ハイスピードで市場を活性化――カシオが考えるデジカメの方向性とは
カシオ計算機がコンパクトデジタルカメラで新機軸を打ち出している。キーワードは「ハイスピード」。「高速連写」や「高速画像処理」でユーザー拡大を狙う。国内市場は台数・金額の前年割れと急速な単価下落で厳しさが増している。カシオはこの難局をどう乗り越えようとしているのか。重岡正之・営業本部国内営業統轄部QV企画部次長に、新機能の狙いや09年のデジタルカメラ事業の国内戦略についてインタビューした。
――09年の国内市場の見通しと製品戦略は。
「当社では09年度の一眼レフ・コンパクトを合わせたデジタルカメラの出荷台数を08年度と同水準の1100万台と予想している。ただ、現在の経済状況を考えると若干減少するだろう。価格下落についてはスタンダードモデルと呼ばれる普及機はこれからも歯止めなく続く。この厳しい市場環境にあって、当社では『ハイスピードテクノロジー』と呼ぶ技術を、コンパクトデジタルカメラの新しい価値として提案することで単価アップを図っていくつもりだ」
「『ハイスピードテクノロジー』は2つの機能で展開する。1つは文字通り、1秒間に写真や動画のコマをたくさん撮影できる『超高速連写・動画機能』。もう1つはカメラだけで写真の合成などを高速で行う『高速画像処理機能』だ。前者は『ハイスピード』、後者は『ダイナミックフォト』として製品に採用している」
ハイスピード機能を搭載したコンパクトデジタルカメラは、2月から順次発売した「HIGH SPEED EXILIM(ハイスピードエクシリム) EX-FC100」と「HIGH SPEED EXILIM EX-FS10」の2機種。ともに1秒間に30枚の高速連写と最大1000コマの高速動画が撮影できる。
一方、ダイナミックフォト機能では「EXILIM EX-Z400」「EXILIM EX-S12」「EXILIM EX-Z270」を1月から順次投入した。ダイナミックフォトは被写体の連写画像を使って簡易動画を作成し、撮影した背景写真と合成する機能。動画の作成から合成までをカメラだけで行える。
「2つはこれまでの写真の世界観を変える機能だと思っている。『ハイスピード』の機種は08年に『EX-F1』と『EX-FH20』を発売したが、サイズも比較的大きく、ハイアマチュアなどユーザーが限られていた。『EX-FC100』『EX-FS10』ではコンパクトサイズにして、一般ユーザーにまでターゲットを広げた。『一押し30枚連写で、日常の最高の瞬間が撮れる』がキャッチコピー。高速連写で日常の瞬間を切り取るため、被写体がカメラを意識することがなく、今まで見たことのない表情や動きの写真を撮ることができる。そういう意味では被写体に掛け声をかけて写真を撮る『ハイ、ポーズ』の時代は終わったと思っている」
「一方、『ダイナミックフォト』では新しい写真の楽しみ方を提案できると考えている。それは写真を合成して作る楽しみ、作った作品を仲間に見せるという楽しみだ。基本的には単価アップが見込める付加価値機能としてスタンダードモデルに搭載していく。作成した作品を公開する仕組みづくりにも取り組んでいこうと思っている。今後はそうしたサービスを行う企業とのコラボレーションも考えている」
――「ハイスピード」「ダイナミックフォト」を店頭でどう訴求するのか。
「店頭では『体感』をテーマに販売促進を進める。家電量販店などメーカーの専用コーナーがある店舗ではミニスタジオを設置して機能を体験してもらえるようにする。例えば、ハイスピードでは回るルーレットを撮影することで実感してもらったり、ダイナミックフォトではご当地モノの背景を用意して写真合成を楽しんでもらうようにする。我々としては、こうした販促を通じてコンパクトデジタルカメラ市場で25%の販売台数シェアを獲得したいと思っている」
「デジタルカメラは初心者でもキレイな写真を撮影できるように手ブレ補正や高感度などの機能が発達して来た。しかし、シャッターだけはオートになっていなかった。そこで、シャッターをオートにすれば誰もが求める理想の写真が撮れるのではと考えた。これが出発点になり、動く被写体を切り取っていくというハイスピードの発想にたどり着いた。こうしたアイデアは、『世の中にないモノを作り出し驚き感を与える』という、我々が経営理念で掲げるモノづくりの姿勢から生まれている」
――カシオ計算機が目指すデジタルカメラの方向性は。
「ごくごく普通の人が気軽に撮れる『究極のフルオートカメラ』だ。撮ることも自動になるハイスピード技術は今後、デジカメのスタンダード機能になると思っている。最終的にはハイスピードテクノロジーのモデルに製品を集約していく考えだ。その過程で高速連写機能とダイナミックフォトを1つのカメラに搭載することもあり得る。もちろん、画素などの基本性能の充実も図っていく。他社も追従して来るとは思うが、当社は様々なハイスピードの世界を提案できる自信がある。デジカメは厳しい状況が続いているが、当社のハイスピード技術は市場を活性化するトリガーになると確信している」(BCN・米山淳)adpds_js('http://ds.advg.jp/adpds_deliver', 'adpds_site=bcnranking&adpds_frame=waku_111365');
重岡正之・営業本部国内営業統轄部QV企画部次長
「高速連写」と「高速画像処理」を新機能で展開
――09年の国内市場の見通しと製品戦略は。
「当社では09年度の一眼レフ・コンパクトを合わせたデジタルカメラの出荷台数を08年度と同水準の1100万台と予想している。ただ、現在の経済状況を考えると若干減少するだろう。価格下落についてはスタンダードモデルと呼ばれる普及機はこれからも歯止めなく続く。この厳しい市場環境にあって、当社では『ハイスピードテクノロジー』と呼ぶ技術を、コンパクトデジタルカメラの新しい価値として提案することで単価アップを図っていくつもりだ」
「『ハイスピードテクノロジー』は2つの機能で展開する。1つは文字通り、1秒間に写真や動画のコマをたくさん撮影できる『超高速連写・動画機能』。もう1つはカメラだけで写真の合成などを高速で行う『高速画像処理機能』だ。前者は『ハイスピード』、後者は『ダイナミックフォト』として製品に採用している」
ハイスピード機能を搭載したコンパクトデジタルカメラは、2月から順次発売した「HIGH SPEED EXILIM(ハイスピードエクシリム) EX-FC100」と「HIGH SPEED EXILIM EX-FS10」の2機種。ともに1秒間に30枚の高速連写と最大1000コマの高速動画が撮影できる。
高速連写と高速動画を撮影できる
「HIGH SPEED EXILIM EX-FC100」(手前)と「HIGH SPEED EXILIM EX-FS10」
「HIGH SPEED EXILIM EX-FC100」(手前)と「HIGH SPEED EXILIM EX-FS10」
一方、ダイナミックフォト機能では「EXILIM EX-Z400」「EXILIM EX-S12」「EXILIM EX-Z270」を1月から順次投入した。ダイナミックフォトは被写体の連写画像を使って簡易動画を作成し、撮影した背景写真と合成する機能。動画の作成から合成までをカメラだけで行える。
ダイナミックフォト機能を搭載した「EXILIM EX-Z400」(右)と「EXILIM EX-S12」
「2つはこれまでの写真の世界観を変える機能だと思っている。『ハイスピード』の機種は08年に『EX-F1』と『EX-FH20』を発売したが、サイズも比較的大きく、ハイアマチュアなどユーザーが限られていた。『EX-FC100』『EX-FS10』ではコンパクトサイズにして、一般ユーザーにまでターゲットを広げた。『一押し30枚連写で、日常の最高の瞬間が撮れる』がキャッチコピー。高速連写で日常の瞬間を切り取るため、被写体がカメラを意識することがなく、今まで見たことのない表情や動きの写真を撮ることができる。そういう意味では被写体に掛け声をかけて写真を撮る『ハイ、ポーズ』の時代は終わったと思っている」
「一方、『ダイナミックフォト』では新しい写真の楽しみ方を提案できると考えている。それは写真を合成して作る楽しみ、作った作品を仲間に見せるという楽しみだ。基本的には単価アップが見込める付加価値機能としてスタンダードモデルに搭載していく。作成した作品を公開する仕組みづくりにも取り組んでいこうと思っている。今後はそうしたサービスを行う企業とのコラボレーションも考えている」
ダイナミックフォトで作成した合成写真のサンプル。
左は母親の誕生日用のグリーティグカード、右はイラストとの合成例
左は母親の誕生日用のグリーティグカード、右はイラストとの合成例
――「ハイスピード」「ダイナミックフォト」を店頭でどう訴求するのか。
「店頭では『体感』をテーマに販売促進を進める。家電量販店などメーカーの専用コーナーがある店舗ではミニスタジオを設置して機能を体験してもらえるようにする。例えば、ハイスピードでは回るルーレットを撮影することで実感してもらったり、ダイナミックフォトではご当地モノの背景を用意して写真合成を楽しんでもらうようにする。我々としては、こうした販促を通じてコンパクトデジタルカメラ市場で25%の販売台数シェアを獲得したいと思っている」
ハイスピード技術で目指すは“究極のフルオートカメラ”
――高速機能に着目した理由は。
「デジタルカメラは初心者でもキレイな写真を撮影できるように手ブレ補正や高感度などの機能が発達して来た。しかし、シャッターだけはオートになっていなかった。そこで、シャッターをオートにすれば誰もが求める理想の写真が撮れるのではと考えた。これが出発点になり、動く被写体を切り取っていくというハイスピードの発想にたどり着いた。こうしたアイデアは、『世の中にないモノを作り出し驚き感を与える』という、我々が経営理念で掲げるモノづくりの姿勢から生まれている」
――カシオ計算機が目指すデジタルカメラの方向性は。
「ごくごく普通の人が気軽に撮れる『究極のフルオートカメラ』だ。撮ることも自動になるハイスピード技術は今後、デジカメのスタンダード機能になると思っている。最終的にはハイスピードテクノロジーのモデルに製品を集約していく考えだ。その過程で高速連写機能とダイナミックフォトを1つのカメラに搭載することもあり得る。もちろん、画素などの基本性能の充実も図っていく。他社も追従して来るとは思うが、当社は様々なハイスピードの世界を提案できる自信がある。デジカメは厳しい状況が続いているが、当社のハイスピード技術は市場を活性化するトリガーになると確信している」(BCN・米山淳)adpds_js('http://ds.advg.jp/adpds_deliver', 'adpds_site=bcnranking&adpds_frame=waku_111365');