を求める声が出ている。こうしたサイクルがうまく回れば、公衆無線LANサービスは、キャリア選びを左右する重要なポイントになるはずだ。(BCN・嵯峨野 芙美)
■auの「iPhone 4S」での「au Wi-Fi SPOT」の設定画面
・「au Wi-Fi SPOT」の設定方法(iPhone 4S)
■ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」での「ソフトバンクWi-Fiスポット」の設定画面
・「ソフトバンクWi-Fiスポット」の設定方法(iPhoneでの詳細な設定方法)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
CMでおなじみの「お父さん犬」のイラストを描いた「ソフトバンクWi-Fiスポット」と、オレンジで無線LANマークを描いた「au Wi-Fi SPOT」のステッカー
公衆無線LANサービス、iPhoneなら簡単な事前設定だけでOK
公衆無線LANサービスとは、空港、駅、飲食店、コンビニ、ホテルなど、外出先のさまざまな場所(Wi-Fiスポット)から無線LAN(Wi-Fi)を利用してインターネットに接続できるサービスのこと。単独契約/オプション、有料/無料、登録制/登録不要(完全フリー)など、さまざまなタイプのサービスがあるが、今回は、ソフトバンクモバイルが提供する「ソフトバンクWi-Fiスポット」と、KDDIが提供する「au Wi-Fi SPOT」のサービス全般と、iPhone、iPad 3GモデルなどiOS端末での使い勝手を比較した。
実機テストに使用したSBのiPhone 4S(左下)、auのiPhone 4S(右下)、iPad 2 Wi-Fi + 3Gモデル(上)
スマートフォンで無線LANを利用するには、セキュリティ設定がかかっていない場合を除き、初回接続時に必ずID・パスワードの入力が必要だ。しかし、「ソフトバンクWi-Fiスポット」「au Wi-Fi SPOT」をiPhoneで利用する場合は、どちらも事前にプロファイルをインストールするだけで設定が完了し、iPhoneの「Wi-Fi」の設定をオン(有効)にした状態でWi-Fiスポットに行くと、自動的に3GからWi-Fiに切り替わる。面倒なID・パスワードの入力は要らない。
初めて訪れた場所で一瞬表示される「ソフトバンクWi-Fiスポット」のログイン画面(左上)と、「ソフトバンクWi-Fiスポット」(SSID:0001softbank)に接続した状態の「Wi-Fi」設定画面(右下)。「au Wi-Fi SPOT」の場合、ログイン画面は表示されず、自動的に3GからWi-Fiに切り替わるのでWi-Fiを意識せずに使える
ソフトバンクモバイルが、携帯電話に無線LAN機能を搭載し、自宅や公衆無線LANサービスを利用できるようにするサービス「ケータイWi-Fi」とともに、独自の公衆無線LANサービス「ソフトバンクWi-Fiスポット」を開始したのは、2009年11月。性能が向上した「iPhone 3GS」が同年6月に発売になり、日本でもiPhone人気が本格的に高まりつつあった頃だ。「無線LAN」も「公衆無線LANサービス」もそれ以前から存在していたが、PCや携帯ゲーム機向けというイメージが強かった。それを、携帯電話・スマートフォンと組み合わせ、「公衆無線LANが利用できる場所=Wi-Fiスポット」という呼び名を定着させた最大の功労者は、スポット数の拡大に力を入れ、iPhoneやiPadなど、アップルの注目製品の発売のたびに、オプションサービスの一つとして「ソフトバンクWi-Fiスポット」の存在をアピールしたソフトバンクモバイルと言ってもいいだろう。
現在、SBのiPhoneの場合、フラット型のパケット定額サービス加入者は、無料で「ソフトバンクWi-Fiスポット」を利用でき、2段階型パケット定額サービスの契約者は2013年3月末まで実施している2年間無料キャンペーンに申し込めば、申し込みから2年間無料で使える。通常料金は月額490円だ。
一方、KDDIは、パケット定額プランに加入しているスマートフォンユーザー限定サービスとして、「au Wi-Fi SPOT」の名称で、昨年6月30日に同様の公衆無線LANサービスを開始した。後発だけに、高度なセキュリティ通信や、Wi-Fiと3Gを電波の強さに応じて自動的に切り替える仕組みを導入するなど、初心者でも使えるよう工夫している。対象者なら無料で、追加費用はかからない。しかし、「iPhone 4S」は当初、「au Wi-Fi SPOT」を利用できず、発売から2か月ほどたった昨年12月20日から利用できるようになった。両者とも、基本的に無料で使うことができ、料金面の差はない。
サービス名 | ソフトバンクWi-Fiスポット | au Wi-Fi SPOT |
提携する公衆無線LANサービス(利用可能なWi-Fiスポット) | BBモバイルポイント、livedoor Wireless、Wi2 | Wi-Fiスクエア、UQ Wi-Fi |
利用可能なSSID(ESSID) | 0001softbank、FON、mobilepoint | au_Wi-Fi、Wi2、Wi2_club、Wi2premium、Wi2premium_club、UQ_Wi-Fi、wi-fi_square |
開始時期 | 2009年11月 | 2011年6月 |
対象機器 | iPhone、iPad、SoftBank スマートフォン(Xシリーズを含む)、「ケータイWi-Fi」に対応するSoftBank 3G携帯電話 | auのスマートフォン(Android、iPhone 4S) ※3月以降、Windows Phone搭載スマートフォン、他の無線LAN対応機器(一部除く)にも拡大予定(「au ID」を保有して「au Wi-Fi接続ツール」を利用した場合のみ) |
利用料金(iPhone 4Sの場合) | フラット型のパケット定額サービス加入者:無料 2段階型定額サービス加入者:2年間無料(キャンペーン申込時)、以降は月額490円 | 2013年11月30日まで契約プランによらず無料(通常は、フラット型のパケット定額サービス加入者のみ無料) |
Wi-Fiスポット数(公称) | 20万以上 | 6万以上 ※3月末までに約10万スポットに拡大予定 |
主な利用可能スポット(飲食店) | マクドナルド、スターバックスコーヒー、コメダ珈琲店、他 | 甘太郎、HUB(ハブ)、リンガーハット、他 |
主な利用可能スポット(飲食店以外) | 東京メトロ、都営地下鉄、ファミリーマート、ミニストップ、エイチ・アイ・エス、NEXCO東日本/西日本のサービスエリア・パーキングエリア、他 | auショップ、横浜市営地下鉄、TSUTAYA、トヨタ販売店、ベスト電器、他 |
iPhoneでの設定方法 | 事前にプロファイルをインストールする(SafariのブックマークからMySoftBankにアクセスする) | 事前にプロファイルをインストールする(Safariのブックマーク「auお客さまサポート」から設定ページにアクセスする) |
特徴・違い | ・iPhone、スマートフォンで現在地からスポットを探せる ・Wi-Fiスポット設置要望フォームを設けている ・全国チェーンではない、個人経営の店舗にも設置が進んでいる | ・高セキュリティ(WPA2-PSK)対応 ・電波の強さに応じてWi-Fiと3Gを自動的に切り替える ・Android搭載スマートフォンでは、ウィジェットの「au Wi-Fi 接続ツール」をタップするだけで設定できる |
Wi-Fiスポット検索アプリ | あり(ふらっと案内) | iPhone向けアプリはなし |
※すべて2012年2月7日時点の情報です(BCN調べ)。
※主な利用可能スポットは、それぞれのウェブサイトに掲載されている「主な利用可能スポット」から抜粋したものです。実際の利用可能店舗とは異なる可能性があります。ご利用の際は、事前にサービスエリア検索ページ等でご確認ください。
※主な利用可能スポットは、それぞれのウェブサイトに掲載されている「主な利用可能スポット」から抜粋したものです。実際の利用可能店舗とは異なる可能性があります。ご利用の際は、事前にサービスエリア検索ページ等でご確認ください。
スポット数はソフトバンクの勝ち、実用性は地域・行動パターンで人それぞれ
提携サービスを含めたWi-Fiスポットの総数(公称数)は、「ソフトバンクWi-Fiスポット」が約20万(2012年2月2日時点)、「au Wi-Fi SPOT」が6万(2011年12月28日時点、3月末までに約10万に拡大予定)で、「ソフトバンクWi-Fiスポット」のほうが多い。単純に考えると、スポットの数が多ければ多いほど利用できる機会が多く、実用性は高いといえる。利用できるスポットは、それぞれウェブサイト上で探すことができ、サービス提供中(予定を含む)の企業・ブランド一覧も掲載している。「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、リスト形式のほかに、わかりやすく地図からも探せるようになっており、iPhoneとAndroid搭載スマートフォンでは、無料で提供しているアプリ「ふらっと案内」を利用すると、現在地から近くのWi-Fiスポットを探すこともできる。
独自の特徴として、「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、東京メトロや都営地下鉄など、地下鉄の駅構内でのサービスに力を入れている。ソフトバンクモバイルの広報によると、大阪市営地下鉄、名古屋市営地下鉄、福岡市営地下鉄など、370の駅構内でサービスを提供しているそうだ。該当する各エリアで地下鉄に乗る機会が多い人にとっては便利だろう。KDDI側も、今年8月までに横浜市営地下鉄の全40駅の駅構内で「au Wi-Fi SPOT」を提供すると発表しており、目指す方向は同じようだ。
とはいえ、Wi-Fiスポットの利便性は、利用する個人の行動パターンで違ってくる。私の場合は、ほとんど行かない居酒屋やラーメン屋のチェーン店より、マクドナルド、スターバックス、タリーズなどのファーストフードやカフェ・レストランが充実しているほうがうれしい。さらに、お気に入りの個人経営の飲食店や日帰り温泉施設、病院・診療所、セミナー・イベント会場など、「待たされる場所」「待ち合わせに使う場所」「長時間ずっといる場所」で利用できると便利だ。
「ソフトバンクWi-Fiスポット」が利用できる貸会議室に貼られたステッカー(左)と、無線LANルータと思われる機器
その点、「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、例として挙げた全国チェーンのカフェ・レストランはすでに対応済みで、実際に手持ちのiPad Wi-Fi + 3Gモデルで何度か利用したことがある。また、自宅(神奈川県)周辺の利用可能スポットを検索したところ、地元住民しか知らないような個人経営の居酒屋・カフェや地元限定チェーン店にも設置されていることがわかった。その数は非常に多く、いつの間に増えたのかと驚いた。また、ソフトバンクモバイルは、ウェブサイト上に「Wi-Fiスポット設置要望フォーム」を設け、ユーザーからの要望を受け付けており、地方の店舗や個人経営店までカバーし、「スポット数の拡大」に取り組む姿勢は評価したい。
実際には、Wi-Fiスポット導入店舗の周辺にある店・施設や道路上などでも利用でき、検索結果はあまりあてにはならないが、試しに自宅や勤務先、よく行く場所などの周辺をそれぞれ調べてみよう。そうすれば、現時点ではどちらが充実しているか、判断できるだろう。なお、KDDIの広報によると、「au Wi-Fi SPOT」も、全国チェーンの店舗に加え、個人経営の店舗に順次設置を進めているそうだ。利用可能スポットの状況は、刻々と変わっていく。
「地図から探す」で検索した「ソフトバンクWi-Fiスポット」
(地図中心点=JR秋葉原駅前から最寄りの20件)
(地図中心点=JR秋葉原駅前から最寄りの20件)
また、KDDIは、3月1日から「au Wi-Fi SPOT」を利用できる対象機器をノートPCやタブレット端末などの無線LAN対応機器(一部機器を除く)に拡大し、同時に利用エリアを海外に拡大する予定。利便性向上の一環として、ソフトバンクモバイルにも、ぜひ追いかけてほしいところだ。
まずは使ってみよう! 移動中はともかく、長居する場所では「Wi-Fi」をオンに
両キャリアとも、競うようにWi-Fiスポット数の拡大に力を入れ、数の点ではどんどん充実していく公衆無線LANサービス。しかし、BCNのスマートフォンユーザーにヒアリングしたところ、積極的に使っている人と、たまにしか使わない、まったく使っていない人に分かれた。なかでも、「一度も使ったことがない」と答えた人に理由をたずねると、「設定方法がわからない」「3G回線の速度で十分。必要性を感じない」など、個人的には信じ難い答えが返ってきた。また、さまざまな公衆無線LANサービスのWi-Fiスポットが乱立し、無線LANの電波をキャッチすると、Wi-Fi接続先の確認画面が表示されるのが面倒なので、「外出中は常にWi-Fiをオフにしている」と答えた人もいた。積極的に使っている人でも、無線LANの電波が弱い場合、3GからWi-Fi(無線LAN)に切り替わったとたんにインターネットに接続できなくなったり、速度が遅くなったりすることがあり、使いづらいと不満の声を漏らしていた。
iPhoneやiPadでは、無線LANの電波をキャッチすると、自動的に以前に接続したことがあるネットワークにつなぎ、それがない場合は接続先を選択する画面を表示する
無線LANは、そもそも一定のエリア内で利用するためのワイヤレス技術。こうした技術上の制約や端末の仕様から、現状は使いづらい点はあるものの、iPhoneをはじめ、無料で利用できる条件に該当するスマートフォンユーザーは、こうしたキャリアが提供する公衆無線LANサービスを活用してほしいと思う。特に、一度も使ったことがなく、日頃、3G回線での通信速度が遅いと不満を感じている方は、キャリアのウェブサイトで設定方法を確認し、今すぐ設定しよう。まずは使ってみて、つながらない、身近に利用可能スポットがないなど、不便な点があったら、キャリアに伝えて改善を図ってもらう。インターネット上では、すでに「数」より「質」、具体的には、無線LANの電波の強さや安定感を求める声が出ている。こうしたサイクルがうまく回れば、公衆無線LANサービスは、キャリア選びを左右する重要なポイントになるはずだ。(BCN・嵯峨野 芙美)
■auの「iPhone 4S」での「au Wi-Fi SPOT」の設定画面
・「au Wi-Fi SPOT」の設定方法(iPhone 4S)
■ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」での「ソフトバンクWi-Fiスポット」の設定画面
・「ソフトバンクWi-Fiスポット」の設定方法(iPhoneでの詳細な設定方法)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。