「D3X」で発売前に試し撮り! ニコンの頂点に立つデジタル一眼の画質は?
ニコンが12月1日に発表し、19日に発売するプロ向けのデジタル一眼レフカメラ「D3X」。35mmフルサイズ「FXフォーマット」で2450万画素と非常に高精細なCMOS撮像素子を搭載し、実勢価格が89万8000円前後と、まさにプロ御用達のカメラだ。ニコンのデジタル一眼レフの頂点に君臨するこのカメラの実力を実際に試してもらおうと、同社では12月3日、Web系メディアを集めて製品説明と試写の体験イベントを開いた。その模様と、実際に撮影した画像をご紹介しよう。
最初に「D3X」のプロダクトマネージャーを務めるニコン・映像カンパニーの梶英信副主幹が製品説明を行った。まず、ボディに関しては「D3」と「D3X」はほぼ同じだ。ロゴを見なければ一目では区別がつかない。操作性もほとんど同一で、「D3」と「D3X」を持ち替えても全く違和感なく撮影できるようにしたという。
多くの部分で両モデルの仕様は共通だが、大きく異なるポイントがいくつかある。最大の違いは撮像素子。2450万画素とD3と比べ倍以上の高画素数のセンサーを採用した。梶副主幹によると「供給元はソニーだが、あらゆる部分でニコン独自のチューニングを施しており、ソニーのα900の撮像素子とは全くの別物」だという。D3との価格の差は「ひとえにこの撮像素子によるもの」(梶副主幹)と説明した。さらに本体内のメモリ容量もD3の倍に増量しており、こうした基本機能の強化を価格に反映している。
次に異なるのがISO感度。D3の常用感度が200-6400と広いのに対し、D3Xは100-1600とやや狭い。圧倒的な高精細画像を撮影することができるカメラとして位置づけ、感度よりも画質を選択した結果だ。そのため、画像のそのものの緻密さが要求されるネイチャーフォトやスタジオでのファッション・ビューティー・商品撮影など、まさにプロフェッショナルな用途で使うカメラといっていいだろう。
こうした画質優先の仕様は毎秒の連写速度にも影響している。FXフォーマット時にD3では最高で秒9コマだったのに対し、D3Xでは秒5コマと遅い。画素数が倍増した分1カットのデータ量がRAWモードで最大50.6MBと倍増したためで、ある程度やむをえないところだ。ただ、スタジオの大型ストロボを使った撮影では、ストロボのチャージ時間が必要なため高速連写はできない。用途を考えれば十分なコマ速といえそうだ。
また、コントラストの強い状況でも諧調を残しながら撮影することができる「アクディブ D-ライティング」も強化。D3では、「強め」「標準」「弱め」の3段階だったが、それに「オート」と「より強め」を加えた5段階に増やした。その他細かいところでは、より省電力になり1コマ撮影モードでの連続撮影コマ数が4300から4400に増えたほか、本体重量も1220gと20gほど軽くなっている。新しい撮像素子にはADコンバータが内蔵されているため、取り付け部分の構造がシンプルになり軽量化につながった。
ところで、ニコンのFXフォーマットは35mmフルサイズの36×24mmに比べほんの少し小さい。D3やD700は36.0×23.9mm。一方D3Xは35.9×24mmだ。こうした微妙な違いが生じる理由について、梶副主幹は「有効画素数内にあるイメージサークルをフルに機能させるために、開発時点で最適なところを探す。そのためセンサーによって最適な値が若干異なり、微妙なサイズの違いを生んでいる」と説明した。
会場には、名物レンズの「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED」や12月5日に発売する「AF-S NIKKOR 50mm F1.4G」をつけたD3Xを3台並べ、撮影の操作感を確かめられるようになっていた。これだけそろえると総額は331万5600円にものぼり、手に取るだけでも緊張してしまう。そのまわりにはD3Xで撮って全紙に引き伸ばした作例が9点展示されていた。いずれも35mm判の一眼レフで撮ったとは思えないほどクオリティの高い写真ばかり。同社ではブローニーフィルムを使う6×6や6×7、6×9といった中判カメラに匹敵する画質としており、価格の高さもうなずける。
D3Xは、見た目もさることながら、操作感やシャッター音もD3とそっくり。D3ユーザーなら何の迷いもなくすぐに使いこなすことができるだろう。逆に似すぎていて、撮影の現場で取り違えてしまうこともあるかもしれない。グリップを握ったときに、明らかにわかるようなちょっとした仕掛けがほしかった。
また、会場の片隅には、「AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G (IF)」をつけたD3Xを三脚に載せた状態でセットした「物撮り」の体験コーナーもあった。製品説明に続いて、各参加者がここで実際に撮影してみる趣向だ。被写体はテーブルクロスの上に並べたカラフルなキャンディーや小さな置物。左右にレフ版を置き、真上からソフトボックスに入れたモノブロックストロボで照らして撮影した。
まず、ISOを100にセットし、シャッタースピードを250分の1、絞りはストロボの光量に合わせてF16で撮影してみた。カラーバランスはストロボモードにセットし、その他の設定はデフォルトの状態だ。最初に気がつくのは高画素数センサーの実力の高さ。犬のディテールの細やかさや、砂糖をまぶしたキャンディーの質感はすばらしいの一言。後ろにあるガラスももよく表現できている。一方、ノイズは非常に少なく滑らかな画像だ。
次に、ISO感度別にどれくらい画像にノイズが乗ってくるかを確かめるために、感度を上げながら撮影してみた。セッティングは上記と同じだが、露出の調整が難しいためストロボは使用せず、モノブロックストロボのモデリングランプのみでライティングした。
露出は絞りF4の絞り優先オート・マルチパターン測光でカメラ任せ。カラーバランスはタングステンモードを使用した。0.3段刻みのオートブラケットで撮ったが、最も状態がよかった+0.3段の画像を比べてみることにする。ストロボ使用時に比べ、カラーバランスが若干異なるが、撮影時のままの画像を見て頂くために一切加工は施していない。この点ご容赦願いたい。
ISO 100ではストロボ使用時と同じく滑らかな画像だ。絞りを4と開け気味にしているので、前後が大きくボケているが、その部分でもノイズは少なくきれいにボケている。ISO 200では、ほんのわずかにノイズが乗ってきているが、ほとんど影響ないレベルだ。
ISO 400になると、少しノイズが増え始める。しかし、このあたりまでなら十分美しいレベルといっていいだろう。ISO 800になると、明らかにノイズが増えてくる。この感度での撮影は被写体を選んだほうがよさそうだ。1600では暗部を中心にかなりノイジーな画像になってくる。ノイズに関しては、だいたいISO 400あたりまでが安全域と考えてよさそうだ。
同社では「D3」と「D3X」を併売する予定で、それぞれ異なった用途のカメラとして使い分けてほしいとしている。「D3」は連写速度の速さや高感度でもノイズが少ない特徴を活かし、スポーツや報道といった用途や、三脚を使わずに撮影するポートレートなどで威力を発揮する。もちろん価格が「比較的」安いので、ハイアマチュアのメインカメラとしてもいいだろう。
一方「D3X」は、画質の高さが最優先される場合に使うカメラ。スタジオのように照明を完全にコントロールできる環境や、三脚でカメラを固定して雄大な自然を撮るような際に真価を発揮するだろう。また、機動性の高い中判という位置づけで手持ち撮影も可能だが、手ぶれを補正するVRレンズとの組み合わせ、さらに十分なスピードでシャッターが切れる時に限定したい。これだけの画素数が多くなると小さなブレでも目立ってしまう。三脚も可能な限りガッチリしたもの使ってしっかり撮りたいカメラだ。
ところで、ほぼ1年の間に3機種もフルサイズモデルを出したニコン。同社のデジタル一眼は今後フルサイズに収斂していくということになるのだろうか? 梶副主幹に今後の戦略をたずねると「現在、APS-CのDXフォーマットと35mmフルサイズのFXフォーマットの2つの系統があるが、いずれどちらかに収斂させるということではない。どちらのフォーマットにもニーズがあり、お客様の声を聞きながら両方のフォーマットを並存させていく」と語った。
今年はフルサイズのデジタル一眼が数多く登場した年だった。ニコンの「D700」、ソニーの「α900」、キヤノンの「EOS 5D MarkII」、そしてニコンの「D3X」。BCNランキングで集計したデジタル一眼レフに占めるフルサイズモデルの10月現在の構成比は、台数が3.1%と少ないものの、金額では10.3%と既に1割を超えている。画質がいいフルサイズはプロだけでなくアマチュアでも選択する人が増えており、今後しばらくは、フルサイズデジタル一眼の拡大基調は続くと考えてよさそうだ。(BCN・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで123品目を対象としています。
どこがどう違う? D3とD3X
最初に「D3X」のプロダクトマネージャーを務めるニコン・映像カンパニーの梶英信副主幹が製品説明を行った。まず、ボディに関しては「D3」と「D3X」はほぼ同じだ。ロゴを見なければ一目では区別がつかない。操作性もほとんど同一で、「D3」と「D3X」を持ち替えても全く違和感なく撮影できるようにしたという。
「D3X」のボディは「D3」とほぼ同じ。異なるのはロゴくらい
多くの部分で両モデルの仕様は共通だが、大きく異なるポイントがいくつかある。最大の違いは撮像素子。2450万画素とD3と比べ倍以上の高画素数のセンサーを採用した。梶副主幹によると「供給元はソニーだが、あらゆる部分でニコン独自のチューニングを施しており、ソニーのα900の撮像素子とは全くの別物」だという。D3との価格の差は「ひとえにこの撮像素子によるもの」(梶副主幹)と説明した。さらに本体内のメモリ容量もD3の倍に増量しており、こうした基本機能の強化を価格に反映している。
背面液晶で、メニューから画像サイズを選択すると、
画素数が大幅に増えたのが確認できる。
画素数が大幅に増えたのが確認できる。
次に異なるのがISO感度。D3の常用感度が200-6400と広いのに対し、D3Xは100-1600とやや狭い。圧倒的な高精細画像を撮影することができるカメラとして位置づけ、感度よりも画質を選択した結果だ。そのため、画像のそのものの緻密さが要求されるネイチャーフォトやスタジオでのファッション・ビューティー・商品撮影など、まさにプロフェッショナルな用途で使うカメラといっていいだろう。
こうした画質優先の仕様は毎秒の連写速度にも影響している。FXフォーマット時にD3では最高で秒9コマだったのに対し、D3Xでは秒5コマと遅い。画素数が倍増した分1カットのデータ量がRAWモードで最大50.6MBと倍増したためで、ある程度やむをえないところだ。ただ、スタジオの大型ストロボを使った撮影では、ストロボのチャージ時間が必要なため高速連写はできない。用途を考えれば十分なコマ速といえそうだ。
心臓部のフルサイズCMOS撮像素子はソニー製だが、
ニコン独自の徹底的なチューニングが施されている
ニコン独自の徹底的なチューニングが施されている
また、コントラストの強い状況でも諧調を残しながら撮影することができる「アクディブ D-ライティング」も強化。D3では、「強め」「標準」「弱め」の3段階だったが、それに「オート」と「より強め」を加えた5段階に増やした。その他細かいところでは、より省電力になり1コマ撮影モードでの連続撮影コマ数が4300から4400に増えたほか、本体重量も1220gと20gほど軽くなっている。新しい撮像素子にはADコンバータが内蔵されているため、取り付け部分の構造がシンプルになり軽量化につながった。
ところで、ニコンのFXフォーマットは35mmフルサイズの36×24mmに比べほんの少し小さい。D3やD700は36.0×23.9mm。一方D3Xは35.9×24mmだ。こうした微妙な違いが生じる理由について、梶副主幹は「有効画素数内にあるイメージサークルをフルに機能させるために、開発時点で最適なところを探す。そのためセンサーによって最適な値が若干異なり、微妙なサイズの違いを生んでいる」と説明した。
さすがの高画質。ブローニー判カメラの代替にも
会場には、名物レンズの「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED」や12月5日に発売する「AF-S NIKKOR 50mm F1.4G」をつけたD3Xを3台並べ、撮影の操作感を確かめられるようになっていた。これだけそろえると総額は331万5600円にものぼり、手に取るだけでも緊張してしまう。そのまわりにはD3Xで撮って全紙に引き伸ばした作例が9点展示されていた。いずれも35mm判の一眼レフで撮ったとは思えないほどクオリティの高い写真ばかり。同社ではブローニーフィルムを使う6×6や6×7、6×9といった中判カメラに匹敵する画質としており、価格の高さもうなずける。
3台と3本のレンズで331万5600円!
ズラリ並んだD3Xの雄姿。後の作例を見ればそのクオリティに納得。
ズラリ並んだD3Xの雄姿。後の作例を見ればそのクオリティに納得。
D3Xは、見た目もさることながら、操作感やシャッター音もD3とそっくり。D3ユーザーなら何の迷いもなくすぐに使いこなすことができるだろう。逆に似すぎていて、撮影の現場で取り違えてしまうこともあるかもしれない。グリップを握ったときに、明らかにわかるようなちょっとした仕掛けがほしかった。
また、会場の片隅には、「AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G (IF)」をつけたD3Xを三脚に載せた状態でセットした「物撮り」の体験コーナーもあった。製品説明に続いて、各参加者がここで実際に撮影してみる趣向だ。被写体はテーブルクロスの上に並べたカラフルなキャンディーや小さな置物。左右にレフ版を置き、真上からソフトボックスに入れたモノブロックストロボで照らして撮影した。
「物撮り」体験コーナー。
参加者はCFカードを持参すれば撮影データを持ち帰ることができた。
参加者はCFカードを持参すれば撮影データを持ち帰ることができた。
まず、ISOを100にセットし、シャッタースピードを250分の1、絞りはストロボの光量に合わせてF16で撮影してみた。カラーバランスはストロボモードにセットし、その他の設定はデフォルトの状態だ。最初に気がつくのは高画素数センサーの実力の高さ。犬のディテールの細やかさや、砂糖をまぶしたキャンディーの質感はすばらしいの一言。後ろにあるガラスももよく表現できている。一方、ノイズは非常に少なく滑らかな画像だ。
ISO感度の安全域は400ぐらいまでか? キッチリした灯りで撮りたい
次に、ISO感度別にどれくらい画像にノイズが乗ってくるかを確かめるために、感度を上げながら撮影してみた。セッティングは上記と同じだが、露出の調整が難しいためストロボは使用せず、モノブロックストロボのモデリングランプのみでライティングした。
D3Xと「AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G (IF)」
で三脚を使用して撮影
で三脚を使用して撮影
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]
ISO 100ではストロボ使用時と同じく滑らかな画像だ。絞りを4と開け気味にしているので、前後が大きくボケているが、その部分でもノイズは少なくきれいにボケている。ISO 200では、ほんのわずかにノイズが乗ってきているが、ほとんど影響ないレベルだ。
ISO 400になると、少しノイズが増え始める。しかし、このあたりまでなら十分美しいレベルといっていいだろう。ISO 800になると、明らかにノイズが増えてくる。この感度での撮影は被写体を選んだほうがよさそうだ。1600では暗部を中心にかなりノイジーな画像になってくる。ノイズに関しては、だいたいISO 400あたりまでが安全域と考えてよさそうだ。
ツートップ体制で臨むFXフォーマット、DXフォーマットはどうなるの?
同社では「D3」と「D3X」を併売する予定で、それぞれ異なった用途のカメラとして使い分けてほしいとしている。「D3」は連写速度の速さや高感度でもノイズが少ない特徴を活かし、スポーツや報道といった用途や、三脚を使わずに撮影するポートレートなどで威力を発揮する。もちろん価格が「比較的」安いので、ハイアマチュアのメインカメラとしてもいいだろう。
一方「D3X」は、画質の高さが最優先される場合に使うカメラ。スタジオのように照明を完全にコントロールできる環境や、三脚でカメラを固定して雄大な自然を撮るような際に真価を発揮するだろう。また、機動性の高い中判という位置づけで手持ち撮影も可能だが、手ぶれを補正するVRレンズとの組み合わせ、さらに十分なスピードでシャッターが切れる時に限定したい。これだけの画素数が多くなると小さなブレでも目立ってしまう。三脚も可能な限りガッチリしたもの使ってしっかり撮りたいカメラだ。
「D3X」と「D3」は併売する。ニコンは用途に応じた使い分けを提唱
ところで、ほぼ1年の間に3機種もフルサイズモデルを出したニコン。同社のデジタル一眼は今後フルサイズに収斂していくということになるのだろうか? 梶副主幹に今後の戦略をたずねると「現在、APS-CのDXフォーマットと35mmフルサイズのFXフォーマットの2つの系統があるが、いずれどちらかに収斂させるということではない。どちらのフォーマットにもニーズがあり、お客様の声を聞きながら両方のフォーマットを並存させていく」と語った。
今年はフルサイズのデジタル一眼が数多く登場した年だった。ニコンの「D700」、ソニーの「α900」、キヤノンの「EOS 5D MarkII」、そしてニコンの「D3X」。BCNランキングで集計したデジタル一眼レフに占めるフルサイズモデルの10月現在の構成比は、台数が3.1%と少ないものの、金額では10.3%と既に1割を超えている。画質がいいフルサイズはプロだけでなくアマチュアでも選択する人が増えており、今後しばらくは、フルサイズデジタル一眼の拡大基調は続くと考えてよさそうだ。(BCN・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで123品目を対象としています。