豊かな時間を過ごしてもらう道具を世界中に提供したい――第82回
jig.jp 代表取締役社長 福野泰介
構成・文/小林茂樹
撮影/津島隆雄
福野 まず、不満があります。これは本来こうあるべきだという不満ですね。その不満解消を実現するための基礎技術があるかどうかを検討します。できそうであれば、そこを突き詰めて具体的につくり込むかたちになります。
奥田 じゃあ、福野さんは不満のかたまりですか?(笑)
福野 そうですね。理想は高いですけれど、あまり期待はしないようにしています。だから、「理想と違う」という不満はいつももっていることになるわけですが、それならば自分でつくろうと……。
奥田 なかなか厳しい律し方ですね。では、ご自身のものづくりへの考えを、社員の方々にどのように伝え、啓発しているのですか。
福野 実は、そこがすごく苦手なんです。苦手ですが、できるだけそこを伝えようとしています。現状は会社が2拠点に分かれていますから、鯖江と東京で毎月1回ずつ時間をとって、会社の状況を説明するとともに私から話をするようにしています。そのほかには年2回、全社ミーティングを開催して、1か所に集まってそこで話をします。それと、とくに社内向けという意識はしていないのですが、ブログでも情報発信をしています。
奥田 この先10年で、どんな動きがあると考えておられますか。
福野 5年先ぐらいまでしか具体的なことは考えていませんが、一つは高機能眼鏡。要するにスマートフォンと眼鏡が融合したものが、比較的早いタイミングで実用化されると思います。グーグルが本格販売するのが1年半か2年くらい先なので、おそらくアップルも何かをやってくるでしょう。これがおそらく2、3年先ですね。もう一つはオープンガバメントの動きです。簡単にいうと電子政府の一種なのですが、内容は単純で、行政がもっているデータを抱え込まずに、それを民間に委託してコンテンツ化し、市民の利便性を図るということです。この動きの最先端が鯖江市で、千葉県の流山市と福島県の会津若松市が一緒にやり始めているという状況です。
そのほかには、将来を見据えてという意味で、子どもプログラミング教室をこれまでに10回ほど開いています。小学3年生向けに勉強用のプログラムの開発環境をつくったのですが、参加した子ども86人全員がアンケートで「楽しかった」と回答しました。「難しかった」という回答も多いのですが、難しいけど楽しいというのは狙いどおりでした。そのうち1割の子どもは本当にのめり込んでしまって、その場を離れなくなってしまったほどです。私も子どもの頃はその1割の側だったわけですが、そういう子たちに注目して、早いうちから伸ばしてあげることが重要だと思いますね。
奥田 福野さん自身もお若いですから、これからも世の中の利便性を高めるモノをたくさんつくられますね。
福野 そうですね。ここ何年か、プログラムを書いたり製品開発に携わったりしない時期もあったのですが、やはり自分でもつくろうと思って今年(2012年)の1月1日に「一日一創」(http://fukuno.jig.jp/)という言葉を自分への誓いとして、毎日アプリを作って公開することをしたのです。
奥田 それはどんな思いから?
福野 まず、つくるのが楽しいということがあります。そして、公開すると反応があるので、その反応を見て流れを知るというか、世の中と自分の考えのギャップを知るというのが目的ですね。
奥田 どのくらいそれに時間を費やすのですか。
福野 速いものは20分ぐらいでできますね。週末に2、3時間かけてつくるときもあります。
奥田 「一日一創」で脳細胞も活性化する、と。
福野 それもありますし、ストレス解消にもなります。アイデアが出てもそれを貯めているだけでは意味がありませんから、そのなかからピックアップして、ちょっとつくってみるんです。必ずしも完璧につくるつもりはないので、プロトタイプ程度につくってみるという感じです。
奥田 どのくらい続けますか?
福野 一生続けたいですね。
奥田 それはすごいエネルギーですね。
福野 「継続は力なり」ということだと思います。小学3年生から長い間をかけてやってきたことが今につながっていますし、毎日1個でも2個でもアプリをつくり続ければ、誰にも簡単には追いつかれないと思います。
奥田 じゃあ、福野さんは不満のかたまりですか?(笑)
福野 そうですね。理想は高いですけれど、あまり期待はしないようにしています。だから、「理想と違う」という不満はいつももっていることになるわけですが、それならば自分でつくろうと……。
奥田 なかなか厳しい律し方ですね。では、ご自身のものづくりへの考えを、社員の方々にどのように伝え、啓発しているのですか。
福野 実は、そこがすごく苦手なんです。苦手ですが、できるだけそこを伝えようとしています。現状は会社が2拠点に分かれていますから、鯖江と東京で毎月1回ずつ時間をとって、会社の状況を説明するとともに私から話をするようにしています。そのほかには年2回、全社ミーティングを開催して、1か所に集まってそこで話をします。それと、とくに社内向けという意識はしていないのですが、ブログでも情報発信をしています。
奥田 この先10年で、どんな動きがあると考えておられますか。
福野 5年先ぐらいまでしか具体的なことは考えていませんが、一つは高機能眼鏡。要するにスマートフォンと眼鏡が融合したものが、比較的早いタイミングで実用化されると思います。グーグルが本格販売するのが1年半か2年くらい先なので、おそらくアップルも何かをやってくるでしょう。これがおそらく2、3年先ですね。もう一つはオープンガバメントの動きです。簡単にいうと電子政府の一種なのですが、内容は単純で、行政がもっているデータを抱え込まずに、それを民間に委託してコンテンツ化し、市民の利便性を図るということです。この動きの最先端が鯖江市で、千葉県の流山市と福島県の会津若松市が一緒にやり始めているという状況です。
そのほかには、将来を見据えてという意味で、子どもプログラミング教室をこれまでに10回ほど開いています。小学3年生向けに勉強用のプログラムの開発環境をつくったのですが、参加した子ども86人全員がアンケートで「楽しかった」と回答しました。「難しかった」という回答も多いのですが、難しいけど楽しいというのは狙いどおりでした。そのうち1割の子どもは本当にのめり込んでしまって、その場を離れなくなってしまったほどです。私も子どもの頃はその1割の側だったわけですが、そういう子たちに注目して、早いうちから伸ばしてあげることが重要だと思いますね。
奥田 福野さん自身もお若いですから、これからも世の中の利便性を高めるモノをたくさんつくられますね。
福野 そうですね。ここ何年か、プログラムを書いたり製品開発に携わったりしない時期もあったのですが、やはり自分でもつくろうと思って今年(2012年)の1月1日に「一日一創」(http://fukuno.jig.jp/)という言葉を自分への誓いとして、毎日アプリを作って公開することをしたのです。
奥田 それはどんな思いから?
福野 まず、つくるのが楽しいということがあります。そして、公開すると反応があるので、その反応を見て流れを知るというか、世の中と自分の考えのギャップを知るというのが目的ですね。
奥田 どのくらいそれに時間を費やすのですか。
福野 速いものは20分ぐらいでできますね。週末に2、3時間かけてつくるときもあります。
奥田 「一日一創」で脳細胞も活性化する、と。
福野 それもありますし、ストレス解消にもなります。アイデアが出てもそれを貯めているだけでは意味がありませんから、そのなかからピックアップして、ちょっとつくってみるんです。必ずしも完璧につくるつもりはないので、プロトタイプ程度につくってみるという感じです。
奥田 どのくらい続けますか?
福野 一生続けたいですね。
奥田 それはすごいエネルギーですね。
福野 「継続は力なり」ということだと思います。小学3年生から長い間をかけてやってきたことが今につながっていますし、毎日1個でも2個でもアプリをつくり続ければ、誰にも簡単には追いつかれないと思います。
「『一日一創』で脳細胞も活性化する、と」(奥田)
(文/小林 茂樹)
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Profile
福野 泰介
(ふくの たいすけ) 1978年11月石川県生まれ。99年3月に福井工業高等専門学校電子情報工学科を卒業後、フリープログラマとして活躍。2000年5月シャフトを設立し、CTOに就任。01年3月ユーエヌアイ研究所を設立し、代表取締役社長に就任。03年5月jig.jpを設立し、代表取締役社長に就任。現在、福井県鯖江市在住。当地で開発に携わる。