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薄型ノート「MacBook Air」実機に触って―アップルが作った本気のモバイル

特集

2008/01/17 20:25

 米サンフランシスコで1月15日(現地時間)に開幕した「Macworld Conference & Expo 2008」。このイベントの開幕を飾る基調講演で、米Apple社のスティーブ・ジョブズCEOは、超薄型のモバイルノート「MacBook Air」や、「iTunes Store」での映画のレンタルサービスなどを発表した。昨年度は携帯電話の「iPhone」を発表。今年も世界中のIT業界の注目が集まっていた。


 日本時間16日午前2時頃から始まったジョブズ氏の基調講演は、夜が明けて午前10時から、東京・銀座の直営店「Apple Store」で報道関係者向けにビデオ上映された。まずは、その基調講演の内容の一部を紹介。続いて、「MacBook Air」の実機に触れての感想などをお伝えしよう。

●スティーブ・ジョブズCEOによる注目のMacworld基調講演

 ジョブズ氏はまず、最新OS「Mac OS X 10.5 Leopard」の販売本数が、07年10月26日の販売開始から最初の3か月で500万本に達したと報告。次に、マイクロソフトから統合オフィスソフト「Office 2008 for Mac」が同日から出荷開始になったと話した。これにより、主要ソフトがすべて、インテル製CPUを搭載したMacでネイティブに動作するようになり、「Leopard」を使う環境が整ったとまとめた。

 ジョブズ氏は、「今日は4つのお知らせがある」と前置きして話を続けた。1番目は、「Leopard」に搭載されている自動バックアップ機能「Time Machine」に最適化されたストレージ製品「Time Capsule(タイムカプセル)」の発表。これは、IEEE802.11n対応の無線LANルータ「AirPort Extremeベースステーション」とHDDを一体化したもの。HDD容量500GBと1TBの2タイプを用意し、2月から出荷を開始する。価格は500GBモデルが3万5800円、1TBモデルが5万9800円。

 2番目は「iPhone」について。iPhone用のアプリを作成できるソフトウェア開発キットを2月後半に公開するほか、iPhoneに新たにいくつかの機能を追加すると発表した。新機能は、「Maps」での位置情報のサポート、Web clip(ホーム画面に直接ウェブサイトのブックマークを配置できる)機能、SMS同報機能の追加など。また、ビデオ再生時のチャプター、字幕、多言語をサポートし、音楽再生時の歌詞表示も可能になる。

 これらの機能は、今後発売されるiPhoneは最初から、既存のiPhoneユーザーは無償のソフトウェアアップデートを適用すると利用できる。一方、iPhoneと同じインターフェイスを採用する「iPod touch」は、ソフトウェアをアップグレード。価格据え置きのまま、新たにMail、Maps、Stocks、Notes、Weatherの5つのアプリを追加する。これらの新アプリは、既存のiPod touchユーザーも、2480円でダウンロード購入することができる。

●iTunes Storeで映画のレンタル開始、08年中にはワールドワイドで展開

 3番目は、音楽・動画配信ストアの「iTunes Store」に関する話だった。iTunes Storeでは、これまでに40億曲を販売。昨年末のクリスマスシーズンには、たった1日で2000万曲を販売した日もあったという。テレビ番組は1億2500万本、映画は700万本を販売した。

  「そのiTunes Storeで、映画のレンタルを開始する」とジョブズ氏は発表。参加する映画会社は、Touc hstone、MGM、Miramax、Lions Gate、Fox、Warner Brothers、Walt Disney、Paramount、Universal、Sony picturesといったハリウッドの主な映画会社がズラリと顔をそろえた。北米でのレンタル開始は同日からで、ラインアップは2月末には1000タイトル以上となる予定。価格は、旧作品が2.99ドル、新作が3.99ドル。

 レンタル期間は30日間だが、いったん視聴を始めると、視聴可能時間は24時間以内となる。ただし、24時間以内であれば、何度でも繰り返し視聴できる。もちろん、iPodに転送して視聴することも可能。当初は米国のみのサービスだが、08年中にはワールドワイドで展開する予定という。気になるのは日本での開始時期。日本法人のアップルジャパンに確認したところ、現時点では「ワールドワイドでの展開が08年中」ということ以外、アナウンスできることはないとのことだ。

●新Apple TVで、理想のセットトップボックスに再チャレンジ

 「iTunes Store」での映画レンタルサービスの開始にあわせて、昨年発売した「Apple TV」のソフトウェアも一新した。新しいApple TVでは、MacやPCを介さずに直接「iTunes Store」にアクセスし、レンタルした映画を家庭のテレビで再生することができる、DVDクオリティの作品のほか、「Apple TV」では、HD画質、ドルビー5.1chサラウンドの作品も見ることができる。HDバージョンの映画レンタルは2月末に開始予定で、レンタル料は旧作が3.99ドル、新作が4.99ドル。なお、既存のApple TVユーザーに対しては、今月中に新しいソフトウェアを自動ダウンロードによって無償で提供する。

 ここで、iTunes Storeでの映画レンタルに最初に合意した20世紀Foxの会長兼CEOのジム・ジアノプロス氏がステージに登場。「iTunes Storeでの画期的な映画レンタルによって、より多くの人に映画を楽しんでいただくための選択肢を増やすことができた」と讃辞を贈った。

●封筒にだって入る世界最薄のノートPC、MacBook Air登場

 そして、いよいよ4番目に発表されたのが、超スリムな「MacBook Air」である。ジョブズは、「MacBook Airとは何か? 一言でいえば、世界でもっとも薄いノートPCだ。封筒にだって入る」と言って、本当に封筒からMacBook Airを取り出してみせた。

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 「MacBook Air」は、最薄部でわずか0.4cm、最も厚い部分でも1.94cm、重さは1.36kgと薄型・軽量のアップル初の本格的なモバイルノートだ。光学ドライブは搭載せず、LEDバックライトを採用した解像度1280×800ピクセルの13.3インチワイドの液晶ディスプレイを搭載し、フルサイズのキーボードはバックライトも備えている。CPUには、現行より60%も小型化したインテル製のCore 2 Duo 1.6GHzを標準で搭載し、オプションで1.8GHzに変更することもできる。

 内蔵HDDは1.8インチタイプで容量は80GBだが、オプションで64GBのソリッドステートドライブ(SSD)に変更できる。メモリは2GB。外部インターフェイスはUSB2.0ポート、Micro-DVIのビデオポート、オーディオ出力ポートの3つに絞っており、ワイヤレス機能はIEEE802.11nとBluetooth 2.1 +EDRに対応する。価格は標準構成で22万9800円。同日から販売を開始し、2週間後から順次出荷する予定。

 ここではインテルのCEO、ポール・オッテリーニ氏がステージに登場。「Appleの技術陣はなんとも困難な要望を出した。しかし、それに応えることで、我々はすばらしい製品を送り出すことができた。このCore 2 Duoプロセッサの厚さは5セント硬貨ほど、重さは10セント硬貨ほどだ」と、MacBook AirのCPUを手にとって見せ、それをジョブズ氏にプレゼントした。

●超スリムボディにメモリもバッテリも内蔵

 基調講演のビデオ上映が終わった午後、引き続きApple Store銀座で、日本法人のアップルジャパンによるマスコミ向けの製品説明会が行われた。限られた時間、しかも発売前の製品とあって、あまり踏み込んだ話は聞けなかったが、その説明会でわかったことをお伝えしよう。

 「MacBook Air」に搭載されるCPUは、コア部分は標準のCore 2 Duoだが、ダイサイズがMacBook Air用に縮小されている。現在のところはMacBook Air専用で、今後、インテルが他のPCメーカーにも同タイプのCPUを供給するのかどうかは、明らかにされていない。

 MacBook Airのメモリ2GBは基盤に直付けされており、バッテリーも本体に内蔵されている。このため、ユーザーの手で増設や交換はできず、BTOオプションにも「メモリの増設」などはない。ただし、バッテリーはアップルに依頼すれば、実費1万5800円で交換できるそうだ。


 MacBook Airの機能面での最大の特徴は、iPhoneやiPod touchのように、指の動きによるさまざまな操作が可能な大型の「トラックパッド」だ。ピンチ、回転、スワイプなどのマルチタッチジェスチャーによる操作は、いまのところApple純正ソフトのみ利用できる。他のソフトでも利用できるようになるかどうかは、現時点では不明。OSのアップデートなどで、既存のMacBook、MacBook Proのタッチパッドでも同じくマルチタッチジェスチャーが可能になるのかどうかについても、今日のところは明らかにはされなかった。

●Windows PCからソフトをインストールできる!

  MacBook Airには光学ドライブが搭載されていないため、ソフトのインストールなどを行う場合は、「Remote Disc」機能を使って行うことになる。これは、MacBook Airに付属する専用ソフトを近くの無線LAN対応のMacまたはPCにインストールすることで、そのマシンの光学ドライブをワイヤレスで、あたかもMacBook Air内蔵の光学ドライブのように利用できるようにする機能。通常、Windowsマシンでは、Mac専用ソフトのインストールCDやDVDは認識されないのだが、このRemote Disc機能を使えば問題なくインストールできるというスグレモノだ。極めて便利なRemote Disc機能だが、今後、光学ドライブを内蔵した他のMacにも提供されるかどうかは、いまのところ未定だという。

 同時に発表された新製品「Time Capsule」についても触れておこう。IEEE802.11nに対応した無線LANのAPとHDDを一体化した「Time Capsule」は、ごく簡単な設定だけでLeopard搭載のMacとワイヤレス接続でき、内蔵HDDを「Time Machine」のバックアップ先として利用できる。MacBookなどノート製品は、外付けHDDをケーブルで接続するのが面倒なので、バックアップ用HDDがワイヤレスで使えるのは実に便利だろう。Time Capsuleの内蔵HDDは、一般的なネットワークストレージとしても使用することができる。ただし、NASの機能などは搭載していないそうだ。




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●総アルミボディで剛性感が高く、かなりモバイル向き

 「小型軽量のサブノートが発表されるのでは?」といった事前の噂もあったが、MacBook Airはフルサイズのスクリーンとキーボードを備えており、薄さはともかく、底面積はA4用紙とほぼ同じで、サブノートと呼ぶには正直、やや大きい。アップルでも、MacBook Airを必ずしもサブノートとは位置づけていないようだ。ホームユースならMacBook、プロユースならMacBook Pro、そしてモバイルユースならMacBook Airと、選択肢が2つから3つに増えたことで、製品ラインに厚みが出た。

 実際、モバイルで使うとなると、本体の剛性感なども気になるところだが、外装にはMacBook Proと同じアルミが使われており、触ってみた感じでは、ねじれやたわみにはかなり強そうな印象を持った。日本製の超薄型ノートPCに比べても、剛性感は高そうだ。ただ、画面が大きい分、ディスプレイ背面の1点に集中して圧力が加わるようなことがあると、危険かもしれない。

 キーボード、ディスプレイともにフルサイズというのは、作業効率の面では歓迎できるし、何しろ世界最薄というのは、カバンに入れて持ち歩く上では大きなアドバンテージとなる。そういう使用シーンを思い浮かべると、MacBook Airは、なるほどモバイルに最適なノートと言えそうだ。あとは、無線LANには対応しているとはいえ、有線LANポートやメディアスロットすらない拡張性の少なさ、複数のバッテリー交換しながら長時間使用できない点、そして標準構成で20万を超える価格との折り合いをつけられるかどうかが焦点だろうか。


 ともあれ、さすがAppleのデザイン。見た目のインパクトは強烈で、かなり洒落ている。今年後半には、似たようなデザインのノートPCが他社からも続々と出てくるのではないだろうか、とも思わせる。iPod touchと同じく、MacBook Airもまた、写真と実物を手にした時で、かなり印象が違う製品だ。その魅力は、触ってみると本当によくわかる。出荷開始予定の2週間後には、おそらく店頭にも実機が並ぶだろう。機会があればぜひ、実機に触れてみて欲しい。(フリーライター・中村光宏)