ついに解禁! PC用の地デジチューナー、導入ポイントとオススメ製品は?
自作PCユーザーの悲願だった「PCでの地上デジタル放送の視聴」。それを実現するPC用地上デジタルチューナーが4月7日に解禁された。5月中旬には早くも製品が市場へと出回りはじめ、大きな話題を呼んでいる。そこで、手持ちのPCで地デジを楽しむポイントとオススメ製品をまとめた。
●なぜ、このタイミング?
PCでの地上デジタル放送の視聴は、これまでにも地上デジタルチューナーを搭載したメーカー製PCでは可能だった。しかし、パーツ単体としての地デジチューナーの販売は放送業界からの規制もあり禁止されていた。今回、突然解禁することになった背景には、地デジへの完全移行を前に、デジタル放送の普及をより加速させたいという放送業界の思惑がありそうだ。
この地デジチューナー、簡単に言えば「手持ちのPCに組み込むだけで地上デジタル放送の視聴が可能になるパーツ」ということになる。PCとの接続方式は、PCIやPCI-Expressスロットに差す内蔵タイプと、USBコネクタと接続して使う外付けタイプの2種類が存在する。
こうしたTVチューナーというと、ワンセグチューナーを思い浮かべる人も多いことだろう。ワンセグも地上デジタル放送の一種ではあるが、ワンセグは地上デジタル放送で使っている13のセグメント分の帯域のうち、1セグメントだけを使用するので、解像度は320×240(または320×180)ピクセルと低く、映像も不安定。あくまでもポータブル機器向けの放送規格だ。
対して、残りの12セグメントを使用する「フルセグ」の地デジチューナーは、最大で1920×1080のフルHD放送を視聴・録画することができる。つまり、薄型テレビ同様に、地デジ放送をフルに視聴できるということになる。簡単に楽しめる一方画像が荒いワンセグとは、同じTVチューナーとはいえ、全く違うものと考えたほうがいいだろう。
●話題の地デジチューナー、その特徴を総ざらい
それでは実際の製品を見ていこう。既に詳細を発表しているピクセラやアイ・オー・データ機器、バッファローの代表的な地デジチューナーの特徴と、ユーザーニーズ別の「オススメの1台」を紹介する。
「1台ですべての視聴環境を揃えたい」なら、ピクセラの「PIX-DT012-PP0」がオススメだ。地上デジタル放送に加え、BS、110度CSの3波に対応したPCI接続型の地デジチューナー。ハイビジョン視聴や録画はもちろん、EPGと連動した番組予約も可能。また、録画中のHDDの空き容量がなくなると自動的に他のHDDに切り替えて保存を行う「リリーフ録画」機能など、多彩な録画機能を備えている。
現時点ではBlu-ray Disc(BD)やDVDへのムーブ・ダビング機能はサポートしていないが、6月のアップデートで対応する予定。大手PCメーカーに対する地デジパーツ供給ではトップの実績を持つピクセラだけに、製品としての完成度は高い。また、「BS/CSは必要なし。地デジだけで十分」ということなら、地上デジタル放送のみ対応の「PIX-DT050-PP0」もあり、これを選べばより安価に地デジ環境が構築できる。
一方、アイ・オー・データ機器の「GV-MVP/HS」は、コンパクトな基盤サイズながらB-CASカードスロットが他のスロットを占有しない設計で、PCI-Express1スロットのみで接続できるのが特徴。常に空きスロット確保に頭を悩ます自作派には嬉しい1台だ。
これからの標準カードインターフェースであるPCI Expressに対応し、基盤長125mmという非常にコンパクトなデザイン。ハイビジョン画質そのままの視聴・録画できるのはもちろん、デジタル放送をフルに楽しむためのTVアプリケーション「mAgicTV Digital」を同梱、初心者にも優しい多彩な録画機能を備える。標準でDVDメディアへのSD画質ムーブに対応しているのも大きなポイントだ。BDへのHD/SD解像度ムーブはアップデートで対応する予定。
少し古い、ロースペックなPCを使用しているユーザーには、PCへの負荷が少ないトランスコード機能を搭載するバッファローの「DT-H30/U2」と「DT-H50/PCI」がオススメ。高性能PCでなくともハイビジョン視聴・録画が楽しめる点が最大の特徴だ。フルHDが無理なPC環境の場合は、PCの性能に合わせてDVD相当の画質のSPモードやLPモードなどに切り替えて視聴することができる。
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「DT-H30/U2」はUSB接続の外付けチューナータイプで、「内蔵式は取り付けが難しそう」という自作スキルのない初心者などに最適。USB接続式のためワンタッチで接続できるとともにノートPCにも使える。ハイビジョン放送の視聴・録画といった基本機能に加え、録画番組のDVDメディアへのSD画質ムーブにも対応。視聴中の番組をさかのぼって見られるタイムシフト機能や、録画番組中の不要なシーンを30秒スキップできるスキップ機能など多彩な再生モードも備える。
フルHD画質をBDに残したいなら、バッファローのPCI接続タイプ「DT-H50/PCI」をオススメする。現時点でBDメディアへのHD画質ムーブに唯一対応している製品だ。基本機能はUSB接続式の「DT-H30/U2」と同じだが、こちらはBDメディアへのHD画質へのムーブに対応する。
「DT-H50/PCI」以外にも、ピクセラ「PIX-DT012-PP0」「PIX-DT050-PP0」やアイ・オー・データ機器「GV-MVP/HS」は、ファームアップでBDメディアへのムーブに対応する予定だ。
●地デジチューナー導入前のチェックポイント
基本的にはPCに組み込むだけで地上デジタル放送の視聴が可能になるわけだが、手持ちのPCがいくつかの条件をクリアしている必要がある。
まず1つ目は、HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)対応の液晶ディスプレイでなければならない点だ。HDCPとはデジタル映像の保護技術のことで、主に不正録画防止に用いられる機能のこと。これを満たさない場合は、SP/LPモードでの表示のみになる。また、地デジ放送の高精細画質を存分に楽しむためにも、フルHD表示が可能なディスプレイを用意するといいだろう。
2つ目はグラフィックチップ。COPP(Certified Output Protection Protocol)対応のものを用意する必要がある。COPPもHDCP同様にデジタル・コンテンツの著作権保護技術の1つで、ソフトウェアからグラフィックチップへとデータを送る際に適用されるガード機能。手持ちのグラフィックカードもしくはPC内蔵のグラフィックチップがこのCOPPに対応しているか、メーカーのWebサイトなどで確認してほしい。
そのほか、Windows Vista/Windows XP(Service Pack 2以降)のOSや、地デジ放送を受信できるアンテナが必要になる。地デジアンテナは、従来のUHFアンテナでも方角によってはそのまま使える場合もあるが、多くの場合は専用の地デジ受信アンテナが別途必要となる。また、地上デジタル放送を受信するのに必要なICカード「B-CASカード」は、基本的に付属しているので用意する必要はない。ここまでが最低限クリアしなければPC環境で、そのほかにも、Celeron D 330以上のCPUや、1GB以上のメモリは最低でも欲しいところだ。
PCのスペックではないが、最後にもうひとつ留意しておきたいことが、「録画ファイルの移動(ムーブ)」について。ピクセラの「PIX-DT012-PP0」「PIX-DT050-PP0」は同じPC上であればデータを移動しても再生することができる。つまり、外付けのHDDなどのバックアップから元の位置への書き戻しが可能ということになる。しかし、他の機種へのムーブは制限がかけられている。また、バッファローやアイ・オー・データ機器の製品は、現時点で録画ファイルのムーブには対応していないので注意したい。
これらの規制に関しても「ダビング10」などの関係で、BDへのムーブなどと同様にファームアップやドライバのアップデートなどで状況が変わる可能性が高い。購入後もしばらくはメーカーからのアナウンスに逐一目を通しておいたほうがいいだろう。(フリーライター 市川昭彦)
●なぜ、このタイミング?
PCでの地上デジタル放送の視聴は、これまでにも地上デジタルチューナーを搭載したメーカー製PCでは可能だった。しかし、パーツ単体としての地デジチューナーの販売は放送業界からの規制もあり禁止されていた。今回、突然解禁することになった背景には、地デジへの完全移行を前に、デジタル放送の普及をより加速させたいという放送業界の思惑がありそうだ。
この地デジチューナー、簡単に言えば「手持ちのPCに組み込むだけで地上デジタル放送の視聴が可能になるパーツ」ということになる。PCとの接続方式は、PCIやPCI-Expressスロットに差す内蔵タイプと、USBコネクタと接続して使う外付けタイプの2種類が存在する。
こうしたTVチューナーというと、ワンセグチューナーを思い浮かべる人も多いことだろう。ワンセグも地上デジタル放送の一種ではあるが、ワンセグは地上デジタル放送で使っている13のセグメント分の帯域のうち、1セグメントだけを使用するので、解像度は320×240(または320×180)ピクセルと低く、映像も不安定。あくまでもポータブル機器向けの放送規格だ。
対して、残りの12セグメントを使用する「フルセグ」の地デジチューナーは、最大で1920×1080のフルHD放送を視聴・録画することができる。つまり、薄型テレビ同様に、地デジ放送をフルに視聴できるということになる。簡単に楽しめる一方画像が荒いワンセグとは、同じTVチューナーとはいえ、全く違うものと考えたほうがいいだろう。
●話題の地デジチューナー、その特徴を総ざらい
それでは実際の製品を見ていこう。既に詳細を発表しているピクセラやアイ・オー・データ機器、バッファローの代表的な地デジチューナーの特徴と、ユーザーニーズ別の「オススメの1台」を紹介する。
「1台ですべての視聴環境を揃えたい」なら、ピクセラの「PIX-DT012-PP0」がオススメだ。地上デジタル放送に加え、BS、110度CSの3波に対応したPCI接続型の地デジチューナー。ハイビジョン視聴や録画はもちろん、EPGと連動した番組予約も可能。また、録画中のHDDの空き容量がなくなると自動的に他のHDDに切り替えて保存を行う「リリーフ録画」機能など、多彩な録画機能を備えている。
現時点ではBlu-ray Disc(BD)やDVDへのムーブ・ダビング機能はサポートしていないが、6月のアップデートで対応する予定。大手PCメーカーに対する地デジパーツ供給ではトップの実績を持つピクセラだけに、製品としての完成度は高い。また、「BS/CSは必要なし。地デジだけで十分」ということなら、地上デジタル放送のみ対応の「PIX-DT050-PP0」もあり、これを選べばより安価に地デジ環境が構築できる。
一方、アイ・オー・データ機器の「GV-MVP/HS」は、コンパクトな基盤サイズながらB-CASカードスロットが他のスロットを占有しない設計で、PCI-Express1スロットのみで接続できるのが特徴。常に空きスロット確保に頭を悩ます自作派には嬉しい1台だ。
これからの標準カードインターフェースであるPCI Expressに対応し、基盤長125mmという非常にコンパクトなデザイン。ハイビジョン画質そのままの視聴・録画できるのはもちろん、デジタル放送をフルに楽しむためのTVアプリケーション「mAgicTV Digital」を同梱、初心者にも優しい多彩な録画機能を備える。標準でDVDメディアへのSD画質ムーブに対応しているのも大きなポイントだ。BDへのHD/SD解像度ムーブはアップデートで対応する予定。
少し古い、ロースペックなPCを使用しているユーザーには、PCへの負荷が少ないトランスコード機能を搭載するバッファローの「DT-H30/U2」と「DT-H50/PCI」がオススメ。高性能PCでなくともハイビジョン視聴・録画が楽しめる点が最大の特徴だ。フルHDが無理なPC環境の場合は、PCの性能に合わせてDVD相当の画質のSPモードやLPモードなどに切り替えて視聴することができる。
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「DT-H30/U2」はUSB接続の外付けチューナータイプで、「内蔵式は取り付けが難しそう」という自作スキルのない初心者などに最適。USB接続式のためワンタッチで接続できるとともにノートPCにも使える。ハイビジョン放送の視聴・録画といった基本機能に加え、録画番組のDVDメディアへのSD画質ムーブにも対応。視聴中の番組をさかのぼって見られるタイムシフト機能や、録画番組中の不要なシーンを30秒スキップできるスキップ機能など多彩な再生モードも備える。
フルHD画質をBDに残したいなら、バッファローのPCI接続タイプ「DT-H50/PCI」をオススメする。現時点でBDメディアへのHD画質ムーブに唯一対応している製品だ。基本機能はUSB接続式の「DT-H30/U2」と同じだが、こちらはBDメディアへのHD画質へのムーブに対応する。
「DT-H50/PCI」以外にも、ピクセラ「PIX-DT012-PP0」「PIX-DT050-PP0」やアイ・オー・データ機器「GV-MVP/HS」は、ファームアップでBDメディアへのムーブに対応する予定だ。
●地デジチューナー導入前のチェックポイント
基本的にはPCに組み込むだけで地上デジタル放送の視聴が可能になるわけだが、手持ちのPCがいくつかの条件をクリアしている必要がある。
まず1つ目は、HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)対応の液晶ディスプレイでなければならない点だ。HDCPとはデジタル映像の保護技術のことで、主に不正録画防止に用いられる機能のこと。これを満たさない場合は、SP/LPモードでの表示のみになる。また、地デジ放送の高精細画質を存分に楽しむためにも、フルHD表示が可能なディスプレイを用意するといいだろう。
2つ目はグラフィックチップ。COPP(Certified Output Protection Protocol)対応のものを用意する必要がある。COPPもHDCP同様にデジタル・コンテンツの著作権保護技術の1つで、ソフトウェアからグラフィックチップへとデータを送る際に適用されるガード機能。手持ちのグラフィックカードもしくはPC内蔵のグラフィックチップがこのCOPPに対応しているか、メーカーのWebサイトなどで確認してほしい。
そのほか、Windows Vista/Windows XP(Service Pack 2以降)のOSや、地デジ放送を受信できるアンテナが必要になる。地デジアンテナは、従来のUHFアンテナでも方角によってはそのまま使える場合もあるが、多くの場合は専用の地デジ受信アンテナが別途必要となる。また、地上デジタル放送を受信するのに必要なICカード「B-CASカード」は、基本的に付属しているので用意する必要はない。ここまでが最低限クリアしなければPC環境で、そのほかにも、Celeron D 330以上のCPUや、1GB以上のメモリは最低でも欲しいところだ。
PCのスペックではないが、最後にもうひとつ留意しておきたいことが、「録画ファイルの移動(ムーブ)」について。ピクセラの「PIX-DT012-PP0」「PIX-DT050-PP0」は同じPC上であればデータを移動しても再生することができる。つまり、外付けのHDDなどのバックアップから元の位置への書き戻しが可能ということになる。しかし、他の機種へのムーブは制限がかけられている。また、バッファローやアイ・オー・データ機器の製品は、現時点で録画ファイルのムーブには対応していないので注意したい。
これらの規制に関しても「ダビング10」などの関係で、BDへのムーブなどと同様にファームアップやドライバのアップデートなどで状況が変わる可能性が高い。購入後もしばらくはメーカーからのアナウンスに逐一目を通しておいたほうがいいだろう。(フリーライター 市川昭彦)