中国のコピー機市場は「直販、直サービス」で攻める――第72回
富士ゼロックス 代表取締役社長 山本忠人
構成・文/谷口一
撮影/大星直輝
直販、間販、e販の三層戦略で
奥田 広大な国土をもつ中国ですから、直販だけで拡販するというわけではないと思うのですが……。中国の市場をどう分類しておられるのでしょうか。山本 大きく三つに分けています。一つは先ほどから申し上げている直販です。人口が500万人以上の都市をターゲットにしています。
奥田 となれば、結構、数がありますね。
山本 沿岸地区を中心にして、今は28拠点で直販網を築いています。二つ目は間接販売です。
奥田 これは中国全土でということですね。
山本 そうです。そしてもう一つがe営業と呼んでいますが、インターネットや電話での販売です。この三層で、広大な中国全土をカバーしているわけです。
奥田 500万都市の28拠点で直販するということは、当然、現地の中国の人が売るということですね。その人たちの教育体制はどういうふうに?
山本 これが大変です。そこが一番苦労しているところです。まず、教育センターをつくり、カリキュラムを整える。そこから始めました。今はそこで半年間みっちりと鍛えます。売れた商品のメンテナンスも重要ですから、あわせてサービスエンジニア教育もやっています。それに、最近、問題視しているのが、競合他社による営業マンの引き抜きですね。直販では、主にハイエンドの商品を売っているのです。そういう商品を売るには、それなりのスキルを要するわけです。
奥田 そんなスキルをもっている人材が引き抜かれるわけですか。それは癪ですね。
山本 まあ、それは仕方ないですね。
奥田 今、中国で競争相手といえば、どんなところでしょうか。
山本 日本の競合メーカーはすべて中国に来ています。それに韓国のサムスン、あとはヒューレット・パッカードです。当社は直販に力を入れていますが、中国は広大な土地ですから、大型やソリューションサービス型だけではなく、われわれも一般のボリュームがでるところも押さえなくてはならないということで、最近、ローエンドにも本格的に進出しました。約700社のITディーラーを抱えています。
奥田 いつからそういう方向に?
山本 2010年です。新たに間接販売網をつくり直して、その販売チャネル用の“弾”も用意しました。
奥田 700社を使い、ローエンド商品を中国全土に売るということですね。弾というのは、カラー機ですか。
山本 カラー機とモノクロ機です。テレビCMもやっています。映画『レッドクリフ(赤壁)』の主人公のトニー・レオンを使っています。中国の広大なローエンドマーケットを本格的に獲りに動き出しました。
奥田 まさに意気込みが伝わってきますね。
山本 それに7月1日からは、当社の常務執行役員の徐正剛を中国における富士ゼロックスの「顔」として、中国事業総代表にしました。
奥田 出陣の人事ですね。中国市場への期待を聞かせてください。
山本 数年でわが社の全売上高の10%以上を中国で稼いでほしいと思っています。
奥田 直販に間接販売とネット販売。中国の市場で競合との戦いがし烈を極めそうですね。
中国、アジアにはまだまだ「伸びしろ」がある
奥田 徐さんを中国事業の総代表にされたということですけれど、中国事業を託す人というのは、どういう要素を備えている人なのでしょうか。山本 基本的には、ぶれなくて尊敬できるタイプです。そして部下に任せるタイプですね。中国人は結構、西洋人的です。だから、団体よりは個人、個性が強いですね。これだけ売り上げたら、インセンティブはこうだと、そういうところははっきりしています。したがって、そのための権利とかは主張しますね。そういうことに対して、ぶれないできちっとものが言える。そして、あとはきちっと任せるというタイプですね。中国はある種、契約社会だと私は思っています。そのあたりも西洋的です。
奥田 中国の富士ゼロックスの社員は何人ぐらいおられるのでしょうか?
山本 生産系で約1万2000人、営業系で700人ほどです。
奥田 それを徐さんがマネジメントされるわけですね。そのなかで日本人は何人ぐらいでしょうか。
山本 営業、経理、マーケティングで45人ほどです。それに3か所の生産拠点に30人ほどいます。
奥田 今後、中国市場をどう拡大していく方針なのか、具体的に聞かせてください。