パソコンとテレビが融合する時代を見据える――第35回
細野昭雄
アイ・オー・データ機器 代表取締役社長
テレビがPC本体に見える
奥田 話を現在に戻して、細野さんの会社はいま民生用の製品にシフトしようとしているわけですが、それについてどんな心境なのでしょうか。細野 テレビがPC本体に見えるんです。テレビを中心とした“ホームネットワーク化”が広がりつつあるなかで、25年前にパソコンの周辺機器を手がけたときにパソコンに対して感じたのと同様のものを、今感じています。
コンピュータの時と同じように、私たちはテレビそのものは手がけませんが、テレビのつくられ方や使われ方などから、潜在的なニーズを見つけ出し、周辺機器として形にしていくということを進めていきたいと思っています。
奥田 ただ、「穴」がなかなか見つからない、と。
細野 そう、だから少しずつ穴を開けて、粘り強くやるしかないと考えています。放送分野における規制の問題についても、これからは放送電波とインターネットの関係をよく考えないといけない時期にあると思います。そういう意味でも、アクトビラによるNHKの番組再配信は、放送分野の今後に対する“蟻の一穴”になるかもしれません。なぜならば、これが本格的に普及すれば、各家庭で録画する必要がなくなるわけですからね。
奥田 なるほど、いつでも過去の番組が見られれば、録画する必要はありませんね。メーカー主導のアクトビラにとって、皮肉なことになる可能性もあると……。細野さんにとって、まだまだやることはたくさんありますね。
細野 いやいや、経営のバトンタッチは早めのほうがいいと思っているんですよ。いま64歳ですが、感覚的にわからないことが多くなってきました。携帯電話の世界などはとくにそうですね。ですから、思い切って若い人に引き継いでもらったほうがいいように思いますね。
奥田 今日は本当に面白い話を聞くことができました。次は、浅野川の料亭ででもゆっくりお話をうかがえればと思います(笑)。
Profile
細野昭雄
(ほその あきお) 1944年3月、石川県金沢市生まれ。1962年、石川県立工業高校電気科を卒業。ウノケ電子工業(現在の株式会社PFU)、金沢工業大学等に勤務。1976年、地元金沢でアイ・オー・データ機器を創業し(代表取締役社長 現任)、ワンチップマイコンを利用した織機管理システムなどを手掛けた。1980年にPC周辺機器分野へ本格参入。増設メモリボードなどの人気で、国内有数のPC周辺機器メーカーに成長させる。同社を経営する傍ら、社団法人石川県情報システム工業会の会長を務め、地元IT産業の育成に尽力している。