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ペンタブレットで広がる電子コミック、スマートフォンが市場拡大の起爆剤に

インタビュー

2011/01/17 12:53

 個人・業務向けペンタブレットで定評のあるワコム。国内市場では、「BCNランキング」のメーカー別販売台数シェアで1位を獲得したメーカーを表彰する「BCN AWARD」を<a target="_blank" href="http://bcnranking.jp/award/section/hard/hard21.html">12年連続で受賞</a>している。ワコムは、2011年、電子書籍ブームを追い風に、デジタルコミックのコンテンツ市場拡大に注目している。国内販売の担当者に話を聞いた。

ジャパン・アジアパシフィック統括本部タブレット営業本部流通営業部の米嶋貢ジェネラルマネージャー

 ワコムは個人向けペンタブレットとして、ラインアップが豊富な初級・中級機「Bamboo」、アニメーションやゲーム、映画などを制作するプロ向けの上級機「Intuos」、液晶画面に直接ペンで書き込める「Cintiq」の3シリーズを揃える。

 コミック制作に特化したのが「Bamboo Comic」だ。セルシスのコミック制作ソフト「ComicStudioMini」など、便利な各種ソフトが5つ付属する。Sサイズの「CTH-461/S1」は、09年12月の発売以降、常に月次の「BCNランキング」シリーズ別販売台数シェアで1位をキープしている人気モデルだ。

Bamboo Comic(CTH-461/S1)

 コミックを制作するユーザーの環境は、アナログからデジタルへと変化してきている。ペンタブレットを活用したコミック制作のトレンドとして、表現方法の多様化が挙げられる。雑誌など紙の媒体では難しいような、デジタルならではの作品が登場しているのだ。例えば、イラストではなく、素材に写真を使ってコミックを作成したり、オールカラーやコマに動きをつけたりといった表現もできる。

 表現方法のほかにも、発表の場も、例えば、「pixiv(ピクシブ)」「Dream Tribe(ドリームトライブ)」などのイラスト・コミック投稿サイトが増えており、自分の作品を簡単にウェブサイトに公開できるようになってきた。また、従来は紙に描いた作品を出版社に郵送しなければならなかったが、いまは講談社など一部の大手出版社ではデジタルコミックの作品を受け付けている。

ペンタブレットで作成したコミックの例(文星芸術大学の田中誠一さんの作品)

 ジャパン・アジアパシフィック統括本部タブレット営業本部流通営業部の米嶋貢ジェネラルマネージャーは、「いま、コミックで人気を集めているのは、雑誌に載る紙の作品がほどんど。世の中に出回っているアナログとデジタルの人気作品の比率は、おそらく9対1程度だろう。しかし、ペンタブレットで描いたデジタルコミックが増えれば、投稿サイトとの相乗効果でコンテンツ市場の規模拡大が期待できる」と意気込む。

 また、ユーザーが作品を端末で閲覧する環境の変化もある。これまで、デジタルコミックは携帯電話で閲覧するケースが多かった。しかし最近は、携帯電話に加えスマートフォンが普及しつつある。米嶋ジェネラルマネージャーは、スマートフォンについて、「アップルのiPhone向けはApp Storeの審査基準が厳しいが、Androidは比較的審査が緩い。コミックのアプリ提供先として、まずはAndroidマーケットに期待している」として、新しい読者層の獲得を見込む。

総合学園ヒューマンアカデミーで開催したセミナー

 ワコムは、2011年、「ユーザーが製品に直接触れる機会を増やす」(米嶋ジェネラルマネージャー)として、昨年に引き続き、家電量販店での店頭イベントを実施するほか、同人誌即売会「コミックマーケット」「コミックシティ」などのイベントに製品を展示する。

 また、10-20代の大学生・専門学校生をターゲットに、総合学園ヒューマンアカデミーや日本工学院専門学校、大阪総合デザイン専門学校などの芸術系の専門学校・大学で行うセミナーの開催にも力を入れていく。イラスト/コミック投稿サイトの広がりと、コンテンツを閲覧する端末の拡大によって、デジタルコミックのコンテンツ市場は活性化が期待できる。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。