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次世代ムービーにHDD化の波、ビクター独壇場に東芝参入でいよいよゴングか

特集

2005/09/28 17:35

 デジタルビデオカメラにHDD化の波が訪れようとしている。これまでビクター1社で潜行するかのごとく進んできたHDD化の波は、東芝がgigashotを引っさげて参入したことで、いよいよ本格化しそうだ。「BCNランキング」によるデジタルビデオカメラの現状をご紹介しながら、新た参入した東芝のgigashotについて細かくチェックしてみたい。

 デジタルビデオカメラにHDD化の波が訪れようとしている。これまでビクター1社で潜行するかのごとく進んできたHDD化の波は、東芝がgigashotを引っさげて参入したことで、いよいよ本格化しそうだ。「BCNランキング」によるデジタルビデオカメラの現状をご紹介しながら、新た参入した東芝のgigashotについて細かくチェックしてみたい。

●すでに37%が「ディスク記録型」に、意外に進んでいる記録メディアの移行

 ビデオカメラはテープで撮るもの、なんとなくそんな先入観がある人も多いだろう。DVD・HDDレコーダーが普及期を迎えている昨今だが、まだビデオカメラまで巻き込んだ現象にはなっていないからなのかもしれない。しかし、直近8月の「BCNランキングデータ」データで集計すると、HDDとDVDのディスクを記録メディアに使うカメラの販売台数シェアは、実に32.1%。思いのほか売れているようだ。



 さらに、こうしたディスク記録型のうち、大半は8cmDVDメディアに記録するタイプと12cmDVDメディアに記録するタイプだ。これらの販売台数シェアは合わせて82.9%。その残り、17.1%がHDD記録タイプ、ということになる。現在HDD記録タイプを販売しているのはビクター1社だけ。逆に考えれば、わずか1社でこれだけの販売シェアをとっている、ともとれる数字だ。


 ディスク記録型に絞ったランキングを見てみると、4位までがDVD記録型。ソニーと日立でランキングを分け合っている格好だ。5位にはじめてビクターのHDD型が登場、6・7位がまた日立のDVD機で、8・9・10位がまたビクターのHDD機。こうしてみると、現状でわずか1社しか販売していないのに、HDD型は健闘していることがよく分かる。この市場を狙って新たに参入するのが東芝だ。

 東芝のHDD技術には定評があり、とくにHDDの小型化に関しては世界でも屈指。そうした技術を惜しげもなく投入し、HDD型デジタルビデオ市場に参入することになった。

●gigashotでビクターに戦いを挑む東芝の戦略とは?

 gigashotは、小型デジタルカメラ並みにコンパクトなきょう体に自社製0.85型4GBのハードディスクを搭載したデジタルビデオカメラだ。もちろん静止画も500万画素と、デジカメと同程のクォリティで撮影できる。外部メモリカードはSDメモリーカードスロットを装備。撮影データをHDDではなくSDに記録することもできる。また、HDD内のデータをSDカードにコピーすることも可能だ。さらに、動画・静止画の隔たりを感じさせないシームレスな使用感やPC、家電製品との連携性など、今後のムービーカメラの方向性を示唆する意欲的な一台だ。このgigashotを通した先に何が見えるか――gigashotの生みの親である、東芝モバイルギガ商品企画部、山口克巳参事に話を聞いた。

 gigashotの最も特徴的な部分は、動画をMPEG-2にリアルタイムエンコードしながら記録する点だ。一般的なDVフォーマットで撮影するのではなく、ダイレクトにMPEG-2で記録するため、再エンコードなしにそのままDVDに焼くことができる。もちろん、MPEGはPCの標準的な動画形式であるため、PCとの親和性も高い。また「カメラとPC間」のデータのやり取りが楽だ。USBケーブルで接続するだけで自動的に独立したHDDとして認識し、コピー&ペースト操作だけでデータコピーが行えてしまう。何も難しいことを考えず、ただ、PCとgigashotをケーブルで接続するだけでいい。


gigashot V10(MEHV10)

 さらに、同社製のDVD・HDDレコーダー、「RDシリーズ」との連携もよく考慮されている。RDシリーズに搭載のLANによるデータ転送機能、「ネットdeダビング」機能を用いることにより、やはりPCの場合と同様にワンタッチでgigashotのデータをレコーダー側に転送することができる。東芝製レコーダーユーザーにとっては嬉しいポイントだ。もちろん、RD側に取り込んだ映像データは、同機種の編集機能を使って編集することができる。当然、DVDに焼くことも可能だ。


●なぜ、HDDでなければならないのか?

 基本的に、「ハードディスク」というものは、かなりフトコロの深い記録媒体だ。PC、携帯型デジタルオーディオプレーヤー、DVDレコーダー、コンシューマ向けゲームといった具合に、様々な製品に搭載されており、記録デバイスの標準的な存在として世間に広く認知されている。当然、gigashotのようなムービーカメラ用の記録デバイスとしても相性に関しては問題ないだろう。HDDの容量アップのスピードは早い。最大容量まで規格で締められているDVD(またはその後継の新世代メディア)に対してHDDはそういった足かせがなく、ごく短期間でサイズは倍々に増してゆく。となるとその先に見えてくるのはハイビジョン映像の記録メディアとしての将来性だ。

 DVテープ式、記録方DVD式、そしてgigashotが採用するHDD式の三つに大別されるムービーカメラだが、HDD式は現時点でgigashotとビクターの「Everio」の2機種のみとまだまだ少数派。また、ハイビジョン撮影を行える民生用DVカメラと言えば、ソニーの「HDR-HC1」が有名だが、これはミニDVを記録媒体に採用したテープ方式。等倍記録を行うため、録画時間はミニDVテープの録画時間に依存し、現時点では120分が録画時間の上限、記録データはストリームで保存される。これに対し、HDD方式の場合は、例えば現時点で1.8インチなら60GBの大容量を持つ製品も登場しており、録画時間はもっと余裕を持たせることができる。またデータもファイル単位での保存となるため、PCで扱いやすい。こういった特徴から、「ハイビジョン時代に本格突入した場合、HDD製品が主流になるのではないか」と山口参事は予測する。

 HDD方式唯一の弱点が「衝撃に弱い」というところだ。しかし、この点もgigashotはうまく対処している。まずHDD全体をショックアブソーバーで被い衝撃に対処。さらに3次元加速センサーを搭載し、落下を検知して保護シーケンスを起動させ撮影データを落下の衝撃から守る。「実際にgigashot発表会の場で1mの高さから落下テストを行ったのですが、撮影データは完璧に守られていましたね」と山口参事。落下時に「ごん」とかなり大きな音がした。集まった記者はいきなりの出来事でかなりびっくりした様子だったが、何事もなかったように動き続けるgigashotを目の当たりにすると低いどよめきが起こった。「HDDの命題である耐衝撃性の弱さはかなりのレベルで解消している」と自信を語る。こういったHDDの保護機構については今後も改良が進み、さらに信頼性は高くなるだろう。

●これからは「HDD方式」から目が離せない

 これまでビクターの『Everio』のみで細々とやってきたHDD式のムービー市場に、いきなりgigashotのような完成度の高い製品が登場してしまった今後は、参入メーカーも増え、販売シェアの拡大も十分予想される。現状でHDDのサイズは0.85インチに限定されるが、今後は用途やカテゴリの細分化も進み、もっと大容量の1インチタイプや、1.8インチタイプなども登場してくるだろう。

 特に1.8インチHDDは100GBの容量を実現するのも時間の問題であり、ハイビジョン撮影にもっとも適した記録媒体として、最有力候補といってもいいだろう。現在、デジタルビデオカメラの購入を考えている方なら、HDD記録型のカメラを候補に挙げてみるのはいかがだろうか。将来的にハイビジョン撮影可能なムービーカメラの購入を検討している方も、今後登場してくるであろう、HDD方式のムービーカメラの動向は注意深く見守っていたほうがよさそうだ。(市川昭彦<Aqui-Z>)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。

■フィールドテスト:gigashotの実力やいかに

 「gigashot」を持ち、実際にフィールドに出て主に静止画を撮影してみた。9月某日の公園。天候は晴れ。時間帯は14:00?15:00の間だ。撮影はすべてフルオートで行った。

 この撮影を通して感じたことは、「静止画の強さ」。もちろんムービーカメラとしてのMPEG-2動画の美しさやファイルとしての扱いやすさは完璧に近いものを持っているのだが、一般のデジカメとして使用した場合でもこのカメラは実に素晴らしく、また、「面白い」。一般的にムービーカメラで、静止画モードは多分に「オマケ」的な扱いを受けている場合が多い。しかし、このカメラではその定説は全く当てはまらなかった。また、サイズもコンパクトなため、フィールドにおいても使いやすかった。


光学ズームの最も広角側である38mm(35mmフィルム換算時)付近での静止画。動画撮影を行いながら静止画のシャッターボタンを押して撮影。

光学ズームの最も望遠側である83mm(35mmフィルム換算時)付近での静止画。これも動画撮影を行いながらのカット。デジタルズームを併用すれば190mm(35mmフィルム換算時)までのズームアップが可能だ。

「スーパーマクロ」モードは超強力なマクロ機能だ。一般のデジカメ含め、ここまで寄れるカメラは珍しい。

通常のマクロモードで。ここから「あと1歩」ならぬ、「あと3歩」ぐらい近寄れる。