オフコンとパソコンの境目から“今”を俯瞰する――第34回

千人回峰(対談連載)

2009/02/16 00:00

久田仁

久田仁

内田洋行 相談役

年月を経れば、強みが弱みに変わる

 奥田 ところで、いま地球レベルで経済が縮小しつつありますが、これからビジネスの世界は何か新しい形に変わっていくのでしょうか。

 久田 先ほどお話しした、メーカー・卸・小売の力関係の循環といったことについては、それほど大きな変化はないと思います。おそらくもっと根本的な部分で、ビジネスの仕組みが変わってくるのではないでしょうか。たとえば、誰かが書いていましたが、昔のビジネス・エシックス(商道徳)がよみがえるといったことですね。

 奥田 長いビジネス人生を通じて、マクロの眼で見ると何が見えますか。

 久田 ある時代の強者は、次の時代で必ずやられるということです。「会社の寿命30年説」というのもありますが、明治時代に創業した会社が120年とすると、それだけの年月を経れば、持っていた強みが弱みに変わってしまうのではないかと思います。

 コンピュータ業界でいえば、いま大塚商会やオービックは強者ですが、かつては富士通やNECに隷属していたわけです。ところが、その富士通やNECが弱ってきています。ただ、あと何年か経てば、その立場がまた逆転する可能性もはらんでいるわけで、ある種の宿命のようなものだと感じますね。

 奥田 なるほど、宿命ですか。ところで、いまは相談役としては、どんなお仕事をされているのですか。

 久田 会社のことには一切口出ししませんから、いまは「内田洋行百年史」の執筆くらいですね。実は、すでに書き上げたのですが、自分が会社にいなかった時代は妙に簡単なのに、自分の関わったところばかりが長くなってしまい困りました(笑)。

 奥田 いいじゃないですか、「百年史」でも、一人称で書いてしまえば(笑)。久田さんとは、長くおつき合いさせていただいていますが、いつも話が尽きません。今日も楽しく過ごさせていただきました。

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Profile

久田仁

(ひさた ひとし)  1940(昭和15)年4月21日、大阪市生まれ。64年、米国アイオワ州ドレーク大学マーケティング部卒業、同年7月、内田洋行入社。67年、東京エレクトロン研究所入社。72年、再び内田洋行入社。76年、電子計算機事業部企画部長。78年、取締役に就任。取締役電子計算機事業部長などを経て、89年、代表取締役社長に就任。98年、取締役会長就任。05年、相談役に。