BCN編集部が予測! 2011年、売れるデジタル機器は?

オピニオン

2010/12/28 19:52

 2010年は、「3D元年」「地デジ化」「スレート(タブレット)」「電子書籍」「スマートフォン」など、デジタル機器に関連するさまざまなキーワードで賑わった年だった。2011年もまた、地デジ完全移行をはじめ、さまざまな事象が起きるだろう。そのなかで注目を集めるデジタル製品は何か。今年を振り返りながら、2011年に売れそうな製品・サービスを予測する。

2011年コレが売れる! (1)スマートフォン
日本独自の機能満載の「ガラスマ」が市民権を得るか?



 「BCNランキング」では、1年前の2010年1月、携帯電話全体に占めるスマートフォンの割合(スマートフォン率)は12.4%だった。そのほとんどはiPhone 3GSであり、実態はiPhone単独の人気だった。その後、4月にNTTドコモが「Xperia」を発売。さらに11月以降、NTTドコモの「GALAXY S」や「LYNX 3D SH-03C」、KDDI(au)の「IS03」など、OSにAndroidを搭載したスマートフォンの新機種が続々と発売され、携帯電話ランキングの上位はスマートフォンが占めるようになった。スマートフォン率も、11月には過去最大となる35.5%を記録した。

 auの「IS03」は、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信など、これまでの携帯電話が一般的にもっている機能を搭載する。従来の携帯電話は、ガラパゴス携帯(ガラケー)と揶揄されることもあるが、「IS03」のような、イイとこ取りの日本独自仕様のスマートフォンは、一部で「ガラスマ」とも呼ばれている。

11月26日の「IS03」発売セレモニー

 「ガラスマ」は、従来の携帯電話を愛用していた層にとって、非常に魅力的に映る。事実、多くのユーザーが飛びついた。新機種が同時に発売となった12月第2週(2010年12月13日-19日)には、スマートフォン率は49.8%まで上昇。これまで以上に売れ始めている。

 しかし、この“現象”には、疑問の余地がないわけではない。スマートフォンはパソコンの小型版といえる存在で、必ずしも万人にとって便利なわけではない。日頃からパソコンに慣れ親しんでいないと、使いこなすのは難しいだろう。そもそも、ワンセグやおサイフケータイ機能を使いたいだけなら、従来の携帯電話でも支障はないはず。現状は、過剰なブームといわざるを得ない。

 機種が増えると、スマートフォン同士も差異化も難しくなる。それでも、キャリアが「ガラスマ」のラインアップを増やし、機能を充実させれば、広く一般ユーザーに普及し、スマートフォン率は高まっていくだろう。ただ、それは、従来の携帯電話とスマートフォンの垣根の崩壊を意味する。そして、日本の携帯電話業界は、再び“ガラパゴス化”することになる。果たして、スマートフォンは、どの方向に向かうのか。2011年は、今後の携帯電話の姿を決める分かれ目の年になりそうだ。(嵯峨野 芙美)

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2011年コレが売れる!(2)電子書籍リーダー
コンテンツの中身と形式が普及のポイント



 2010年5月、アップルのiPad発売をきっかけにして、通信機能をもち、タッチパネルを備えた板状端末「スレート」が注目を浴びた。その用途の一つとして挙げられるのが、電子書籍の閲覧だ。タッチパネルによって、ページをめくるような感覚で読むことができる。問題は重さ。例えば、iPadは680g(Wi-Fiモデルの場合)で、長時間手に持って読書するには不向きだ。また、点灯している液晶画面を凝視し続けて文字を読むのは目が疲れるという難点がある。

 そこで期待できるのが、小型・軽量で、目にやさしい電子書籍専用端末だ。ソニーは、画面に目にやさしい電子ペーパーを採用した電子書籍端末「Reader」を12月10日に発売。国内他社に先駆けて端末を発表し、注目を集めたシャープも、同じく12月10日に「GALAPAGOS」を発売している。

目にやさしい電子ペーパーを採用したソニーの電子書籍専用端末「Reader」

 GALAPAGOSの画面は液晶で、通信機能をもち、実際の性能はiPadに近い。しかし広報担当は「シャープならではの電子書籍専用端末を目指した」としている。さらには、専用端末ではないものの、スマートフォンでも電子書籍が閲覧できるようになり、対応端末は豊富になってきた。

 今後の課題として挙げられるのは、コンテンツの充実だ。現在、出版社や印刷会社、書店などが協力して、続々とコンテンツサービスを立ち上げている。紙の書籍の最新作や話題作を中心に需要を喚起しているが、実店舗の書店と比べると、まだ選択肢は限られている。また、端末メーカーは専用のブックストアを展開しており、コンテンツの汎用性は低い。今後、複数の端末間で共有できるファイル形式でコンテンツが提供されるようになれば、ユーザーの利便性が向上し、市場の拡大は期待できる。(井上真希子)

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2011年コレが売れる! (3)地デジPC、キッズPC、タッチPC
「タッチパネル」が新たな需要を喚起



 総務省の発表によると、2010年9月末時点での地上デジタル放送対応機器の世帯普及率は90.3%。ただし、地デジ対応の主体はリビングルームのテレビで、家庭にある2台目、3台目のテレビでは進んでいないのが現状だ。そこでPC業界では、マイルームのテレビ視聴スタイルとして「地デジPC」をアピール。2010年秋冬モデルでは各社とも「地デジPC」のラインアップを強化した。

家電量販店の地デジPCコーナー

 アナログテレビチューナー時代の「テレパソ」とは異なり、Windows 7搭載の地デジPCは、受信エリアでの安定した受信性能と、映像を視聴するのに適した機能とスペックを備えている。テレビと遜色ない高精細な映像を表現でき、PCの基本機能と録画をはじめとしたテレビ機能の両方をもっているというメリットが、地デジ対策を考えている消費者に受け入れられるようになってきた。

 現在、地デジPCは、家電量販店のPC売り場を中心に展開しているが、販売拡大を図るためには、PC売り場に足を運ばない層にもアプローチしていくことが必要だ。テレビ売り場で地デジPCを展示するなど、露出度を高めれば、新たな購買層が生まれるだろう。

 PCの追い風は、地デジだけではない。iPadをはじめ、10年に新たに登場したジャンルのスレートでは、各社の製品が続々と登場することが見込まれる。さらには、タッチパネル対応PCへの波及効果も期待できる。直感的な操作性やペン入力を生かして、シニア層へのアプローチが期待できるほか、フィルタリングソフトや、学習用のeラーニングソフトなどを搭載した「キッズPC」市場が立ち上がってくるだろう。(田沢理恵)

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2011年コレが売れる! (4)Mac
iPhone/iPadでMacユーザーの裾野が広がる サービスも充実



 話題のiPadをはじめ、スマートフォンの「iPhone」、携帯オーディオプレーヤー「iPod」、音楽や動画の管理・再生ソフト「iTunes」など、アップルの製品・サービス利用者が広がりつつある。これに後押しされるかたちで、「Mac」の需要が増える可能性が出てきた。

 2001年発売のiPodが国内の携帯オーディオプレーヤー市場を席巻し、続いてiPhone、iPadも市場のリーダーになった。必然的に、これらの機器で使用する管理ソフトのiTunesや、コンテンツやアプリケーションを販売するiTunes Storeなどのサービスの利用者も増えた。アップルは、プラットフォームを握ったのである。もちろん、Macはこれらの機器との親和性は抜群だ。こうしたユーティリティに加え、「携帯オーディオやスマートフォンがアップルなら、パソコンもアップル」というアップルユーザーの意識も見逃せない。

専門コーナー「Appleショップ」をオープンする家電量販店が相次いだ
(写真はビックカメララゾーナ川崎店)

 アップルは手を緩めることなく、App Storeでの映画配信サービスやネットテレビの「Apple TV」、iPhone/iPad向けの新OS「iOS 4.2」と、製品・サービスを次々とリリース。これらがMacの購入に波及する要素は十分にある。(佐相彰彦)

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2011年コレが売れる! (5)裸眼3D対応モバイル機器
3Dを活性化、モバイル3Dがカギを握る



 パナソニックが口火を切り、ソニー、シャープ、東芝、三菱電機が、専用メガネをかけて視聴する3Dテレビを相次いで投入した2010年。10月には、東芝が裸眼での3D視聴に対応した液晶テレビ「グラスレス3Dレグザ」を披露した。

 小型端末では、シャープが裸眼で3D画像・映像が見られるスマートフォンを開発。12月には、NTTドコモ向け「LYNX 3D SH-03C」とソフトバンクモバイル向け「GALAPAGOS SoftBank 003SH」の2機種を発売した。12月下旬には、東芝の「グラスレス3Dレグザ」も発売となり、ついに裸眼3D時代が幕を開けた。

 東芝は、40V型以上の大型の裸眼3D液晶テレビの開発にも着手しているが、現段階で商品化しているのは12V型と20V型。それぞれ12万円前後、24万円前後と、決して手の届かない価格ではないが、一般家庭のセカンドテレビとしては現実的ではない。テレビ向けの3Dコンテンツもまだ出揃っていない。

裸眼で3D映像を視聴できる東芝の液晶テレビ「グラスレス3Dレグザ」

 一方、スマートフォンは、本体のカメラで手軽に3D撮影ができるので、身近な人や景色など、パーソナルな世界で手軽に3Dが楽しめる。専用メガネをかけずに3Dを見る端末なら、これまで使っていた端末と同じように、いつでもどこでも好きな写真を撮って、すぐに人に見せて楽しむことができる。迫力ある本格的な3Dではないものの、身近なものを3Dで見てみたいといった興味が、3Dの敷居を下げるのではないだろうか。写真や映像の新しい楽しみ方として、浸透する可能性がある。

 2011年2月26日には、3D写真の撮影ができる裸眼立体視機能付き「ニンテンドー3DS」の発売が控えている。裸眼とパーソナルコンテンツが、3D普及のカギを握る。(田沢理恵)

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※本記事は、週刊BCN 2011年1月3日付 Vol.1364掲載記事「2011年、売れるデジタル機器は? 購入意欲を刺激するキーワードが目白押し」を、Web向けに一部改稿したものです。