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笑ってシャッターどうやって? 開発者が明かす「笑顔認識」デジカメの秘密

特集

2007/11/13 15:30

 9月21日、笑顔に反応して自動的にシャッターをきるという「スマイルシャッター」機能を搭載したコンパクトデジタルカメラが登場した。ソニーの「サイバーショット DSC-T200/70」がそれ。人物を撮影する際に、誰もが撮りたいと思う「笑顔」が簡単に撮れるという画期的な製品だ。そこで、ソニーのデジタルイメージング事業本部パーソナルイメージング事業部商品企画部商品企画課・越智龍氏に開発の背景を聴いた。

●膨大数の笑顔の写真を世界中から集めた

――「スマイルシャッター(笑顔認識)」とはどういう機能ですか

 「カメラが笑顔を感知して、笑顔になった瞬間、自動でシャッターをきるという機能です。スマイルシャッターモードにしておけば、被写体が笑顔になるたびに最大6枚まで自動的にシャッターをきります。さらに『強』・『中』・『弱』の3段階で笑顔検出の『感度』が設定できるようにしました。『強』では、『微笑み』程度でもしっかりと反応しますが、『弱』では、満面の笑顔でないと反応しません。この『笑顔認識』機能は、他社でも簡単には真似できない高度な技術だと思っています」

――どんな基準で「笑顔」を判別するのですか

 「人は笑うと歯が見えます。そして、口角が上がり、目尻が下がる。この『歯』と『口角』と『目尻』の3要素を総合的に見て笑顔を判別します。さらに、日本人だけでなく、世界中の人の笑顔に反応するよう設計しました。ただし、サングラスや帽子を深く被ると目尻や顔が認識できず、笑顔が認識できません。口だけ笑っていても目尻が下がっていないとダメです。ところで、今回の認識技術で最も自信を持っているのが『検出』から『シャッターをきる』までのスピード。被写体が笑顔になると、ほぼ同時にシャッターがきれます。笑顔というのは、本当に一瞬です。その一瞬を的確にとらえるため、画像処理回路とは別に顔認識専用の回路を搭載するなど、ソフトウエアではなく、ハードウエアでの素早い処理にこだわりました」

――どんなところから開発を始めたのですか

 「社外秘の部分が多いのですが、お話しできる範囲でお答えします。開発を始めたのは数年前のこと。まず、世界中から笑顔の写真を集めるところからスタートしました。その数は公表できませんが膨大な数にのぼります。次に、これらをスーパーコンピュータで分析、数値化して笑顔のデータベースづくりです。いかに多くの笑顔を集めて分析したかが認識技術の精度を左右するため、笑顔の収集には最も労力を費やしました。また、笑顔の基準は撮影する状況によっても変わります。写真1枚1枚に対して、これは笑顔なのかそうではないのかを分類する作業にはとても苦労しました」

●きっかけは子どもの笑顔を撮れなかった悔しさ

――なぜ笑顔に着目したのですか

 「私は、ソニーのハイエンドデジタルカメラ『DSC-R1』を使っています。ところが、親戚の子どもの笑顔がうまく撮れない、という経験をしました。子どもは動きが速くてピント合わせが大変です。しかも、カメラを向けてもなかなか笑ってくれません。カメラがどんなに高性能でも、笑顔を撮るのは難しいと実感しました。それがとても悔しかった。そこで、どうすれば笑顔をうまく撮れるのかと考え、カメラが自動で笑顔を見つけ出して撮影する、というアイデアが浮かんできたのです。たまたま同じ時期に、技術グループからも笑顔を検出することは可能だという報告を受けたこともあり、製品化に着手しました。

 一般的にも笑顔を撮るのは難しいと言われています。大人でも『笑って』とカメラを向けても『作り笑い』になってしまいますし、子どもはカメラに集中してくれません。そもそも自然な笑顔をすること自体難しいですし、一瞬の笑顔を写真に残すことはなかなかできません。ですから、技術的にも可能で、潜在的ニーズがあるこのアイデアを商品化すれば、絶対に『売れる』と確信したわけです。



 それに、最近のデジタルカメラは、画素数やズーム倍率、感度の高さを競うスペック争いが続いています。しかし、これだけでは、他社との差別化が難しくなってきました。そこで、『もうひとつの柱』として期待しているのが『デジタルカメラだから撮れるもの、撮影がもっと楽しくなる』機能としての『笑顔認識』なんです」



●笑顔を生み、世の中を明るくする機能

――どんな活用法があるのでしょうか

 「人々がカメラで一番撮りたいものは、楽しいときの自然な笑顔に代表される『決定的瞬間』ではないでしょうか。例えば、カメラを横において、あやしながらでも子どもの自然な笑顔を撮影するといった使い方はおすすめです。さらに、自分撮りに使えるのはもちろん笑顔の練習にだって利用できるでしょう。カップルで笑顔を合図に撮影すれば、手を伸ばしたりタイマーをセットしなくても、簡単に自然な笑顔のツーショット写真が撮れます。私はスマイルシャッターを『笑顔を生み世の中を明るくする機能』だと考えています。ほかのシリーズへの展開などは未定ですが、全てのカメラの標準機能になって欲しいと思っています」



――『笑顔認識』の次はどんな機能を考えていますか

 「これからも、カメラが撮影を楽しくする『もうひとつの柱』を中心に開発を進めていきます。新しいことは、データや調査結果だけではなかなか発見できません。今回と同じように、実体験から感じたことと潜在的ニーズを合わせたかたちで、新機能を開発していきたいと考えています。例えば、自分が目で見たままの風景の色合いやその場の雰囲気を忠実に再現できるような機能、高速で動いている自動車や電車を一度のシャッターでブレずに確実に撮れる機能、どんなに暗闇でも昼間と同じような明るさで撮影できる機能などはどうでしょう。これからも、思い出の場面や決定的瞬間を簡単に、そして忠実に写真に残せる機能を開発していきたいと思います」(BCN・津江昭宏)




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