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「理想のテレビ」を具現化した東芝「CELLレグザ」の全貌に迫る! 第三回

インタビュー

2010/01/15 15:03

 東芝の次世代液晶テレビ「CELLレグザ 55X1」の開発を担当した東芝デジタルメディアネットワーク社の映像マーケティング事業部・映像グローバルマーケティング部の本村裕史参事にうかがう当企画。第三回となる今回は、CELLレグザが備える「録画」「ネットワーク」機能について説明していただいた。

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本村裕史 映像マーケティング事業部 映像グローバルマーケティング部 参事

録画機能を追求すると、録画という行為はなくなる?



 「今年(編集部注:2009年)は録画テレビという言葉が名詞化された年だと思う。録画に関して我々の取り組みは早くて、3-4年前くらいから、東芝としてテレビに録画するという提案をしてきた」と本村氏が語る通り、現在のレグザのラインアップを見てみると、エントリーモデルであるAシリーズ以外は、すべてのモデルで外付けHDDに番組を録画できるようになっている。

 「ここには私の思いがあります。テレビは楽しむものだが、自己都合で楽しみたい。放送スケジュールとかの局都合ではなく、ですね。それにはレコーダーもあるんですが、これは残しておくためのもの。テレビを見るっていうのは、見たいときに見られればいい。そのために放送を止めましょう、放送に待ってもらいましょう、見たいときをゴールデンタイムにしましょう、というのが録画テレビの発想です」

地上デジタル放送の8チャンネルマルチ表示が可能

 もちろんCELLレグザも外付けHDDに番組を保存することができるが、テレビ単体としての録画機能は、通常のレグザの比ではない。15基のチューナーを備え、3TBという大容量HDDを内蔵。このうち2TBのHDD領域を使用して、地上デジタル放送8チャンネルの番組、過去26時間分を同時に一時保管できる「タイムシフトマシン」機能を備えている。

 この「タイムシフトマシン」機能を考えるときに、ポイントになるのが、番組を「一時保管」するという点。つまり、ユーザーがその番組を録画したいかどうかを前もって判断しなくても、放送された番組はすでにCELLレグザのHDD内にキャッシュされているのだ。また、番組だけでなく、すでに放送済みの番組表を確認することもできる。これは、「タイムシフトマシン」があれば、過去26時間以内に限っていえば、地上デジタル放送8チャンネルの番組をいつでも好きな時に見られることになる。

過去の番組表を見ることもできる

 「録画テレビを買ったお客様から、一回買うともう普通のテレビには戻れないという声は本当にたくさんいただくし、僕自身も使っていて、もうこれはレコーダーとはまったく次元が違うなというのは気付いていました。それを究極のかたちに仕上げようというのが、8チャンネルの地デジを、26時間さかのぼることができるという機能。これって録画じゃないんです。全番組をキャッシュすることで、見たい時間に見たい番組を自由に見ることができる。これが録画テレビの究極にすごいところだ、と思っています」

HDDにストックした番組を、タイトル・人物・ジャンル・キーワード別に関連付けて探しやすくする「ローミングナビ」も備える

どんな動画でも楽しむためのネットワーク機能



 CELLレグザ最後のポイントとなるネットワーク機能だが、発売された時点では、その本領を発揮しているわけではない。主要な機能の実装については、今後ダウンロードでの対応を予定しているためだ。

 「まず、1月末にダウンロードでバージョンアップを予定しているのが、フルハイビジョン(フルHD)のブラウザ導入と、YouTubeへの対応です。テレビのブラウザってオマケ的なイメージがあるんですが、このテレビはネットワーク機能でも理想のかたちを作りたいということで開発しました」

YouTubeの表示イメージ

 ブラウザは、Opera Software ASA社と共同開発した「Opera」。1920×1080ドットのフルHD解像度でのネットブラウジングが可能になるのだが、55V型のCELLレグザでネットを見ると「かなり感動する」と本村氏は言う。「私は研究所で実装前のGoogleマップを見たんですが、これはすごいです。とはいっても、それは半分ネタで、本音はやっぱりネット上の動画ですね。テレビは動画を楽しむもので、CELLレグザでは動画を究極に楽しんでいただきたいと思っていますから」

 「究極の楽しみ」ということから、画質面でのこだわりは忘れない。YouTubeに関しても、映像を補完して解像感を高める「超解像技術」を応用し、ネット上でのコンテンツにも対応した「ネット超解像」を実装している。

 「YouTubeって非常に低解像度なんですね(編集部注:フルHDにも対応しているが、標準画質は解像度400×226ピクセル)。そこに我々のネット超解像という技術を入れて、55V型の大画面で見る。ハイビジョン画質になるとはとても言えませんけども、十分、見るに耐える画質に変換できます」と、その仕上がりに自信を見せる。

 「やってみると非常に完成度が高いのがわかった」という自信の表れからか、当初はYouTubeのみでの対応を予定していたこの「ネット超解像」、2月末にダウンロード提供を予定しているアクトビラや光TV、Yahoo!動画などの動画配信チャンネルにも対応させるという。

 本村氏は、テレビのネットワーク対応に関してはまだまだ可能性は広がっていると感じているが、その考え方は、やはり「テレビで動画を楽しんでもらいたい」というところから始まっている。「DLNA対応とか、ネットワーク系ではいろんなことができるんです。でもこれ、目的はなにかというと、ネットにつながるということではありません。テレビって本来が動画を見て感動するものなので、それがオンエアの放送だけだった時代から、タイムシフトマシンでいつでも楽しんでくださいという発想になった。そして当然、ネットから出てくる動画コンテンツも、感動して見てくださいということです」

「理想のテレビ」だからこそレグザのブランドを冠する



 各所に「理想」の性能を備えたCELLレグザだが、周知の通り、東芝のテレビブランドである「レグザ」の名を冠している。ともすれば東芝のテレビ群の中で浮いてしまう、あるいは通常のレグザシリーズが埋没してしまうのではないかとも思えるが、そこには本村氏の強い意志があったという。

東芝のHPでも、レグザとCELLレグザのロゴは違う

 「これはレグザとは違うんじゃないか、という会話は一瞬ありました。でも、レグザというのはブランド立ち上げ時に、本物を作るぞという約束をしています。それは、ギミックな画質とかデザインとかとは決別して、テレビのあるべき姿を追求しようというものでした」

 「実は、東芝のテレビ事業は当時ボロボロだったんです。存在領域すらないくらいに落ちていた。他社と同じラインに乗っても、お客様が東芝のテレビを選ぶ必然性がなかったんです。そこで、原点に戻って、テレビのあるべき姿を作ろうと。我々技術者がやりたいことを、デザイナーがやりたいデザインをやろうとなったんです」。本村氏は、レグザ立ち上げ時の思いをそう説明する。

 「その意味で、まさにCELLレグザは、ぼくらが理想とするあるべき姿。テレビの理想の姿を考えているという点では、普通のレグザのベクトル上と実は一緒なんです」と説明する。しかし、ほかのシリーズと比べると、明らかにレベルが違うのも事実。そこで、名前をCELLレグザにし、ロゴも通常のレグザとはすこし変えたのだという。

 また、「理想のテレビ」というと、その機能を使いこなして最先端のテクノロジーを提供する、という、ともすれば機能ありきの製品になってしまいがちな可能性もはらんでいるが、本村氏の根底にあるのは「どんな動画でも感動していただきたい」という単純な思いだった。

「CELLレグザ」で動画を極限まで楽しんでほしいと語る本村氏

 それは、連載第一回に書いたように、本村氏にとってテレビとは「ワクワクドキドキするエンターテイメントな機械」だからにほかならない。「それって、白黒のブラウン管の時からそうだったんです。それが色がついてカラーテレビになってもそう」と語る本村氏は、CELLレグザはあくまでも現時点での「理想」を具現化したものに過ぎないともいう。

 「いまの段階だと、テレビにCELLレグザ以上の機能はいらないんじゃないの、と思うかもしれないですけど、人間の欲望って実は底知れないものがあって、必ずこの次にもっと何かっていうことになるんです。私たちは、それをずっと追いかけ続けていて、お客様が気付く前にご提案していかないといけない。それはテレビの歴史が始まって以来、実はずっと繰り返していること。止まることはないんです」と、この先も「理想のテレビ」を作り続ける考えに変わりはないことを語った。(BCN・山田五大)