「理想のテレビ」を具現化した東芝「CELLレグザ」の全貌に迫る! 第一回
東芝が2009年12月に発売した次世代液晶テレビ「CELLレグザ 55X1」。同社の持つ技術をすべてつぎ込み「理想のテレビ」に仕上げたという。同製品の開発に携わった、東芝デジタルメディアネットワーク社の映像マーケティング事業部・映像グローバルマーケティング部の本村裕史参事に、開発の意図や製品に込めた思いなどをうかがうことができた。第一回目は、開発の狙いと、そこに至る経緯を取り上げる。
「テレビとは、ワクワクドキドキして、感動して見ていただくもの」と語る本村参事は、CELLレグザについて「理想のテレビというものを、我々の技術をすべて使って、現時点で具現化した形」だと語る。
「テレビって画質・音質が基本なんです。洗剤が毎回きれいにならないといけないのと同じで、いくらいい匂いがしても、汚れが落ちない洗剤は洗剤ではない。テレビも同様で、どんなに機能が優れていても、画質が常に先端でないと感動できません」と語る本村氏は、CELLレグザのポイントを、まず「画質・音質」、加えて「録画機能」「ネットワーク機能」だとする。そして、これらの要素を「理想」といえるレベルで実現するために必要だったのが、CELLレグザが搭載するCELLブロードバンドエンジンだ。
CELLブロードバンドエンジンは、東芝とソニー、IBMが共同開発した非常に高い演算能力をもつプロセッサ。身近なところではソニーのプレイステーション3や一部のワークステーションに使われ、スーパーコンピュータなども採用している。実際、CELLレグザは、従来のレグザと比較しておよそ143倍の演算能力を備えることになった。
しかし、なぜそんな高性能なプロセッサをテレビに搭載しようと考えたのか。本村氏は、そもそもテレビありきではなく、CELLありきから開発がスタートしているのだと説明する。「スタートは、CELLがそこにある、というところからのトップダウンでした。CELLブロードバンドエンジン自体は7年ほど前から開発を始めていたのですが、このCELLを使ってテレビを作れないか、というのが開発の土台でした」
ただし、本村氏本人は、この点について当初はあまり乗り気ではなかったと明かす。「当時はソフトウェア技術で高画質化を実現するという発想はあまりありませんでした。やはりハードを開発することで高画質化を図るというのがテレビの基本だったし、ソフトでここまで高画質化に寄与できる時代がくるというのはあまり想像できなかったこともあって、とっつきにくかったですね」
CELLレグザの基礎開発がスタートしたのは4年ほど前から。とはいえ、当初は「商品企画、マーケティング、ブランドマネジメントといった人間はほとんど参加していません。研究所の人間が、CELLを使ってどんなことができるんだろうというのを研究し始めた」という段階だったという。
基礎開発を進めていくなかで、通常のレグザに落とし込んでいった技術もある。1920×1080画素のフルハイビジョン(フルHD)画質に満たない映像コンテンツの画素を解像感を高めて再現する「超解像技術」がそれだ。「これもCELLというすごいソフトがあるので、普通のテレビではとても実用化はできないといわれていた超解像を実現できる、というところから開発を始めています。それを切り取ってLSI化すれば普通のレグザにも入るということが見えてきたので、通常のレグザに搭載したんです」と本村氏。
さまざまなアイデアが同時並行的に進むなかで、ユーザーのテレビ視聴のスタイルに変化が出てきた。それが「テレビに録画する」という選択肢の登場と、ネットワークの普及だ。これをうけてCELLレグザのテレビとしての商品コンセプトも固まってきた。それが先述の「画質・音質・録画・ネットワークを含めて、我々の理想のテレビを具現化する」というものだ。
この「我々の理想とするテレビを作りたい」というコンセプトに基づいて開発されたCELLレグザ、それは、取りも直さず「ユーザーにとっても夢のテレビということになる」と本村氏は期待する。
次回以降は、その「理想」を具現化したというCELLレグザの性能や機能といった部分を、「画質・音質」「録画」「ネットワーク」という3つの観点から本村氏にうかがい、氏の考える「理想」の中身の詳細をお届けする。(BCN・山田五大)
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CELLレグザ 55X1
CELL完成がきっかけに 「理想のテレビを作る」まで
「テレビとは、ワクワクドキドキして、感動して見ていただくもの」と語る本村参事は、CELLレグザについて「理想のテレビというものを、我々の技術をすべて使って、現時点で具現化した形」だと語る。
(左から)本村裕史 映像マーケティング事業部 映像グローバルマーケティング部 参事と、加藤泰治 映像マーケティング事業部 日本部 販促担当 参事
(加藤氏へのインタビューは週刊BCN 2010年1月18日号にて掲載)
(加藤氏へのインタビューは週刊BCN 2010年1月18日号にて掲載)
「テレビって画質・音質が基本なんです。洗剤が毎回きれいにならないといけないのと同じで、いくらいい匂いがしても、汚れが落ちない洗剤は洗剤ではない。テレビも同様で、どんなに機能が優れていても、画質が常に先端でないと感動できません」と語る本村氏は、CELLレグザのポイントを、まず「画質・音質」、加えて「録画機能」「ネットワーク機能」だとする。そして、これらの要素を「理想」といえるレベルで実現するために必要だったのが、CELLレグザが搭載するCELLブロードバンドエンジンだ。
CELLレグザに搭載するCELLプラットフォーム
CELLブロードバンドエンジンは、東芝とソニー、IBMが共同開発した非常に高い演算能力をもつプロセッサ。身近なところではソニーのプレイステーション3や一部のワークステーションに使われ、スーパーコンピュータなども採用している。実際、CELLレグザは、従来のレグザと比較しておよそ143倍の演算能力を備えることになった。
TOSHIBAのロゴが入っている部分がCELLブロードバンドエンジン
しかし、なぜそんな高性能なプロセッサをテレビに搭載しようと考えたのか。本村氏は、そもそもテレビありきではなく、CELLありきから開発がスタートしているのだと説明する。「スタートは、CELLがそこにある、というところからのトップダウンでした。CELLブロードバンドエンジン自体は7年ほど前から開発を始めていたのですが、このCELLを使ってテレビを作れないか、というのが開発の土台でした」
ただし、本村氏本人は、この点について当初はあまり乗り気ではなかったと明かす。「当時はソフトウェア技術で高画質化を実現するという発想はあまりありませんでした。やはりハードを開発することで高画質化を図るというのがテレビの基本だったし、ソフトでここまで高画質化に寄与できる時代がくるというのはあまり想像できなかったこともあって、とっつきにくかったですね」
CELLレグザの基礎開発がスタートしたのは4年ほど前から。とはいえ、当初は「商品企画、マーケティング、ブランドマネジメントといった人間はほとんど参加していません。研究所の人間が、CELLを使ってどんなことができるんだろうというのを研究し始めた」という段階だったという。
基礎開発を進めていくなかで、通常のレグザに落とし込んでいった技術もある。1920×1080画素のフルハイビジョン(フルHD)画質に満たない映像コンテンツの画素を解像感を高めて再現する「超解像技術」がそれだ。「これもCELLというすごいソフトがあるので、普通のテレビではとても実用化はできないといわれていた超解像を実現できる、というところから開発を始めています。それを切り取ってLSI化すれば普通のレグザにも入るということが見えてきたので、通常のレグザに搭載したんです」と本村氏。
さまざまなアイデアが同時並行的に進むなかで、ユーザーのテレビ視聴のスタイルに変化が出てきた。それが「テレビに録画する」という選択肢の登場と、ネットワークの普及だ。これをうけてCELLレグザのテレビとしての商品コンセプトも固まってきた。それが先述の「画質・音質・録画・ネットワークを含めて、我々の理想のテレビを具現化する」というものだ。
理想のテレビを作りたかったと語る本村氏
この「我々の理想とするテレビを作りたい」というコンセプトに基づいて開発されたCELLレグザ、それは、取りも直さず「ユーザーにとっても夢のテレビということになる」と本村氏は期待する。
次回以降は、その「理想」を具現化したというCELLレグザの性能や機能といった部分を、「画質・音質」「録画」「ネットワーク」という3つの観点から本村氏にうかがい、氏の考える「理想」の中身の詳細をお届けする。(BCN・山田五大)
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