無料で街案内! 「ポータブルGPS」が街歩きを楽しくする
●無料で道案内してくれる、それがポータブルGPS
「ポータブルGPS」とは、地図データとGPS(全地球測位システム)を利用して、現在位置や目的地までの道のりを検索することができる端末のこと。自動車に搭載するカーナビを小型化し、ポータル機器として外に持ち出せるようにしたものとイメージしてもらいたい。手のひらサイズのコンパクトなボディに、3.5型-6型サイズの液晶を搭載、地図情報と連携した店舗情報や、目的地までの道のりを表示する。
本体にフラッシュメモリやHDDを搭載する機種とSDメモリカードなどの外部メモリを使用する機種があるが、どちらの場合も、地図データをあらかじめPC経由でインストールする必要がある。地図情報を登録することで、携帯電話のナビ機能のようにマップ切替時のデータ取得に絡むタイムラグは発生しないので、スムーズなナビゲーションサービスを利用することが可能。
操作も簡単で配置されるボタンなども少なく、タッチパネルやスタイラス(入力ペン)、十字キーによる直感的な操作が行える。大きな液晶画面と相まって、「1歩先・1区画先を読む」という意味でも余裕を持ってナビゲーション機能を利用することができる。
携帯電話にもGPSが搭載されるようになり、auの人ナビサービス「EZナビウォーク」やナビタイムの地図検索サービス「NAVITIME」といった携帯電話向けナビゲーションサービスが普及してきている。ポータブルGPSは形状や利便性などから、携帯電話と比較されがちだが、ポータブルGPSはカーナビと同様にすべてのサービスを無料で利用することができる点で大きく異なる。携帯電話のようなデータ通信を用いたコンテンツサービスはないものの、「目的の場所に行く」というGPSナビゲーション本来の利便性は、無料で存分に利用できる。
また、1つの移動手段だけでなく徒歩や自動車、自転車と異なる移動手段を幅広くサポートしている。あらかじめ車載用のスタンドや自転車・バイク用の取り付けステーなどが同梱されているものもあり、携帯性ということだけでなく、こうした使う場所を選ばない万能性もポータブルGPS魅力の1つだ。
●歩行者向けから簡易型カーナビなど、種類はさまざま
ポータブルGPSといっても、その種類は1つだけではない。駅の出口情報や路線検索機能などが充実する歩行者向けの製品もあれば、交差点の拡大表示、高速道路情報など交通情報がメインのカーナビ寄りのものもある。さらには、携帯ゲーム機に専用レシーバーをアタッチすることでポータブルGPSとして活用できる製品もでてきている。これらのカテゴリの中から、いくつか代表的な機種をピックアップし、その特徴などを解説していくことにしよう。
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■歩行者向けポータブルGPS
駅検索や駅の出入口情報など、街歩き機能が充実している。徒歩モード以外にも自動車モードや自転車モードでのルート検索や、それに付随した情報が表示される。ビジネスからホビーまで幅広く活躍できるカテゴリだ。
製品名:C325
メーカー:マイタック
スペック
・OS:Windows CE.Net
・液晶:480×272ピクセル 4.3インチ液晶
・内蔵メモリ:2GB
・拡張スロット:SD/MMCスロット×1
・入力方式:タッチパネル/オンスクリーン・ソフト・キーボード
・外形寸法:幅126×奥行き20×高さ81mm
・質量:約190g
・バッテリ駆動時間:約4時間
サクサク小気味よく使える地図データ「MioMap」に加え、細かい番地表示や建物の形状まで表示してくれる高精細地図「昭文社ポケットマップデジタル」の2つのデジタルマップを搭載する。見やすさ優先と精度重視に分けられ、用途に合わせて快適なナビゲーションを利用できる。駅検索や駅出入口情報など街歩きに便利な機能も用意し、震災時の避難情報などもしっかりサポートする。また移動手段に応じて「徒歩モード」「自転車モード」「自動車モード」3つの経路探索が行え、標準で車載用スタンドと自転車/バイク取り付けブラケットを付属する。
■車載優先型ポータブルGPS
PND(簡易型カーナビ)として注目を集めるカテゴリ。基本的な機能は「歩行者向けポータブルGPS」とほぼ同じだが、カーナビメーカー製品ということもあり、ソニーやクラリオン、三洋電機など、お馴染みのカーナビメーカーが独自のノウハウを惜しみなく投入している。3D表示や俯瞰ビュー、充実のルート検索機能など、マップの見やすさやナビゲーション機本来の使いやすさを持つ。カーナビとポータルGPSの長所を併せ持ったカテゴリといえる。
製品名:mini GORILLA NV-SB360DT
メーカー:サンヨー
スペック
・液晶:4.8型ワイド液晶 345,600画素
・内蔵メモリ:4GB
・入力方式:タッチスクリーン
・外形寸法:幅128×奥行き26.2×高さ85mm
・質量:約310g
・バッテリ駆動時間:約4時間
三洋電機のカーナビブランド「GORILLA(ゴリラ)」のポータブルGPS。4GBの大容量内蔵メモリを搭載し、カーナビメーカーならではのノウハウに基づく3D表示機能や、上空から前方を見渡すゴリラビューなどリアルな表示モードを持つ地図データを搭載する。カーナビではお馴染みの電話番号による目的地検索もサポートし、ワンセグをはじめとしたエンタテイメント機能も充実している。
■PDA型ポータブルGPS
PDAにポータブルGPS機能を搭載するカテゴリ。ナビゲーション機能では徒歩モードに加え、自転車モードや自動車モードを備える機種が多く、PDAの外観・性能を保ちつつも幅広いシチュエーションでの使用が可能。また、無線LANやBluetoothといった通信機能も備える。
製品名:iPAQ rx5965 Travel Companion
メーカー:HP
スペック
・OS:Windows CE.Net
・液晶:320×240ドット 3.5インチ透過型カラーTFT液晶
・内蔵メモリ:2GB
・拡張スロット:SD/MMCスロット×1
・無線インターフェース:IEEE801.11b/g Bluetooth
・入力方式:タッチスクリーン
・外形寸法:幅120.5×奥行き16.5×高さ76mm
・質量:約170g
・バッテリ駆動時間:約5.5時間
HPのGPSを搭載したPDA。地図データは日本全国を網羅した地図情報と充実した機能を持つビーマップ「b-Walker for iPAQ Navi」を採用。無線LANやBluetoothといったインターフェースも備える。付属の車載キットを用いれば、カーナビとしての使用も可能。「Windows Media Player 10 Mobile」をはじめとするエンタテイメント機能が豊富なのも大きな特徴だ。
■その他のポータブルGPS
ポータブルGPSは意外に奥が深く、上記のいずれのカテゴリにも属さない製品もある。携帯ゲーム機を利用したポータブルGPSや、登山やトレッキングなど過酷な条件下での使用が想定されたヘビーデューティー仕様の製品だ。
製品名:COLORAODO300
メーカー:ガーミン
スペック
・液晶:240×400ピクセル 半透過型液晶ディスプレイ
・拡張スロット:SDメモリカード
・入力方式:ロックン・ローラー
・外形寸法:幅61mm×高さ140mm×厚み36mm
・質量:212g(電池込み)
・バッテリ駆動時間:約10時間
本格的なトレッキングの必携ツールとして設計されたポータブルGPS。無線LAN搭載で、同機種を持つ仲間と軌跡・ルート・ポイントといった情報を共有することができる。「ロックンローラー」と呼ばれるパッド式の操作性は、シンプルで直感的。電子コンパスを備え、瞬時に自分の向く方向を指し示すことができる。気圧高度計は微妙なアップダウンもしっかり記録。ヘビーデューティー派にオススメの1台だ。
製品名:PSP-290
メーカー:SCE
携帯ゲーム機「PSP」専用のGPSレシーバー。エディア「MAPLUSポータブルナビ」や、ゼンリン「みんなの地図2」などの地図ソフトと組み合わせて利用することで、本格的なポータブルGPSとして活用できる。「PSP」を持っていれば、安価でポータブルGPSを導入できる。
●道路や街、海外もナビゲーション
特徴や製品について説明してきたが、では実際にどういった活用方法があるのだろうか。1つは、やはりカーナビとしての活用が挙げられる。日本ではカーナビといえば、自動車を購入した際に標準装備されたり、後付けで取り付けるインダッシュ型が一般的だが、欧米では、カーナビといえばポータブルGPSの1つに挙げたPND(簡易型カーナビ)をさすというぐらい普及しているという。
カーナビはおおむね10-20万円という高額なのに対して、PNDは5万円前後から購入可能。日常的に運転はしないが、ナビゲーションシステムは利用したいといった人にはPNDで十分だろう。最近では、ワンセグ受信やHDD搭載モデルなど高機能なモデルも発売している。道案内という基本的なナビゲーションを存分に活用でき、目的地についてから取り外し、ポータブルGPSとして街案内をしてもらうという使い方もできる。また、ポータブルGPSが1台あれば、自動車を複数台所有する場合も乗せ変えて利用することができる。
そのほか、山登りや旅行などの趣味を生かした活用方法もある。ポータブルGPSは衛星通信を使用するため、携帯電話のように圏外になることはない。正確な位置情報を把握でき、安心して山登りを楽しむことができる。
また、ガーミンなどの海外メーカー製品は、海外での使用にも対応する。別売りの海外マップソースをあらかじめインストールしておけば、海外でもナビゲーションシステムを利用することができる。旅行先での街情報を記録すれば、「自分だけの旅行ガイド」を作ることも可能だ。
「ポータブルGPS」1台でカーナビから街ナビ、ワンセグTVや旅行ガイドなど、いろいろな使い方ができることがわかった。無線LANや衛星通信などの通信技術と、「Google Map」や「ぐるなび」などのサービスとの連携がさらに進めば、携帯電話や携帯オーディオのように、一般的なモバイル機器の1つとして定着するかもしれない。(フリーライター・市川昭彦)