ITジュニア賞、生みの親の一人、和歌山県立田辺工業高等学校の平松芳民校長と対談――第6回
平松芳民
和歌山県立田辺工業高等学校 校長
ゲスト:和歌山県立田辺工業高等学校校長 平松芳民 VS ホスト:BCN社長 奥田喜久男 和歌山県立田辺工業高等学校の平松芳民校長に、最初にBCNを訪ねていただいたのは2005年1月のことだった。「クオリティの浦聖治社長からITジュニア賞創設のことを聞いた。もっと詳しく教えて欲しい」というのが訪問の趣旨だった。ITジュニア賞は、まだ構想段階の話であり、社会からどんな評価を受けるのか、自信が持てないでいた。そこに、平松先生から「ぜひ実現して欲しい」と背中を押され、どれほど励みになったことか。その意味で、平松先生はIT ジュニア賞、生みの親の一人である。【取材:2007年1月26日、青山ダイヤモンドホールにて】
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
※編注:文中の企業名は敬称を省略しました。
子どもたちを褒める場が欲しい
奥田 先生が当社を訪ねてくださったのは、05年1月でした。おそらく、BCNの名前もご存じではなかったと思うのですが、どんな経緯があったのですか。平松 ITジュニア賞の創設を考えている会社がある、という話を最初に聞いたのはクオリティの浦聖治社長からでした。浦さんのところには、当校の卒業生が何人かお世話になっており、研修制度である日本版デュアルシステム事業でも一人お預けするなど、かなり親しくおつき合いさせていただいていました。
ITジュニア賞のことを聞いて、あっ、それなら私どもの悩みに答えてくれるかもしれない、と直感的に感じたんです。というのは、子どもたちを褒める場が欲しいと常々思っていたからでした。そういう場がないわけではないのですが、どうも満足感がなかったのです。
IT業界の錚々たる人たちが集まるなかで、表彰を受け、実演の場も設けてくださるという。これは子どもたちに大変な刺激を与えるだろうと思いました。それで、BCNさんをお訪ねしたわけですが、奥田社長のお話を聞いて、これは協力しなければと思いました。
奥田 05年8月には、かなり計画も煮詰まってきましたので、今度は私のほうから声をかけ、ご一緒に田辺市の山中にある龍神温泉へ行き、そこで詳細な詰めをさせていただきました。その時、先生の教育観などを伺いましたが、感動しながら聞かせてもらったものです。少子高齢化が進むなか、工業高校も難しい立場にあると思いますが、現状はどのようなものでしょうか。
平松 全国工業高等学校長協会という組織がありまして、06年度には652校が参加しています。国・公立、私立の全校が参加している全国組織です。10年前と比較してみますと、95年度の会員校数は663校、生徒数は41万243人でしたが、05年度には会員校数は651校、生徒数は31万670人でした。少子化の影響はかなり深刻で、10年で10万人弱減っていることになります。
その現実を背景に、新しい教育スタイルにより、存在価値を確立しなければいけないと悩んできたわけです。