「プロ」にこだわり抜いて――第27回

千人回峰(対談連載)

2008/08/25 00:00

鈴木勝喜

鈴木勝喜

プロシップ 代表取締役会長

 固定資産管理やリース資産管理などの基幹業務パッケージシステムで高い専門性を発揮するプロシップ。同社会長を務める鈴木勝喜さんは、なんと合気道の達人である。私が電波新聞社の「電子と経営」の記者だった昭和46年、同社の前身である日本エム・アイ・エスの創業者のひとりである磯貝明さんに原稿執筆をお願いしたご縁で、その後同社の経営に参画された鈴木さんとの長いつき合いが始まった。  そこで今回、鈴木さんに合気道をめぐる人の縁、そしてプロシップ成長の足どりについて改めて聞いてみた。合気道については、実演つきの大サービスであった。【取材:2008年7月4日、プロシップ本社にて】

 「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
株式会社BCN 社長 奥田喜久男
 
<1000分の第27回>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
 

相手の懐に入ってしまえば隙がよく見える

 奥田 鈴木さんは、経営者という顔のほかに合気道の師範という顔も持っておられますね。なんでも、相手の手首を軽くひねっただけで、大の男が飛んじゃうということですが……。

 鈴木 ええ、相手の生理的弱点をつかんでしまうんです。ちょっとやってみますか? 痛くないですから。

 奥田えっ? あっ、痛たたたたた……。

(相対したとたん、一瞬にして腕を決められる。)

 鈴木 人間は、殴られたり襲われそうになったとき、逃げよう(相手から遠ざかろう)としますが、怖がって逃げようとすると簡単に相手にやられちゃう。ですから、合気道では逆に相手の懐に入っていくんです。これを「入り身」というのですが、そうすると相手の隙がよく見えるんですね。おもしろいですよ。アメリカにいた頃は200パウンド(約90キロ)以上もある大男を相手に、これで稽古をつけていましたから。この(相手の懐に飛び込むという)発想は、営業の仕事などにも共通することですね。役立ちますよ。

(と、涼しい顔で説明しながら、取材に同行したスタッフにも腕が伸びる。すると、同様にうめき声が……。)。

 奥田 ところで、鈴木さんはどのような縁で合気道と出会ったのですか。

 鈴木 昭和の代表的な武道家であり、近代合気道の創始者である植芝盛平先生、その弟子である引土道夫先生から私は教えを受けました。そもそも合気会の本部道場に入門するきっかけとなったのは、私の故郷である愛知県蒲郡の若宮精魂印之宮の宮司を務められ、印相学の先生でもある磯貝翁のアドバイスでした。

 1960(昭和35)年、私は法政大学に進学するため上京するのですが、このとき磯貝宮司に東京の下宿を世話してもらいました。磯貝翁は「ただ大学で勉強するだけでなく、文武両道でやりなさい」と、合気会を紹介してくださったのです。

 先方は私が内弟子志願だと思っていたようなのですが、学業が本分ですからそういうわけにもいきません。そこで、大学で合気道部に所属しながら合気会にも通って稽古を積んだというわけです。和歌山県新宮に道場を持つ引土先生のお弟子さんたちと一緒に、印之宮での奉納演舞に出たことも何度かあります。後から考えると、植芝先生、引土先生、磯貝先生はそれぞれお互いに交遊があって、そういう縁の中に私が連なったということになりますね。

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