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超薄型テレビで一歩先を目指す日立、08年のデジタル家電戦略は?

インタビュー

2008/01/30 14:12

 07年12月に厚さ35mmの液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」を発売した日立製作所。薄型テレビ市場で「超薄型」争いの口火を切った。液晶ではさらに薄い19mm、プラズマでも35mmの試作機を開発し「超薄型」で攻勢をかけている。一方さらにデジタルビデオカメラでは、ブルーレイディスク(BD)を搭載したモデルを07年8月にいち早く商品化して投入するなど、一歩先んじる戦略に注目が集まった。08年の日立は、デジタル家電分野にどんな戦略で臨むのか。吉野正則・デジタルコンシューマ事業部商品企画本部本部長にその方向性を聴いた。

●全薄型テレビにHDDスロットを搭載、「超薄型」モデルで他社に先行

―――08年、日立は薄型テレビ事業をどう展開する?

 「当社は01年の32V型プラズマテレビから薄型テレビ事業を始め、プラズマに軸足を置いてきた。32、37V型の液晶テレビも手がけている。今後は42V型まではフルHDで液晶、50V型以上がプラズマというラインアップにする。プラズマは37、42V型もあるが、棲み分けということで言えば、50V型以上はプラズマになる。また、着脱式HDD「iVDR-S」に対応した「iVポケット」を薄型テレビ「Wooo」の全ラインアップで搭載し、どなたでも気軽にHDDに録画できるようにすることで他社と違った戦略に出る」

 「次の方向性をいろいろ議論した中で、薄型テレビと言った瞬間に、消費者が思い浮かべる『壁掛け』や『好きなところに置ける』ことを目指した商品を作っていこうと決めた。液晶とプラズマを、『壁掛け』できるように『薄く』『軽く』していこうと考えている。これはカテゴリーが違う商品を通常のラインアップ以外に持つという意味で、去年の秋、暮れから事業を進めてきている。08年はそれを実際に具体化・拡張していく」

―――「壁掛け」ということでは「超薄型」の液晶テレビ『Wooo UTシリーズ』を昨年末に発売した

 「もともとは08年の2月か3月に出すつもりだったが、3か月くらい前倒しした。私は人間が考えていることに大きな差はないと思っていて、いかにそれを早くやるかだと思っている。日立は開発のリソース、人員の面では、松下電器産業、ソニーと比べると圧倒的に少ない。それを克服して一歩先、半歩先に商品をきちっと出していくことが大切だ。また、厚さ19mmの液晶テレビはバックライトにLED(発光ダイオード)を使っていて画質をはじめ、デザインなど35mmの液晶テレビと全く違う展開ができると思っている」


―――日立はCES2008で厚さ35mmのプラズマテレビ試作機を公開した。パイオニアは9mm、松下も24.7mmという薄型プラズマの開発を進めているが?

 「薄いプラズマは09年には商品化を目指している。こちらも他社より少し先にやっていくということでは、なるべく早く出したいと思っている。一方で、消費電力や熱といった課題もある。この部分では他社さんと違ってメインフレームだとかサーバーを手がけていて熱設計に対するノウハウがある。また、我われは液晶テレビで薄型用の電源などをすでに開発している。それをプラズマにどう応用できるか今みんなでやっているところだ。『薄さ』はトレンドだと思うが、薄くなることだけがすべてではない。画質や仕上がりなど商品をどのようにまとめていくかが重要だと思っている」


●ユーザーはテレビの方式ではなく「設置」や「デザイン」を求めている

―――「薄い」ということでは有機ELテレビに注目が集まっているが、日立の有機ELに対する考え方は?

 「当社ではまだ研究の段階で、小型のモデルから製品化していこうと思っている。有機ELテレビのメリットは薄くなる、画質が良いと一般的に言われているが、プラズマもバックライトがいらないので原理的に薄くできるし、100万対1のコントラストのパネルも開発されている。そうなると、改めて大型の有機ELテレビのメリットは何かということを検討する必要がある。ポイントどれだけ軽くできるかだと思う。ただ、ユーザーは液晶、プラズマ、有機ELといったディスプレイの種類が何かということには興味はないと思っている」

―――薄型テレビでユーザーが今、一番関心を示しているのは?

 「気にしているのは『商品の設置性』や『デザイン』だ。特にデザインのポイントは大きくなっている。例えば、『UTシリーズ』は、女性が買っていくことが多い。黒、白、赤、青の4色展開しているが、予想していた以上に『白』が売れている。テレビをインテリアや趣味に合わせて買うという流れが出てきていると感じている。今まではサイズやコントラストといった数字で言える価値にユーザーが関心を示していたが、これからはデザインなどの目に見えない価値で選んでいくことになると思う。典型的な例は自動車だ。昔は何馬力で、何キロ出て、燃費がどれくらい、ということが宣伝していたが、今はCMで何も言わない。むしろイメージを前面に出している。そういうところに家電もいくと思っている」


―――日立ではどんなデザイン戦略を考えているのか?

 「特に超薄型のテレビについては、女性から見て友達に威張れるようなデザインのテレビを目指していきたいと思っている。『UTシリーズ』では、女性をターゲットにしていることもあり、フレグランス(香水)のボトルをイメージしたデザインを採用した。これまで、日立にはそういうデザインの考え方がなかなかなかったが、『UTシリーズ』で初めて採用した。この考え方は厚さ35mmのプラズマでも導入していくつもりだ」

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●リンク機能は他社製品との接続を重視し展開、次世代DVDはビデオカメラに軸足

―――「リンク機能」では他社より出遅れている感があるが?

 「リンク機能については『HDMI CEC』という標準化されている操作体系を使って動かせるようにしていきたいと考えている。リンク機能の難しいところは他社の製品とどうやってつなげていくかだ。そういう意味では『HDMI CEC』は唯一標準化されている体系なので、それを使うことで他社の製品との接続もサポートしていきたいと思っている。今のリンク機能は使うには操作手順が多い。家電には『三角形のマークで再生』『赤丸でREC』というレガシーな操作がある。我われはそういうユーザーが直感的に操作できるようなシンプルな機能を目指したい」

―――次世代DVDでは、BDのデジタルビデオカメラだけでレコーダーは発売していないのは?

 「次世代DVDはカメラを中心にやっていく。レコーダーは何らかの形で発売するかもしれないが今は検討段階だ。08年はできればカメラに集中したい。07年の年末商戦で次世代DVDレコーダーの販売が盛り上がったことはもちろん気にしている。ただ、事業は社内のリソース配分を考えて事業をやっていかなければならない。そういう意味では他社がレコーダーから手がけていくなら自分たちはカメラからやっていくというのも1つの選択だと思っている」

 「映像を残すという意味でBDは大切だと思う。ただ、日立はHDDを内蔵した薄型テレビを販売していて、テレビの記録再生という意味ではHDDでおおよそ事足りると思っている。HDD内蔵の薄型テレビは当社と東芝も発売しているが、もし、もう1社が販売すれば、HDD内蔵テレビの方がレコーダーより増えるのではないかと思っている。そうなれば、記録するのは設置型のレコーダーという一般的な考え方は若干変わって来ると思う」


―――BD搭載のビデオカメラではどんな製品を出していくのか?

 「自分の子供をハイビジョンで撮っておこうと思った女性が簡単に高画質で残せるようなカメラを作っていきたいと考えている。また、記録媒体はBDを中心に置くが、HDDやSDメモリーカードに対応したカメラも検討している。ただし、単純にメディアに対応した製品を出しても面白くないので、最高画質だとかネットに接続できる機能などを考えながら開発を進めていくつもりだ」