イーフロンティア、自宅のテレビが外で楽しめる! 「Slingbox PRO-HD」担当者に聞く販売戦略
イーフロンティアが、映像転送システム「Slingbox PRO-HD」を2月11日に発売した。1月に米国ラスベガスで開催されたデジタル機器の総合展示会「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」で披露し、多くの来場者の注目を集めた製品だ。昨年12月、発売に先駆けて予約を受け付けたところ、予想を上回る注文があったという。なぜ、反響が大きいのか、戦略事業室の中村豪ディレクターに、人気の理由と販売戦略を聞いた。
「Slingbox PRO-HD」は、自宅のテレビやレコーダー、デジタルチューナーに接続するだけで、インターネット経由でフルHDの映像を楽しめる映像転送システムだ。PCをはじめ、iPhone、iPad、iPod touch、Android搭載のスマートフォンやタブレット端末など、さまざまなデバイスで視聴することができる。自宅の映像環境を外に持ち出す感覚といってもいいだろう。
中村ディレクターは、「昨年12月にインターネットでの先行販売予約を実施したところ、予想を大幅に上回る数のご予約をいただいた。多くの人が『Slingbox』を求めていたことが理解できた」と語る。どんな点が、消費者の心を捉えたのだろうか。
中村ディレクターは、その大きな理由として「快適に使ってもらうために、映像配信システムとしての敷居を下げたこと」を挙げる。「Slingbox PRO-HD」は、設定や操作が実に簡単なのだ。例えば初期設定。まず、「Slingbox」に映像/音声ケーブルを接続。LAN経由でハードウェアを設定し、サイトでIDとパスワードを取得する。あとは再生サイトに接続するだけ。わずか4ステップなのだ。販売予約に合わせて募集したモニターのほとんどから、「1時間もあれば設定できる」という声が寄せられているという。
操作はさらに簡単。「Slingbox」は、つないだレコーダーやチューナーのリモコンを画面に表示する。つまり、自宅でするのと同じようにチャンネルの変更や再生、一時停止、録画予約などの操作ができるのだ。リモコンは、日本メーカーの代表的な製品、70種類以上に対応している。
スムーズな映像転送と再生も、人気の要因の一つ。映像の圧縮/送信技術「SlingStream」で、無線LANケーブルや光ケーブル、携帯電話回線など、利用帯域や回線状況に応じて自動的に圧縮率を変化させるので、いつでもどこでも、安定した転送と再生で映像を楽しめる。
実勢価格は3万4980円と、他社製品に比べてやや高め。しかし中村ディレクターは、「場所を選ばずにフルHDの高画質で視聴できて、この価格。他社製品にはない」と自信をみせる。
昨年は、iPadが口火を切ったスレートや、iPhone 4やAndroid端末などのスマートフォンが相次いで登場し、爆発的な普及をみせた年だった。モバイル端末の映像視聴環境が整いつつある状況は、もちろん「Slingbox」にとって追い風だ。中村ディレクターも、「スマートフォンの増加は、確実に『Slingbox』の販売増につながる。また、映像の視聴には画面が大きいほうがいいので、スレートでの視聴は多くなるだろう」としている。スマートフォンに関しては、現在のiPhoneやAndroid携帯だけでなく、Windows Phone 7への対応も予定しているという。
もちろん課題もある。中村ディレクターは、「製品をきちんと理解してもらうこと」と話す。例を挙げれば、つい先日、最高裁判決が出た「まねきTV」裁判にまつわる話がある。「まねきTV」は、業者がユーザーから映像転送機器を預かり、ユーザーがインターネットを利用してテレビ番組を自由に視聴できるサービス。裁判では、放送事業者側がもつ著作権のひとつ「送信可能化権」侵害の有無が争点となり、「まねきTV」側が敗訴した。判決は、機器を設置して「不特定多数」が視聴できるよう管理し、送信の主体となっていたのは「まねきTV」であるとして、送信可能化権侵害を認定した。
一見「Slingbox」と似たシステムに思えるが、「Slingbox」は視聴できるPCやモバイル機器を1台に限定しており、違法ではない。しかし、それでも「『Slingbox』は合法で、安心して使えることを消費者に積極的に周知していく」という。また、中村ディレクターは、「遠隔地からの映像視聴に関して、間違った認識をもってもらいたくない」ことも周知活動の理由に挙げた。
もう一つの課題が、販路だ。現在の販路は、直販サイトを中心とするネットショップのみ。家電量販店での販売も模索しているが、「どのコーナーで販売するのかが悩みどころ」という。量販店の売り場は、アイテム別に分かれている。「Slingbox」とつながるHDDレコーダーはデジタルAV機器コーナー、映像を視聴する機器のPCはPCコーナー、スマートフォンは携帯電話コーナーだ。中村ディレクターは「量販店さんにとって、どこに置くべきかが分かりづらい製品になっている」と認めながら、「どの売り場で売るのが適しているのか、お店と話し合っていきたい」と話す。それでも、「新しい売り場を提案するなど、家電量販店さんが売りやすい環境をつくっていきたい」と非常に前向きだ。
今年7月24日の地上デジタル放送完全移行や、フルHD視聴環境の広がり、そしてスマートフォンやスレートの普及――。映像を楽しむ環境は、ますます進化していく。だからこそ、「これらの課題は早急に解決する」と、中村ディレクターは宣言する。そして、映像視聴環境の進化を見据えながら、製品の魅力を訴えるために家電量販店とのパートナーシップを深めていく。これが「Slingbox PRO-HD」の販売戦略だ。
いつでもどこでも自宅のテレビ環境を
「Slingbox PRO-HD」は、自宅のテレビやレコーダー、デジタルチューナーに接続するだけで、インターネット経由でフルHDの映像を楽しめる映像転送システムだ。PCをはじめ、iPhone、iPad、iPod touch、Android搭載のスマートフォンやタブレット端末など、さまざまなデバイスで視聴することができる。自宅の映像環境を外に持ち出す感覚といってもいいだろう。
Slingbox PRO-HD
中村ディレクターは、「昨年12月にインターネットでの先行販売予約を実施したところ、予想を大幅に上回る数のご予約をいただいた。多くの人が『Slingbox』を求めていたことが理解できた」と語る。どんな点が、消費者の心を捉えたのだろうか。
中村豪ディレクター
中村ディレクターは、その大きな理由として「快適に使ってもらうために、映像配信システムとしての敷居を下げたこと」を挙げる。「Slingbox PRO-HD」は、設定や操作が実に簡単なのだ。例えば初期設定。まず、「Slingbox」に映像/音声ケーブルを接続。LAN経由でハードウェアを設定し、サイトでIDとパスワードを取得する。あとは再生サイトに接続するだけ。わずか4ステップなのだ。販売予約に合わせて募集したモニターのほとんどから、「1時間もあれば設定できる」という声が寄せられているという。
設定の方法
操作はさらに簡単。「Slingbox」は、つないだレコーダーやチューナーのリモコンを画面に表示する。つまり、自宅でするのと同じようにチャンネルの変更や再生、一時停止、録画予約などの操作ができるのだ。リモコンは、日本メーカーの代表的な製品、70種類以上に対応している。
大手メーカーのレコーダーやチューナーのリモコン70種類以上に対応
スムーズな映像転送と再生も、人気の要因の一つ。映像の圧縮/送信技術「SlingStream」で、無線LANケーブルや光ケーブル、携帯電話回線など、利用帯域や回線状況に応じて自動的に圧縮率を変化させるので、いつでもどこでも、安定した転送と再生で映像を楽しめる。
実勢価格は3万4980円と、他社製品に比べてやや高め。しかし中村ディレクターは、「場所を選ばずにフルHDの高画質で視聴できて、この価格。他社製品にはない」と自信をみせる。
製品の理解促進活動を展開
昨年は、iPadが口火を切ったスレートや、iPhone 4やAndroid端末などのスマートフォンが相次いで登場し、爆発的な普及をみせた年だった。モバイル端末の映像視聴環境が整いつつある状況は、もちろん「Slingbox」にとって追い風だ。中村ディレクターも、「スマートフォンの増加は、確実に『Slingbox』の販売増につながる。また、映像の視聴には画面が大きいほうがいいので、スレートでの視聴は多くなるだろう」としている。スマートフォンに関しては、現在のiPhoneやAndroid携帯だけでなく、Windows Phone 7への対応も予定しているという。
スマートフォンで楽しめる
もちろん課題もある。中村ディレクターは、「製品をきちんと理解してもらうこと」と話す。例を挙げれば、つい先日、最高裁判決が出た「まねきTV」裁判にまつわる話がある。「まねきTV」は、業者がユーザーから映像転送機器を預かり、ユーザーがインターネットを利用してテレビ番組を自由に視聴できるサービス。裁判では、放送事業者側がもつ著作権のひとつ「送信可能化権」侵害の有無が争点となり、「まねきTV」側が敗訴した。判決は、機器を設置して「不特定多数」が視聴できるよう管理し、送信の主体となっていたのは「まねきTV」であるとして、送信可能化権侵害を認定した。
一見「Slingbox」と似たシステムに思えるが、「Slingbox」は視聴できるPCやモバイル機器を1台に限定しており、違法ではない。しかし、それでも「『Slingbox』は合法で、安心して使えることを消費者に積極的に周知していく」という。また、中村ディレクターは、「遠隔地からの映像視聴に関して、間違った認識をもってもらいたくない」ことも周知活動の理由に挙げた。
最適な売り場を家電量販店とともに考える
もう一つの課題が、販路だ。現在の販路は、直販サイトを中心とするネットショップのみ。家電量販店での販売も模索しているが、「どのコーナーで販売するのかが悩みどころ」という。量販店の売り場は、アイテム別に分かれている。「Slingbox」とつながるHDDレコーダーはデジタルAV機器コーナー、映像を視聴する機器のPCはPCコーナー、スマートフォンは携帯電話コーナーだ。中村ディレクターは「量販店さんにとって、どこに置くべきかが分かりづらい製品になっている」と認めながら、「どの売り場で売るのが適しているのか、お店と話し合っていきたい」と話す。それでも、「新しい売り場を提案するなど、家電量販店さんが売りやすい環境をつくっていきたい」と非常に前向きだ。
今年7月24日の地上デジタル放送完全移行や、フルHD視聴環境の広がり、そしてスマートフォンやスレートの普及――。映像を楽しむ環境は、ますます進化していく。だからこそ、「これらの課題は早急に解決する」と、中村ディレクターは宣言する。そして、映像視聴環境の進化を見据えながら、製品の魅力を訴えるために家電量販店とのパートナーシップを深めていく。これが「Slingbox PRO-HD」の販売戦略だ。