ネットブック、国産も元気! 主要5社の「一味違う」魅力に迫る
昨今のPC市場で完全に市民権を獲得したネットブック。「BCNランキング」の09年8月のノートPC市場での販売台数構成比は29.8%にのぼる。当初、Asusやエイサーといった台湾メーカーの製品が市場の大半を占めていたが、このところ国内メーカーにも勢いが出てきた。09年8月のネットブック月間販売ランキングでは、1位の東芝「dynabook UX」をはじめトップ5のうち4製品を占めており、国産ネットブックが元気だ。そこで、今回は大手国内メーカー製のネットブックの性能と特徴を比較してみた。
今回取り上げるのは東芝「dynabook UX」、ソニー「VAIO W」、NEC「LaVie Light」、富士通「FMV-BIBLO LOOX M」、シャープ「Mebius」の5シリーズ。まずは主な仕様を比較してみるが、NECはスペックが異なるモデルを複数用意しているため、同社製品の中で最も人気が高い「BL300/TA」を取り上げた。
いずれもCPUにはインテルのAtomを採用し、液晶サイズ・メモリ・HDD容量なども共通。無線機能も、IEEE802.11b/gまではどのモデルも対応しているなど、単にスペックを比較しただけではなかなか違いが見つけにくい。とはいえ、細かく見ていけば他社製品とは異なった「一味違う」部分がいくつも見つかる。
「dynabook UX」は、ネットブック市場において、09年6月から8月まで、3か月連続で首位を獲得するなど人気が高いモデル。使い勝手の面では、キーボードの打ちやすさが光る。キーピッチが19mmと通常のノートPCと変わらないサイズで、ひとつひとつのキーも独立しているため、メールやブログの更新といった作業で活躍してくれるだろう。(関連記事:ソニー・東芝、ネットブックガチンコ勝負、解像度とキーボードにポイント)
また、ネットブックとしては珍しくモバイルWiMAXモジュールを内蔵したモデルもラインアップ。無線LAN機能と組み合わせれば、外出先での利用範囲が広がるだろう。ただし、実勢価格が通常モデルと比較して1万円程度高くなるため、低価格をウリにするネットブックとしては価格面がネックになるかもしれない。
「VAIO W」は、1366×768ドットと今回の5製品の中では最も画面解像度が高いため、より広い領域を表示できるのがメリット。ただし、一画面に表示できる情報量が多いということは、文字一つひとつの大きさも必然的に小さくなる。解像度の高さが10.1型という画面サイズと釣り合いが取れているかは、好みが分かれるところだろう。
また、外観へのこだわりが見て取れるのもソニー製品らしい。タッチパッドの表面をプリインストールする壁紙と同じデザインにしたり、本体背面にも塗装を施すなど、細部にもこだわったトータルなデザインは女性にウケがよさそうだ。
「LaVie Light」の現行モデルのラインアップは非常に豊富。CPUの種類や画面の解像度の違いで「BL350/TA」「BL310/TD」「BL300/TA」「BL100/TA」の4機種を揃える。その中でも上位モデルの「BL350/TA」はストレージに16GBのSSDと160GBのHDDを備え、SSDによるOSの高速起動とHDDによる大容量データの保存を両立している。
さらに、自宅のサーバーPC(デスクトップPC)を遠隔操作できる「PCリモーター」機能を搭載した「BR330/TA」も用意。インターネット環境さえあれば、同社のデスクトップPC「VALUESTAR R Lui」シリーズなど、「PCリモーターサーバボード」を搭載した自宅のデスクトップPCと連携できる。アプリケーションを同時に利用したり、Webサイト閲覧など軽い作業はネットブックで、動画編集など重たい作業はサーバーPCで行うといったような使い分けができる。
「FMV-BIBLO LOOX M」は14種類もの電子辞書を備え、5製品中最多。電子辞書を搭載するネットブックの中でもその豊富さは目立つ。定番の国語、英和/和英辞典のほかにフランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・中国語などの各言語の辞書を収録している。
そのほか、富士通では「Loox M」よりもさらに小型な5.6型ワイド液晶のネットブック「FMV-BIBLO LOOX U」もラインアップ。何はなくとも携帯性を重視するというユーザーにはこちらも選択肢に入ってくるだろう。
「Mebius」の特徴は、なんといってもその操作性。キーボード下に「光センサー液晶パッド」を搭載し、ペンによる手描き入力と直感的なマルチタッチ操作が可能だ。
「光センサー液晶パッド」は、同社の電子辞書「Brain」のような文字入力に対応した液晶パネルで、ペン操作で絵やメモが書ける「手描きイラスト作成機能」を搭載するほか、読めない漢字を手描き入力することで意味を検索したりもできる。また、液晶にタッチセンサーを貼る必要がないため、図や写真を鮮明に表示できるのも特徴だ。
さらに同社では先日、フルキーボードを搭載した「モバイルインターネット端末」として「NetWalker PC-Z19」を発表した。タッチパネル付きの5型ワイド液晶を備え、一般的なネットブックよりも、さらに小さなインターネット端末。ネット利用が中心なら、この製品もかなり魅力的だ。
バッテリー駆動時間は約10時間と長く、約3秒という素早い起動も特徴で、スマートフォンとネットブックのちょうど中間にあるような存在。ネットブックの本分が、持ち運びやすくどこでもインターネットに接続できることだと考えるならば、その部分だけを特化しつつ、さらに小型化を図ったような製品。モバイルインターネットの本格的な普及のきっかけとなる可能性を秘めている製品だといえるだろう。
今回紹介した各社のネットブックは、モデルによっては統合ソフト「Microsoft Office」搭載の有無を選択できるようになっているが、ここで気をつけたいのがライセンス期限。09年4月以降、主なPCメーカーより出荷されるネットブックに搭載されるOfficeは、2年間の限定ライセンスとなっているのだ。
限定ライセンスの場合、購入から2年間は通常のOfficeとして利用できるのだが、その後はファイルの閲覧・印刷のみ可能で、新規作成・保存などができなくなる。2年経った後もそのまま使用したい場合は、別途通常版のパッケージを購入するか、12月発売予定の継続用ライセンスを購入する必要がある。
08年がネットブックの普及期だとすると、09年はよりユーザーの選択肢が広がった年といえる。当初、ネットブックは低価格を追求していたため、見た目の面ではどうしても横並びになりがちだった。しかし、最近は国内メーカーを中心に女性を意識したモデルなどが増加したことで、デザインも華やかになってきている。購入の際には製品ごとの特徴を把握し、実物を手にとってチェックした上で選びたい。(BCN・山田五大)
*BCNでは、08年以降に発売された製品で、液晶ディスプレイが12.1型以下、CPUにAtom系の低電圧CPUを搭載する製品を「ネットブック」と定義しています。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。
順位 | メーカー名 | 型番 | シリーズ・製品名 | 販売台数シェア(%) |
---|---|---|---|---|
1 | 東芝 | PAUX23JNL | dynabook UX | 10.7 |
2 | ソニー | VPCW119XJ | VAIO W | 6.4 |
3 | 日本エイサー | AOD250-B_83 | Aspire One D250 | 6.3 |
4 | NEC | BL300/TA6 | LaVie Light | 6.0 |
5 | 富士通 | FMVLMD15 | FMV-BIBLO LOOX M | 5.2 |
「BCNランキング」 09年8月月次 <最大パネル>
今回取り上げるのは東芝「dynabook UX」、ソニー「VAIO W」、NEC「LaVie Light」、富士通「FMV-BIBLO LOOX M」、シャープ「Mebius」の5シリーズ。まずは主な仕様を比較してみるが、NECはスペックが異なるモデルを複数用意しているため、同社製品の中で最も人気が高い「BL300/TA」を取り上げた。
メーカー | 製品・ シリーズ名 | 液晶ディスプレイ (解像度) | CPU | メモリ | 記憶媒体 | 標準バッテリー 駆動時間 |
---|---|---|---|---|---|---|
東芝 | dynabook UX | 10.1型ワイド(1024×600) | Atom N280(1.66GHz) | 1GB | 160GB HDD | 約4時間 |
ソニー | VAIO W | 10.1型ワイド(1366×768) | Atom N280(1.66GHz) | 1GB | 160GB HDD | 約3.5時間 |
NEC | LaVie Light (BL300/TA) | 10.1型ワイド(1024×600) | Atom N280(1.66GHz) | 1GB | 160GB HDD | 約4.2時間 |
富士通 | FMV-BIBLO LOOX M | 10.1型ワイド(1024×600) | Atom N280(1.66GHz) | 1GB | 160GB HDD | 約2.7時間 |
シャープ | Mebius PC-NJ70A | 10.1型ワイド(1024×600) | Atom N270(1.60GHz) | 1GB | 160GB HDD | 約3時間 |
いずれもCPUにはインテルのAtomを採用し、液晶サイズ・メモリ・HDD容量なども共通。無線機能も、IEEE802.11b/gまではどのモデルも対応しているなど、単にスペックを比較しただけではなかなか違いが見つけにくい。とはいえ、細かく見ていけば他社製品とは異なった「一味違う」部分がいくつも見つかる。
フルサイズのキーボードが使いやすい東芝「dynabook UX」
東芝「dynabook UX」
「dynabook UX」は、ネットブック市場において、09年6月から8月まで、3か月連続で首位を獲得するなど人気が高いモデル。使い勝手の面では、キーボードの打ちやすさが光る。キーピッチが19mmと通常のノートPCと変わらないサイズで、ひとつひとつのキーも独立しているため、メールやブログの更新といった作業で活躍してくれるだろう。(関連記事:ソニー・東芝、ネットブックガチンコ勝負、解像度とキーボードにポイント)
また、ネットブックとしては珍しくモバイルWiMAXモジュールを内蔵したモデルもラインアップ。無線LAN機能と組み合わせれば、外出先での利用範囲が広がるだろう。ただし、実勢価格が通常モデルと比較して1万円程度高くなるため、低価格をウリにするネットブックとしては価格面がネックになるかもしれない。
解像度の高さとデザインが魅力のソニー「VAIO W」
ソニー「VAIO W」
「VAIO W」は、1366×768ドットと今回の5製品の中では最も画面解像度が高いため、より広い領域を表示できるのがメリット。ただし、一画面に表示できる情報量が多いということは、文字一つひとつの大きさも必然的に小さくなる。解像度の高さが10.1型という画面サイズと釣り合いが取れているかは、好みが分かれるところだろう。
また、外観へのこだわりが見て取れるのもソニー製品らしい。タッチパッドの表面をプリインストールする壁紙と同じデザインにしたり、本体背面にも塗装を施すなど、細部にもこだわったトータルなデザインは女性にウケがよさそうだ。
ラインアップの豊富さで勝負するNEC「LaVie Light」
NEC「LaVie Light」
「LaVie Light」の現行モデルのラインアップは非常に豊富。CPUの種類や画面の解像度の違いで「BL350/TA」「BL310/TD」「BL300/TA」「BL100/TA」の4機種を揃える。その中でも上位モデルの「BL350/TA」はストレージに16GBのSSDと160GBのHDDを備え、SSDによるOSの高速起動とHDDによる大容量データの保存を両立している。
自宅のサーバーPCと連携できる「BR330/TA」
さらに、自宅のサーバーPC(デスクトップPC)を遠隔操作できる「PCリモーター」機能を搭載した「BR330/TA」も用意。インターネット環境さえあれば、同社のデスクトップPC「VALUESTAR R Lui」シリーズなど、「PCリモーターサーバボード」を搭載した自宅のデスクトップPCと連携できる。アプリケーションを同時に利用したり、Webサイト閲覧など軽い作業はネットブックで、動画編集など重たい作業はサーバーPCで行うといったような使い分けができる。
多言語辞書が豊富な富士通「FMV-BIBLO LOOX M」
富士通「FMV-BIBLO LOOX M」
「FMV-BIBLO LOOX M」は14種類もの電子辞書を備え、5製品中最多。電子辞書を搭載するネットブックの中でもその豊富さは目立つ。定番の国語、英和/和英辞典のほかにフランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・中国語などの各言語の辞書を収録している。
そのほか、富士通では「Loox M」よりもさらに小型な5.6型ワイド液晶のネットブック「FMV-BIBLO LOOX U」もラインアップ。何はなくとも携帯性を重視するというユーザーにはこちらも選択肢に入ってくるだろう。
独自の操作性が際立つシャープ「Mebius」
シャープ「Mebius」
「Mebius」の特徴は、なんといってもその操作性。キーボード下に「光センサー液晶パッド」を搭載し、ペンによる手描き入力と直感的なマルチタッチ操作が可能だ。
「光センサー液晶パッド」は、同社の電子辞書「Brain」のような文字入力に対応した液晶パネルで、ペン操作で絵やメモが書ける「手描きイラスト作成機能」を搭載するほか、読めない漢字を手描き入力することで意味を検索したりもできる。また、液晶にタッチセンサーを貼る必要がないため、図や写真を鮮明に表示できるのも特徴だ。
さらに同社では先日、フルキーボードを搭載した「モバイルインターネット端末」として「NetWalker PC-Z19」を発表した。タッチパネル付きの5型ワイド液晶を備え、一般的なネットブックよりも、さらに小さなインターネット端末。ネット利用が中心なら、この製品もかなり魅力的だ。
NetWalker PC-Z19
バッテリー駆動時間は約10時間と長く、約3秒という素早い起動も特徴で、スマートフォンとネットブックのちょうど中間にあるような存在。ネットブックの本分が、持ち運びやすくどこでもインターネットに接続できることだと考えるならば、その部分だけを特化しつつ、さらに小型化を図ったような製品。モバイルインターネットの本格的な普及のきっかけとなる可能性を秘めている製品だといえるだろう。
Office選択時は使用期限に注意
今回紹介した各社のネットブックは、モデルによっては統合ソフト「Microsoft Office」搭載の有無を選択できるようになっているが、ここで気をつけたいのがライセンス期限。09年4月以降、主なPCメーカーより出荷されるネットブックに搭載されるOfficeは、2年間の限定ライセンスとなっているのだ。
限定ライセンスの場合、購入から2年間は通常のOfficeとして利用できるのだが、その後はファイルの閲覧・印刷のみ可能で、新規作成・保存などができなくなる。2年経った後もそのまま使用したい場合は、別途通常版のパッケージを購入するか、12月発売予定の継続用ライセンスを購入する必要がある。
「Microsoft Office Personal 2007 2年間ライセンス版」永続版変換パッケージ
08年がネットブックの普及期だとすると、09年はよりユーザーの選択肢が広がった年といえる。当初、ネットブックは低価格を追求していたため、見た目の面ではどうしても横並びになりがちだった。しかし、最近は国内メーカーを中心に女性を意識したモデルなどが増加したことで、デザインも華やかになってきている。購入の際には製品ごとの特徴を把握し、実物を手にとってチェックした上で選びたい。(BCN・山田五大)
*BCNでは、08年以降に発売された製品で、液晶ディスプレイが12.1型以下、CPUにAtom系の低電圧CPUを搭載する製品を「ネットブック」と定義しています。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。