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ICタグで子どもを守れ、大阪で「ユビキタス街角見守りロボットの実証実験」

特集

2005/12/22 13:10



 IT技術で子どもを守る試みが06年2月、大阪でもはじまる。まず、自動販売機などにICタグリーダーや防犯カメラ、センシングネットワーク等の防犯機能を装備。子どものランドセルに取り付けたICタグを読み取ることにより通過検知や緊急時の通報を行うという実験だ。こうした防犯機能つきの自動販売機などを「ユビキタス街角見守りロボット」と命名、子どもにも安全な街づくりをめざす。


ICタグを取り付けたランドセル


 大阪の産官学および住民の連合による「ユビキタス街角見守りロボット実証実験実行委員会(千坂佳克会長=大阪市立中央小学校長)」は、ユビキタス街角見守りロボット(見守りロボット)を活用して通学路の学童を見守る社会実証実験を、来年2月20日から1ヶ月間、大阪市中央区の中央小学校区で実施する。

 実証実験の目的は、(1)通学路通過検知、(2)一般防犯機能、(3)緊急時支援の3つについての検証。まず通学路通過検知は、子どもが校門や見守りロボットの設置場所を通過すると、保護者にメールが発信される機能。校門や見守りロボットの前をいつ通過したかが家庭で把握できる。プライバシー保護のため、認証をニックネームとパスワードで行い、子どもや保護者の名前は使用しないしくみ。また一般防犯機能は、表示パネルつきの見守りロボット(自動販売機)で地域の安全情報等を発信するもの。表示情報の更新は、学校や地域ボランティア宅に設置した管理パソコンから行う。


実証実験に使用する機器群


 緊急時支援機能は、登下校の際に学童が危険を感じたとき、緊急ボタンを押したり紐を引いたりすることで危険信号を発信するもの。見守りロボットに設置した無線基地局が危険信号を受信し、管理センターを経由して地域コミュニティーや警察に通報する。保護者やボランティアなど近隣住民の家屋にも無線基地局を設置することにより、見守る範囲が広がるとともに、現場がすぐに特定でき、迅速に対応できる。

 12月14日に開かれた実施に向けた第1回会合では、「人の集まる場所に設置されることの多い自動販売機だけでなく、人通りが少ない場所にこそ見守りロボットが必要」との町内会関係者らからの要望が出された。これについて「電柱や専用ボックス他、人通りの少ない場所への設置も積極的に検討していく」(西尾信彦副会長=立命館大学情報理工学部教授)方針を確認。ICタグをランドセルに搭載することにより児童の行動を追跡できる危険性については「認証機能の強化その他、実証実験の中から最善の対策を検討する」(富士電機システムズ)とした。


実証実験実行委員会 第一回会合の様子


 この「ユビキタス街角見守りロボット」プロジェクトを推進するのは、「uシティコンソーシアム」。立命館大学(情報理工学部西尾信彦教授)、富士電機システムズ、関西電力、大阪府などによる産官学連携のコンソーシアムで、関西次世代ロボット推進会議の重点プロジェクト「u-シティ構想」を担う団体だ。自動販売機ネットワークロボットの研究開発と実証実験を通じ、携帯電話、ICタグ、IPv6等と連携した新たな社会サービスツールとしての事業モデルを確立、ユビキタス社会にふさわしい新しい都市「u-シティ」の構築をめざす。

 また松下電器産業では今回の実験を通じて、(1)パッシブタグとアクティブタグを併用したシステム使って、ICタグで認識したデータと映像データをリアルタイムに連動させ、(2)無線多段中継ネットワークにより確実に伝送する技術――などを検証する。将来に向けた無線アドホック映像伝送技術の研究開発に役立てる計画。(倉増 裕)