2020年、中国の著作権問題はクリアになるか――第54回
弁護士法人フラーレン 代表 谷口由記
構成・文/谷口一
日中ビジネスの難しいところ
谷口 日中ビジネスで難しいのはそういうところにあって、中国人が外国人と折衝するという場面はそれほどなくて、外国人が前に出るとうまくいかないといいますか、むしろ中国人同士で話をしようじゃないかというふうな感じのほうが丸く治まる気がしております。ある意味では透明性がなくて、結論だけが明らかになるという感じもするんですが、そういう部分でもみなさんが中国ビジネスは難しいとおっしゃるのかなと思います。奥田 透明性を欠く、と。
谷口 そういうことですね。日本企業というのは、今まで本当に外国人とそういう交渉をする経験がそれほどないので、要するに上手じゃないんですね。
とくに役員さんクラスの人が上手じゃない。大きな駆け引きをやったとか、そういう経験もないんですね。だから交渉ということになるとうまくいかない。
奥田 先生が経験されたことを通じてみて、その交渉術がうまい人とへたな人の違いはどんなところにありますか。
谷口 やはり経験を多く積んだ人ほど上手だということですね。
奥田 どんなところが違いますか。
谷口 相手のこと、中国のことをよく知っているということです。それと、中国ではまだコネというかそういうもののウエートが日本以上に高いという感じもしますし、あんまり言うと語弊がありますが、やはり、交渉とか物事を進める際には潤滑油的なものが…。
奥田 お金ですね。
谷口 そういうことがまだあると、昔はもっとひどかったのでしょうが。
奥田 相場も決まっていると。
谷口 ただ、私どもはそういうものとは逆の方向でいかなくてはいかんと、だから中国人の相手もそれはわかってますから、私どもに対しては正面きっては言ってこないですね。ただ、日本企業側の中国人スタッフにはそれとなく言ってきます。正面きってというより、政治的に納めようというケースも多いです。だから、交渉がうまくいったというニュースがよく流れていますが、その裏では潤滑油的なものが流れているんだということは一部の人たちは知っていますけれども、表面化しませんから、政治的な駆け引きということになりますね。
奥田 ほとんどの場合に潤滑油は流れているんでしょうか。
谷口 うまくいったことが大事であって、その陰で何があったかはそれほど重視されません。
奥田 それは政治的駆け引きの一つだということで。
谷口 そうですね。ただ、これは中国に限ったことではなくて、発展途上国とのビジネスではそういうものは当然つきものとおっしゃっている方もたくさんおられます。
奥田 中国では売掛金の回収も大変だと聞きますが。
谷口 これがまた大変なんですね。
奥田 現実にそうなんですか。
谷口 そうです。要するに経理の担当者の能力の一つに支払いを遅らせるというのがあるんです。何か理屈をたてて支払いを遅らせたら、能力があると評価される向きがあるようでして、理屈にならない理屈を言ってくるんです。
奥田 例えばどんなことなんですか。
谷口 三角債といいまして、売った人が代金を払ってくれないからお宅に払えないと、他人の責任になすりつけるんです。
奥田 日本ではあり得ないですね。
谷口 それから、払う払うと言って、いつまでたっても払わないとか。
奥田 どれくらいの期間ですか。
谷口 担当者に催促させるんですけど、何週間も何か月もですね。あまり長いと、法的に手続きしますよ、と強く出ると、しぶしぶ払ってきたりしますね。
奥田 しぶしぶなんですか。
谷口 なんかこう、きれいに払わないんですね。
奥田 お互いがそうだったらうまくいきそうな気もしますが。中国人同士でもそうなんですか。
谷口 そういう面はあるようですが、日本企業に対してやはりひどいようです。もともとお金をもっているとわかっていますから。