広がる無線LANの相互利用インフラ「FON」、千川原Chairmanに日本戦略を聞く
ユーザーがアクセスポイント(AP)を無料開放する代わりに、他のユーザーが開放しているAPを無料利用できる相互利用型無線LANサービス「FON」が日本に上陸して約半年が経過した。フォン・ジャパンの千川原智康 Chairmanに、これまでの経過とインターネットプロバイダー(ISP)問題を含めた今後の課題について聞いた。
ユーザーがアクセスポイント(AP)を無料開放する代わりに、他のユーザーが開放しているAPを無料利用できる相互利用型無線LANサービス「FON」が日本に上陸して約半年が経過した。フォン・ジャパンの千川原智康 Chairmanに、これまでの経過とインターネットプロバイダー(ISP)問題を含めた今後の課題について聞いた。。
入会費、利用料とも無料の「FON」だが、現在ISPとの間に問題を抱えている。国内のISPは「通信回線やインターネット接続アカウントを他人に提供してはならない」という利用規約を設けているところが多く、「FON」を利用したくても利用できないユーザーも少なくない。とはいえ、専用無線LANルーター「La Fonera(ラ・フォネラ)」の販売台数も伸び、5月13日現在の国内の会員数は2万9600人に、AP数は1万5900か所に達した。
●PCユーザーをターゲットにプロモーション展開をしてきたフォン・ジャパン
――たった半年でここまで普及しましたが、サービス開始当初、いけるという予感はありましたか。
千川原 「La Fonera」が売れる、と思って始めたわけではありませんよ。「FON」はユーザーがAPを設置し、ほかのユーザーに開放する、いわばユーザーが通信インフラを作り上げるわけです。この内容がとても斬新で、ネットビジネスに携わる者としてぜひやらねば、と思いました。もちろん、世界的に見ても普及しているので、大丈夫だろう、とは思っていましたが。
――ここまで普及した要因は何でしょうか。
千川原 九十九電機で「La Fonera」を販売できたこと、でしょうか。当初はネット販売を中心にし、リアル店舗での販売は重視していなかったのですが、日本ではリアル店舗の影響力が大きい。そこでリアル店舗での展開を行ったわけです。PCの上級ユーザーを顧客に持つ九十九電機で販売することで、「FON」に賛同して頂けるユーザーにたくさんめぐり合うことができました。
――現在、「FON」はどのようなユーザーが利用しているのでしょうか。
千川原 エリアで見た場合、東京在住のユーザーがもっとも多いですね。次に神奈川、大阪。少し(数が)開いて、埼玉、千葉、福岡などでも広がっています。東京近郊が多いですね。年齢では20代後半から30代後半の男性がほとんどです。
――PCのヘビーユーザー層と重なる、というわけですね。
千川原 そうですね。でも、これからは裾野を広げていきたいと思っています。九十九電機のほか、現在、全国70店舗ほどのノジマ店舗でも「La Fonera」が販売されています。
――九十九電機とノジマ、ユーザー層が違うため、ユーザーの理解度も違うのではありませんか。
千川原 ノジマは家電量販店ですから、PCについて詳しくないユーザーも多いでしょう。説明員を各店舗ごとに配置できればいいのですが、なかなかそれも難しい。そのため、九十九電機で培ったPOPなどのノウハウをノジマに移植しています。また、ユーザーからの質問に直接対応できるよう、サポート体制を強化しています。
●外出先でも使える「FON」 実際使っているユーザーはそれほど多くない?
――外出先でも無線LANが利用できる、というのが売りですが……。
千川原 APに接続できるエリアは弊社Webサイトの「FON マップ」で公開しています。エリアはグリーンで表示していますが、あくまで目安なので、立地や周りの環境によって接続できない場合もあります。
――するとユーザーは、接続できる場所を求めてさまよったり……?
千川原 そうならないように、確実に接続できるスポットを公開したいですね。ユーザーのコミュニティーサイトを開設しようと思っています。ユーザーに、ここで接続できた、というような情報をどんどん書き込んでもらい、他のユーザーの役に立てて欲しいと思っています。このサイトは6月下旬ぐらいに仮オープンするつもりです。
――APの開放レベルを下げることができると聞きましたが、他人に使われないよう、レベルを下げているユーザーもいるのではありませんか。
千川原 (そのような使い方をするユーザーは)ゼロではありません。インターネットを使用しない時は電源を落としているユーザーもいますね。それでも全体から見ればわずかな割合なので、それほど重視していません。必要ロスの範囲内だと思っています。もちろん、そういったユーザーに対して、FONの内容や理念について説明したメールを送るなど、啓蒙活動はしています。
――ところで自宅以外で「FON」を利用しているユーザーはどのくらいいるのでしょうか?
千川原 自宅で利用しているユーザーがほとんどのようですね(苦笑)。まだAP数が少なく、どこでも利用できる、というわけにはいかないので……。家庭内の無線LAN化に一役買っている、といったところでしょうか。
――外出先でも使えるように「La Fonera」を設置した店舗などが必要になるのではありませんか。
千川原 その通りですね。飲食店だけではなく、例えばスーパーなどにも検討しています。両親が買い物をしている間、子どもは携帯型ゲーム機で時間をつぶす、などの利用ができますから。サービス開始の詳細は未定です。オファーは10件以上頂いているのですが……。
――何が障害となっているのですか。
千川原 技術的なことがネックになっています。店舗に設置した場合、店舗のどこにいても接続できる環境を提供するべきだと思っています。しかし、「La Fonera」では1台で店舗内すべてをカバーすることができない。どうしても接続できないエリアが生じてしまう。
――複数台設置することはできないのですか。
千川原 設置することはできますが、その場合、APを変更する場合、再度ログインする必要があります。例えばAポイントの接続が悪くてBポイントに変更したい場合、1度Aポイントをログアウトして、Bポイントでログインして……と手動で切り替える必要があります。何度もログインし直すようでは使いにくいでしょう?
――すると店舗展開はしばらく先、ということでしょうか。
千川原 今年はユーザーの獲得を最優先に取り組んでいきます。とはいえ、それまで店舗展開を棚上げするつもりはなく、並行して進めていきます。早ければ今年の後半に実現するかもしれません。
●ユーザーの獲得が急務! 年内にAP数7万5000か所に
――ユーザー数の拡大のためには、専用ルーターの販売が必須となるわけですが。
千川原 九十九電機を軸に、これからもキャンペーン、店頭イベントを展開していきます。また「La Fonera」にサービスなどをバンドルして販売することも考えています。告知活動では、これまでPCユーザーをターゲットにした店頭イベントをやってきましたが、これからは携帯型ゲームユーザーをターゲットにしたプレゼンテーションを実施していく予定です。
――年内にAPを7万5000か所に設置する、という目標がありますが、現時点のAP数は1万6000ほど。達成は可能でしょうか。
千川原 目標は大きく、ですよ(笑)。ユーザー数、AP数とも順調に伸びており、目標達成のためには、夏ごろに加速度をさらに上げる必要があります。そのために6月末にコミュニティーサイトを仮オープンするわけです。また、「La Fonera」がなくてもPCそのものをAPにするソフトの提供も開始しました。
――それはどういうものですか。
千川原 通常は「La Fonera」がAPなのですが、このソフト「FON Spot」はインストールしたPCを「FON」のAPに変えてしまう、というものです。4月下旬からβ版の提供を開始しており、無料でダウンロードできます。現在、Mac版とリナックス版の2種類を公開しています。
●今後の課題はISPよりも収益モデル!? 「ISPとはもめていません!」
――今後の課題について教えて下さい。やはり、ISPとの関係でしょうか。
千川原 ISPともめているだろう、とよく聞かれますが、そんなことはありませんよ(苦笑)。「FON」を開始するためには、ブロードバンドが必要ですから、「FON」はISPと敵対するものではありません。ISP側もその点は理解して下さっていますし、ユーザーにとって「FON」がいかに便利なサービスか、ということも共感してくれています。今は、具体的に利益シェアをどうするか、サービスの付加価値をどう分け合うか、という点ですり合わせをしている状態です。
――現在は「La Fonera」の売り上げがおもな収入源ですよね?「La Fonera」がある程度普及した場合、収入が減少してしまうのではありませんか。
千川原 今でも「La Fonera」の売り上げ以外に、ファームウェアや、「FON」のロゴによるライセンス収入などがあります。「FON」対応機器が今後増えれば、これらの収入も増加すると思っています。また、ユーザー専用サイトに広告を掲載することも検討しています。詳細は決まっていませんが、ある程度のユーザーを獲得できたら、次のステップとして取り組んでいきます。
――では、最後に。「FON」が全国に広まった場合、どんなサービスやコンテンツが生まれると思いますか。
千川原 ユーザー限定のコンテンツ提供はありえますね。例えば、ユーザー限定サイトで配信するWebラジオなどですね。サービスですか……。地域活性化のために自治体などが「FON」を導入し、「La Fonera」を設置した場所でイベントをやる、とか。ちょっと思いつきませんが、いろいろなことができると思います。「FON」エリアにどんなサービスが生まれるのか、何が起きるのか、私たちも楽しみにしています。(聞き手:WebBCNランキング編集部・山下彰子)
ユーザーがアクセスポイント(AP)を無料開放する代わりに、他のユーザーが開放しているAPを無料利用できる相互利用型無線LANサービス「FON」が日本に上陸して約半年が経過した。フォン・ジャパンの千川原智康 Chairmanに、これまでの経過とインターネットプロバイダー(ISP)問題を含めた今後の課題について聞いた。。
入会費、利用料とも無料の「FON」だが、現在ISPとの間に問題を抱えている。国内のISPは「通信回線やインターネット接続アカウントを他人に提供してはならない」という利用規約を設けているところが多く、「FON」を利用したくても利用できないユーザーも少なくない。とはいえ、専用無線LANルーター「La Fonera(ラ・フォネラ)」の販売台数も伸び、5月13日現在の国内の会員数は2万9600人に、AP数は1万5900か所に達した。
●PCユーザーをターゲットにプロモーション展開をしてきたフォン・ジャパン
――たった半年でここまで普及しましたが、サービス開始当初、いけるという予感はありましたか。
千川原 「La Fonera」が売れる、と思って始めたわけではありませんよ。「FON」はユーザーがAPを設置し、ほかのユーザーに開放する、いわばユーザーが通信インフラを作り上げるわけです。この内容がとても斬新で、ネットビジネスに携わる者としてぜひやらねば、と思いました。もちろん、世界的に見ても普及しているので、大丈夫だろう、とは思っていましたが。
――ここまで普及した要因は何でしょうか。
千川原 九十九電機で「La Fonera」を販売できたこと、でしょうか。当初はネット販売を中心にし、リアル店舗での販売は重視していなかったのですが、日本ではリアル店舗の影響力が大きい。そこでリアル店舗での展開を行ったわけです。PCの上級ユーザーを顧客に持つ九十九電機で販売することで、「FON」に賛同して頂けるユーザーにたくさんめぐり合うことができました。
――現在、「FON」はどのようなユーザーが利用しているのでしょうか。
千川原 エリアで見た場合、東京在住のユーザーがもっとも多いですね。次に神奈川、大阪。少し(数が)開いて、埼玉、千葉、福岡などでも広がっています。東京近郊が多いですね。年齢では20代後半から30代後半の男性がほとんどです。
――PCのヘビーユーザー層と重なる、というわけですね。
千川原 そうですね。でも、これからは裾野を広げていきたいと思っています。九十九電機のほか、現在、全国70店舗ほどのノジマ店舗でも「La Fonera」が販売されています。
――九十九電機とノジマ、ユーザー層が違うため、ユーザーの理解度も違うのではありませんか。
千川原 ノジマは家電量販店ですから、PCについて詳しくないユーザーも多いでしょう。説明員を各店舗ごとに配置できればいいのですが、なかなかそれも難しい。そのため、九十九電機で培ったPOPなどのノウハウをノジマに移植しています。また、ユーザーからの質問に直接対応できるよう、サポート体制を強化しています。
●外出先でも使える「FON」 実際使っているユーザーはそれほど多くない?
――外出先でも無線LANが利用できる、というのが売りですが……。
千川原 APに接続できるエリアは弊社Webサイトの「FON マップ」で公開しています。エリアはグリーンで表示していますが、あくまで目安なので、立地や周りの環境によって接続できない場合もあります。
――するとユーザーは、接続できる場所を求めてさまよったり……?
千川原 そうならないように、確実に接続できるスポットを公開したいですね。ユーザーのコミュニティーサイトを開設しようと思っています。ユーザーに、ここで接続できた、というような情報をどんどん書き込んでもらい、他のユーザーの役に立てて欲しいと思っています。このサイトは6月下旬ぐらいに仮オープンするつもりです。
――APの開放レベルを下げることができると聞きましたが、他人に使われないよう、レベルを下げているユーザーもいるのではありませんか。
千川原 (そのような使い方をするユーザーは)ゼロではありません。インターネットを使用しない時は電源を落としているユーザーもいますね。それでも全体から見ればわずかな割合なので、それほど重視していません。必要ロスの範囲内だと思っています。もちろん、そういったユーザーに対して、FONの内容や理念について説明したメールを送るなど、啓蒙活動はしています。
――ところで自宅以外で「FON」を利用しているユーザーはどのくらいいるのでしょうか?
千川原 自宅で利用しているユーザーがほとんどのようですね(苦笑)。まだAP数が少なく、どこでも利用できる、というわけにはいかないので……。家庭内の無線LAN化に一役買っている、といったところでしょうか。
――外出先でも使えるように「La Fonera」を設置した店舗などが必要になるのではありませんか。
千川原 その通りですね。飲食店だけではなく、例えばスーパーなどにも検討しています。両親が買い物をしている間、子どもは携帯型ゲーム機で時間をつぶす、などの利用ができますから。サービス開始の詳細は未定です。オファーは10件以上頂いているのですが……。
――何が障害となっているのですか。
千川原 技術的なことがネックになっています。店舗に設置した場合、店舗のどこにいても接続できる環境を提供するべきだと思っています。しかし、「La Fonera」では1台で店舗内すべてをカバーすることができない。どうしても接続できないエリアが生じてしまう。
――複数台設置することはできないのですか。
千川原 設置することはできますが、その場合、APを変更する場合、再度ログインする必要があります。例えばAポイントの接続が悪くてBポイントに変更したい場合、1度Aポイントをログアウトして、Bポイントでログインして……と手動で切り替える必要があります。何度もログインし直すようでは使いにくいでしょう?
――すると店舗展開はしばらく先、ということでしょうか。
千川原 今年はユーザーの獲得を最優先に取り組んでいきます。とはいえ、それまで店舗展開を棚上げするつもりはなく、並行して進めていきます。早ければ今年の後半に実現するかもしれません。
●ユーザーの獲得が急務! 年内にAP数7万5000か所に
――ユーザー数の拡大のためには、専用ルーターの販売が必須となるわけですが。
千川原 九十九電機を軸に、これからもキャンペーン、店頭イベントを展開していきます。また「La Fonera」にサービスなどをバンドルして販売することも考えています。告知活動では、これまでPCユーザーをターゲットにした店頭イベントをやってきましたが、これからは携帯型ゲームユーザーをターゲットにしたプレゼンテーションを実施していく予定です。
――年内にAPを7万5000か所に設置する、という目標がありますが、現時点のAP数は1万6000ほど。達成は可能でしょうか。
千川原 目標は大きく、ですよ(笑)。ユーザー数、AP数とも順調に伸びており、目標達成のためには、夏ごろに加速度をさらに上げる必要があります。そのために6月末にコミュニティーサイトを仮オープンするわけです。また、「La Fonera」がなくてもPCそのものをAPにするソフトの提供も開始しました。
――それはどういうものですか。
千川原 通常は「La Fonera」がAPなのですが、このソフト「FON Spot」はインストールしたPCを「FON」のAPに変えてしまう、というものです。4月下旬からβ版の提供を開始しており、無料でダウンロードできます。現在、Mac版とリナックス版の2種類を公開しています。
●今後の課題はISPよりも収益モデル!? 「ISPとはもめていません!」
――今後の課題について教えて下さい。やはり、ISPとの関係でしょうか。
千川原 ISPともめているだろう、とよく聞かれますが、そんなことはありませんよ(苦笑)。「FON」を開始するためには、ブロードバンドが必要ですから、「FON」はISPと敵対するものではありません。ISP側もその点は理解して下さっていますし、ユーザーにとって「FON」がいかに便利なサービスか、ということも共感してくれています。今は、具体的に利益シェアをどうするか、サービスの付加価値をどう分け合うか、という点ですり合わせをしている状態です。
――現在は「La Fonera」の売り上げがおもな収入源ですよね?「La Fonera」がある程度普及した場合、収入が減少してしまうのではありませんか。
千川原 今でも「La Fonera」の売り上げ以外に、ファームウェアや、「FON」のロゴによるライセンス収入などがあります。「FON」対応機器が今後増えれば、これらの収入も増加すると思っています。また、ユーザー専用サイトに広告を掲載することも検討しています。詳細は決まっていませんが、ある程度のユーザーを獲得できたら、次のステップとして取り組んでいきます。
――では、最後に。「FON」が全国に広まった場合、どんなサービスやコンテンツが生まれると思いますか。
千川原 ユーザー限定のコンテンツ提供はありえますね。例えば、ユーザー限定サイトで配信するWebラジオなどですね。サービスですか……。地域活性化のために自治体などが「FON」を導入し、「La Fonera」を設置した場所でイベントをやる、とか。ちょっと思いつきませんが、いろいろなことができると思います。「FON」エリアにどんなサービスが生まれるのか、何が起きるのか、私たちも楽しみにしています。(聞き手:WebBCNランキング編集部・山下彰子)