「苦労して失敗して道を探る」のは中国も同じ――第65回
MANBU[メディア漫歩] 上海漫歩創媒広告有限公司 総経理 安永博信
構成・文/谷口一
安永 成功するには、日本と同じやり方で同じものをつくるのではなく、いかに中国人の求める品質・サービス、価格帯に変えられるかということです。中国人が欲しがるものを追求してつくるということです。
奥田 ご自身も変化してこられたと思いますが、安永流を教えてください。
安永 会社を経営する場合、中国人がこのやり方でいいというものを多く取り入れたいと思っています。それと、自分の考え方を曲げずに押し通すべきものと、どうでもいいものとを分けなければならない。
奥田 選別がむずかしいですね。
安永 曲げすぎると会社としてのプリンシプルが貫けなくなりますし、押し通し過ぎると拒絶反応が出てくる。経験しながら、ここは折れて、ここは主張するという判断力を養うことが重要です。また、中国人が納得するようなやり方で、同じ目標を目指すということも大事なことです。「苦労して失敗して道を探る」のは、日本で仕事をするのと同じだと思います。
安永 グローバルな観点からみて、もっともっとアジアの存在が大きな要素を占めてくるだろうと考えています。中国とインドがアジアをリードする大国になっていく。そのなかで、日本と中国の接点のビジネスはもっと大きくなっていくと思いますね。
奥田 やはり、そうなっていきますか。
安永 今、香港も含めて中国に日本人は20万人います。その数は増えていくと思います。絶対に減らない。中国人がノウハウを覚えて事業の柱を中国にシフトすれば、日本人は不要になるかといえば、そうではありません。大企業だけでなく、中小企業や小さなビジネスをしている人たちも中国と交流が深まって、もっと接点が増えてくるはずです。中国人のほうでも、日本に入り込むようなことがいっぱい出てきます。接点の定量的な規模も増え、交流する人も多くなります。
奥田 では、「ものづくり」の5年後、10年後、日本と中国はどういう関係になっているのでしょうか。
安永 「ものづくり」というときに、何をつくるかということですね。付加価値の低い、コスト競争にさらされるものを日本でつくるということは、もうないだろうと思います。
奥田 付加価値の高い「ものづくり」ということですね。
安永 例えばiPhoneをみても、製品を組み立てているのは中国や台湾だとしても、部品は、液晶をはじめ、日本でつくっているものがいっぱいあります。日本は、付加価値のある部品や素材などをつくり続けなくてはいけないと思います。
奥田 やはりそこですね。そこが日本の得意とするところでもありますし……。
安永 よその国が真似できない、付加価値の高いもの、革新的なものを、部品であれ素材であれ、つくり続けていく。
奥田 付加価値のないものは、淘汰されていくということですね。
安永 そうです。それに日本には、付加価値の高い「ものづくり」だけではなく、世界に誇るアニメなどの質の高い文化もありますから、それらを含めて、全世界の人たちが、「日本のものはいいね」と言ってくれるような製品やサービスを、どんどんつくり続けていってほしいです。質の高いものは、モノも文化も国を越えて伝わります。
奥田 そうですね。そして環になりますね。
奥田 ご自身も変化してこられたと思いますが、安永流を教えてください。
安永 会社を経営する場合、中国人がこのやり方でいいというものを多く取り入れたいと思っています。それと、自分の考え方を曲げずに押し通すべきものと、どうでもいいものとを分けなければならない。
奥田 選別がむずかしいですね。
安永 曲げすぎると会社としてのプリンシプルが貫けなくなりますし、押し通し過ぎると拒絶反応が出てくる。経験しながら、ここは折れて、ここは主張するという判断力を養うことが重要です。また、中国人が納得するようなやり方で、同じ目標を目指すということも大事なことです。「苦労して失敗して道を探る」のは、日本で仕事をするのと同じだと思います。
日本と中国のビジネス接点はもっと拡大する
奥田 安永さんは、広い定義でのアジアはどのように成長していくとみておられるのでしょうか。安永 グローバルな観点からみて、もっともっとアジアの存在が大きな要素を占めてくるだろうと考えています。中国とインドがアジアをリードする大国になっていく。そのなかで、日本と中国の接点のビジネスはもっと大きくなっていくと思いますね。
奥田 やはり、そうなっていきますか。
安永 今、香港も含めて中国に日本人は20万人います。その数は増えていくと思います。絶対に減らない。中国人がノウハウを覚えて事業の柱を中国にシフトすれば、日本人は不要になるかといえば、そうではありません。大企業だけでなく、中小企業や小さなビジネスをしている人たちも中国と交流が深まって、もっと接点が増えてくるはずです。中国人のほうでも、日本に入り込むようなことがいっぱい出てきます。接点の定量的な規模も増え、交流する人も多くなります。
奥田 では、「ものづくり」の5年後、10年後、日本と中国はどういう関係になっているのでしょうか。
安永 「ものづくり」というときに、何をつくるかということですね。付加価値の低い、コスト競争にさらされるものを日本でつくるということは、もうないだろうと思います。
奥田 付加価値の高い「ものづくり」ということですね。
安永 例えばiPhoneをみても、製品を組み立てているのは中国や台湾だとしても、部品は、液晶をはじめ、日本でつくっているものがいっぱいあります。日本は、付加価値のある部品や素材などをつくり続けなくてはいけないと思います。
奥田 やはりそこですね。そこが日本の得意とするところでもありますし……。
安永 よその国が真似できない、付加価値の高いもの、革新的なものを、部品であれ素材であれ、つくり続けていく。
奥田 付加価値のないものは、淘汰されていくということですね。
安永 そうです。それに日本には、付加価値の高い「ものづくり」だけではなく、世界に誇るアニメなどの質の高い文化もありますから、それらを含めて、全世界の人たちが、「日本のものはいいね」と言ってくれるような製品やサービスを、どんどんつくり続けていってほしいです。質の高いものは、モノも文化も国を越えて伝わります。
奥田 そうですね。そして環になりますね。
「付加価値のないものは、淘汰されていくということですね」(奥田)
(文/谷口 一)
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Profile
安永博信
(やすなが ひろのぶ) 1959年生まれ。東京大学教養学科卒業、米国コロンビア大学MBA課程修了。運輸会社、米国投資銀行、ヤオハン中国での勤務を経て、1999年上海漫歩創媒広告有限公司を設立。中国でメディア事業を幅広く展開し、現地の日本人ビジネスマンや中国政府・経済界に豊富なネットワークをもつ。