何が違う? デジタル一眼の初級モデルと中級モデル
「冬のボーナスで手に入れたいデジタル一眼」特集。連載3回目の今回は、初級モデルと、中級モデルでどういう点が違っているのかを紹介しよう。
デジタル一眼でよく聞く中級モデルという呼び方。初級モデルはなんとなくわかるけど、「中級」となると、何が変わってくるのだろう? たとえば、表面的なスペックである画素数や、ライブビューの有無といった部分で比べると、なかなか違いは見つけにくい。
しかし、価格の差は実際に存在している。今回、各社が初級モデルおよびプロ向けモデルと設定している製品を除いた製品で、ボディのみの実勢価格が30万円未満(08年12月8日-14日集計)の主だった製品を「中級者向けのデジタル一眼」とし、初級モデルと比較してみよう。
上の表でもわかるように、中級モデルにはボディのみで30万円弱というモデルもある。初級モデルでは、レンズキットを5万円前後で買える製品もあることを考えると、総じて割高だ。こういった価格差はどこから生じてくるのだろう? 具体的にポイントになるのが以下の要素だ。
まず、撮像素子とは、レンズから入ってくる光を受けて、デジカメ画像のもとを作り出す部品で、これが大きければ高画質な画像を記録できるため、画素数とともに、画質に大きく影響してくる部分だ。といっても、今回紹介する中級モデルのほとんどは、撮像素子に大きさが23.4×16.7mm前後の「APS-C」、もしくは17.3×13mmの「フォーサーズ」という、初級モデルと同様のサイズを使っている。
また中級モデルは、おおむね1200万画素以上の撮像素子を搭載しているが、今やエントリーモデルでも、1000万画素を超えるモデルはあたりまえの時代。撮影した映像を画像ファイルに変換する「画像エンジン」についても、初級モデルと中級モデルで大きな差はない。つまり、基本的な画質という点では同じレベルと考えていいだろう。
ただし、上の表で30万円前後とひときわ高価なモデル「D700」「EOS 5D Mark II」「α900」は別格。この3モデルは36×24mmの「35mmフルサイズ」と呼ばれる大きな撮像素子を搭載しているからだ。この撮像素子は、基本的にプロ向けの製品に多く搭載されているもので、生産が難しく、生産個数も少ないため、自然と高価になってしまう。
しかし撮像素子そのものが大きいので、同じ画素数でも余裕をもって設計でき、画像のノイズを抑えるなど、より高い画質を実現できる。さらに撮影感度を上げてもノイズの発生を抑えながら高画質を維持しやすいため、「フルサイズ」のデジタル一眼レフは、画質を優先するのプロやハイアマチュアに支持されている。
また、同じレンズを使って撮影する場合、構図が35mmフィルムカメラとほぼ同じになるため、フィルム時代に一眼レフカメラを使っていた人でも違和感なく撮影できるのも大きなメリットだ。
初級モデルのデジタル一眼では、軽量・低価格を実現するため、本体の素材にプラスチックが使われることが多い。一方、中級モデルは、プロがサブカメラとして利用する場合もあり、ちょっとやそっとでは壊れない頑丈さが必要。多くの場合で、マグネシウム合金を使った金属製のボディが採用されている。また、悪天候下での使用も想定し、防塵・防滴のために電池室やカードスロット部など、各所にシーリングが施されているモデルがほとんどだ。
また、シャッターの性能もポイント。中級モデルは、何か所にピントを合わせることができるかというフォーカスポイントの数が多く、シャッターを押してから、実際にシャッターが切れるまでの時間差、いわゆるレリーズタイムラグが小さい。さらに、毎秒何回シャッターが切れるかの連写性能などで中級モデルの方が優れていることが多い。また、シャッターの耐久性も高く、ほとんどの中級モデルで10万回を越えている。
たとえばソニーの中級モデル「α900」のフォーカスポイントは9点+アシスト10点で、レリーズタイムラグが約0.063秒なのに対し、初級モデル「α350」の場合はフォーカスポイント9点、レリーズタイムラグ約0.085秒と差がある。数字だけで見ると違いがわかりにくいが、ここだという決定的瞬間を狙うときは、こうしたわずかな差が重要になってくる。
デジタル一眼レフでは、レンズが捉えた画像をミラーで反射したのち、反射によって上下左右が逆になった映像を反転して、ファインダーへと導いている。この反転作業に、初級モデルの多くはミラーを用いている。一方、中級以上のモデルでは、ペンタプリズムと呼ばれるガラスを使用。ミラーに比べて精度が高くて明るく、ファインダーで見る映像がクリアになるのだが、その分高価になる。
また、ファインダーを通してみた被写体が、肉眼で見た場合と比較して、どのくらい大きさにずれがあるかを示すファインダー倍率が異なる。倍率が1.0に近いほど、被写体の確認やマニュアル撮影時のピント合わせがしやすくなる。もちろん、デジタル一眼レフの場合は、オートフォーカス機能が使えるのだが、マクロ撮影など、微妙な調整はやはりマニュアルでのピント合わせが必要な場面もあり、倍率が高い方が便利だ。
ちなみに、連載第1回目で紹介したモデルのファインダー倍率は、多くの場合35mmフィルム換算で0.4-0.5倍。それに対し、ここで紹介している中級モデルは、おおむね0.6倍。フルサイズの撮像素子を搭載したモデルでは、0.7倍にまで上昇する。
細かな差に見えるが、こういったカメラとしての基本性能が高くなれば、撮影の自由度が増し、シャッターチャンスの幅が広がる。ただし、高性能を実現するには、ひとつひとつの部品に非常に高い精度が要求されるため、自然と価格も高くなってしまうのだ。例としてニコンの初級モデル「D60」と中級モデル「D300」を比べてみよう。
★冬のボーナスで手に入れたいデジタル一眼特集
一見するとスペックは同等……違いはどこに?
デジタル一眼でよく聞く中級モデルという呼び方。初級モデルはなんとなくわかるけど、「中級」となると、何が変わってくるのだろう? たとえば、表面的なスペックである画素数や、ライブビューの有無といった部分で比べると、なかなか違いは見つけにくい。
しかし、価格の差は実際に存在している。今回、各社が初級モデルおよびプロ向けモデルと設定している製品を除いた製品で、ボディのみの実勢価格が30万円未満(08年12月8日-14日集計)の主だった製品を「中級者向けのデジタル一眼」とし、初級モデルと比較してみよう。
主だった中級モデルのデジタル一眼とその実勢価格(08年12月8日-14日集計)
上の表でもわかるように、中級モデルにはボディのみで30万円弱というモデルもある。初級モデルでは、レンズキットを5万円前後で買える製品もあることを考えると、総じて割高だ。こういった価格差はどこから生じてくるのだろう? 具体的にポイントになるのが以下の要素だ。
撮像素子
まず、撮像素子とは、レンズから入ってくる光を受けて、デジカメ画像のもとを作り出す部品で、これが大きければ高画質な画像を記録できるため、画素数とともに、画質に大きく影響してくる部分だ。といっても、今回紹介する中級モデルのほとんどは、撮像素子に大きさが23.4×16.7mm前後の「APS-C」、もしくは17.3×13mmの「フォーサーズ」という、初級モデルと同様のサイズを使っている。
また中級モデルは、おおむね1200万画素以上の撮像素子を搭載しているが、今やエントリーモデルでも、1000万画素を超えるモデルはあたりまえの時代。撮影した映像を画像ファイルに変換する「画像エンジン」についても、初級モデルと中級モデルで大きな差はない。つまり、基本的な画質という点では同じレベルと考えていいだろう。
ただし、上の表で30万円前後とひときわ高価なモデル「D700」「EOS 5D Mark II」「α900」は別格。この3モデルは36×24mmの「35mmフルサイズ」と呼ばれる大きな撮像素子を搭載しているからだ。この撮像素子は、基本的にプロ向けの製品に多く搭載されているもので、生産が難しく、生産個数も少ないため、自然と高価になってしまう。
撮像素子のサイズ比較
しかし撮像素子そのものが大きいので、同じ画素数でも余裕をもって設計でき、画像のノイズを抑えるなど、より高い画質を実現できる。さらに撮影感度を上げてもノイズの発生を抑えながら高画質を維持しやすいため、「フルサイズ」のデジタル一眼レフは、画質を優先するのプロやハイアマチュアに支持されている。
また、同じレンズを使って撮影する場合、構図が35mmフィルムカメラとほぼ同じになるため、フィルム時代に一眼レフカメラを使っていた人でも違和感なく撮影できるのも大きなメリットだ。
ボディ
初級モデルのデジタル一眼では、軽量・低価格を実現するため、本体の素材にプラスチックが使われることが多い。一方、中級モデルは、プロがサブカメラとして利用する場合もあり、ちょっとやそっとでは壊れない頑丈さが必要。多くの場合で、マグネシウム合金を使った金属製のボディが採用されている。また、悪天候下での使用も想定し、防塵・防滴のために電池室やカードスロット部など、各所にシーリングが施されているモデルがほとんどだ。
また、シャッターの性能もポイント。中級モデルは、何か所にピントを合わせることができるかというフォーカスポイントの数が多く、シャッターを押してから、実際にシャッターが切れるまでの時間差、いわゆるレリーズタイムラグが小さい。さらに、毎秒何回シャッターが切れるかの連写性能などで中級モデルの方が優れていることが多い。また、シャッターの耐久性も高く、ほとんどの中級モデルで10万回を越えている。
たとえばソニーの中級モデル「α900」のフォーカスポイントは9点+アシスト10点で、レリーズタイムラグが約0.063秒なのに対し、初級モデル「α350」の場合はフォーカスポイント9点、レリーズタイムラグ約0.085秒と差がある。数字だけで見ると違いがわかりにくいが、ここだという決定的瞬間を狙うときは、こうしたわずかな差が重要になってくる。
ファインダー
デジタル一眼レフでは、レンズが捉えた画像をミラーで反射したのち、反射によって上下左右が逆になった映像を反転して、ファインダーへと導いている。この反転作業に、初級モデルの多くはミラーを用いている。一方、中級以上のモデルでは、ペンタプリズムと呼ばれるガラスを使用。ミラーに比べて精度が高くて明るく、ファインダーで見る映像がクリアになるのだが、その分高価になる。
また、ファインダーを通してみた被写体が、肉眼で見た場合と比較して、どのくらい大きさにずれがあるかを示すファインダー倍率が異なる。倍率が1.0に近いほど、被写体の確認やマニュアル撮影時のピント合わせがしやすくなる。もちろん、デジタル一眼レフの場合は、オートフォーカス機能が使えるのだが、マクロ撮影など、微妙な調整はやはりマニュアルでのピント合わせが必要な場面もあり、倍率が高い方が便利だ。
ちなみに、連載第1回目で紹介したモデルのファインダー倍率は、多くの場合35mmフィルム換算で0.4-0.5倍。それに対し、ここで紹介している中級モデルは、おおむね0.6倍。フルサイズの撮像素子を搭載したモデルでは、0.7倍にまで上昇する。
細かな差に見えるが、こういったカメラとしての基本性能が高くなれば、撮影の自由度が増し、シャッターチャンスの幅が広がる。ただし、高性能を実現するには、ひとつひとつの部品に非常に高い精度が要求されるため、自然と価格も高くなってしまうのだ。例としてニコンの初級モデル「D60」と中級モデル「D300」を比べてみよう。
両者の撮像素子のサイズは同じで画素数にもさほど差はない。しかし、ボディの素材やファインダーが違うし、連写速度(D60は毎秒3コマ、D300は6コマ)やフォーカスポイント(D60は3点、D300は51点)も「D300」が優れている。このように複数の要素が積み重なって両者の性能差=価格差ができあがっているといえるだろう。
このように、中級モデルのデジタル一眼は、初級モデルと比べ、撮影道具としての快適さや信頼性が大きく違ってくる。この目に見えにくいが、実際に使ってみたときに初めてわかる性能差が、価格差を生んでいるといえるだろう。本格的な写真を楽しんで、デジタル一眼と長く付き合っていきたいという人は、初級モデルを飛び越えて、いきなり中級モデルを購入してみるものいいかもしれない。連載第4回は、交換レンズの売れ筋をマウント別に紹介する。(BCN・山田五大)
★冬のボーナスで手に入れたいデジタル一眼特集