音楽は心を豊かにする
奥田 指揮には人間的な面が重要だというお話でしたが、これはあらゆる業種でもいえることですね。中島 そうだと思います。ただ音楽だけを知っていても、指揮者にはなれないのと同じで、人間の幅のようなもの、深みのようなものがどんな分野でも重要なことだと思います。
奥田 そうですね。そこのところでしょうね。音楽を聴くというのも、私どもにとっては、人間の幅を広げてくれるのでしょうか。
中島 それはあると思います。音楽は気持ちを豊かにしてくれますから。
奥田 その点でも、システムYAMATO創立30周年記念の「NOA Concert」は壮挙ですね。一企業の周年行事の一環としてコンサートを開催するというのは聞いたことがありません。出演される方々も錚々たるメンバーですし、場所も新宿文化センターの大ホールということですから。
中島 すごいことだと思います。システムYAMATOさんには「国際音楽祭ヤング・プラハ」もずっと支援してもらっていますし、少しお返しができたらと思っています。
奥田 開催は4月2日でしたね。
中島 ぜひ、いらしてください。
奥田 ええ、楽しみにしています。
中島 日本では、クラシックというと堅苦しいイメージがありますが、決してそんなものではありません。もともとはダンス音楽ですから、モーツアルトだって、そう。楽しんでもらえるようにこちら側もいろいろと趣向が必要になってきます。
奥田 4月2日の「NOAコンサート」でも楽しませてくれそうですね。
中島 期待していてください。
若手音楽家の育成と若者の国際交流のために
奥田 中島先生は作曲や指揮だけではなく、音楽祭やコンサートのプロデュースなど多彩な活動をされていますが、その原動力というのは何なのでしょう。中島 好きなんでしょうね。音楽はもちろんのこと、音楽を取り巻くさまざまなことが。来年(2011年)には、「ヤング・プラハ」も20周年を迎えます。チェコと日本の実行委員会も特別な催しを企画しているところです。その一つとして、各国から優秀な演奏家を招聘し、東京と大阪で「ヤング・プラハ in ジャパン」を開く計画を立てています。
奥田 面白そうですね。プラハまではなかなか行けませんが、国内ならなんとか。
中島 でも一度はプラハに行っていただきたいですね。私も昨年、国立音楽大学を退官しましたから、ご案内できるかもしれません。
奥田 行ってみたいですね。世界遺産の街で音楽三昧、憧れてしまいます。
中島 「ヤング・プラハ」には日本から、合唱団やオーケストラを含めると、延べ800名を超える若者が参加していますが、彼らは確実に人生の1ページに忘れがたい思い出を綴っています。向こうに行くと若者たちは心が跳ねるんですね。「ヤング・プラハ」の経験をバネに演奏家として国際的に活躍している人も数多くいます。
奥田 素晴らしい体験になっていることでしょうね。
中島 世界文化遺産のリトミシェル・キャッスルや世界トップクラスのコンサートホール「ドヴォルジャーク・ホール」でも演奏ができるんですよ。
奥田 若き演奏家たちには目標になりますね。
中島 来年は「ヤング・プラハ」の20回目を迎えますけれど、ずっと続けていきたいと思っています。この活動の歴史から、素晴らしい才能を開花させた若い演奏家がたくさん出てきましたから。
奥田 運営にはお金もかかると思いますが、「ヤング・プラハ」の財政的な面はどうなんでしょう。
中島 企業の協賛金や公的な助成金、寄付などで賄っているわけですけど、非常に厳しいのが実際のところです。維持会員や協賛会社をお願いしているのですが、この不況でなかなか困難を極めています。
奥田 若い音楽家を育て、民間レベルで国際的な文化交流を推進していく素晴らしいイベントですから、多くの企業や個人に賛同してもらって、草の根的に支援の輪が広がればいいですね。
中島 個人会員(一口1万円)、法人会員(一口3万円)は、常時募集しています。音楽は心を優しくしてくれます。ぜひご支援をよろしくお願いいたします。
奥田 今日はありがとうございました。「NOA Concert」を楽しみにしております。
2010年4月2日(金)、第一回「NOA Concert」を開くシステムYAMATOの大和恒夫社長(右)を交えて写す
Profile
中島良史
(なかじま よしふみ) 1944年生まれ。国立音楽大学作曲科卒業。同専攻科修了。作曲では中村太郎氏、溝上日出夫氏に、指揮については渡邊暁雄氏に師事。ザルツブルグにおいてオトマール・スウィトナー氏に学ぶ。作曲、編曲、指揮、各種音楽祭・コンサートのプロデュースなど多彩な活動を展開中。