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遠くからでも写真は「寄り」だ! 大迫力を演出する超望遠レンズのススメ

特集

2007/08/13 00:20

<strong>――夏休み特別企画:憧れの「超望遠レンズ」で遊ぼう</strong><br />

 デジタル一眼レフカメラを買って、最初に試してみたい交換レンズといえば「望遠レンズ」という人が多いだろう。「遠くのものを引き寄せて大きく撮りたい」というのは誰もが望むこと。しかし、実際に撮るとなると、これが結構大変だ。そこで、好評?のホリデー企画「写真は寄りだ!」シリーズ第3弾、望遠から超望遠までをカバーするズームレンズを使って、望遠レンズを使った撮影のポイントをまとめてみた。


●フェンスの穴から超望遠撮影に挑戦

  今回使用したのは50mm-500mmの望遠ズームレンズ。一眼レフの交換レンズでは数少ない10倍の高倍率ズームだ。明るさを示すF値は4-6.3とかなり暗い部類に入る。いろいろとテスト撮影の場所を考えたが、いきなり動きの激しいスポーツ写真に素人が挑戦するのは難しかろうと、選んだのは成田空港。離着陸時の迫力ある写真が撮れなくても、駐機中の機体が撮れればなんとかなるだろうと思ったからだ。見学目的で訪れたのは初めてだったが、ターミナル1にも2にもある展望デッキから狙える。それぞれフェンスがあって、自由に撮影できるわけではないが、ところどころに撮影用の「穴」が開いており、そこからレンズを出して撮影できるようになっている。


  ほとんどのデジタル一眼では、使用するレンズの焦点距離は、35mmフィルムカメラに換算すると1.5倍から1.7倍相当になる。今回使用したカメラは1.5倍相当になるモデルだったため、50mm-500mmの望遠ズームレンズは、35mmフィルムカメラで換算して75-750mmに相当するズームレンズ、ということになる。以下、焦点距離はすべて35mmフィルムカメラに換算した値で表示する。


  実際に撮影画像を見ていただく前に、望遠レンズの種類をおさらいしておこう。望遠レンズとは、焦点距離がおおむね70mm以上のレンズをいう。焦点距離が長ければ長いほど遠くのもを大きく写せるわけだが、その長さに応じて、さらに3種類に分けられる。70mmから100mm程度のレンズを中望遠、100mm超で300mm未満のレンズを望遠、300mm以上のレンズを超望遠と分けることが多い。それでは、サンプル写真を見ながら、焦点距離別にどの程度「寄る」ことができるかを見ていこう。

●300mm以上が望遠撮影の醍醐味、でも撮影はなかなか難しい

   まず70-100mm程度の中望遠レンズは、ほとんど「望遠」という感じはしないだろう。私は85mmや105mmというレンズが大好きで標準レンズ代わりに常用しているが、普段の撮影で違和感があまりない。それほど、標準レンズに近い感覚のレンズといってもいいだろう。50mmの標準レンズは汎用性が高い反面、印象に残る写真を撮るのは難しいレンズだと思う。逆に少し望遠系のレンズを標準レンズ代わりに使うことで、少し違った目線の写真が楽しめるというわけだ。


   望遠らしさが楽しめるのは最低でも135mm以上のレンズから。しかし、例えばスポーツ新聞の1面を飾るような迫力あるサッカーの写真を思い浮かべて購入すると、大いに落胆することになる。この程度の焦点距離ではまだまだ足りないからだ。その昔、一眼レフの最初の交換レンズとして最も一般的だったのは135mmだった。私も最初の交換レンズは135mmだった。しかし望遠としてはまったく非力で、なかなか難しいレンズだった。もう少し長めの180mmから200mm程度になるとポートにも使えてかなり汎用性は高くなる。「180mmのF2.8はポートレート撮影の定番レンズ」とあるプロカメラマンに教えてもらったことがある。背景がちょうどよくボケて使いやすいからだ。

  これぞ望遠という撮影を楽しむならやはり300mm以上の超望遠クラスだろう。さらに500mm、1000mmクラスとなると、どうしても寄れない遠くの被写体でも迫力ある「ドアップ」で撮影することができる。しかし、焦点距離が長くなればなるほど、レンズの明るさが落ちてくる。暗いレンズだと、ノイズ覚悟でカメラのISO感度を高めに設定するか、遅いシャッタースピードを選択せざるを得ない。必然的にカメラも被写体もブレやすくなり、シャープな写真が撮りづらくなる。

  超望遠レンズで動きの激しいスポーツ写真を撮影する、しかも夜のゲームで、というのは、実は極めて過酷な条件なのだ。もちろん超望遠レンズにも明るいレンズはある。300mmや400mmでF2.8、通称サンニッパやヨンニッパはその代表格だ。そのかわり非常に高価で、50万円は裕に超え、100万円に迫るお値段。このクラスのレンズを使える人はなかなかいないだろう。迫力あるスポーツ写真はこうしたプロ御用達のレンズで撮影されていることが多い。

  成田でも離着陸する飛行機を狙ってみたが、正直言って満足な写真はまったく撮れなかった。撮影に適したポジションや時間帯が良くわからなかったのもさることながら、超望遠で加速する旅客機を横から狙うというのは、かなり無謀なことだったようだ。撮影場所を選ぶこともまた重要、ということを痛感した。



●レンズ以外にもまず三脚か一脚が必須

  今回使った50-500mmのズームレンズは、実売で10万円台なかばで手に入る。明るさにこだわらなければ、まずまずの値段で超望遠レンズが楽しめるようになってきた。数万円で1000万画素のデジタル一眼が買えることを考えれば、それでもまだまだ大変高価なレンズではある。しかし、一方で100万円近いプロ向きのレンズが多い中、アマチュアでもなんとか手が出る範囲のレンズは嬉しい。

   また、「テレコンバータ」というアクセサリもある。望遠レンズの焦点距離を1.5倍や2倍に伸ばすアタッチメントだ。あと1歩寄りが足りない場合に重宝する。レンズF値は暗くなりシャープさも若干損なわれるので、あくまでも予備の機材として考えておいたほうがいいだろう。

  望遠レンズの撮影には、レンズのほかに必須の機材がある。「しっかりした三脚」だ。カメラを買うとおまけでついてくるような華奢なものではダメ。目安として実売で2万円以上のグレードのものを用意したい。できれば、実際に撮影する機材を販売店の店員に説明して、どの程度の三脚が必要かじっくり相談したほうがいい。また、スポーツ撮影など、被写体が常に動くような撮影には、一脚もオススメだ。安定度は三脚に劣るものの、手持ちで撮影するよりははるかにブレの発生を抑えることができる。


  ぼんやりとした写真になってしまう元凶のブレ。手ブレも被写体のブレも、焦点距離が長ければ長いほど発生しやすくなる。デジタル一眼でも手ブレ補正機能がずいぶん普及してきたが、ブレ対策はやはり必要だと考えたほうがいい。三脚や一脚は非常に効果的なブレ対策だが、そのほかシャッタースピードを早くすることででブレを抑えることもできる。

   フィルムカメラ全盛の時代には、手持ち撮影でブレずに撮影できるシャッタースピードの限界値として、焦点距離分の1が目安だといわれていた。つまり100mmなら1/100以下、300mmなら1/300以下といった具合だ。しかし、デジタル一眼の場合、撮像素子の限られた画素で写真を撮るためか、もっとブレにはシビアだ。万一手持ち撮影に挑戦するなら、さらに2倍程度のシャッタースピードが必要と考えたほうがいいだろう。300mmのレンズなら1/600のシャッタースピードは程度は必要になる。

   三脚にカメラを固定したからと言って安心してはいけない。超望遠レンズを使っていると、強い風でカメラが揺れることもある。状況が許す限り速いシャッタースピードを選択したほうがいい。

●意外に困る被写体だが、動物園はなかなか面白い

   「写真は寄りだ!」を標榜する者として、超望遠レンズの出番はさぞ多いことだろうと思ったが、実際はそうでもなかった。「寄る」といっても、フットワークを使って、つまりできるだけ近づいて、そしてもう一歩踏み込んで撮れば、いい絵が撮れる。日常生活でまったく近づけない状況は、実はあまり多くない。運動会を筆頭として、野球やサッカーなどのスポーツ撮影系や、今回の空港や鉄道写真などでは、ロケーションによっては超望遠が必要な場面が出てくる程度だ。


   望遠レンズの撮影を楽しむ場所として、もう1つ身近で面白い所がある。動物園だ。離れたところにいる動物の表情を写真に収めることができたり、超望遠特有のボケを利用して、あたかも野生動物を撮影したような写真を撮ることもできる。ただ、動物は動き回るだけにそれなりに難しい。一脚で工夫して撮影するのが、他の来園者の邪魔にもならずちょうどいいだろう。望遠レンズを手に入れたら、是非一度、動物園での撮影をオススメしたい。(BCN・道越一郎)

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