異端者がイノベーションを起こす――第12回【後編】

千人回峰(対談連載)

2007/08/07 00:00

水野博之

松下電器産業 元副社長 水野博之

よくやった中村改革、でもカリスマになりすぎると……

 奥田 中村邦夫さんの社内改革についてはどうごらんになってますか。

 水野 中村君は良くやったと思います。じつは、中村君の発想って幸之助さんにそっくりなんですよ。すぐ激するところも似ているし、財界活動なんて嫌いで、意外にシャイなところも似ています。東京に出てきたとき、一緒に食事するのは、私の知ってる限り2、3人だけです。キヤノンの御手洗冨士夫会長と、伊藤忠の丹羽宇一郎会長などで、アメリカ時代に知り合い、心が許せるんでしょうね。

 松下の場合、問題は今後ですね。カリスマ性があまり強くなると、誰も意見が言えなくなってしまう。幸之助さんが晩年よく言っていたのは、これだけ役員がいるんだ、私と違った考えで問題に当たりたいと思っている人間もいるだろう。それをどんどん言ってこいってね。でも、言えないですよ。

 中村君はそれに気がついたんで社長譲ったんだと思うけど、ワンマンというのは周りが作っていくものだから、それだけは気をつけて欲しいですね。

投資ファンドのお手伝いも

 奥田 ところで、いただいた名刺を見ますと、いろんな活動を続けておられるんですね。オリンパス・キャピタル・ホールディングスのシニアー・アドバイザーって、どんなことをやってるんですか。

 水野 オリンパス・キャピタルは、スタンフォード大学系の投資ファンドです。一つのターゲットを日本とアジアに置いて、5000億円くらい投資しておりますので、ミドルクラスのファンドといえます。

 外資系投資ファンドというと、ハゲタカのイメージが定着していますが、ここは非常に良心的です。いい技術を持っているけど、販売面では世界的な視野を持てない企業を探し、資本参加して数年かけて世界企業になれるお手伝いをするという点を基本的スタンスにしています。

 私は4年ほど前からお手伝いするようになったんですが、最初に手がけたのは日本ビクターへの出資でした。株価が900円の頃、1000億円出すと言ったのですが、担当者が逃げ回ってて、かわいそうになったので手を引きました。今になって、再提案してくれと言われてるんですが、どうもねぇ。

[次のページ]

前へ

次へ