日本から人を送り込んでいるうちは決して本物ではない――第74回
JBCCホールディングス 前会長 石黒和義
構成・文/谷口一
撮影/大星直輝
石黒 中国では中国のわれわれみたいな企業が現地でサポートしていますから、彼らの親密な関係を崩すのは結構大変なことです。われわれは向こうでは新参者ですから、既存の企業よりも、新しく中国へ出て行く企業に焦点をあてて広げていきます。ただ、現状のサポートに不満を抱くお客様なら、われわれが取って代わるというケースはあると思います。中国のビジネスというのは、日本人がすべて意思決定ができるところはおつき合いできますが、かなり現地化して対応している企業というのは、あまり強引にやることはできないですね。中国というのは、人的な関係が強い社会ですから。強引にやるのは得策ではありません。いちばん適しているのは、新規に進出するとか、新しい工場をつくるといった企業です。こういうケースはわれわれの強みを生かすことができます。すでに中国に根を張って展開している大手企業に入り込むのは、コンプライアンスの問題もありますから、そのへんは注意してやっていかないといけません。
奥田 今、中国には拠点がいくつありますか。
石黒 大連、上海、広州、北京の4拠点です。中国でのクラウドビジネスを本格的に始めようということで、日系企業だけでなく、中国企業を視野に入れながら、その事業を9月からスタートします。ご承知のように、インターネットを使ったITサービスというのは、中国にはまだまだ制約がありますから、ルールを守って、現地企業とタイアップしながら、クラウドビジネスを展開していこうと思っています。
奥田 現地企業とは具体的にどんな関係になるのでしょうか。
石黒 サービスは現地パートナーが提供して、セールスパートナーを増やしながら、われわれはクラウドビジネス全体を仕切る――そういう展開にしようとしています。その点については、日系IT企業の各社が苦労しているのではないでしょうか。サービスの提供そのものは限界がありますから、そのなかで、いかに自身の強みを生かし切るかということだと思います。でも、チャンスはあるとみています。
奥田 チャンスありですか。頼もしいお言葉です。
石黒 成都がありますね。ただ、ここは直販ではなくて間接販売での展開です。われわれのクラウドソリューションを扱っていただけるようなパートナーができるかというのが、キーポイントだと捉えています。北の地区ではいいパートナーがいますので、その他の地域でもそういうパートナーとの関係を構築していくことが重要だと思っています。
奥田 パートナーを選ぶにあたっての条件というのは、どんなことでしょうか。
石黒 ソリューションパートナーと、今回のようなクラウドを展開するようなパートナー、あるいはセールスパートナーとは、それぞれ違うと思います。ただ、共通していえることは、やはり、信頼関係です。とくに中国の場合はそこが重要になります。それがベースにないと、ビジネスはやらないほうがいい。それと、彼らは非常にアニマルスピリッツが強いですから、積極的で、いろんな提案を受け入れます。「できない」とはいわない面がありますので、「本当にできるのか」と、慎重に対応したほうがいいと思います。要するに、基本は「信頼」だと思います。実際に、一緒に仕事をいくつかやってみて、お互いにやれそうだと思えば、もう一つ先にいく、そういう展開だと思いますね。実際に動いてみて、いけるなということで着実に展開する。その延長で、どこかでワッと火がつくような、そういうチャンスをつかみたいですね。日本のIT企業は、まだそこまではいっていないのじゃないですかね。
奥田 そうですね。そこまではいっていませんね。
石黒 どこも試行錯誤しながら、苦労していると思います。
奥田 中国側のパートナーとの信頼関係ですけど、もう少し具体的に説明していただけますか。
石黒 そうですね。こちらのいうことを理解して、自分勝手ではなくて、相手のことを理解する。そういうことをお互い通じあえる感覚だと思います。まあ実際に、一つ二つ、具体化してみて、何か実績をつくる。それが確たるものになる。そのステップはどうしても踏まざるを得ません。メンタル的な面だけで信頼を築くだけではなくて、お互いのやり取りのなかで何かの実績が出てくると、それが積み重なって、強い信頼関係が生まれてくると思います。大連でも、上海でもいろいろなパートナーとつき合っていますが、だんだん信頼できる人が増えてきていることは間違いないですね。
奥田 いいことですね。パイプが太くなってきているわけですね。
石黒 向こう側もたぶんそういう目でみてくれていると思います。そういうことの積み重ねですね。でも、そういう関係は国を問わないのではないでしょうか。日本人同士のつき合いでも結局のところは同じだと思います。
奥田 確かにそうですね。石黒さんは、ますます中国にのめりこんでいかれそうですね。きょうは長時間のインタビュー、ありがとうございました。
奥田 今、中国には拠点がいくつありますか。
石黒 大連、上海、広州、北京の4拠点です。中国でのクラウドビジネスを本格的に始めようということで、日系企業だけでなく、中国企業を視野に入れながら、その事業を9月からスタートします。ご承知のように、インターネットを使ったITサービスというのは、中国にはまだまだ制約がありますから、ルールを守って、現地企業とタイアップしながら、クラウドビジネスを展開していこうと思っています。
奥田 現地企業とは具体的にどんな関係になるのでしょうか。
石黒 サービスは現地パートナーが提供して、セールスパートナーを増やしながら、われわれはクラウドビジネス全体を仕切る――そういう展開にしようとしています。その点については、日系IT企業の各社が苦労しているのではないでしょうか。サービスの提供そのものは限界がありますから、そのなかで、いかに自身の強みを生かし切るかということだと思います。でも、チャンスはあるとみています。
奥田 チャンスありですか。頼もしいお言葉です。
一つひとつの実績の積み重ねが、信頼関係を築く
奥田 中国全土を狙うとすると、まだまだ拠点を増やしていかれるのでしょうか。石黒 成都がありますね。ただ、ここは直販ではなくて間接販売での展開です。われわれのクラウドソリューションを扱っていただけるようなパートナーができるかというのが、キーポイントだと捉えています。北の地区ではいいパートナーがいますので、その他の地域でもそういうパートナーとの関係を構築していくことが重要だと思っています。
奥田 パートナーを選ぶにあたっての条件というのは、どんなことでしょうか。
石黒 ソリューションパートナーと、今回のようなクラウドを展開するようなパートナー、あるいはセールスパートナーとは、それぞれ違うと思います。ただ、共通していえることは、やはり、信頼関係です。とくに中国の場合はそこが重要になります。それがベースにないと、ビジネスはやらないほうがいい。それと、彼らは非常にアニマルスピリッツが強いですから、積極的で、いろんな提案を受け入れます。「できない」とはいわない面がありますので、「本当にできるのか」と、慎重に対応したほうがいいと思います。要するに、基本は「信頼」だと思います。実際に、一緒に仕事をいくつかやってみて、お互いにやれそうだと思えば、もう一つ先にいく、そういう展開だと思いますね。実際に動いてみて、いけるなということで着実に展開する。その延長で、どこかでワッと火がつくような、そういうチャンスをつかみたいですね。日本のIT企業は、まだそこまではいっていないのじゃないですかね。
奥田 そうですね。そこまではいっていませんね。
石黒 どこも試行錯誤しながら、苦労していると思います。
奥田 中国側のパートナーとの信頼関係ですけど、もう少し具体的に説明していただけますか。
石黒 そうですね。こちらのいうことを理解して、自分勝手ではなくて、相手のことを理解する。そういうことをお互い通じあえる感覚だと思います。まあ実際に、一つ二つ、具体化してみて、何か実績をつくる。それが確たるものになる。そのステップはどうしても踏まざるを得ません。メンタル的な面だけで信頼を築くだけではなくて、お互いのやり取りのなかで何かの実績が出てくると、それが積み重なって、強い信頼関係が生まれてくると思います。大連でも、上海でもいろいろなパートナーとつき合っていますが、だんだん信頼できる人が増えてきていることは間違いないですね。
奥田 いいことですね。パイプが太くなってきているわけですね。
石黒 向こう側もたぶんそういう目でみてくれていると思います。そういうことの積み重ねですね。でも、そういう関係は国を問わないのではないでしょうか。日本人同士のつき合いでも結局のところは同じだと思います。
奥田 確かにそうですね。石黒さんは、ますます中国にのめりこんでいかれそうですね。きょうは長時間のインタビュー、ありがとうございました。
「先行して海外へ進出している大手のユーザー企業を追いかけていくには、ITベンダー側の態勢といいますか、条件も揃えておかないといけませんね」(奥田)
(文/谷口 一)
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Profile
石黒 和義
(いしぐろ かずよし) 1944年、愛知県生まれ。名古屋大学工学部、法学部卒業。70年、日本IBMに入社。95年、取締役中部システム事業部長、99年、常務取締役西日本支社長。01年、日本ビジネスコンピューター代表取締役社長。11年、JBCCホールディングス代表取締役会長。現在は同社シニアアドバイザー。著書に『12賢者と語る 和らぐ好奇心』『人・モノ・カネ・情報・やっぱり人』(日経BP企画刊)、『相撲錦絵発見記』(中日新聞本社刊)などがある。2011年、中国大連市人民政府から大連市外国専門家「星海友誼奨」を受賞。