商品にはこだわらない。どんなコンセプトでどう売るかが重要だ――第73回
小林 茂
テンダ/ユニファイジャパン 代表取締役社長/代表取締役社長
構成・文/小林茂樹
撮影/大星直輝
小林 接着、コーティング、シーリングする機械をつくっているメーカーで、日本企業の製造部門にはほとんどといっていいほど導入されています。とくに包装機械に関しては、90%のマーケットシェアをもっています。
ビジネスに必要なのはイメージづくり
奥田 ここまでお話をうかがっていると、小林さんにとって、取り扱う商品やサービスは何でもいい、という感じがしますが……。小林 私には、商品へのこだわりはまったくありません。ただし、自分の頭のなかでマーケティングのプロセスが定まらなければ、お客様に対して自信をもって話ができません。つまり、その商品のコンセプトを理解し、どういう形で売れるかというイメージができるかどうかが重要なんですね。
経営者や事業を推進する立場の人物に求められることは、商品を詳しく知ることはもちろん重要ですが、ストーリーづくりやイメージづくりをすることだと思います。そして、常にお客様の目線で、自分たちにできることはきちんと実行すること。それができるように、組織を変え、人を変え、ものづくりも、商品やサービスの価格も変えていかなければなりません。経営者は外から自分の会社をみるようにすることが大切だと思います。
奥田 2010年10月に顧問としてユニファイジャパンに移籍され、昨年4月にこの会社の社長に就任ということで……。
小林 ユニファイジャパンという会社は、「Lotus Notes」をマイグレーションして、新しい大きなERPシステムに変えていくビジネスを大きな柱にしていましたが、このコンセプトは非常にいいと思いました。これはノードソンに在籍しているときに私自身が社長として感じていたことですが、ERPを導入してシステムを一元化することは、スピード経営や透明性、ガバナンスが求められる現代のビジネスには必須だからです。つまり、情報を一元化することで、経営者は同時にすべての状況がつかめるようになるわけです。そのためには、まず情報の整理整頓が重要です。
ユニファイジャパンの経営については、営業的にも財務的にも、この1年でかなり改善できたと思っています。
奥田 ということは、ERPの提供側であるユニファイジャパンに来られて、かなり満足されていると考えていいですか。
小林 足りないところはたくさんあります。一つはIT業界で、顧客満足が本当に実現されているのかということです。私自身がユーザー側の経営者だったときに、いろんなシステムを入れましたが、決して満足できませんでした。だから、たびたびシステムを変更しなければなりません。なぜ、ITに対しては、そんなに甘いのかと。もっと徹底して顧客満足を追求すべきです。だから私は、ユニファイジャパンをそういう会社にしていきたいと考えています。
奥田 IT業界は甘やかされていると……。
小林 これまでのIT企業は、プロダクトアウト的にいいものを売ればそれでお客様が満足すると思っていた節があります。でも、そうではなくて、徹底的に使ってもらって満足度を上げることが必要ではないかと思います。私のいた機械業界はそれをやってきたんです。10年、20年使ってもらって徹底的にサポートしてきました。ITというのはそういう意味でフルにサポートできているのかどうか、私はユーザーの立場からずっと疑問に思っていましたね。
システムに何か不都合があったら、「次のバージョンはどうですか」というように、すぐに買い替えを勧めるんです。そうではなく、お客様の立場からの商品づくりがなされてきたかどうかということを振り返ってみるべきでしょう。IT企業全般についての話ですが、この業界はハイテクという名のもとに、ちょっと努力を怠ってきたのではないかという気がします。
奥田 なるほど。そして今度はテンダの社長に就任されたわけですが、どんな事業で構成されているか、会社の全体像を説明していただけますか。
小林 事業は、エンタープライズソリューション事業とモバイルソリューション事業の二つに大きく分かれています。エンタープライズというのは、企業向けのいわゆるBtoBのビジネスです。例えば、Lotus Notesのマイグレーションビジネスは、ここが担当しています。そのほかに「Dojo」というマニュアル自動作成ソフトがあって、集合教育ソリューションを展開しています。また、プロジェクト管理やスケジュール管理を行うことができる「Time Krei」があって、企業経営統治に一役買っていますね。これに加えて、技術者を法人向けに派遣して業務委託を受けるという、エンジニアのアウトソーシングも行っています。
モバイルのほうは、スマートフォンサイトを自動で作成・構築できる「Smart Krei」を活用して、BtoC向けサイトの制作や、その他のソーシャルゲーム、ソーシャルアプリの企画・販売を行っています。
昨今のスマートフォンブームによって、BtoCサイトに限らず、BtoBサイトもスマートフォン化が求められるようになり、需要が拡大しています。
奥田 ところでテンダの「10年ビジョン」には、2015年の株式上場を謳っておられますね。
小林 そういうことができるようになるための基礎づくりをやっていきたいと思います。そのために、筋肉質で、きちんとした売り上げと利益、株主に喜びを与えられるような会社にしていかなければなりません。きちんと形づくり、人づくりをすることが重要ではないかと思います。
奥田 まさに非の打ちどころのない経営者ですね。
小林 それはほめ過ぎですよ(笑)。
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Profile
小林 茂
(こばやし しげる) 広島県生まれ兵庫県芦屋市育ち。関西学院大学卒業後、エールフランスに入社。その後、三洋電機在職中に社費でボストン大学経営大学院に留学、MBA取得三洋電機AV事業本部で経営企画を担当(携帯電話の世界戦略を練る)。ユニデン取締役、ユニデンと中国との合弁会社社長、ノードソン日本法人の社長、投資ファンド会社を経て、2011年4月、ユニファイジャパンの社長に就任。2011年10月からは、テンダホールディングス取締役。2012年6月からはテンダの社長を兼任。2011年7月米国サンフランシスコ州立大学客員教授に就任。