あなたも「のだめ」になれるかも?! ネットにつながる電子ピアノを試した
<strong>――冬休み特別企画:借りモノレビュー、ヤマハクラビノーバ「CVP-309PE」</strong>二ノ宮知子氏原作の漫画「のだめカンタービレ」がTVドラマ化され、クラシックピアノがちょっとしたブームだ。本格的に弾きたいならアコースティックピアノが欲しいところだが、最近では電子ピアノの進化もめざましい。大きな液晶画面を備え、インターネットに接続できるモデルまであるという。そこで、ネットにつながるヤマハの電子ピアノ、クラビノーバ「CVP-309PE」を試した。
――冬休み特別企画:借りモノレビュー、ヤマハクラビノーバ「CVP-309PE」
二ノ宮知子氏原作の漫画「のだめカンタービレ」がTVドラマ化され、クラシックピアノがちょっとしたブームだ。本格的に弾きたいならアコースティックピアノが欲しいところだが、最近では電子ピアノの進化もめざましい。大きな液晶画面を備え、インターネットに接続できるモデルまであるという。そこで、ネットにつながるヤマハの電子ピアノ、クラビノーバ「CVP-309PE」を試した。
●液晶ディスプレイに楽譜を表示、サイズ変更も可能
まず目に飛び込んでくるのが、鍵盤の上部に位置する640×480ドットのカラー液晶ディスプレイ。そもそも、電子ピアノに液晶ディスプレイが付いていること自体が驚きだ。しかも、操作メニューだけでなく、楽譜や歌詞も表示してくれるスグレモノ。試す前は、「こんな小さな画面で細かい楽譜が本当に読めるのだろうか」と心配していたが、楽譜の表示サイズが調節でき、演奏する上で困ることはなかった。1段譜なら4から16小節、2段譜なら2から8小節まで切り替えられる。さらに、画面上の最後の小節を弾いたら自動的に次のページへ切り替わる。楽譜をめくらなくていいのは便利だ。
ただ、楽譜への書き込みができない。演奏時のメモを書き込むなら、市販の紙の楽譜を買うか、同社のインターネットサービス「ぷりんと楽譜」「音楽データショップ」などから楽譜を購入してプリントする必要がある。ぜひ書き込み機能を搭載してほしいところだ。
ピアノである以上、鍵盤のタッチはきちんと確認しておきたい。「CVP-309PE」は木製鍵盤を使用している。試しに合唱曲の伴奏を弾くと、他社の製品と比べて角張らない柔らかい感じがした。軽すぎず重すぎず、キーを押した後戻ってくる感覚も違和感はない。「グランドピアノに近いタッチを取り入れている」(ヤマハ国内楽器営業本部HK営業部企画推進室・山下有美子チーフインストラクター)とのことだが、確かに高音のキーへいくほど軽く低音のキーへいくほど重く、というタッチの差が再現できている。電子ピアノの基本性能である鍵盤に楽器メーカーとしての技術を結集している印象を受けた。
●機能は多彩だが、その分ボタンの数が多め
多機能が魅力の「CVP-309PE」だが、それに付随してボタン数が多いのが気になる点だ。どこをどう押したらやりたいことができるのか、覚えるのにしばらく時間がかかりそうだ。そして、沢山の機能を十分活用できるのか。20代である筆者がそう思うのだから、中高年の方が初めて使う場合に果たしてちゃんと使いこなせるのか、疑問を感じた。1人で使うよりもむしろ「家族がそれぞれ気に入った機能を選んで使うのが無難」(同)だろう。頻繁に使う設定を登録できる「レジストレーション」ボタンも備えるので、自信がなければそちらを利用するといい。
また、サイズについても指摘したい。同社の電子ピアノは他社と比較するとサイズが大きめ。弾いたときぐらつかないよう、「楽器としての弾き心地を重視した」(同)ためだというが、同じ88鍵でも他社のコンパクトなモデルと比べると、どうしても奥行を取ってしまうのは否めない。「CVP-309PE」のサイズは幅1430×奥行609×高さ890mmだが、リビングなど広い部屋に置くなら問題はないと思うが、狭い個室に置くと圧迫感を感じそうだ。
●インターネット接続で最新曲をいち早くチェック
十数年前、筆者が子どもの頃抱いた電子ピアノのイメージは「防音機能付きで楽器音を選べる」という程度のものだった。しかし、電子ピアノは今や、初級から上級までレベルに合わせた使い方が自由自在にできる「おもちゃ箱」のような楽器だ。
そして、「CVP-309PE」の特徴は、なんといっても電子ピアノから直接インターネットにつなげるサービス「インターネットダイレクトコネクション」が利用できることだ。月額630円で、約1万曲以上のデータから好きな曲をストリーミングして、液晶ディスプレイに楽譜や歌詞を表示できる。専用サイト「ネットミュージックタウン」には、「弾きホーダイ」「歌いホーダイ」「ミュージックストリーム」といったコンテンツがあり、さまざまな楽曲のデータを利用できる。いちいちパソコンに接続しなくても、電子ピアノ上で専用サイトが使えるのは画期的だ。
例えば、約2000曲のデータが利用できる「弾きたいホーダイ」では、ドラマの主題歌など最新曲が毎月追加されていく。タイムリーな曲を望む方にはうってつけのサービスだ。ただ、ネット経由でその都度楽譜を閲覧する「ストリーミング」サービスのため、本体には楽譜のデータが残せない。毎回楽譜を検索して表示させるのは面倒に感じた。また、最新の曲を弾かない人にはあまり魅力のないサービスかもしれない。
●1人でもアンサンブルが楽しめる自動伴奏
このほか、音楽のジャンルを選んでC、D、Eなどのコードを押さえれば自動で伴奏する機能もある。いつも弾いている曲に自分で作った伴奏を重ねれば、全く異なる雰囲気のオリジナル曲に仕上がるので、弾く人も聴く人も楽しめる。ただ、この機能はコードを知っていないと活用できない。1人でも複数の楽器をあれこれ重ねてゴージャスな演奏ができるのは興味深いが、折角アンサンブルを組むなら、楽器ができる知人を沢山集めてやりたくなるのが心情というもの。自宅で1人、電子ピアノと向き合ってアンサンブルをつくりあげるのもいいが、大勢でわいわいとセッションするのもまた楽しそうだ。
音といえば、スピーカーも充実している。前面に2つ(16×5×3cm、ドーム型)と背面に2つ(10×2cm)備え、まるでホールにいるかのような立体的な響きを再現する。前述の「ミュージックストリーム」は「CVP-309PE」をジュークボックスのように使えるサービスだが、ピアノ以外のこのような使い方をしても薄っぺらい感じはしなかったので、満足といえよう。
音楽フォーマットはスタンダードMIDIファイルに対応し、記録メディアとしてスマートメディアやフロッピーディスクが使える。3.3MBのフラッシュメモリも内蔵しUSB接続も可能。弾いた曲を録音して保存したり、メディアに保存した曲を他のデジタル機器で再生したりできるのは、電子ピアノならではのよさだろう。
ただし、録音といっても、実際は音程や音色、テンポなどを「MIDIデータ」として記録するだけで、音そのものを録音するわけではない。観客の拍手や会場の物音など、ライブの雰囲気も記録したい場合は、テープレコーダーやMDなどを使って録音する必要がある。
電子ピアノは機能や鍵盤の構造によって、価格もサイズもさまざま。例えば「CVP-309PE」の価格は63万円。決して安い買い物ではない。数ある電子ピアノから自分に合ったモデルを選ぶには、「こんな使い方をしたい」という希望を具体的に描いておくことが大切。そして必ず複数のモデルを弾き比べることだ。この冬、電子ピアノで憧れの曲に挑戦してはいかがだろうか。(WebBCNランキング編集部・井上真希子)
――冬休み特別企画:借りモノレビュー、ヤマハクラビノーバ「CVP-309PE」
二ノ宮知子氏原作の漫画「のだめカンタービレ」がTVドラマ化され、クラシックピアノがちょっとしたブームだ。本格的に弾きたいならアコースティックピアノが欲しいところだが、最近では電子ピアノの進化もめざましい。大きな液晶画面を備え、インターネットに接続できるモデルまであるという。そこで、ネットにつながるヤマハの電子ピアノ、クラビノーバ「CVP-309PE」を試した。
●液晶ディスプレイに楽譜を表示、サイズ変更も可能
まず目に飛び込んでくるのが、鍵盤の上部に位置する640×480ドットのカラー液晶ディスプレイ。そもそも、電子ピアノに液晶ディスプレイが付いていること自体が驚きだ。しかも、操作メニューだけでなく、楽譜や歌詞も表示してくれるスグレモノ。試す前は、「こんな小さな画面で細かい楽譜が本当に読めるのだろうか」と心配していたが、楽譜の表示サイズが調節でき、演奏する上で困ることはなかった。1段譜なら4から16小節、2段譜なら2から8小節まで切り替えられる。さらに、画面上の最後の小節を弾いたら自動的に次のページへ切り替わる。楽譜をめくらなくていいのは便利だ。
ただ、楽譜への書き込みができない。演奏時のメモを書き込むなら、市販の紙の楽譜を買うか、同社のインターネットサービス「ぷりんと楽譜」「音楽データショップ」などから楽譜を購入してプリントする必要がある。ぜひ書き込み機能を搭載してほしいところだ。
ピアノである以上、鍵盤のタッチはきちんと確認しておきたい。「CVP-309PE」は木製鍵盤を使用している。試しに合唱曲の伴奏を弾くと、他社の製品と比べて角張らない柔らかい感じがした。軽すぎず重すぎず、キーを押した後戻ってくる感覚も違和感はない。「グランドピアノに近いタッチを取り入れている」(ヤマハ国内楽器営業本部HK営業部企画推進室・山下有美子チーフインストラクター)とのことだが、確かに高音のキーへいくほど軽く低音のキーへいくほど重く、というタッチの差が再現できている。電子ピアノの基本性能である鍵盤に楽器メーカーとしての技術を結集している印象を受けた。
●機能は多彩だが、その分ボタンの数が多め
多機能が魅力の「CVP-309PE」だが、それに付随してボタン数が多いのが気になる点だ。どこをどう押したらやりたいことができるのか、覚えるのにしばらく時間がかかりそうだ。そして、沢山の機能を十分活用できるのか。20代である筆者がそう思うのだから、中高年の方が初めて使う場合に果たしてちゃんと使いこなせるのか、疑問を感じた。1人で使うよりもむしろ「家族がそれぞれ気に入った機能を選んで使うのが無難」(同)だろう。頻繁に使う設定を登録できる「レジストレーション」ボタンも備えるので、自信がなければそちらを利用するといい。
また、サイズについても指摘したい。同社の電子ピアノは他社と比較するとサイズが大きめ。弾いたときぐらつかないよう、「楽器としての弾き心地を重視した」(同)ためだというが、同じ88鍵でも他社のコンパクトなモデルと比べると、どうしても奥行を取ってしまうのは否めない。「CVP-309PE」のサイズは幅1430×奥行609×高さ890mmだが、リビングなど広い部屋に置くなら問題はないと思うが、狭い個室に置くと圧迫感を感じそうだ。
●インターネット接続で最新曲をいち早くチェック
十数年前、筆者が子どもの頃抱いた電子ピアノのイメージは「防音機能付きで楽器音を選べる」という程度のものだった。しかし、電子ピアノは今や、初級から上級までレベルに合わせた使い方が自由自在にできる「おもちゃ箱」のような楽器だ。
そして、「CVP-309PE」の特徴は、なんといっても電子ピアノから直接インターネットにつなげるサービス「インターネットダイレクトコネクション」が利用できることだ。月額630円で、約1万曲以上のデータから好きな曲をストリーミングして、液晶ディスプレイに楽譜や歌詞を表示できる。専用サイト「ネットミュージックタウン」には、「弾きホーダイ」「歌いホーダイ」「ミュージックストリーム」といったコンテンツがあり、さまざまな楽曲のデータを利用できる。いちいちパソコンに接続しなくても、電子ピアノ上で専用サイトが使えるのは画期的だ。
例えば、約2000曲のデータが利用できる「弾きたいホーダイ」では、ドラマの主題歌など最新曲が毎月追加されていく。タイムリーな曲を望む方にはうってつけのサービスだ。ただ、ネット経由でその都度楽譜を閲覧する「ストリーミング」サービスのため、本体には楽譜のデータが残せない。毎回楽譜を検索して表示させるのは面倒に感じた。また、最新の曲を弾かない人にはあまり魅力のないサービスかもしれない。
●1人でもアンサンブルが楽しめる自動伴奏
このほか、音楽のジャンルを選んでC、D、Eなどのコードを押さえれば自動で伴奏する機能もある。いつも弾いている曲に自分で作った伴奏を重ねれば、全く異なる雰囲気のオリジナル曲に仕上がるので、弾く人も聴く人も楽しめる。ただ、この機能はコードを知っていないと活用できない。1人でも複数の楽器をあれこれ重ねてゴージャスな演奏ができるのは興味深いが、折角アンサンブルを組むなら、楽器ができる知人を沢山集めてやりたくなるのが心情というもの。自宅で1人、電子ピアノと向き合ってアンサンブルをつくりあげるのもいいが、大勢でわいわいとセッションするのもまた楽しそうだ。
音といえば、スピーカーも充実している。前面に2つ(16×5×3cm、ドーム型)と背面に2つ(10×2cm)備え、まるでホールにいるかのような立体的な響きを再現する。前述の「ミュージックストリーム」は「CVP-309PE」をジュークボックスのように使えるサービスだが、ピアノ以外のこのような使い方をしても薄っぺらい感じはしなかったので、満足といえよう。
音楽フォーマットはスタンダードMIDIファイルに対応し、記録メディアとしてスマートメディアやフロッピーディスクが使える。3.3MBのフラッシュメモリも内蔵しUSB接続も可能。弾いた曲を録音して保存したり、メディアに保存した曲を他のデジタル機器で再生したりできるのは、電子ピアノならではのよさだろう。
ただし、録音といっても、実際は音程や音色、テンポなどを「MIDIデータ」として記録するだけで、音そのものを録音するわけではない。観客の拍手や会場の物音など、ライブの雰囲気も記録したい場合は、テープレコーダーやMDなどを使って録音する必要がある。
電子ピアノは機能や鍵盤の構造によって、価格もサイズもさまざま。例えば「CVP-309PE」の価格は63万円。決して安い買い物ではない。数ある電子ピアノから自分に合ったモデルを選ぶには、「こんな使い方をしたい」という希望を具体的に描いておくことが大切。そして必ず複数のモデルを弾き比べることだ。この冬、電子ピアノで憧れの曲に挑戦してはいかがだろうか。(WebBCNランキング編集部・井上真希子)