何が変わったiPod nano、世代交代の効果は? 頼みの綱は新shuffleか
iPodシリーズで今、最も売れているのはiPod nanoだ。05年9月に登場したばかりのルーキーにもかかわらず、今やアップルコンピュータ(アップル)が展開する携帯オーディオのなかで、販売台数6割を超える一番の稼ぎ頭に成長した。そしてこの9月、第2世代のiPod nano(新nano)を発売。カラーバリエーションを増やし、ボディーをアルミで包むなどで基本仕様を変更、年末商戦に挑む。果たしてこの「世代交代」は成功したのか? 実際に使って進化の度合いを確かめながら、「BCNランキング」で販売データを検証。年
iPodシリーズで今、最も売れているのはiPod nanoだ。05年9月に登場したばかりのルーキーにもかかわらず、今やアップルコンピュータ(アップル)が展開する携帯オーディオのなかで、販売台数6割を超える一番の稼ぎ頭に成長した。そしてこの9月、第2世代のiPod nano(新nano)を発売。カラーバリエーションを増やし、ボディーをアルミで包むなどで基本仕様を変更、年末商戦に挑む。果たしてこの「世代交代」は成功したのか? 実際に使って進化の度合いを確かめながら、「BCNランキング」で販売データを検証。年末商戦の鍵を探る。
●初代に比べ地味なスタートの新nano
05年9月8日に発売された第1世代のiPod nano(旧nano)は、05年9月第2週の初登場で「BCNランキング」の携帯オーディオ部門で1位を獲得する鮮烈なデビューを飾った。さらに05年12月の爆発的売れ行きには目を見張るものがあった。このnano効果でアップルは、メーカー別の販売台数シェアを一時59.6%にまで押し上げた。しかしそれ以降、日本勢の追い上げもあって、アップルのシェアはなだらかな右肩下りの状況だ。
そこへこの9月投入されたのが、第5世代iPodのマイナーチェンジ版と、新nanoだ。この世代交代は果たしてうまくいっているといえるのだろうか? 単純な新旧の交代ということなら、10月第4週(10月23日-29日)時点で新旧nanoの比率が9対1になっており、順調に進んでいるといえる。
しかし、販売台数の伸びは今ひとつだ。05年9月第2週(9月5日-11日)でのnanoの販売台数を1とした販売台数指数の推移を見ると、台数の伸びは4月あたりで止まって足踏み状態。9月の新nano投入後も、一時持ち直したがまた以前の水準に戻っている。第5世代iPodもマイナーチェンジ版が粘りを見せてはいるものの、突き抜けるような勢いはない。間もなく第2世代が発売されるiPod shuffleにいたっては、ずっとジリ貧状態が続いていた。
●「傷」には格段に強くなった
初めて第2世代nanoに触れた時、「iPod miniそっくり、早くも手詰まりか」という印象を強く持った。新製品発表直前まで全く新しいタイプのiPodが登場するという噂も流れていたため、「肩透かし」を食らったように感じたこともある。いずれにせよデザイン面で違和感がないかわりに新味もない。
一体何が変わったのかがわかりにくい。 そこで、テスト機として8GBの新nanoを借り受け、実際に使っていろいろと確かめてみることにした。私が勝手に「赤nano」と呼んでいる「iPod nano (PRODUCT) RED Special Edition」も一緒に借り受けることができたため、新nano説明用の写真には、一部この赤nanoを起用した。
まず一番わかりやすいボディーから。旧nanoのポリカーボネイトと鏡面仕上げのケースから、iPod miniと同様のアルミ素材へと変更された。表面の光沢といい、背面の鏡面上げといい、初代nanoは「購入直後なら」すばらしい質感があった。しかし傷に弱く、使っていくうちに満身創痍の状態となってしまうのは大きな欠点だった。今回新nanoを2週間ほど普通に持ち歩いて使ってみたが、本体にもモニタ部分にも特段目立つ傷がつくようなことはなかった。使っていくうちにクリックホイールの円盤部分にはうっすらと傷のようなものがつき、背面の「iPod」と書かれた刻印がほんの一部欠けてしまったが、これらは全体の質感を損なうほどではなかった。
また、クリックホイールも細かな変更が施されている。まず表面がマット調のややざらざらした材質に変更された。そのため、旧nanoではボリューム操作で指を滑らせる際、摩擦によって指が引っかかる感触があったが、新nanoではスムースに動かせるようになった。ホイール自体の感度も少し上がり、微妙な操作でもすぐ反応する。これは良し悪しで、HOLDボタンをうまく使う必要がありそうだ。さらに、中央のクリックボタンにくぼみがつけられ、気持ちよくボタンが押せるようになった。
●画面も明るくなってパッケージも一新
ボディーの厚さがほんの少し薄くなったようだが、使っている分にはそれほど薄さを感じることはなかった。逆に四隅のR加工がなくなった分、見た目では旧nanoより少しだけ大きく見える。アルミでくるむ形にしたため、両端の強度が向上し、ドックコネクタとイヤホン端子の間隔が広がり、干渉しにくくなった。ただ、この形状の変更により、アクセサリやケースなどによっては、旧nano用アクセサリのなかには使えないものも出てきそうだ。
ボディーといえば、パッケージも大きく変更された。これまでの紙箱から、透明なプラスチックケースになり、iTunesなどが収められたCD-ROMもなくなった。競泳用水中メガネのパッケージにそっくりだが、本体のnanoをはずすのに苦労するかもしれない。よく見れば、はずし方が図式で描かれている。また、同梱のイヤホンも変わった。従来品と同じテイストの色・デザインを踏襲しつつ、やや小ぶりになって、凹凸の少ない滑らかな形状に変更された。
ディスプレイの明るさは40%明るくなったとされているが、確かに明るくなたったもののあまりありがたみは感じなかった。それよりも、ディスプレイ表面の乱反射少なくなった分、明るい屋外でバックライトを消した状態での視認性がかなり高くなった。
●実測連続演奏時間は27時間44分
バッテリーの強化は、ボディーのアルミ化に並んで大きな補強ポイントだろう。実際に何時間持つのかテストしてみた。8GBの新nanoに、ほぼ満杯の1862曲を入れた状態でシャッフルしながら連続して再生し続けた。音量制限のない状態で、ボリュームは目分量で半分の位置。イヤホンは付属のイヤホンを接続。バックライトを消した状態で実験した。その結果、27時間44分の間バッテリーが持続した。5分おきに画面の写真を撮る方式で測定したため、約5分の誤差はあるものの、24時間とされているカタログ値を4時間近く上回る結果になった。
ついでに、発売から約1年経過してだいぶ年季の入ってきた旧nanoについても、現在のバッテリー体力を測定してみた。旧nanoは4GBモデルでほぼ満杯の996曲を入れた状態。そのほかは同じ条件でテストした。こちらも12時間53分とまずまずの結果だった。新・旧nanoともバックライトなしの連続演奏状態のため、これらの時間が上限に近い値だと思われる。特に新nanoについては、連続演奏で28時間近く持続するバッテリーならまず日常生活で困ることはなさそうだ。
●「透明感」と「厚み」増した音づくり
肝心の音についても、新・旧nanoでイコライザはOFFの状態で同じ曲をかけながら比較した。新nanoは「内部の回路構成などすべて1から作り直した」(広報部)といい、音づくりに関してもかなり違いがあるようだ。
テストは6曲を繰り返し聴いて行った。1曲目は間もなく3度目の来日公演を行うボサノバの神様ジョアン・ジルベルト。初来日した03年公演のライブ版から「コルコヴァード」、2曲目はThe Beatlesの名曲「In My Life」。3曲目は清水靖晃/サキソフォネッツの「CELLO SUITES 1.2.3」から、「Suite 1 プレリュード」。バッハの無伴奏チェロ組曲のサックス版だ。4曲目は元ちとせの「ひかる・かいがら」、5曲目は石川セリの「翼」、6曲目が最後で佐野元春の「ダウンタウンボーイズ '99ミックス・ヴァージョン」。
まず普段使っているイヤホン、SHURE E2cを使って音を聴き比べた。「コルコヴァード」はギターの弾き語りだが、低音部の再生がかなり厳しい音源。新・旧nanoとも大きな違いはなく、いずれもアコースティックギターの低音部の再現に関してはやや物足りなかった。しかし、新nanoはボーカル残響音がよりリアルだと感じた。「In My Life」は一転して新nanoの透明感のある音づくりが素直に出る曲。旧nanoに比べると一枚ベールがはがれたようなクリアな音だ。「Suite 1 プレリュード」は、倉庫を改造したスタジオを使ってサックスでバッハを吹き鳴らすという、なんとも気持ちのいい曲だが、ほとんど加工していない自然な残響音が、新nanoではよく伸びて心地いい。
「ひかる・かいがら」はイントロ部分と間奏部分で使われている貝殻による効果音の表現力やチェロのツヤ、ボーカルの存在感などが優れており、特にこの曲に関しては、断然新nanoのほうがよかった。「翼」は石川セリのハスキーな声の距離が新nanoではより近く感じた。最後の「ダウンタウンボーイズ '99ミックス・ヴァージョン」では、新nanoの特徴でもある音の厚さ・太さがより強く感じられた。いずれも個人的な感想だが、nanoの音を一言で表現すれば「クリアで厚い音」というところだろうか。
●年末に向け、鍵を握るのはやはり第2世代shuffleか?
前述したようにイヤホンも新しくなった。やや小ぶりなタイプが付属するが、このイヤホンは私の耳には合わなかった。どうも左右で耳の穴の大きさが違うようで、左のイヤホンだけが耳から外れてぽろぽろ落ちる。耳にしっかりフィットせず、音もかなり不安定になるため、付属イヤホンの評価は行わないことにした。旧版のイヤホンなら問題ないのだが、これは完全に個人差の問題だ。
また、ドックコネクタの接続がやや渋く、最初は右側に引っかかりがあり、まっすぐコネクタが入らなかった。結局少し斜めにすれば差し込むことができた。広報によると「他には同様の不具合の報告は受けていない」とのことで、テストで用いたnano固有の問題ではないかと思われる。何度かコネクタを抜き差ししているうちに、やや引っかかりは残ったがほとんど気にならないレベルまでにはなった。
新nanoを実際に使ってみて、地味ながらまじめな改良が随所に施されていることがわかった。とはいえ、その地味さゆえ市場へのインパクトには欠ける部分があるようだ。メーカー別の販売台数シェア推移を見ると、発売直後は一旦盛り上がったものの、ノイズキャンセル機能がついたウォークマンSシリーズの発売でソニーが販売台数シェア20%の壁を突破、上昇トレンドに入ってきた。旧nanoを発売したばかりの昨年とは、かなり状況が異なる。
しかしアップルは、11月3日に満を持して発売する第2世代のiPod shuffleがひかえている。15.5gの小型アルミ製きょう体にクリップをつけたユニークな形と9800円という価格が発表直後から話題を呼んでいるようだ。当初「10月には」とするのみで発売日がなかなか決まらず、結局11月にずれ込んだ。「世界的に予約がつみあがって、地域ごとの出荷数量を調整するのに手間取って」(広報部)いたという事情があったようだ。同社では、3連休を見込んで店頭に製品を用意するとしているが、実のところどのくらい売れるかは予測できないという。ただ、少なくとも発売当日の3日、アップルストアなら新shuffleを手に入れることはできそうだ。
爆発的に携帯オーディオが売れた昨年12月のレベルを考えると、今年の年末商戦、対前年比プラスで推移するのは難しいかもしれない。ただ新shuffleは、価格が安い分販売台数の伸びが期待できる。もしかすると「クリップ野郎」が大いに貢献して、きわめて高いハードルを越えることができるかもしれない。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
iPodシリーズで今、最も売れているのはiPod nanoだ。05年9月に登場したばかりのルーキーにもかかわらず、今やアップルコンピュータ(アップル)が展開する携帯オーディオのなかで、販売台数6割を超える一番の稼ぎ頭に成長した。そしてこの9月、第2世代のiPod nano(新nano)を発売。カラーバリエーションを増やし、ボディーをアルミで包むなどで基本仕様を変更、年末商戦に挑む。果たしてこの「世代交代」は成功したのか? 実際に使って進化の度合いを確かめながら、「BCNランキング」で販売データを検証。年末商戦の鍵を探る。
●初代に比べ地味なスタートの新nano
05年9月8日に発売された第1世代のiPod nano(旧nano)は、05年9月第2週の初登場で「BCNランキング」の携帯オーディオ部門で1位を獲得する鮮烈なデビューを飾った。さらに05年12月の爆発的売れ行きには目を見張るものがあった。このnano効果でアップルは、メーカー別の販売台数シェアを一時59.6%にまで押し上げた。しかしそれ以降、日本勢の追い上げもあって、アップルのシェアはなだらかな右肩下りの状況だ。
そこへこの9月投入されたのが、第5世代iPodのマイナーチェンジ版と、新nanoだ。この世代交代は果たしてうまくいっているといえるのだろうか? 単純な新旧の交代ということなら、10月第4週(10月23日-29日)時点で新旧nanoの比率が9対1になっており、順調に進んでいるといえる。
しかし、販売台数の伸びは今ひとつだ。05年9月第2週(9月5日-11日)でのnanoの販売台数を1とした販売台数指数の推移を見ると、台数の伸びは4月あたりで止まって足踏み状態。9月の新nano投入後も、一時持ち直したがまた以前の水準に戻っている。第5世代iPodもマイナーチェンジ版が粘りを見せてはいるものの、突き抜けるような勢いはない。間もなく第2世代が発売されるiPod shuffleにいたっては、ずっとジリ貧状態が続いていた。
●「傷」には格段に強くなった
初めて第2世代nanoに触れた時、「iPod miniそっくり、早くも手詰まりか」という印象を強く持った。新製品発表直前まで全く新しいタイプのiPodが登場するという噂も流れていたため、「肩透かし」を食らったように感じたこともある。いずれにせよデザイン面で違和感がないかわりに新味もない。
一体何が変わったのかがわかりにくい。 そこで、テスト機として8GBの新nanoを借り受け、実際に使っていろいろと確かめてみることにした。私が勝手に「赤nano」と呼んでいる「iPod nano (PRODUCT) RED Special Edition」も一緒に借り受けることができたため、新nano説明用の写真には、一部この赤nanoを起用した。
まず一番わかりやすいボディーから。旧nanoのポリカーボネイトと鏡面仕上げのケースから、iPod miniと同様のアルミ素材へと変更された。表面の光沢といい、背面の鏡面上げといい、初代nanoは「購入直後なら」すばらしい質感があった。しかし傷に弱く、使っていくうちに満身創痍の状態となってしまうのは大きな欠点だった。今回新nanoを2週間ほど普通に持ち歩いて使ってみたが、本体にもモニタ部分にも特段目立つ傷がつくようなことはなかった。使っていくうちにクリックホイールの円盤部分にはうっすらと傷のようなものがつき、背面の「iPod」と書かれた刻印がほんの一部欠けてしまったが、これらは全体の質感を損なうほどではなかった。
また、クリックホイールも細かな変更が施されている。まず表面がマット調のややざらざらした材質に変更された。そのため、旧nanoではボリューム操作で指を滑らせる際、摩擦によって指が引っかかる感触があったが、新nanoではスムースに動かせるようになった。ホイール自体の感度も少し上がり、微妙な操作でもすぐ反応する。これは良し悪しで、HOLDボタンをうまく使う必要がありそうだ。さらに、中央のクリックボタンにくぼみがつけられ、気持ちよくボタンが押せるようになった。
●画面も明るくなってパッケージも一新
ボディーの厚さがほんの少し薄くなったようだが、使っている分にはそれほど薄さを感じることはなかった。逆に四隅のR加工がなくなった分、見た目では旧nanoより少しだけ大きく見える。アルミでくるむ形にしたため、両端の強度が向上し、ドックコネクタとイヤホン端子の間隔が広がり、干渉しにくくなった。ただ、この形状の変更により、アクセサリやケースなどによっては、旧nano用アクセサリのなかには使えないものも出てきそうだ。
ボディーといえば、パッケージも大きく変更された。これまでの紙箱から、透明なプラスチックケースになり、iTunesなどが収められたCD-ROMもなくなった。競泳用水中メガネのパッケージにそっくりだが、本体のnanoをはずすのに苦労するかもしれない。よく見れば、はずし方が図式で描かれている。また、同梱のイヤホンも変わった。従来品と同じテイストの色・デザインを踏襲しつつ、やや小ぶりになって、凹凸の少ない滑らかな形状に変更された。
ディスプレイの明るさは40%明るくなったとされているが、確かに明るくなたったもののあまりありがたみは感じなかった。それよりも、ディスプレイ表面の乱反射少なくなった分、明るい屋外でバックライトを消した状態での視認性がかなり高くなった。
●実測連続演奏時間は27時間44分
バッテリーの強化は、ボディーのアルミ化に並んで大きな補強ポイントだろう。実際に何時間持つのかテストしてみた。8GBの新nanoに、ほぼ満杯の1862曲を入れた状態でシャッフルしながら連続して再生し続けた。音量制限のない状態で、ボリュームは目分量で半分の位置。イヤホンは付属のイヤホンを接続。バックライトを消した状態で実験した。その結果、27時間44分の間バッテリーが持続した。5分おきに画面の写真を撮る方式で測定したため、約5分の誤差はあるものの、24時間とされているカタログ値を4時間近く上回る結果になった。
ついでに、発売から約1年経過してだいぶ年季の入ってきた旧nanoについても、現在のバッテリー体力を測定してみた。旧nanoは4GBモデルでほぼ満杯の996曲を入れた状態。そのほかは同じ条件でテストした。こちらも12時間53分とまずまずの結果だった。新・旧nanoともバックライトなしの連続演奏状態のため、これらの時間が上限に近い値だと思われる。特に新nanoについては、連続演奏で28時間近く持続するバッテリーならまず日常生活で困ることはなさそうだ。
●「透明感」と「厚み」増した音づくり
肝心の音についても、新・旧nanoでイコライザはOFFの状態で同じ曲をかけながら比較した。新nanoは「内部の回路構成などすべて1から作り直した」(広報部)といい、音づくりに関してもかなり違いがあるようだ。
テストは6曲を繰り返し聴いて行った。1曲目は間もなく3度目の来日公演を行うボサノバの神様ジョアン・ジルベルト。初来日した03年公演のライブ版から「コルコヴァード」、2曲目はThe Beatlesの名曲「In My Life」。3曲目は清水靖晃/サキソフォネッツの「CELLO SUITES 1.2.3」から、「Suite 1 プレリュード」。バッハの無伴奏チェロ組曲のサックス版だ。4曲目は元ちとせの「ひかる・かいがら」、5曲目は石川セリの「翼」、6曲目が最後で佐野元春の「ダウンタウンボーイズ '99ミックス・ヴァージョン」。
まず普段使っているイヤホン、SHURE E2cを使って音を聴き比べた。「コルコヴァード」はギターの弾き語りだが、低音部の再生がかなり厳しい音源。新・旧nanoとも大きな違いはなく、いずれもアコースティックギターの低音部の再現に関してはやや物足りなかった。しかし、新nanoはボーカル残響音がよりリアルだと感じた。「In My Life」は一転して新nanoの透明感のある音づくりが素直に出る曲。旧nanoに比べると一枚ベールがはがれたようなクリアな音だ。「Suite 1 プレリュード」は、倉庫を改造したスタジオを使ってサックスでバッハを吹き鳴らすという、なんとも気持ちのいい曲だが、ほとんど加工していない自然な残響音が、新nanoではよく伸びて心地いい。
「ひかる・かいがら」はイントロ部分と間奏部分で使われている貝殻による効果音の表現力やチェロのツヤ、ボーカルの存在感などが優れており、特にこの曲に関しては、断然新nanoのほうがよかった。「翼」は石川セリのハスキーな声の距離が新nanoではより近く感じた。最後の「ダウンタウンボーイズ '99ミックス・ヴァージョン」では、新nanoの特徴でもある音の厚さ・太さがより強く感じられた。いずれも個人的な感想だが、nanoの音を一言で表現すれば「クリアで厚い音」というところだろうか。
●年末に向け、鍵を握るのはやはり第2世代shuffleか?
前述したようにイヤホンも新しくなった。やや小ぶりなタイプが付属するが、このイヤホンは私の耳には合わなかった。どうも左右で耳の穴の大きさが違うようで、左のイヤホンだけが耳から外れてぽろぽろ落ちる。耳にしっかりフィットせず、音もかなり不安定になるため、付属イヤホンの評価は行わないことにした。旧版のイヤホンなら問題ないのだが、これは完全に個人差の問題だ。
また、ドックコネクタの接続がやや渋く、最初は右側に引っかかりがあり、まっすぐコネクタが入らなかった。結局少し斜めにすれば差し込むことができた。広報によると「他には同様の不具合の報告は受けていない」とのことで、テストで用いたnano固有の問題ではないかと思われる。何度かコネクタを抜き差ししているうちに、やや引っかかりは残ったがほとんど気にならないレベルまでにはなった。
新nanoを実際に使ってみて、地味ながらまじめな改良が随所に施されていることがわかった。とはいえ、その地味さゆえ市場へのインパクトには欠ける部分があるようだ。メーカー別の販売台数シェア推移を見ると、発売直後は一旦盛り上がったものの、ノイズキャンセル機能がついたウォークマンSシリーズの発売でソニーが販売台数シェア20%の壁を突破、上昇トレンドに入ってきた。旧nanoを発売したばかりの昨年とは、かなり状況が異なる。
しかしアップルは、11月3日に満を持して発売する第2世代のiPod shuffleがひかえている。15.5gの小型アルミ製きょう体にクリップをつけたユニークな形と9800円という価格が発表直後から話題を呼んでいるようだ。当初「10月には」とするのみで発売日がなかなか決まらず、結局11月にずれ込んだ。「世界的に予約がつみあがって、地域ごとの出荷数量を調整するのに手間取って」(広報部)いたという事情があったようだ。同社では、3連休を見込んで店頭に製品を用意するとしているが、実のところどのくらい売れるかは予測できないという。ただ、少なくとも発売当日の3日、アップルストアなら新shuffleを手に入れることはできそうだ。
爆発的に携帯オーディオが売れた昨年12月のレベルを考えると、今年の年末商戦、対前年比プラスで推移するのは難しいかもしれない。ただ新shuffleは、価格が安い分販売台数の伸びが期待できる。もしかすると「クリップ野郎」が大いに貢献して、きわめて高いハードルを越えることができるかもしれない。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
*グラフデータ一部修正のお知らせ*
初出時、各グラフの日付部分の一部に誤りがあったため、正しい日付に修正いたしました。数字に誤りはありません。訂正してお詫びいたします。(2006/11/15)
初出時、各グラフの日付部分の一部に誤りがあったため、正しい日付に修正いたしました。数字に誤りはありません。訂正してお詫びいたします。(2006/11/15)