国の安全のため、日本は独自のセキュリティソフト持つべきだ――第25回

千人回峰(対談連載)

2008/07/22 00:00

成田明彦

成田明彦

セキュアブレイン 社長

5-7分でワクチン開発

 奥田 具体的にはどんなソフトを開発なさっているんですか。

 成田 今はフィッシング詐欺、ワンクリック詐欺からインターネットユーザーを守るためのソフトを開発しています。

 企業向けにはPhishWall Server、個人向けにはInternet SagiWallを商品化しています。また、官公庁の研究機関とも連携し、次世代セキュリティの研究開発を積極的に行っています。

 当社のユニークな技術としては、マルウェアを自動解析するシステムがあります。ウイルスの解析には通常は7-8時間かかり、それからワクチンを開発するわけですが、当社の技術なら5-7分の短い時間でウイルスを駆除できます。特許出願中ですが、ぜひ認めて欲しいですね。

 奥田 そんなすごい技術持ってたら、新しい展開も可能ですね。

 成田 いろいろ考えてはいます。Webサイトが不正に改ざんされていないかどうかを短時間で解析する技術やフィッシング詐欺サイトを能動的に検知する技術など、これらの技術をインテグレートしていくことで、新しい可能性を追求していきます。

夜中に目覚めて貯金通帳を確かめることも

 奥田 ところで、独立して3年半たったわけですが、シマンテック時代の社長業と比べて、何が一番変わられました?

 成田 お金のことですね。シマンテック時代は、お金の心配は一切必要なかった。業績が良かったこともあるでしょうが、これだけ欲しいといえばすぐ送ってくれました。外資系の日本の社長は、社長と言うより営業部長なんだとよく言われましたが、実際そんな位置づけなんでしょうね。

 ところが、自分の会社となると、必要なお金は私が何とかしなければなりません。夜中に起きて、貯金通帳を確かめるなんてことがよくありました。なんといっても、59歳での起業ですから、精神的にも体力的にもきつかった。

 奥田 見通しはいかがですか。

 成田 今年は単年度黒字が見込めるところまできていまして、何とかいけそうだなと思っています。

 奥田 日本発のセキュリティソフトは絶対に必要という成田さんの考えに賛同します。その情熱の火を絶やさず、おおいに頑張ってください。

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Profile

成田明彦

(なりた あきひこ)  1945(昭和20)年5月15日三重県生まれ。1968年慶応大学商学部卒業、日本ユニバックに入社。78-82年アメリカ出張。85年アルゴグラフィックス入社。89年アップルジャパン入社、営業部長として、販売網の充実強化に務める。94年シマンテック入社、代表取締役社長として、シマンテックのブランド確立とセキュリティ市場におけるトップメーカー躍進の原動力となる。04年セキュアブレイン設立、代表取締役社長兼CEOに。