「中国ビジネス成功の秘訣」を説く――第47回
パトリック J.マクガバン
IDG 会長
構成・文/谷口一
世界90か国で300以上のIT関連情報紙・誌を発行、400以上のウェブサイトでIT関連情報を提供し、また世界各地でIT関連のイベント・展示会を展開しているIT情報のリーディング・プロバイダ IDG(本社:米国マサチューセッツ州)のパトリック J. マクガバン会長。全世界を精力的に飛び回るマクガバン会長が来日したのを機に、2008年2月22日付の<1000分の第22回>に引き続いて、再び登場していただくことにした。【取材:2010年11月12日、帝国ホテルにて】
マクガバン氏は、「ユーザーを調査して、変化やニーズを感じて情報をキャッチし、また情報提供方法としては何がいちばん適しているかを常に考えてきました」と成功の秘訣を語る
「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
株式会社BCN 社長 奥田喜久男
<1000分の第47回>
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
技術は進歩し、サービスも多様化する
奥田 お久しぶりです。前回お会いしてから2年近くが経ちました。マクガバン 同じ業界を歩いてきた同志にまた会えて、大変嬉しいです。
奥田 世界的に明日がみえない状況ですが、マクガバンさんはそのあたりをどう捉えていますか。
マクガバン 顧客にとって何がベストなのかを常に考えています。技術は変わっていきますが、人間の本質は変わりません。その本質に向けたサービスを提供し続けていけばいいと確信しています。
奥田 世界中を飛び回っておられるマクガバンさんですが、何にいちばん興味をもって、どんなことに時間を使っておられるのでしょうか。
マクガバン 今、世界の90か国でビジネスを展開していますが、これから10年のうちにあと50か国増やそうと計画しています。それら新しい国に対して、いろんなフィールドでビジネスを展開していこうと考えています。もちろん出版物もありますが、モバイルタブレット/PC/スクリーンなどのさまざまな機器を使ったビジネスです。
奥田 出版物以外での伸びが大きいように見受けますが…。
マクガバン そうですね。紙であれば一人の人に提供したら、周りの人たちもみんな読むことができてしまいます。だけど、たとえばタブレットに情報を提供したら、受け取った人の全員からお金をいただけます。ですから、売り上げはいわゆる紙媒体に比べて4~5倍に伸びるわけです。
それに、オンラインならば、ユーザーがすぐに問い合わせできますし、オーダーもできる。同時に広告媒体として使うことも可能になります。こういったリードジェネレーションビジネスを使って、まず、どんな商品が欲しいのかといった、ユーザーの興味を知ることができるのです。そして、例えば情報を送った3か月後に電話をして、その商品を買ったのか、どこの会社の商品を買ったのか、いくらで買ったのか、そういった情報が得られるわけです。リードジェネレーションビジネスでは、見込み客が実際にいくら買ってくれたのかをはっきりとみることが可能となるのです。だから、この分野にとくに力を入れていきたいと思っています。
日本企業の中国進出事情
奥田 情報を発信する立場からみた日本の市場の現状は、まだ紙とウェブでの情報発信の兼ね合いがきちんと整理されていません。情報自身は普遍的なものですが、それを紙で届けるのかウェブで届けるのかというところが、まだ整然としていません。BCNは4年前、紙からウェブに情報の発信の軸足を移そうとしました。マクガバン 4年前ですか? 紙をやめてオンラインの方向へいこうとしたのですか。
奥田 そうです。挑戦したのです。しかし、事業の収支が崩れました。それで、紙とウェブを融合させて情報を発信する形に2年前から変更しました。それでも収支に不安定要素があるので、紙とウェブのほかに、マクガバンさんの会社が得意とするセミナーの事業をプラスしました。これらが整って、収支の安定が図れつつあります。
マクガバン それは大きな挑戦でしたね。
奥田 もう一つ、大きなデシジョンをしました。日本のメディアはなかなか世界へ出ていくことができません。とくに業界紙といわれるわれわれのような会社は。しかし、BCNは2010年、日本の47都道府県の枠を超えて、13億人の人口がある中国に土俵を広げました。中国に進出して、まずは取材を続けています。日本から中国に進出しているIT関連企業の経営者に積極的に事業戦略などのお話をうかがっています。
ただ、日本のIT企業のなかでも、大手はすでに中国に進出していますが、中堅以下の企業は、そのほとんどがまだ中国への進出を果たしていません。でも、これからは日本のITベンダーも土俵を広げて中国に目を向けて出ていかなければ、日本の市場だけでは10年先には確実に行き詰っていくとみています。
日本の経営者は非常に保守的です。その保守的な部分を変革していかなければならないと思います。アメリカはもう日本の5倍ほどの企業が中国に進出しています。ヨーロッパからもそうです。中国市場は、世界から国が集まって、サッカーのワールドカップのような盛況ぶりを示しています。このような状況のなかでBCNは、日本のITベンンダーを中国に誘導するような情報を常に発信していきたいと考えています。紙とウェブの両方を駆使して、さまざまなセミナー・講演会も積極的に企画しながらです。
そういう方向を決めて、半年が経ちましたが、中国、アジアの市場をものにしようと頑張っている企業の力が非常に強くなってきたと感じています。
マクガバン それはよかったです。