“演繹法”の中国を理解して、共存共栄を貫く――第56回

千人回峰(対談連載)

2011/08/19 00:00

森田 栄光

森田 栄光

ゴールデンブリッジ 代表取締役社長

構成・文/谷口一

パートナーの選定がビジネスの成否のカギを握る

 奥田 森田さんは、中国と非常に濃く関わっておられます。そこでおたずねしたいのですが、中国でソフトビジネスを成功に導くポイントとはどのようなものでしょうか。

 森田 決め手はパートナーです。パートナーの選定を間違えたら、絶対に失敗します。どんなに優秀な日本企業でも失敗します。中国では大きなビジネスになればなるほど、許可制だったり制限があったりします。ですから、そういったことも熟知したしかるべきパートナーを見つけなくては事業の成功はありません。パートナー選定を間違えたら、やる前から失敗が見えています。

 奥田 それは相性ではなく。

 森田 話が合うとかの、相性がいい悪いの問題ではありません。相手先の能力、中国側の能力です。ただ、中国側に能力があったとしても、日本側がそれに対応できなかったら、これも失敗の要因になります。

 奥田 なるほどね。

 森田 中国の人の考え方は演繹法なんです。

 奥田 どういう意味ですか。

 森田 先に目標ありきなんです。日本の場合は帰納法で積み上げ方式なんですが、中国の考え方は手段は問わないんです。どんな方法でも目的を達成できれば成功なんです。決まった方法で積み上げていく日本人とはそこが違うんですね。このやり方でダメならあのやり方と平気で変えてきます。

 奥田 ほう、たしかに思考法が異なりますね。

 森田 臨機応変というか、君子豹変というか、いいものを知ったらすぐに考え方を変えるというような柔軟性をもっていないと、日本の企業は中国のスピードの速さについていけないと思います。

 奥田 パートナー選びの重要性と中国人の考え方を理解する柔軟性、その他に何か。

 森田 きちんと身銭を切る覚悟をすること。つまり、投資をお互いにするということですね。それと、任せきりにするなということです。

 奥田 日本の代理店のようにはいかない……。

 森田 要するに、ビジネスの相手のことは全部理解しておくということです。状況がころころ変わることがありますから、コミュニケーションを常にとって、細かな情報も常にウオッチしておくということです。片手間でやっては絶対にダメです。

 奥田 片手間ではないにしても、日本とは勝手が違うから、腰が引けるところはあるでしょうね。

 森田 中国はアメリカのGDPも超えるでしょうし、世界最大の経済大国になるのは間違いありません。そういう状況のなかで、日本は中国の市場をいかに制していくかということだと思います。そのためには中国でいいパートナーを見つけて、共存共栄していくことが肝心です。

 奥田 ゴールデンブリッジはそういうパートナーも紹介してくれるんですか。

 森田 もちろんです。社名の由来も中国と日本の架け橋ですから。

ギブ・アンド・テイクの精神で

 奥田 中国でソフトビジネスを展開するには、まず森田さんを訪ねればいいということですね。

 森田 中国は日本の市場よりも大きくなることがわかっていますし、日本は中国に近いという地の利もありますから、市場を求めていくということは非常に大事なことだと思います。今の段階では、ソフトウェアメーカーは中国でお金を稼げていないと思いますが、今後、必ず稼げるようになります。

 奥田 心強いですね。

 森田 日本で稼いで利益が出ている分を、中国への投資に回したらいいと思います。これ以上、日本の市場は広がらないじゃないですか。そうすると、投資に回せるお金も出てこなくなってくる。まだ、投資できるお金がきちんと日本で確保できる間に、中国での地盤を築いておいたほうがいいと思いますね。

 奥田 まさに先ほど言われた身銭を切るということですかね。

 森田 そうです。そして、いかに中国人との間に信頼関係を築くかということです。日本でもそうですが、盲目的に信じるのはよくないです。

 奥田 どういう関係がいいのでしょうか。

 森田 お前のことはきちんとわかっているよ、俺と一緒に仕事をやっているとお前にとって、長中期的にメリットがあるから俺を裏切るなよ。そういう関係ですね。ギブ・アンド・テイクなんです。とにかく、盲目的に信じるのはよくない。対等な関係を維持していくということです。弱みを見せるべきではありません。

 奥田 「弱みを見せる」というのはどんなイメージなのでしょう。

 森田 弱腰になるなといってもいい。自分とつき合うことはあなたにとってメリットがあることなんだと感じ続けさせることです。

 奥田 ビジネスにおいて、そのあたりはなかなか難しいところですね。

 森田 そうですね。結局のところ、中国のことをよく理解している人に相談するのが一番いいということです。私どもの版権保護センターに任せてくれたらいいですよ。専門家がいっぱいいますから。

 奥田 そういう相談もできるわけですか。

 森田 はい、大丈夫です。

 奥田 ソフトウェアの会社が中国へ進出する場合には、まずはゴールデンブリッジの森田さんのところに行けばいい。そしたらいろいろアドバイスをしてくれる、と。

 森田 そのとおりです。まずは許認可を取るところから始めて、会社の設立とかパートナーの選定、中国から日本へライセンス料をきちんと送金することもできます。日本の企業は、自分たちだけでやろうとは考えないほうがいいと思います。中国と日本の架け橋になるわれわれがいるのですから。

 奥田 森田さんが忙しければ忙しいほど、日本のソフトウェア業界が中国で発展していくというわけですね。ますますのご活躍を期待しています。

「森田さんが忙しければ忙しいほど、日本のソフトウェア業界が中国で発展していくというわけですね」(奥田)

(文/谷口 一)

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Profile

森田 栄光

(もりた えいみつ) 1971年、名古屋市生まれ。93年、大学卒業後、北京大学に留学。97年、旭通信社に入社。人民日報との合弁会社である北京華聞旭通国際広告有限公司、新華社・共同PR・旭通信社3社の合弁会社(当時)・北京東方三盟公共関係策画有限公司に勤務。2003年、バンダイ入社、「第1回上海キャラクター博覧会」の企画・運営を手がける。07年、中国版権保護センター外事顧問および中華版権代理総公司国際業務部部長に就任。08年、ゴールデンブリッジ代表取締役社長、現在に至る。