ゼンリン、地図ソフト市場縮小のなかで業務利用機能で生き残りを図る
ソフトウェア、ことにパッケージソフトの市場は、ここ数年、縮小を続けてきた。BCNランキングによれば、2010年1月の「ビジネスソフト」全体の販売本数は、前年同月比100.7%、販売金額は前年同月比114.1%と、ややもち直しているが、このなかでも、カテゴリ別にみていくと盛衰が浮かび上がる。今回取り上げる「マップ・ナビソフト」は、端的にいえば「衰」の部類に入るだろう。前年同月比で販売本数が66.36%、販売金額が74.45%と市場が委縮し、その流れが止まらない。
しかし、地図メーカーとして大きな存在感を放つゼンリンは、それほど悲観してはいないようだ。業務用途の機能を充実させた製品を展開し、他社との差異化を図っていることが、その自信につながっている。コンテンツ・ソリューション事業本部コンテンツ営業部の井上和博部長とコンテンツ・ソリューション事業本部WEBサービス営業部の松山稔部長に、パッケージビジネスの展望と製品戦略をうかがった。
09年の地図ソフト市場は、右肩下がりの状況が続いた。「縮小を実感している。08年と比較しても若干低下傾向にある。要因は、やはり無料で利用できるネット地図の台頭で、これに比例して低下が加速度的に速くなっている」と、井上部長は厳しい表情を見せる。「当然、これからもネット地図の比重は高くなっていく」という。ただ、「縮小していくことはあっても、なくなることはないと思っている」とも。楽観しているわけではないが、決して悲観的ではない。
Googleマップをはじめとするネット地図は、すでに一般のネットユーザーにとって、日常的な生活必需品だ。一方で、「マーケティングや営業、また管理系の業務で利用したいというユーザーからの声が増えてきている」と井上部長。ネット地図は汎用性が高い代わりに、地図に情報を付加して業務に利用するには不便だ。早い段階から、同社はそこに目をつけていた。
「ニーズの変化は前々から感じており、業務利用に特化した機能を追加してきた」(井上部長)。顧客データや統計情報を瞬時に地図上に投影したり、階層(レイヤー)ごとに管理機能の使い分けたりできるのが特徴だ。無料のネット地図では提供できない価値を付加して、差異化を図っているのだ。井上部長は、業務利用を切り口に「ユーザーを増やしていきたい」と意気込む。
ゼンリンの強みは、28万人の調査員による圧倒的な情報の収集量にある。また、「レスポンスの速さなどが他社との差になっている。住所データを市町村単位で見られるのは当然だが、番地までの詳細なデータと市街地のひも付けによって、ピンポイントで目的地まで行ける」と井上部長はアピールする。
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ゼンリンは、これまでBCN AWARDのマップ・ナビソフト部門では、2位もしくは3位に甘んじてきた。今回のBCN AWARD 2010で最優秀賞に輝いたのも、ソースネクストだった。しかし、ソースネクストの「デジタル全国地図」は、実はゼンリンの子会社、ゼンリンデータコムの「いつもNAVI」のOEM供給を受けたもの。ブランドを分けて販売している。
ゼンリンとしては、「ユーザーのニーズに合った形で提供している」と松山稔部長。例えば、ゼンリンの「電子地図帳」がスタンドアロン型なのに対し、「デジタル全国地図」はネットワーク型。「業務で利用するなら『電子地図帳』で、より多機能かつ手軽さを求めているなら『デジタル全国地図』で」(松山稔部長)といった具合に、選択肢を用意する。要はトータルで売れれば良いという考えだ。
それでも、シェアが気にならないわけではない。ネット地図のユーザーが広がって製品の売り上げ減少が続くなかでも、「業務で利用するユーザーは減らない」(井上部長)との見方だ。業務用途に強いゼンリンのシェアが、相対的に向上するという算段だ。
とはいえ、ゼンリンも2010年1月の販売本数は前年同月比56.09%で、販売金額は前年同月比59.69%と、状況は厳しい。市場全体の地盤沈下と自社製品の売り上げ減をどう食い止めるのかが、喫緊の課題となっている。そしてこの課題克服のためには、一般ユーザーへの訴求が欠かせないものとなる。
店頭では、写真を撮ってすぐに雑誌のようなレイアウトにできる同社のアルバム作成ソフト「フォト自慢」とのセットでの販売も行っている。「フォト自慢」にはゼンリンの地図データが入っており、旅行先で写真を撮って、撮影ポイントの地図と写真をあわせて管理することができる。「店頭販売は、プロモーションを実施したり販売店と共同で価格戦略を練ったりして、現状維持を目指したい」(井上部長)。
販路の開拓にも積極的だ。「販売店やディストリビュータに対して、能動的な投げかけをしていきたい。自社のECサイト含めて、ネット販売と法人販売に力を入れていく」。店頭の販売だけでは、じきに限界が来る。井上部長の危機感は強い。
「地図の利用シーンは確実に増えてきている。市場はここ1-2年で下げ止まり、推移していくのではないか」(井上部長)。もちろん、確実にユーザーを増やしているネット地図とは、「共存する方向性」を見出す必要があると考えているという。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。
しかし、地図メーカーとして大きな存在感を放つゼンリンは、それほど悲観してはいないようだ。業務用途の機能を充実させた製品を展開し、他社との差異化を図っていることが、その自信につながっている。コンテンツ・ソリューション事業本部コンテンツ営業部の井上和博部長とコンテンツ・ソリューション事業本部WEBサービス営業部の松山稔部長に、パッケージビジネスの展望と製品戦略をうかがった。
コンテンツ・ソリューション事業本部コンテンツ営業部の井上和博部長
09年の地図ソフト市場は、右肩下がりの状況が続いた。「縮小を実感している。08年と比較しても若干低下傾向にある。要因は、やはり無料で利用できるネット地図の台頭で、これに比例して低下が加速度的に速くなっている」と、井上部長は厳しい表情を見せる。「当然、これからもネット地図の比重は高くなっていく」という。ただ、「縮小していくことはあっても、なくなることはないと思っている」とも。楽観しているわけではないが、決して悲観的ではない。
Googleマップをはじめとするネット地図は、すでに一般のネットユーザーにとって、日常的な生活必需品だ。一方で、「マーケティングや営業、また管理系の業務で利用したいというユーザーからの声が増えてきている」と井上部長。ネット地図は汎用性が高い代わりに、地図に情報を付加して業務に利用するには不便だ。早い段階から、同社はそこに目をつけていた。
「ニーズの変化は前々から感じており、業務利用に特化した機能を追加してきた」(井上部長)。顧客データや統計情報を瞬時に地図上に投影したり、階層(レイヤー)ごとに管理機能の使い分けたりできるのが特徴だ。無料のネット地図では提供できない価値を付加して、差異化を図っているのだ。井上部長は、業務利用を切り口に「ユーザーを増やしていきたい」と意気込む。
ゼンリンの強みは、28万人の調査員による圧倒的な情報の収集量にある。また、「レスポンスの速さなどが他社との差になっている。住所データを市町村単位で見られるのは当然だが、番地までの詳細なデータと市街地のひも付けによって、ピンポイントで目的地まで行ける」と井上部長はアピールする。
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ゼンリンは、これまでBCN AWARDのマップ・ナビソフト部門では、2位もしくは3位に甘んじてきた。今回のBCN AWARD 2010で最優秀賞に輝いたのも、ソースネクストだった。しかし、ソースネクストの「デジタル全国地図」は、実はゼンリンの子会社、ゼンリンデータコムの「いつもNAVI」のOEM供給を受けたもの。ブランドを分けて販売している。
ゼンリン電子地図帳Zi12 DVD全国版
ゼンリンとしては、「ユーザーのニーズに合った形で提供している」と松山稔部長。例えば、ゼンリンの「電子地図帳」がスタンドアロン型なのに対し、「デジタル全国地図」はネットワーク型。「業務で利用するなら『電子地図帳』で、より多機能かつ手軽さを求めているなら『デジタル全国地図』で」(松山稔部長)といった具合に、選択肢を用意する。要はトータルで売れれば良いという考えだ。
それでも、シェアが気にならないわけではない。ネット地図のユーザーが広がって製品の売り上げ減少が続くなかでも、「業務で利用するユーザーは減らない」(井上部長)との見方だ。業務用途に強いゼンリンのシェアが、相対的に向上するという算段だ。
とはいえ、ゼンリンも2010年1月の販売本数は前年同月比56.09%で、販売金額は前年同月比59.69%と、状況は厳しい。市場全体の地盤沈下と自社製品の売り上げ減をどう食い止めるのかが、喫緊の課題となっている。そしてこの課題克服のためには、一般ユーザーへの訴求が欠かせないものとなる。
コンテンツ・ソリューション事業本部WEBサービス営業部の松山稔部長
店頭では、写真を撮ってすぐに雑誌のようなレイアウトにできる同社のアルバム作成ソフト「フォト自慢」とのセットでの販売も行っている。「フォト自慢」にはゼンリンの地図データが入っており、旅行先で写真を撮って、撮影ポイントの地図と写真をあわせて管理することができる。「店頭販売は、プロモーションを実施したり販売店と共同で価格戦略を練ったりして、現状維持を目指したい」(井上部長)。
販路の開拓にも積極的だ。「販売店やディストリビュータに対して、能動的な投げかけをしていきたい。自社のECサイト含めて、ネット販売と法人販売に力を入れていく」。店頭の販売だけでは、じきに限界が来る。井上部長の危機感は強い。
「地図の利用シーンは確実に増えてきている。市場はここ1-2年で下げ止まり、推移していくのではないか」(井上部長)。もちろん、確実にユーザーを増やしているネット地図とは、「共存する方向性」を見出す必要があると考えているという。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。