「来年にはレコーダーの8割がBDに」松下の“ミスターBD”が語るブルーレイディスク戦略
ブルーレイディスク(BD)に規格が一本化した新世代DVD。その推進役である松下電器産業に、“ミスターBD”と呼ばれる人物がいる。BDの業界団体、ブルーレイディスクアソシエーション(BDA)の共同議長として、BDの規格策定にも携わってきた小塚雅之・理事 蓄積デバイス事業戦略室室長である。今後のBDの普及見通しや松下のBD対応商品の強みについて、“ミスターBD”に聞いた。
●08年はBDのドライブ、レコーダーの普及が加速する年
――松下ではBD対応機器として、レコーダーだけでなくPC用ドライブにも力を入れていく。その理由は
「皆さんあまりご存じないようだが、パソコン本体に組み込まれているPC用BDドライブの市場規模は非常に大きい。『ソニーはPS3(BDドライブ搭載のゲーム機)があるからBDに力を入れるのはわかるけれど、松下はなぜBDをやるのか』と、よく尋ねられることがある。それはゲーム機よりもPC用ドライブの方が市場規模が大きいからだ。DVDドライブで言えばゲーム機よりも10倍の規模がある。だから、PC用のBDドライブも、近々PS3の台数(07年3月末での出荷台数は全世界で550万台)を抜くだろう。そういう意味ではPC用のBDドライブは、世界市場で利益を確保するうえでも重要な商品だと考えている」
――松下のBDドライブの強みは
「BDドライブの開発から製造まで自社で行っているのが一番の強みだ。だから高品質で信頼性も高い。そのため、ほとんどのPCメーカーが松下のBDドライブを採用し、現在はPC用BDドライブで世界シェア1位を獲得している。また、光ディスクは日本メーカーが世界的にリードしている技術で、海外メーカーも技術的に追いついていない。今後韓国・台湾勢の巻き返しは予想されるが、まだかなりのアドバンテージがあると思っている」
――BDドライブとレコーダー普及の見通しは
「今年は間違いなく普及するはずだ。PC用BDドライブの出荷台数は全世界で800万台くらいはいく。レコーダーについても、北京五輪の特需を受けて今年の夏商戦ではBDが50%を超すと見ている。出荷台数は年末には200万台を超えるだろう。HD DVDの撤退で、新世代DVDの規格が1つなったことも普及が加速する追い風になる」
●真剣な取り組みこそがハリウッドが支持した理由
――新世代DVDの規格争いでは米ハリウッドのメジャースタジオの支持が大きく影響した
「メーカーはおカネを払ってハリウッドに新世代DVDの規格を支持してもらっているのではないかと言われたりするが、それは誤解。事実は全く違う。例えばディズニーでは、松下をはじめとするBDAがその要望を真摯に受け止めBDの規格に盛り込んだ。著作権保護を重要視していた20世紀フォックスに対しては、3つもの保護技術を開発して搭載した。彼らがBDを支持してくれているのは、そうした真剣な取り組みを通じで信頼関係を築いてきたからだ」
「DVD時代にはハリウッドのスタジオから『DVDを宣伝するからおカネを出せ』と言われたこともあった。しかし、去年の年末商戦ではディズニーやFOX側から、BDのプロモーションにおカネを出すから、メーカーも一緒にやらないかと提案されて共同で宣伝活動を展開した。我われとしては映画会社が身銭を切ってBDのプロモーションをしてくれるとは思ってもいなかったのでびっくりしたほどだ」
●BB配信が広がっても、コンテンツ販売ではBDの優位性が続く
――今後はブロードバンド(BB)の映像配信がBDのライバルになるとの見方もあるが
「BDはHD DVDには勝ったけれど、BB配信には負けるだろうと言われることが少なくない。しかし、ハリウッドのスタジオなどはBDのようなパッケージメディアが一番良いと思っている。映画は米国の場合、独立系を含めて年間で400本くらいしか製作していない貴重なコンテンツだ。だから映画会社もしっかり売りたいし、そうなると、やっぱりパッケージメディアが一番良いということになる。例えば、ディズニーで「白雪姫」をディスクメディアで販売すると、ウォルマート(米国の世界最大の小売業)で一週間で200万本も売れる。BB配信では一週間で200万ダウンロードできるサーバーはないし、できないはずだ」
「ネット販売ではロングテールが言われているが、その代表格である『本』の販売と、『映画』『ビックタイトルのゲーム』の販売は全く違う。映画や大作ゲームでは制作費に100億円も投じたりする。だから、コンテンツをつくる側は、短期間に100万枚以上を売り切るつもりでプロモーションを展開する。そうしたコンテンツでは、BB配信は適していない。当社もアクトビラのような動画配信を行っており、必ずしもBB配信を否定するつもりはないが、現状を考えれば『ディスク』がしばらくはコンテンツ販売のメインストリームであり続けるだろう」
――新世代DVDがBDに一本化されたことでBDAの意味合いも変わってくると思うが
「国内市場の場合、レコーダーに占めるBDの割合は来年には80%、再来年には100%になるとみている。そうなれば日本ではメーカー間の競合も一段と激しくなるだろう。しかし、世界に目を向ければレコーダーはDVDだけという地域もまだまだ多い。こうした市場で高精細なBDの普及を促進させるためにも、メーカー各社が協力して市場を開拓する必要があると考えている」
――松下にとってデジタル家電の中でBDの位置づけとは
「ハイディフィニション(高精細)の機器=BDになればいいと思っている。韓国や台湾勢の巻き返しもあると思うが、光ディスクは日本の技術が強い。その優位性を持ち続けられるように、松下はこれからも頑張っていくつもりだ」
●08年はBDのドライブ、レコーダーの普及が加速する年
――松下ではBD対応機器として、レコーダーだけでなくPC用ドライブにも力を入れていく。その理由は
「皆さんあまりご存じないようだが、パソコン本体に組み込まれているPC用BDドライブの市場規模は非常に大きい。『ソニーはPS3(BDドライブ搭載のゲーム機)があるからBDに力を入れるのはわかるけれど、松下はなぜBDをやるのか』と、よく尋ねられることがある。それはゲーム機よりもPC用ドライブの方が市場規模が大きいからだ。DVDドライブで言えばゲーム機よりも10倍の規模がある。だから、PC用のBDドライブも、近々PS3の台数(07年3月末での出荷台数は全世界で550万台)を抜くだろう。そういう意味ではPC用のBDドライブは、世界市場で利益を確保するうえでも重要な商品だと考えている」
――松下のBDドライブの強みは
「BDドライブの開発から製造まで自社で行っているのが一番の強みだ。だから高品質で信頼性も高い。そのため、ほとんどのPCメーカーが松下のBDドライブを採用し、現在はPC用BDドライブで世界シェア1位を獲得している。また、光ディスクは日本メーカーが世界的にリードしている技術で、海外メーカーも技術的に追いついていない。今後韓国・台湾勢の巻き返しは予想されるが、まだかなりのアドバンテージがあると思っている」
――BDドライブとレコーダー普及の見通しは
「今年は間違いなく普及するはずだ。PC用BDドライブの出荷台数は全世界で800万台くらいはいく。レコーダーについても、北京五輪の特需を受けて今年の夏商戦ではBDが50%を超すと見ている。出荷台数は年末には200万台を超えるだろう。HD DVDの撤退で、新世代DVDの規格が1つなったことも普及が加速する追い風になる」
●真剣な取り組みこそがハリウッドが支持した理由
――新世代DVDの規格争いでは米ハリウッドのメジャースタジオの支持が大きく影響した
「メーカーはおカネを払ってハリウッドに新世代DVDの規格を支持してもらっているのではないかと言われたりするが、それは誤解。事実は全く違う。例えばディズニーでは、松下をはじめとするBDAがその要望を真摯に受け止めBDの規格に盛り込んだ。著作権保護を重要視していた20世紀フォックスに対しては、3つもの保護技術を開発して搭載した。彼らがBDを支持してくれているのは、そうした真剣な取り組みを通じで信頼関係を築いてきたからだ」
「DVD時代にはハリウッドのスタジオから『DVDを宣伝するからおカネを出せ』と言われたこともあった。しかし、去年の年末商戦ではディズニーやFOX側から、BDのプロモーションにおカネを出すから、メーカーも一緒にやらないかと提案されて共同で宣伝活動を展開した。我われとしては映画会社が身銭を切ってBDのプロモーションをしてくれるとは思ってもいなかったのでびっくりしたほどだ」
●BB配信が広がっても、コンテンツ販売ではBDの優位性が続く
――今後はブロードバンド(BB)の映像配信がBDのライバルになるとの見方もあるが
「BDはHD DVDには勝ったけれど、BB配信には負けるだろうと言われることが少なくない。しかし、ハリウッドのスタジオなどはBDのようなパッケージメディアが一番良いと思っている。映画は米国の場合、独立系を含めて年間で400本くらいしか製作していない貴重なコンテンツだ。だから映画会社もしっかり売りたいし、そうなると、やっぱりパッケージメディアが一番良いということになる。例えば、ディズニーで「白雪姫」をディスクメディアで販売すると、ウォルマート(米国の世界最大の小売業)で一週間で200万本も売れる。BB配信では一週間で200万ダウンロードできるサーバーはないし、できないはずだ」
「ネット販売ではロングテールが言われているが、その代表格である『本』の販売と、『映画』『ビックタイトルのゲーム』の販売は全く違う。映画や大作ゲームでは制作費に100億円も投じたりする。だから、コンテンツをつくる側は、短期間に100万枚以上を売り切るつもりでプロモーションを展開する。そうしたコンテンツでは、BB配信は適していない。当社もアクトビラのような動画配信を行っており、必ずしもBB配信を否定するつもりはないが、現状を考えれば『ディスク』がしばらくはコンテンツ販売のメインストリームであり続けるだろう」
――新世代DVDがBDに一本化されたことでBDAの意味合いも変わってくると思うが
「国内市場の場合、レコーダーに占めるBDの割合は来年には80%、再来年には100%になるとみている。そうなれば日本ではメーカー間の競合も一段と激しくなるだろう。しかし、世界に目を向ければレコーダーはDVDだけという地域もまだまだ多い。こうした市場で高精細なBDの普及を促進させるためにも、メーカー各社が協力して市場を開拓する必要があると考えている」
――松下にとってデジタル家電の中でBDの位置づけとは
「ハイディフィニション(高精細)の機器=BDになればいいと思っている。韓国や台湾勢の巻き返しもあると思うが、光ディスクは日本の技術が強い。その優位性を持ち続けられるように、松下はこれからも頑張っていくつもりだ」