なぜ人気? ダントツのオールインワンプロジェクター、使ってその謎を解く
BCNランキングでダントツのプロジェクターがある。エプソン dreamioシリーズの「EMP-TWD1」がそれだ。05年12月度で販売台数シェア実に33.9%と絶好調。プロジェクターにDVDプレーヤーとスピーカーを組み合わせたのが最大の特徴なのだが、どうしてこんなに売れるのか? そこで、このプロジェクタをお借りして試用、人気の秘密に迫ってみた。
エプソンのホームプロジェクター「EMP-TWD1」
●05年後半、プロジェクター市場に突如現れた新コンセプトマシン
05年の秋以降、プロジェクター市場で圧倒的な販売台数シェアを獲得したのが、エプソンの「EMP-TWD1」だった。1年前の04年は松下の「TH-AE700」がシェア約24%で1位、それをエプソンの「EMP-TW10H」「EMP-TW200H」の2機種が追うかたちとなっていた。それに対して05年、エプソンの「EMP-TWD1」が33.9%のシェアを占めて1位を獲得。さらにメーカー別の販売台数シェアで見てみると、04年12月は1位のエプソンが41.3%、2位の松下が26.3%。ところが05年12月のエプソンのシェアは64%。このユニークな新製品の登場が、シェアを2割以上も押し上げる大きな原動力となったのだ。
好調の理由としてエプソン販売では「プロジェクターとDVDプレーヤー、スピーカーを1台に集約するというユニークなコンセプトが受け入れられたようだ。さらに、05年9月の発売から12月いっぱいまで展開していたワイドサイズ80インチスクリーンとスタンドの無料プレゼントも好評だった」としながら、「多くの購入者が、実はすでにDVDプレーヤーも持っている。さらに当初は社内でも大きすぎるとの声もあったほど、最近流行の小さな単機能タイプに比べると、かなり大型のきょう体。にもかかわらず売れているのは、一体化で機器同士の配線が不要になった、という手軽さが支持されているのでは?」(広報)と分析している。
●「電源・DVD・ドーン」そのままの使い勝手
それでは、実際に試用してみてこの人気がどこから来るものなのかを見ていこう。「電源・DVD・ドーン」という柴咲コウのテレビCMを記憶している人も多いことだろう。第一印象は、「あのCMのとおりだ」ということ。本体をセットして電源コードをつなぎ、DVDを入れるだけで、「ドーン!」と音と映像が出てくる感覚。その手軽さと、いきなり部屋がシアターに早変わりする様は、かなりの驚きである。「こんなに簡単でいいの?」と拍子抜けしてしまったほどだ。
インターフェイスには、オーディオ端子やSビデオ端子のほか、
サブウーファー出力端子や光デジタル音声出力端子を備える
「EMP-TWD1」の最大の特徴、それは何といってもDVDプレーヤーをプロジェクター本体に内蔵してしまったことだろう。それによって、他のプロジェクターのように、DVDプレーヤーとプロジェクターをAVケーブルや音声ケーブルなどでつなぐ作業も必要ない。映画を観るたびにこの作業を繰り返すのが手間だから、あらかじめ配線してプロジェクターを天井から吊したり、据え置きにする。そうなると、それなりの部屋の広さや配置が要求されることになる。それが、「EMP-TWD1」の場合は配線の手間がなく、観たい時観たい場所に本体を置けばいいのだ。白いボディは、和室・洋室どちらでもインテリアとしてもよくマッチする。
「EMP-TWD1」の背面。DVDトレーやスピーカーは背面側にある。
背面を外側に向けてしまっておけば、CDプレーヤーとしても使える
●配線は不要でも、画面調整が面倒ではないのか?
確かに配線は不要。でも画面調整はどうだろう? 観たい時に出してきて設置して画面調整……、かえって面倒なのでないかと思った。しかし、実際にやってみると非常に簡単。たいした手間ではなかった。
「EMP-TWD1」も、液晶プロジェクターではトレンドとなった「レンズシフト機能」を搭載している。投射する映像を、上下に2画面、左右に1.5画面分、本体を動かさずにそのまま平行移動できる。だから、床に置いたり、テーブルに置いたり、といった使い方をしても、難なく対応できてしまう。
また、レンズからスクリーンまで2mの距離があれば80インチの大画面で映像を映し出すことができる。畳にして、縦1枚分とちょっとあればいいわけだ。これなら6畳間でも十分、80インチ大画面で映画が楽しめる。さらに、3.1mあれば120インチの超大画面にすることも可能だ。昨年末のセット販売で付属していた80インチのスクリーンは、スプリングローラー式。固定式と違って、使わない時は巻き上げて家の中の邪魔にならない場所にしまっておける。設置も片付けも1人で簡単にでき、移動も手間がかからないから、観たい時に本体と一緒に出してきて設置する、ということが可能なのだ。
10:9ワイドタイプの80インチスクリーン。
設置すると、6畳間のほぼ横いっぱいといった感じになる
●6畳間で80インチの大画面。おうちシアターはけっこう楽しいかも!
さらに、「画質」もさることながら「音質」もかなり満足できるレベルだ、という点も大きい。このサイズからは想像できない臨場感のある音を出す。搭載するダイレクトドライブスピーカーから円形状に音が広がるため、キューブ型ボディでありながら、部屋のどの位置にいても奥行きのある臨場感たっぷりの音が耳に届くという仕組みらしい。本体が届いた時にマニュアルを読んで「CDプレーヤー」機能があると知ったが、正直プロジェクターで聞く音楽なんてほとんど期待していなかった。しかし、これだけの音が出るなら、CDだけても十分楽しめる。
もちろん映像のレベルも高い。投射映像での見やすさが問われる輝度は1200ルーメンあり、部屋を真っ暗にしなくても明るい高画質映像が楽しめる。わずかに照明を残した暗い部屋用の「シアターモード」や、昼間のカーテンを閉めた部屋用の「リビングモード」など、理想的な画質を簡単に再現できる4つの「カラーモード」を搭載。また、映画鑑賞用としては定評のある「エプソンシネマフィルタ」で、より映画らしい画面で楽しめる点も魅力的だ。
6畳間でちょうど80インチいっぱいに投影できる感じ。
このとき、レンズからスクリーンまでの距離は、ほぼ畳の縦1枚分だった
ハイビジョンにこそ対応していないものの、画質も音質もバランスよく堪能できる仕上がりになっている。オーディオ端子やSビデオ端子も備えているので、テレビやビデオとつないで80インチ大画面でテレビ放送やビデオ作品を楽しむ、といった使い方もできる。
ただ惜しむらくは、スクリーンの無料セット販売が昨年末で終わってしまったこと。同社広報では「今後、同様のキャンペーンを展開するかどうかは未定」としているが、スクリーンの無料セットはぜひ復活してほしいと思う。とはいえ、手軽に大画面の映画を楽しみたいと思うなら、「EMP-TWD1」は買い物候補にあげるだけの価値は十分あるプロジェクターといえるだろう。(フリーライター・中村光宏)
リモコンもシンプルで操作に迷うことはない。
各ボタンは蓄光式なので、暗闇でも薄青く光って操作しやすい工夫がされている
*WebBCNランキング編集部「借物」レビューとは、メーカーなどから借りてきた製品について、個人的な体験をもとに使用感などをまとめたものです。「借物」レビューのほか、編集部員自らが購入した製品を対象とする「自腹」レビュー、社として購入した製品を対象とする「社腹」レビュー、もらい物を対象とする「他腹」レビューなどがあります。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
―借物レビュー <エプソン「EMP-TWD1」> ―
BCNランキングでダントツのプロジェクターがある。エプソン dreamioシリーズの「EMP-TWD1」がそれだ。05年12月度で販売台数シェア実に33.9%と絶好調。プロジェクターにDVDプレーヤーとスピーカーを組み合わせたのが最大の特徴なのだが、どうしてこんなに売れるのか? そこで、このプロジェクターをお借りして試用、人気の秘密に迫ってみた。エプソンのホームプロジェクター「EMP-TWD1」
●05年後半、プロジェクター市場に突如現れた新コンセプトマシン
05年の秋以降、プロジェクター市場で圧倒的な販売台数シェアを獲得したのが、エプソンの「EMP-TWD1」だった。1年前の04年は松下の「TH-AE700」がシェア約24%で1位、それをエプソンの「EMP-TW10H」「EMP-TW200H」の2機種が追うかたちとなっていた。それに対して05年、エプソンの「EMP-TWD1」が33.9%のシェアを占めて1位を獲得。さらにメーカー別の販売台数シェアで見てみると、04年12月は1位のエプソンが41.3%、2位の松下が26.3%。ところが05年12月のエプソンのシェアは64%。このユニークな新製品の登場が、シェアを2割以上も押し上げる大きな原動力となったのだ。
好調の理由としてエプソン販売では「プロジェクターとDVDプレーヤー、スピーカーを1台に集約するというユニークなコンセプトが受け入れられたようだ。さらに、05年9月の発売から12月いっぱいまで展開していたワイドサイズ80インチスクリーンとスタンドの無料プレゼントも好評だった」としながら、「多くの購入者が、実はすでにDVDプレーヤーも持っている。さらに当初は社内でも大きすぎるとの声もあったほど、最近流行の小さな単機能タイプに比べると、かなり大型のきょう体。にもかかわらず売れているのは、一体化で機器同士の配線が不要になった、という手軽さが支持されているのでは?」(広報)と分析している。
●「電源・DVD・ドーン」そのままの使い勝手
それでは、実際に試用してみてこの人気がどこから来るものなのかを見ていこう。「電源・DVD・ドーン」という柴咲コウのテレビCMを記憶している人も多いことだろう。第一印象は、「あのCMのとおりだ」ということ。本体をセットして電源コードをつなぎ、DVDを入れるだけで、「ドーン!」と音と映像が出てくる感覚。その手軽さと、いきなり部屋がシアターに早変わりする様は、かなりの驚きである。「こんなに簡単でいいの?」と拍子抜けしてしまったほどだ。
インターフェイスには、オーディオ端子やSビデオ端子のほか、
サブウーファー出力端子や光デジタル音声出力端子を備える
「EMP-TWD1」の最大の特徴、それは何といってもDVDプレーヤーをプロジェクター本体に内蔵してしまったことだろう。それによって、他のプロジェクターのように、DVDプレーヤーとプロジェクターをAVケーブルや音声ケーブルなどでつなぐ作業も必要ない。映画を観るたびにこの作業を繰り返すのが手間だから、あらかじめ配線してプロジェクターを天井から吊したり、据え置きにする。そうなると、それなりの部屋の広さや配置が要求されることになる。それが、「EMP-TWD1」の場合は配線の手間がなく、観たい時観たい場所に本体を置けばいいのだ。白いボディは、和室・洋室どちらでもインテリアとしてもよくマッチする。
「EMP-TWD1」の背面。DVDトレーやスピーカーは背面側にある。
背面を外側に向けてしまっておけば、CDプレーヤーとしても使える
●配線は不要でも、画面調整が面倒ではないのか?
確かに配線は不要。でも画面調整はどうだろう? 観たい時に出してきて設置して画面調整……、かえって面倒なのでないかと思った。しかし、実際にやってみると非常に簡単。たいした手間ではなかった。
「EMP-TWD1」も、液晶プロジェクターではトレンドとなった「レンズシフト機能」を搭載している。投射する映像を、上下に2画面、左右に1.5画面分、本体を動かさずにそのまま平行移動できる。だから、床に置いたり、テーブルに置いたり、といった使い方をしても、難なく対応できてしまう。
また、レンズからスクリーンまで2mの距離があれば80インチの大画面で映像を映し出すことができる。畳にして、縦1枚分とちょっとあればいいわけだ。これなら6畳間でも十分、80インチ大画面で映画が楽しめる。さらに、3.1mあれば120インチの超大画面にすることも可能だ。昨年末のセット販売で付属していた80インチのスクリーンは、スプリングローラー式。固定式と違って、使わない時は巻き上げて家の中の邪魔にならない場所にしまっておける。設置も片付けも1人で簡単にでき、移動も手間がかからないから、観たい時に本体と一緒に出してきて設置する、ということが可能なのだ。
10:9ワイドタイプの80インチスクリーン。
設置すると、6畳間のほぼ横いっぱいといった感じになる
●6畳間で80インチの大画面。おうちシアターはけっこう楽しいかも!
さらに、「画質」もさることながら「音質」もかなり満足できるレベルだ、という点も大きい。このサイズからは想像できない臨場感のある音を出す。搭載するダイレクトドライブスピーカーから円形状に音が広がるため、キューブ型ボディでありながら、部屋のどの位置にいても奥行きのある臨場感たっぷりの音が耳に届くという仕組みらしい。本体が届いた時にマニュアルを読んで「CDプレーヤー」機能があると知ったが、正直プロジェクターで聞く音楽なんてほとんど期待していなかった。しかし、これだけの音が出るなら、CDだけても十分楽しめる。
もちろん映像のレベルも高い。投射映像での見やすさが問われる輝度は1200ルーメンあり、部屋を真っ暗にしなくても明るい高画質映像が楽しめる。わずかに照明を残した暗い部屋用の「シアターモード」や、昼間のカーテンを閉めた部屋用の「リビングモード」など、理想的な画質を簡単に再現できる4つの「カラーモード」を搭載。また、映画鑑賞用としては定評のある「エプソンシネマフィルタ」で、より映画らしい画面で楽しめる点も魅力的だ。
6畳間でちょうど80インチいっぱいに投影できる感じ。
このとき、レンズからスクリーンまでの距離は、ほぼ畳の縦1枚分だった
ハイビジョンにこそ対応していないものの、画質も音質もバランスよく堪能できる仕上がりになっている。オーディオ端子やSビデオ端子も備えているので、テレビやビデオとつないで80インチ大画面でテレビ放送やビデオ作品を楽しむ、といった使い方もできる。
ただ惜しむらくは、スクリーンの無料セット販売が昨年末で終わってしまったこと。同社広報では「今後、同様のキャンペーンを展開するかどうかは未定」としているが、スクリーンの無料セットはぜひ復活してほしいと思う。とはいえ、手軽に大画面の映画を楽しみたいと思うなら、「EMP-TWD1」は買い物候補にあげるだけの価値は十分あるプロジェクターといえるだろう。(フリーライター・中村光宏)
リモコンもシンプルで操作に迷うことはない。
各ボタンは蓄光式なので、暗闇でも薄青く光って操作しやすい工夫がされている
*WebBCNランキング編集部「借物」レビューとは、メーカーなどから借りてきた製品について、個人的な体験をもとに使用感などをまとめたものです。「借物」レビューのほか、編集部員自らが購入した製品を対象とする「自腹」レビュー、社として購入した製品を対象とする「社腹」レビュー、もらい物を対象とする「他腹」レビューなどがあります。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。