トップシェア携帯電話、人気の秘密は基本的な使いやすさとデザイン
3月はケータイ商戦の天王山と言われている。新入学生、新社会人が多く、1年で最も契約者が多いのがこの月だからだ。1番の人気を集めたのはシャープの「SH903i」。NTTドコモから発売されている第3世代携帯電話「FOMA」の端末だ。「BCNランキング」でカラーバリエーションを合算して集計した3月の携帯電話の販売台数でシェア5.4%を獲得し、1位に輝いた。
3月はケータイ商戦の天王山と言われている。新入学生、新社会人が多く、1年で最も契約者が多いのがこの月だからだ。1番の人気を集めたのはシャープの「SH903i」。NTTドコモから発売されている第3世代携帯電話「FOMA」の端末だ。「BCNランキング」でカラーバリエーションを合算して集計した3月の携帯電話の販売台数でシェア5.4%を獲得し、1位に輝いた。
「SH903i」は、2.8インチのモバイルASV液晶を備え、最大1MBの大容量アプリケーション「メガiアプリ」や動画などを存分に楽しめる、高性能端末だ。発売は06年10月で、モデルチェンジが激しい携帯電話市場で5か月以上前に発売された最新端末とは言えない機種が、トップになった大きな要因の1つは、端末の販売価格にあると思われる。
ドコモは「703i」シリーズ、ワンセグが受信できる「903iTV」シリーズ、下りの通信速度が最大3.6Mbps(メガビット/秒)の「HSDPA」に対応した「903iX HIGH-SPEED」シリーズといった最新端末を年明けから次々と投入。去年発売された「SH903i」は手ごろな価格まで下がった。
しかし、価格だけを見れば、他社の「903i」シリーズ端末も条件は同じ。その中で、多くのユーザーから支持を集めることができたのは、ドコモ向けの端末を担当し、「SH903i」を企画した木戸貴之・通信システム事業本部パーソナル通信第一事業部商品企画部副参事がMNP(番号ポータビリティ)を見据えて打ち出した戦略だった。
携帯電話は、一般的に携帯電話会社(キャリア)が販売するため、端末のシリーズ共通仕様をキャリアが決め、メーカーは仕様に沿って端末を開発する。「903i」シリーズでは、アプリの容量が1MBに拡大された「メガiアプリ」や、位置情報を検知するためのGPSなどがドコモから各社共通の仕様で出された。その仕様をクリアし、プラスアルファの部分で端末の違いをどう出していくかがメーカーの腕の見せ所だ。
木戸氏は、端末の差異化のポイントにユーザービリティ、つまり、「使いやすさ」を据えた。「SH903i」は06年10月のMNP開始後の発売が予定されており、MNPでのユーザー獲得を狙っていた。
「番号ポータビリティの乗り換え組も相当意識した。それをどう迎え撃つか検討した際に、やはり付加価値より基本的な使いやすさが重要だろうと考えた。ユーザーは平均で2年近くケータイを使う。今後は、やはりベーシックな部分が見直されてくると考えていた」と、木戸氏は当時の心境を振り返る。
使いやすさをどう実現するか――コンセプトを練っている木戸氏に液晶の事業部から1つの提案が持ち込まれた。それが、「SH903i」で初めて採用された、2.8インチのワイドQVGAの新しい携帯電話用液晶「モバイルASV液晶」だった。
液晶はバックライトを使って表示するため、室内などの暗い場所では画面は見えるが、屋外では明るいため見えにくくなる。新型のモバイルASV液晶は、バックライトで見える透過用のRGBフィルターだけでなく、反射光でも色がきれいに見える反射用のRGBフィルターも搭載。太陽光の下でも、鮮明な画面を見ることができた。
「外に持ち出すケータイだからこそ、屋外での見やすさが重要」――使いやすさの1つに画面の視認性を考えていた木戸氏はすぐに採用を決めた。シャープは事業部制を採用しており、液晶を開発している事業部がキャリア担当の商品企画に、その段階で最高の液晶パネルを提案する仕組みになっている。このことが幸いした。
木戸氏は新型モバイルASV液晶にさらに磨きをかけた。画像を鮮やかに補正する「Super Vividエンジン」や、周囲の光量を感知して最適な明るさを実現する「明るさセンサー」といった最新の技術を盛り込むことで、輝度や色再現性を向上させた。
液晶の採用が決まると、次の課題は、インターフェイスをどう構築していくか、ということだった。ディスプレイのサイズに合わせ、メニュー画面などの使い勝手の細かな調整が必要となるからだ。そこで、「メニューなどのGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を見直した」(木戸氏)。
使いやすさを追求する過程で、ボタンの押しやすさで試行錯誤を繰り返した。木戸氏はボタンの間にフレームがない「フレームレスキー」の採用を決めた。フレームレスキーは薄型端末ではトレンドとなっているからだ。また、ボタンは「フラットキーにしない」(同)ことをポイントにした。
フラットキーは凹凸のないボタンで構成するため、デザインの統一はしやすいが、フレームレスキー構造にしてしまうと、1つのボタンを押すと隣のボタンも一緒に押してしまうなど、操作性が犠牲になる。
そこで、木戸氏はボタンに少し膨らみを付け、1つ1つを独立させることでフラットキーに近い形にすると同時に、押しやすさも実現した。実際にユーザーに使ってもらうテストを繰り返し、デザインと操作性を両立させていった。「見た目と使いやすさのバランスを取るのに苦労した」と木戸氏は振り返る。
使いやすさだけでなく、機能の充実も図った。従来人気の高いショートカット機能、アラーム、スケジューラー、TODOなどのPDA(携帯情報端末)的な機能は引き続き搭載した。
同時に、SDオーディオなら連続50時間の再生が可能で、WMAにも対応した音楽機能、320万画素のオートフォーカス付きカメラ、待ち受け画面やメニュー表示を簡単に一新できる「きせかえツール」、ワンセグなどで用いられ定評のある圧縮方式「H.264形式」の動画再生機能など、付加価値機能も盛り込んだ。PDAや携帯オーディオなど「ポケットに入るものは全部ケータイに入れてやる、という意気込みでやった」と木戸氏は強調する。
現在の携帯電話市場で、端末の個性を出すために機能と同じくらい重要なのがデザインだ。機能だけでは、端末は売れない時代に突入している。そのため、有名なデザイナーとのコラボレーションケータイや塗装の質感や触感にまでこだわったケータイも増えている。
木戸氏もデザインには気を配った。当初はアルミや革を使って高級感やホンモノ感を出そうとしたが、「既に出ていた」(同)ため、断念。代わりに、宝石のカッティングのような造形の「ジュエルカット」と呼ぶデザインを採用。「宝石の高級感をどのように出していくか」(同)で力点を置いた。
宝石の高級感を出すため塗装などで苦労はしたが、最終的には高級感溢れるデザインで、男女を問わず使える端末に仕上げることができた。サブディスプレイは「それがあると面でデザインを見せられず、普通のケータイに見えてしまう」(同)という理由から、搭載を見送った。
端末の色でデザインのアレンジも変えた。「SH903i」はブルー、ブラック、ホワイト、レッドのカラーがあるが、ホワイトとレッドは、奥の面に加工を入れるなど、ブルー、ブラックとは異なる、細やかな演出を加えた。
最も力を入れたのが「デザインとしてイルミネーションをどう使っていくか」(同)。今までシャープの端末は、あまり光を使わないため、シンプルな印象があった。そこで、「SH903i」では、あえて光を使ったイルミネーションにチャレンジした。
木戸氏はブラックとホワイトの端末は面で光るように、レッドとブルーの端末では点で光るようにと、デザインテイストに合わせて、光らせ方を変えた。制御ソフトの調整など技術者とすり合わせを行ったが、「この調整には、最後の最後まで苦労した」(同)。納得のいくイルミネーションが完成するまで半年を費やした。
デザインのこだわりは外面だけでなく、インターフェイスにも及んだ。「DVDレコーダーのメニューのようなイメージでAV機器を連想させたかった」(同)という狙いから、3Dアニメーションなどの表示が可能な「VividUI」というエンジンを採用。メニューの背景に動画を流せるようにした。
こうして完成した端末は「1つ1つの機能を見ていくと、決して903iシリーズの中でナンバー1ではないが、バランスよく、平均点が高い端末に仕上がった」と木戸氏は胸を張る。
デザインやコンセプトが近いケータイが同じ時期に店頭に並べばユーザーが分散してしまう可能性がある。また、特定の層しかシャープの端末を手にしてくれないという問題も起こりうる。逆に、1つ1つの端末のポジショニングを上手くコントロールできれば、それぞれ趣向が異なるユーザーを捕まえることができる。シャープがデザインを重要な要素としているのはこうした理由からだ。
木戸氏は「同時期に店頭に並ぶ端末は、どれ1つとして同じテイストにならないよう、デザインやコンセプトをしっかり調整をしている。半期半期で必ず(ケータイの)顔を変えていこうという方針にしている」と説明する。
木戸氏にとって「SH903i」が発売当初は前モデルの「SH902iS」と一緒に店頭に並ぶことは計算済みだった。「SH902iS」はアルミを全面に使用。同じような「顔」にならないために「SH903i」でアルミ素材を見送り、デザインも大幅に変えたのも、こうした考えがあるからだ。
この戦略は、4月23日にドコモから発表された最新端末「SH904i」にも受け継がれている。3インチのワイドQVGA液晶や、指でタッチパッドのように操作できる「TOUCH CRUISER」など、「SH903i」と比べると機能面をさらに進化させることで、ほかの端末との違いを打ち出した。
MNPが始まり競争の激しさが増す携帯電話市場でトップを獲得できたのは基本機能を重視した担当者のこだわりと、1つ1つの端末の「顔」を変えて個性を出しつつ、店頭の端末全体で魅力あるラインナップを構成する戦略。この2つが相乗効果となり、「SH903i」のヒットに結びついた。(フリーライター・石野純也)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
No.1の舞台裏――シャープ「SH903i」
3月はケータイ商戦の天王山と言われている。新入学生、新社会人が多く、1年で最も契約者が多いのがこの月だからだ。1番の人気を集めたのはシャープの「SH903i」。NTTドコモから発売されている第3世代携帯電話「FOMA」の端末だ。「BCNランキング」でカラーバリエーションを合算して集計した3月の携帯電話の販売台数でシェア5.4%を獲得し、1位に輝いた。
「SH903i」は、2.8インチのモバイルASV液晶を備え、最大1MBの大容量アプリケーション「メガiアプリ」や動画などを存分に楽しめる、高性能端末だ。発売は06年10月で、モデルチェンジが激しい携帯電話市場で5か月以上前に発売された最新端末とは言えない機種が、トップになった大きな要因の1つは、端末の販売価格にあると思われる。
ドコモは「703i」シリーズ、ワンセグが受信できる「903iTV」シリーズ、下りの通信速度が最大3.6Mbps(メガビット/秒)の「HSDPA」に対応した「903iX HIGH-SPEED」シリーズといった最新端末を年明けから次々と投入。去年発売された「SH903i」は手ごろな価格まで下がった。
しかし、価格だけを見れば、他社の「903i」シリーズ端末も条件は同じ。その中で、多くのユーザーから支持を集めることができたのは、ドコモ向けの端末を担当し、「SH903i」を企画した木戸貴之・通信システム事業本部パーソナル通信第一事業部商品企画部副参事がMNP(番号ポータビリティ)を見据えて打ち出した戦略だった。
MNPを狙い「使いやすさ」を重視、新型の液晶が後押しに
携帯電話は、一般的に携帯電話会社(キャリア)が販売するため、端末のシリーズ共通仕様をキャリアが決め、メーカーは仕様に沿って端末を開発する。「903i」シリーズでは、アプリの容量が1MBに拡大された「メガiアプリ」や、位置情報を検知するためのGPSなどがドコモから各社共通の仕様で出された。その仕様をクリアし、プラスアルファの部分で端末の違いをどう出していくかがメーカーの腕の見せ所だ。
木戸氏は、端末の差異化のポイントにユーザービリティ、つまり、「使いやすさ」を据えた。「SH903i」は06年10月のMNP開始後の発売が予定されており、MNPでのユーザー獲得を狙っていた。
「番号ポータビリティの乗り換え組も相当意識した。それをどう迎え撃つか検討した際に、やはり付加価値より基本的な使いやすさが重要だろうと考えた。ユーザーは平均で2年近くケータイを使う。今後は、やはりベーシックな部分が見直されてくると考えていた」と、木戸氏は当時の心境を振り返る。
使いやすさをどう実現するか――コンセプトを練っている木戸氏に液晶の事業部から1つの提案が持ち込まれた。それが、「SH903i」で初めて採用された、2.8インチのワイドQVGAの新しい携帯電話用液晶「モバイルASV液晶」だった。
液晶はバックライトを使って表示するため、室内などの暗い場所では画面は見えるが、屋外では明るいため見えにくくなる。新型のモバイルASV液晶は、バックライトで見える透過用のRGBフィルターだけでなく、反射光でも色がきれいに見える反射用のRGBフィルターも搭載。太陽光の下でも、鮮明な画面を見ることができた。
「外に持ち出すケータイだからこそ、屋外での見やすさが重要」――使いやすさの1つに画面の視認性を考えていた木戸氏はすぐに採用を決めた。シャープは事業部制を採用しており、液晶を開発している事業部がキャリア担当の商品企画に、その段階で最高の液晶パネルを提案する仕組みになっている。このことが幸いした。
木戸氏は新型モバイルASV液晶にさらに磨きをかけた。画像を鮮やかに補正する「Super Vividエンジン」や、周囲の光量を感知して最適な明るさを実現する「明るさセンサー」といった最新の技術を盛り込むことで、輝度や色再現性を向上させた。
液晶の採用が決まると、次の課題は、インターフェイスをどう構築していくか、ということだった。ディスプレイのサイズに合わせ、メニュー画面などの使い勝手の細かな調整が必要となるからだ。そこで、「メニューなどのGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を見直した」(木戸氏)。
ボタンはデザインと操作性を追求、機能は「全部ケータイに入れる」
使いやすさを追求する過程で、ボタンの押しやすさで試行錯誤を繰り返した。木戸氏はボタンの間にフレームがない「フレームレスキー」の採用を決めた。フレームレスキーは薄型端末ではトレンドとなっているからだ。また、ボタンは「フラットキーにしない」(同)ことをポイントにした。
フラットキーは凹凸のないボタンで構成するため、デザインの統一はしやすいが、フレームレスキー構造にしてしまうと、1つのボタンを押すと隣のボタンも一緒に押してしまうなど、操作性が犠牲になる。
そこで、木戸氏はボタンに少し膨らみを付け、1つ1つを独立させることでフラットキーに近い形にすると同時に、押しやすさも実現した。実際にユーザーに使ってもらうテストを繰り返し、デザインと操作性を両立させていった。「見た目と使いやすさのバランスを取るのに苦労した」と木戸氏は振り返る。
使いやすさだけでなく、機能の充実も図った。従来人気の高いショートカット機能、アラーム、スケジューラー、TODOなどのPDA(携帯情報端末)的な機能は引き続き搭載した。
同時に、SDオーディオなら連続50時間の再生が可能で、WMAにも対応した音楽機能、320万画素のオートフォーカス付きカメラ、待ち受け画面やメニュー表示を簡単に一新できる「きせかえツール」、ワンセグなどで用いられ定評のある圧縮方式「H.264形式」の動画再生機能など、付加価値機能も盛り込んだ。PDAや携帯オーディオなど「ポケットに入るものは全部ケータイに入れてやる、という意気込みでやった」と木戸氏は強調する。
端末のカラーで発光が異なるイルミネーションへのこだわり
現在の携帯電話市場で、端末の個性を出すために機能と同じくらい重要なのがデザインだ。機能だけでは、端末は売れない時代に突入している。そのため、有名なデザイナーとのコラボレーションケータイや塗装の質感や触感にまでこだわったケータイも増えている。
木戸氏もデザインには気を配った。当初はアルミや革を使って高級感やホンモノ感を出そうとしたが、「既に出ていた」(同)ため、断念。代わりに、宝石のカッティングのような造形の「ジュエルカット」と呼ぶデザインを採用。「宝石の高級感をどのように出していくか」(同)で力点を置いた。
宝石の高級感を出すため塗装などで苦労はしたが、最終的には高級感溢れるデザインで、男女を問わず使える端末に仕上げることができた。サブディスプレイは「それがあると面でデザインを見せられず、普通のケータイに見えてしまう」(同)という理由から、搭載を見送った。
端末の色でデザインのアレンジも変えた。「SH903i」はブルー、ブラック、ホワイト、レッドのカラーがあるが、ホワイトとレッドは、奥の面に加工を入れるなど、ブルー、ブラックとは異なる、細やかな演出を加えた。
最も力を入れたのが「デザインとしてイルミネーションをどう使っていくか」(同)。今までシャープの端末は、あまり光を使わないため、シンプルな印象があった。そこで、「SH903i」では、あえて光を使ったイルミネーションにチャレンジした。
木戸氏はブラックとホワイトの端末は面で光るように、レッドとブルーの端末では点で光るようにと、デザインテイストに合わせて、光らせ方を変えた。制御ソフトの調整など技術者とすり合わせを行ったが、「この調整には、最後の最後まで苦労した」(同)。納得のいくイルミネーションが完成するまで半年を費やした。
デザインのこだわりは外面だけでなく、インターフェイスにも及んだ。「DVDレコーダーのメニューのようなイメージでAV機器を連想させたかった」(同)という狙いから、3Dアニメーションなどの表示が可能な「VividUI」というエンジンを採用。メニューの背景に動画を流せるようにした。
こうして完成した端末は「1つ1つの機能を見ていくと、決して903iシリーズの中でナンバー1ではないが、バランスよく、平均点が高い端末に仕上がった」と木戸氏は胸を張る。
端末ごとでデザインやコンセプトを明確に変えるシャープの戦略
デザインやコンセプトが近いケータイが同じ時期に店頭に並べばユーザーが分散してしまう可能性がある。また、特定の層しかシャープの端末を手にしてくれないという問題も起こりうる。逆に、1つ1つの端末のポジショニングを上手くコントロールできれば、それぞれ趣向が異なるユーザーを捕まえることができる。シャープがデザインを重要な要素としているのはこうした理由からだ。
木戸氏は「同時期に店頭に並ぶ端末は、どれ1つとして同じテイストにならないよう、デザインやコンセプトをしっかり調整をしている。半期半期で必ず(ケータイの)顔を変えていこうという方針にしている」と説明する。
木戸氏にとって「SH903i」が発売当初は前モデルの「SH902iS」と一緒に店頭に並ぶことは計算済みだった。「SH902iS」はアルミを全面に使用。同じような「顔」にならないために「SH903i」でアルミ素材を見送り、デザインも大幅に変えたのも、こうした考えがあるからだ。
この戦略は、4月23日にドコモから発表された最新端末「SH904i」にも受け継がれている。3インチのワイドQVGA液晶や、指でタッチパッドのように操作できる「TOUCH CRUISER」など、「SH903i」と比べると機能面をさらに進化させることで、ほかの端末との違いを打ち出した。
MNPが始まり競争の激しさが増す携帯電話市場でトップを獲得できたのは基本機能を重視した担当者のこだわりと、1つ1つの端末の「顔」を変えて個性を出しつつ、店頭の端末全体で魅力あるラインナップを構成する戦略。この2つが相乗効果となり、「SH903i」のヒットに結びついた。(フリーライター・石野純也)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。